「親が要介護になったら、税金が安くなると聞いた」 「年末調整の書類に『障害者』の欄があるけれど、親は手帳を持っていない」 「同僚は親の分で控除を受けているらしい。うちは何をすればいいの?」
——障害者手帳を持っていない親でも、介護が必要な状態であれば、税金の「障害者控除」を受けられることがあります。ただし、要介護認定とは別に、市区町村の認定を受ける手続きが必要です。この手続きを知らないまま、何年も控除を受けていなかった家族もいます。
この記事では、国税庁の案内と、杉並区・千葉市・名古屋市・神戸市・港区の案内をもとに、要介護の親が障害者控除を受けるための条件と手続きを家族向けに整理しました。年末調整の書類が配られる前に、対象かどうかを確かめておくと手続きが慌ただしくなりません。
この記事でわかること
- 要介護認定と「障害者控除対象者認定」の違い
- 控除額と、税金がどのくらい少なくなるかの計算のしかた
- 認定を申請する流れと、必要なもの
- 親を扶養している子どもが使う条件
- 年末調整・確定申告での使い方と、過去の年分の扱い
要介護認定を受けていれば、障害者控除は受けられる?
要介護認定だけでは受けられません。65歳以上で障害者手帳がない方は、市区町村の「障害者控除対象者認定」で障害者に準ずると認定されると、対象になります。
所得税の障害者控除の対象には、障害者手帳を持っている人のほかに、「精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人」が含まれています(国税庁 No.1160 障害者控除)。この認定を受けると交付されるのが「障害者控除対象者認定書」です。
要介護認定と障害者控除対象者認定は、判定の基準が違います。千葉市は「要介護認定とは基準が異なるため、要介護度が重度の方であっても対象者として認定されない場合があります」と案内しています(千葉市 障害者控除対象者認定)。要介護度だけで「対象になる」「ならない」を決めずに、市区町村に申請して判定を受けます。
障害者手帳をすでに持っている方は、手帳で障害者控除を受けられるため、この認定は通常いりません(千葉市の案内)。手帳を持っていても、介護が必要になって状態が変わったときは、どちらの区分で申告するのがよいかを市区町村の窓口で尋ねてみてください。
要介護認定そのものの申請や、介護度が実態と合わないときの見直しは、要介護認定の「区分変更申請」とは?で解説しています。
どんな状態なら「障害者」「特別障害者」と認定される?
基準は市区町村が定めています。多くの市区町村では、要介護認定のときに判定される「日常生活自立度」をもとに判断します。
認定には「障害者」と「特別障害者」の2つの区分があり、特別障害者のほうが控除額が大きくなります。杉並区の基準は、次のとおりです(杉並区 障害者控除対象者認定)。
| 区分 | 杉並区の基準 |
|---|---|
| 特別障害者(身体障害者1・2級に準ずる) | 要介護3以上で、障害高齢者の日常生活自立度がB以上 |
| 特別障害者(知的障害者・重度に準ずる) | 要介護3以上で、認知症高齢者の日常生活自立度が3以上 |
| 障害者(身体障害者3〜6級に準ずる) | 要支援・要介護の認定を受けていて、障害高齢者の日常生活自立度がA以上 |
| 障害者(知的障害者・軽度・中度に準ずる) | 要支援・要介護の認定を受けていて、認知症高齢者の日常生活自立度が2以上 |
日常生活自立度は、要介護認定の調査や主治医意見書で判定されるもので、「寝たきり度」「認知症の程度」を段階で表したものです。親の自立度は、市区町村に申請すると確認されるほか、ケアマネジャーに尋ねると目安がわかることがあります。
国税庁の案内では、特別障害者には「その年の12月31日の現況で引き続き6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする」人も含まれます。名古屋市も、6か月以上ねたきりで食事・排泄などの日常生活に支障がある方を認定の対象に挙げています(名古屋市 ねたきり・認知症高齢者等の税の障害者控除)。
上の表は杉並区の例です。基準の書き方や区分は市区町村ごとに違うので、親が住んでいる市区町村の案内で確かめます。
控除額はいくらで、税金はどのくらい少なくなる?
控除額は所得税で27万〜75万円、住民税で26万〜53万円です。少なくなる税額は、控除額に税率をかけた額が目安です。
控除額は、所得から差し引かれる額です。所得税と住民税で金額が違います(国税庁 No.1160、港区 所得税・住民税の障害者控除)。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
「同居特別障害者」は、扶養親族などが特別障害者で、納税者本人や配偶者、生計を一にする親族のいずれかと同居していることがふだんの状態である場合です(港区の案内)。
計算例:同居している親が特別障害者と認定された場合
以下は控除額のしくみを説明するための計算例です。実際の税額は、所得や他の控除によって変わります。自分の源泉徴収票の数字に置き換えて確認してください。
- 所得税率が10%の子どもが、同居する親(特別障害者)を扶養している場合
- 所得税:75万円×10%=7万5,000円少なくなる(復興特別所得税を除く)
- 住民税:53万円×10%=5万3,000円少なくなる(住民税の所得割の税率10%で計算)
所得税率は所得に応じて5%から45%まで分かれています。所得税がかからない方は、障害者控除を申告しても所得税は変わりません。
認定の申請はどうすればいい?
親が住んでいる市区町村の高齢者福祉や介護保険の担当窓口に、申請書を出します。本人だけでなく、扶養している家族が申請できる市区町村が多くあります。
申請の流れは、おおむね次のとおりです。
- 親の住む市区町村の案内を探す:「(市区町村名) 障害者控除対象者認定」で検索すると、申請書と基準が見つかります
- 申請書と必要書類をそろえる:千葉市は申請書と介護保険被保険者証の写しの2点を挙げています。名古屋市は、申請者の本人確認書類と、本人・親族以外の第三者が申請する場合の委任状を求めています
- 窓口・郵送・電子申請で出す:杉並区はダウンロードした申請書を窓口か郵送で受け付け、事前の相談をすすめています。名古屋市はマイナンバーカードを使った電子申請にも対応しています
- 認定書を受け取る:要介護認定の調査結果などをもとに判定され、対象になれば「障害者控除対象者認定書」が届きます
申請できる人について、千葉市と神戸市は「本人または本人を扶養している家族」、名古屋市は「本人またはその親族」と案内しています(神戸市 障害者控除対象者認定)。離れて暮らしている親の分を申請するときは、窓口が親の住所地の市区町村になる点に注意してください。
年末調整に間に合わせたい場合は、勤務先の書類の締め切りから逆算して、早めに申請します。認定までにかかる日数は市区町村によって違います。
親を扶養している子どもが控除を受けるには?
親が子どもの「扶養親族」であれば、子どもの所得税・住民税で障害者控除を受けられます。扶養親族になるには、生計を一にしていることと、親の所得が一定以下であることが必要です。
障害者控除は、納税者本人のほか、同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合にも受けられます(国税庁 No.1160)。親を扶養親族にするには、次の2つを満たす必要があります(国税庁 No.1180 扶養控除)。
- 生計を一にしていること:同居していなくても、生活費を送っているなど生計を一にしていれば該当することがあります
- 親の合計所得金額が一定以下であること:令和7年分までは58万円以下、令和8年分以後は62万円以下
親の収入が年金だけの場合、合計所得金額は年金の収入から公的年金等控除を差し引いた額です。親の年金額で判定が変わるため、親の年金の源泉徴収票を手元に用意して確かめます。
扶養控除と障害者控除は別の控除なので、条件を満たせば両方受けられます。たとえば70歳以上の親を扶養している場合は、老人扶養親族として扶養控除(同居老親等なら58万円、それ以外は48万円)を受けたうえで、障害者控除も加わります。
施設に入所している親の場合
国税庁は、扶養控除の「同居老親等」について、老人ホームなどへ入所している場合は同居に当たらないとしています(国税庁 No.1180)。施設に入所している親を扶養している場合は、同居特別障害者(75万円)ではなく特別障害者(40万円)として扱われることがあるため、どちらに当たるかを税務署や勤務先に確認してから申告します。
親を誰が扶養するかは、兄弟姉妹の間で決めることになります。同じ親を2人以上が扶養親族として申告することはできないので、親の介護、兄弟の分担はどう決める?で整理したお金の話し合いの中で、誰の扶養に入れるかも決めておくと、申告が重なりません。
年末調整と確定申告、どちらで使う?
会社員は年末調整で、自営業や年金生活の方は確定申告で使います。年末調整に間に合わなかった場合も、確定申告で受けられます。
| 申告する人 | 使う手続き | 書くところ |
|---|---|---|
| 親を扶養している会社員の子ども | 年末調整 | 勤務先に出す「扶養控除等(異動)申告書」の障害者の欄 |
| 年末調整に間に合わなかった会社員 | 確定申告(還付申告) | 確定申告書の障害者控除の欄 |
| 所得税がかかっている親本人 | 確定申告 | 確定申告書の障害者控除の欄 |
障害者に当たるかどうかは、その年の12月31日の状況で判定します(国税庁 No.1160)。年の途中で認定を受けた場合でも、12月31日に障害者・特別障害者であれば、その年の分の控除を受けられます。
親が年の途中で亡くなった場合は、判定の時点が12月31日とは異なる扱いになります。親が亡くなったあとの介護保険の手続きは親が亡くなったら介護保険の手続きは?にまとめています。税金の扱いは税務署に確認してください。
過去の年分は、さかのぼって受けられる?
所得税の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁 No.2030 還付申告)。ただし、さかのぼるには、その年分の認定書が必要です。千葉市は「最長で5年分を遡及して申請することができます」と案内していますが、過去の資料にもとづいて判定するため、5年分すべてが対象にならない場合があるとしています。
さかのぼれる年数や判定のしかたは市区町村によって違います。「何年分から申請できるか」を、申請の前に窓口で尋ねてください。
ほかの控除や制度とは、どう組み合わせる?
障害者控除は、医療費控除や高額介護サービス費とは別の制度なので、条件を満たせば一緒に使えます。
介護の費用に関係する制度は、しくみごとに窓口が分かれています。
- 医療費控除:おむつ代や訪問看護などの費用を、所得から差し引く税金の控除です。対象範囲は介護費用は医療費控除の対象になる?で確認できます
- 高額介護サービス費:介護サービスの自己負担が月の上限を超えたときに払い戻される介護保険の制度です(高額介護サービス費とは?)
- 世帯分離:住民票の世帯を分ける手続きで、介護保険料や負担限度額の判定に関わります。税金の扶養とは別のしくみなので、住民票の世帯を分けても、生計を一にしていれば扶養親族のままでいられることがあります(世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?)
障害者控除を受けると、住民税の所得割が少なくなります。住民税の課税状況は、介護保険料の段階や負担限度額の判定にも使われるため、親本人の申告で控除を受けた場合は、翌年度の保険料や負担の段階が変わることがあります。どの判定にどう影響するかは、市区町村の介護保険の窓口で確かめます。
今日からできること
- 親の介護保険被保険者証を確かめる:要介護度と認定の有効期間を見て、親が65歳以上で認定を受けているかを確かめる
- 親の住む市区町村の案内を探す:「(市区町村名) 障害者控除対象者認定」で検索し、基準と申請書、さかのぼれる年数を確認する
- 扶養の状況を確かめる:親が自分の扶養親族になっているか、兄弟姉妹の誰の扶養に入っているかを、年末調整の書類が届く前に確認する
手続きの判断は市区町村や税務署に確かめつつ、「親の手続きを一人で抱えて疲れている」という気持ちは、同じように介護をしている家族と分かち合うこともできます。介護そっとねっとは介護家族どうしで経験や気持ちを共有する場で、税金や認定の個別判断を行う窓口ではありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。認定の基準・手続き、控除の適用は、市区町村や税務署、勤務先によって確認が必要な点があります。個別の判断は、親の住む市区町村の担当窓口や税務署にご確認ください。
参考情報(一次情報)
- 国税庁 - No.1160 障害者控除
- 国税庁 - No.1180 扶養控除
- 国税庁 - No.2030 還付申告
- 杉並区 - 障害者控除対象者認定
- 千葉市 - 障害者控除対象者認定
- 名古屋市 - ねたきり・認知症高齢者等の税の障害者控除
- 神戸市 - 障害者控除対象者認定
- 港区 - 所得税・住民税の障害者控除
(確認日:2026年10月13日)
本記事の編集方針・訂正ポリシーは 編集方針ページ をご覧ください。




