「来年、介護保険の負担割合が上がるかもしれないってニュースで見たけど、うちは対象になるの?」 「ケアプランがお金かかるようになるって本当?」 「まだ決まってないなら、今は何もしなくていいの?」
——2025年末から2026年にかけて、2027年度の介護保険制度改正に向けた議論のニュースを目にする機会が増えました。介護そっとねっとのアプリにも、こうした改正報道への戸惑いの声が寄せられています。ただ、報道の見出しだけを見ると「もう決まったこと」のように感じてしまいますが、実際にはまだ審議会で検討されている段階の案が大半です。
この記事では、2026年8月時点で分かっている「2割負担の対象拡大案」と「ケアプラン有料化の議論」の2つを中心に、何が検討されていて、何がまだ決まっていないのかを、公開されている一次情報にもとづいて整理します。なお、この記事の後半で「今の時点で家族としてできる備え」についても触れます。まだ何も決まっていないからこそ、慌てず、しかし早すぎない準備をしておくことが大切です。
この記事でわかること
- 現行の介護保険の負担割合(1〜3割)のしくみ
- 「2割負担」の対象を広げる案の具体的な年収基準と対象人数
- 急激な負担増を抑える「配慮措置」の内容
- ケアプラン有料化の議論がどこまで進んでいるか
- 改正が実現するとしたらいつからか、今できる備えは何か
そもそも介護保険の自己負担割合は、今どう決まっているのか?
介護サービスの利用料は原則1割負担ですが、本人と世帯の所得が一定以上の場合は2割、さらに所得が高い「現役並み所得」の場合は3割になります。
現行制度での判定基準は、おおむね次のとおりです(厚生労働省 - 介護保険における利用者負担)。
| 負担割合 | 判定の目安(単身世帯の場合) |
|---|---|
| 1割 | 上記の2割・3割に該当しない方(大多数の利用者) |
| 2割 | 本人の合計所得金額160万円以上、かつ年金収入等が年間280万円以上 |
| 3割 | 本人の合計所得金額220万円以上、かつ年金収入等が年間340万円以上(現役並み所得) |
判定は市区町村が前年の所得をもとに毎年見直し、7月頃に「介護保険負担割合証」が交付される流れです。この基準にもとづいて、いま「2割負担」の対象となる年収ラインを引き下げ、対象者を広げる案が検討されています。
「2割負担」の対象は、どこまで広がる可能性があるのか?
厚生労働省は、社会保障審議会・介護保険部会に対し、現行「年収280万円以上」となっている2割負担の基準を、「年収230万円以上」から「年収260万円以上」の範囲で引き下げる案を選択肢として示しています。
これは、介護費用の急増と現役世代の保険料負担の限界という構造的な課題に対応するための議論の一環です(介護ニュースJoint - 介護2割負担、対象拡大へ具体案)。
もっとも対象が広がる「年収230万円以上」の案が採用された場合、高齢者の所得上位30%、およそ35万人が新たに2割負担の対象になると見込まれています。年収260万円の案であれば、対象人数はこれより少なくなります。
急激な負担増を抑える「配慮措置」も検討されている
対象者の負担が一度に重くならないよう、厚生労働省は次のような緩和策もあわせて示しています。
- 当分の間、月7,000円を負担増の上限とする(1割から2割に変わっても、増える金額が月7,000円を超えないようにする案)
- 預貯金が少ない高齢者を、条件付きで1割に戻す選択肢
つまり「基準に該当したら即座にフルの負担増になる」わけではなく、資産状況などを踏まえた緩和策とセットで検討されているのが現状です。ただし、これらの数値もあくまで検討段階の案であり、審議会での議論を経て変更される可能性がある点には注意してください。
なぜ「また今回も」延期になる可能性がゼロではないのか?
この「2割負担の対象拡大」は、実は今回が初めての検討ではありません。2022年以降だけで3回、同じ論点が見送られてきた経緯があります。
介護保険の負担割合は、制度創設から段階的に引き上げられてきました。
| 時期 | 制度の変化 |
|---|---|
| 2000年〜2015年3月 | 全員1割負担 |
| 2015年8月〜 | 一定以上の所得がある方は2割負担が導入 |
| 2018年8月〜 | さらに所得が高い「現役並み所得」の方は3割負担が導入(対象は当時の推計で約12万人) |
| 2022年以降 | 2割負担の対象拡大が3回にわたり議論されるも、いずれも結論を先送り |
| 2027年度〜(検討中) | 今回の拡大案 |
過去に対象拡大が見送られてきた背景には、物価高騰の影響への懸念、医療の窓口負担見直しなど他の社会保障改革との兼ね合い、そして利用者団体・介護事業者団体からの反発があったと報じられています(ニッセイ基礎研究所 - 介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?)。今回も、審議会では賛否が分かれる議論が続いており、「検討されている=確実に実施される」ではないことは、この延期の歴史からも見て取れます。
一方で、介護費用の急増という構造的な課題そのものは解消されていないため、「先送りされ続ける」とも言い切れないのが実情です。だからこそ、「決まった」という情報を鵜呑みにせず、続報を一次情報で確認する姿勢が大切になります。
ケアプランの有料化は、結局どうなるのか?
ケアマネジメント(ケアプラン作成)全体への利用者負担導入は、2025年末時点の議論では広範な反対意見を踏まえて見送られる方向です。ただし、一部の住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では、利用者負担を求める方向での検討が進んでいます。
ケアプラン有料化は、以前から「介護保険財政の効率化」の論点の一つとして繰り返し取り上げられてきました。2025年12月には介護保険部会で意見の取りまとめが行われ、要介護度の高い入居者が多い施設や、医療的ケアを重点的に提供する施設など、一部の類型に限って利用者負担を導入する方向性が示されたと報じられています(NDソフトウェア - 2027年介護保険制度改正への動向、ワイズマン - ケアプラン有料化とは?)。
一方で、居宅介護支援(在宅で暮らす方のケアプラン作成)全体への一律の利用者負担導入については、ケアマネジャーの団体や利用者団体からの反対意見が根強く、2027年度改正での全面導入は見送られる公算が大きいとする報道が複数見られます。ただし、この論点自体が完全になくなったわけではなく、将来的な改正であらためて議論される可能性は残っています。
現時点で確実に言えるのは「議論が続いている」ということまでで、対象範囲や金額の詳細はまだ固まっていません。 続報が出るたびに条件が変わる可能性があるため、「もう決まった」という情報を見かけても、一次情報(厚生労働省・審議会資料)にあたって確認する習慣を持っておくと安心です。
この改正はいつから始まるのか? 決定までの流れを知っておく
実施が想定されているのは2027年度からで、2026年内に具体的な制度設計が固まり、翌年の通常国会で改正法が成立したのち、2027年4月からの施行を目指す流れが見込まれています。 つまり、今すぐ何かの手続きが必要になるわけではありません。
決定までのおおまかな流れを整理すると、次のようになります(介護経営ドットコム - 2027年度の介護保険制度改正に向けたスケジュール・論点)。
- 2025年12月〜2026年(現在進行中):社会保障審議会・介護保険部会で、負担割合の見直しやケアプラン有料化などの論点を月1回ペースで審議
- 2026年内(冬ごろ目途):介護保険部会としての意見の取りまとめ。2割負担の拡大基準など、主要な論点の方向性がここで固まる見通し
- 2026年度中〜2027年:通常国会に介護保険法などの改正案を提出し、成立を目指す
- 2027年1月頃:具体的な介護報酬改定の内容が決定
- 2027年4月:改正後の制度がスタート(各市区町村の「第10期介護保険事業計画」もあわせて始動)
つまり、「審議会で案が出た」段階と「法律として成立した」段階の間には、まだ複数のステップが残っています。 ニュースで見かける「〇〇の案が示された」という報道の多くは、上記の1の段階の出来事です。今の時点で確定した制度変更ではないことを踏まえたうえで、続報を追っていくとよいでしょう。
今のうちにできることは?
とはいえ、「今は関係ない」と情報から距離を置いてしまうと、いざ制度が固まったときに慌てることになりかねません。今のうちにできることとして、次の3つを意識しておくとよいでしょう。
- 親(またはご自身)の所得区分をおおまかに把握しておく:毎年届く「介護保険負担割合証」に記載の割合と、年金収入のおおよその額を確認しておくと、拡大案が実現した場合に対象になりそうかどうかの見当がつきます
- 家計の中で介護費用に使える上限をイメージしておく:負担割合が変わった場合の家計への影響を、大まかにでも試算しておくと心の準備になります
- 一次情報の発信元をブックマークしておく:厚生労働省の報道発表や、介護保険部会の議事録・資料は厚生労働省 - 介護・高齢者福祉で確認できます。ニュースの見出しだけでなく、一次情報で「まだ案の段階か、決定したか」を確認するくせをつけておくと安心です
具体的な年金収入で見ると、対象になりそうかどうか
「年収230万〜260万円」と言われても、実際にどれくらいの年金収入の方が該当するのか、イメージしにくいかもしれません。あくまで拡大案が実現した場合の目安として、次のように整理できます。
| 年金収入等の目安(単身) | 現行制度 | 年収230万円案が実現した場合 | 年収260万円案が実現した場合 |
|---|---|---|---|
| 200万円程度 | 1割負担 | 1割負担のまま | 1割負担のまま |
| 240万円程度 | 1割負担 | 2割負担に変わる可能性 | 1割負担のまま |
| 270万円程度 | 1割負担 | 2割負担に変わる可能性 | 2割負担に変わる可能性 |
| 280万円以上 | 2割負担(現行) | 2割負担(変更なし) | 2割負担(変更なし) |
このように、すでに280万円以上で2割負担になっている方には、今回の見直しによる新たな影響はありません。 影響を受ける可能性があるのは、現在1割負担でありながら年金収入等が230万〜280万円程度の範囲にある方です。ご自身やご家族がこのレンジに近いかどうかを、次に負担割合証が届いたときの参考にしてください(実際の判定は所得や資産の状況を踏まえて市区町村が行うため、上記はあくまで目安です)。
すでに施設利用にかかる費用の変化については、2026年8月から一部引き上げられた「食費・居住費の負担限度額」の記事もあわせてご覧ください。介護施設の食費・居住費、2026年8月から一部引き上げにでは、今回すでに実施されている変更点を解説しています。今回の記事で取り上げた2027年度の改正は、これとは別の今後の変更点である点を混同しないようにしましょう。
また、高額介護サービス費や負担限度額認定証など、今すでに使える負担軽減の制度については、親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説で全体像を紹介しています。将来の負担増に備える意味でも、今使える制度を漏れなく利用しておくことが土台になります。
制度改正は、介護保険だけで起きているわけではありません。2025年には仕事と介護の両立支援に関する法律も改正されており、仕事を辞めずに介護を続けるために──2025年に変わった「両立支援」、家族が使える新しい権利もあわせて知っておくと、負担の増減だけでなく「働きながらどう介護を続けるか」という視点でも備えが進みます。親のお金や契約の管理に不安がある場合は、親のお金や契約を守る「成年後見制度」とは──家族のためのやさしい入門と2026年の大改正も、あわせて制度改正への備えとして役立ちます。
よくある質問
Q. 2割負担の対象拡大は、もう決定したのですか?
いいえ、まだ決定していません。2026年8月時点では、社会保障審議会・介護保険部会で「年収230万円以上」から「年収260万円以上」の範囲で対象を拡大する案が選択肢として示されている段階です。2026年内に部会としての意見の取りまとめが行われ、その後、通常国会での法案審議を経て正式に決まる見通しです。同様の見直しは2022年以降だけで3回見送られてきた経緯があり、今回も審議の行方を見守る必要があります。
Q. 今すぐ何か手続きをする必要はありますか?
現時点では、家族が何か手続きをする必要はありません。改正が実施されるとしても2027年度からの想定で、制度の詳細もまだ固まっていません。今できることは、ご家族の「介護保険負担割合証」に記載された現在の負担割合と、おおよその年金収入を把握しておくことです。制度が固まった段階で、対象になりそうかどうかをすぐに判断できます。
Q. ケアプランの利用者負担は、結局始まるのですか?
在宅で暮らす方向けのケアプラン作成(居宅介護支援)全体への一律の利用者負担導入は、2025年末時点の議論では見送られる方向です。ただし、要介護度の高い入居者が多い住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、一部の施設類型では利用者負担導入の検討が続いています。全面有料化と一部施設限定の話が混同されて報じられることもあるため、対象範囲を区別して確認することが大切です。
Q. すでに2割・3割負担になっている人にも影響がありますか?
拡大案がそのまま実現した場合、すでに2割負担・3割負担の方の負担割合が変わることは基本的にありません。今回の見直しは、現在1割負担の方のうち、年金収入等が230万〜280万円程度の範囲にある方を新たに2割負担の対象に加えるかどうかが論点です。すでに280万円以上で2割負担になっている方や、340万円以上で3割負担になっている方への直接的な影響は、現時点の案の内容からは見込まれていません。
Q. 最新の情報はどこで確認すればよいですか?
もっとも確実なのは、厚生労働省の公式サイトや、社会保障審議会・介護保険部会の議事録・資料です。ニュースサイトの見出しだけでは「検討中の案」なのか「正式決定」なのかが分かりにくいことがあるため、気になる報道を見かけたときは、記事の中で一次情報へのリンクが示されているかを確認し、可能であれば厚生労働省の発表を直接確認する習慣をつけておくと安心です。
まとめ
この記事で持ち帰れることは、次の3つです。
- 2割負担の対象拡大案(年収230万〜260万円への引き下げ)は、まだ検討段階で、実現すれば最大約35万人規模の影響がある可能性がある
- ケアプラン有料化は、全面導入は見送りの方向だが、一部の施設類型では利用者負担導入の議論が続いている
- 実施は2027年度からの想定で、今すぐの手続きは不要。ただし所得区分の把握と一次情報の確認習慣を、今のうちに持っておくと安心
制度改正のニュースは、見出しだけを見ると不安になりがちです。しかし今回取り上げた2つの論点は、どちらもまだ「案」の段階であり、今日明日で何かが変わるわけではありません。まずは、ご家族の「介護保険負担割合証」がどの区分になっているか、次に届いたときに確認してみてください。それだけで、拡大案が実現したときに慌てずに済みます。
介護そっとねっとには、「制度のニュースを見るたびに不安になる」「まわりに聞ける人がいない」という声が数多く寄せられています。同じように将来の制度改正を気にかけているご家族と、匿名でそっと情報や気持ちを分かち合える場所です。正式な制度の確認は厚生労働省の一次情報で行いつつ、気持ちの面では一人で抱え込まず、同じ立場の方とつながってみてください。
※本記事は2026年8月時点で公開されている報道・審議会資料をもとにした情報提供です。制度の内容は今後の審議で変更される可能性があり、正式決定ではありません。最新の情報は厚生労働省の公式発表でご確認ください。
参考情報(一次情報)
- 厚生労働省 - 介護・高齢者福祉
- 介護ニュースJoint - 介護2割負担、対象拡大へ具体案 厚労省
- NDソフトウェア - 2027年介護保険制度改正への動向
- ワイズマン - ケアプラン有料化とは?
- ニッセイ基礎研究所 - 介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?
- 介護経営ドットコム - 2027年度の介護保険制度改正に向けたスケジュール・論点
本記事の編集方針・訂正ポリシーは 編集方針ページ をご覧ください。
よくある質問
いいえ、まだ決定していません。2026年8月時点では、社会保障審議会・介護保険部会で「年収230万円以上」から「年収260万円以上」の範囲で対象を拡大する案が選択肢として示されている段階です。2026年内に部会としての意見の取りまとめが行われ、その後、通常国会での法案審議を経て正式に決まる見通しです。同様の見直しは2022年以降だけで3回見送られてきた経緯があり、今回も審議の行方を見守る必要があります。
現時点では、家族が何か手続きをする必要はありません。改正が実施されるとしても2027年度からの想定で、制度の詳細もまだ固まっていません。今できることは、ご家族の「介護保険負担割合証」に記載された現在の負担割合と、おおよその年金収入を把握しておくことです。制度が固まった段階で、対象になりそうかどうかをすぐに判断できます。
在宅で暮らす方向けのケアプラン作成(居宅介護支援)全体への一律の利用者負担導入は、2025年末時点の議論では見送られる方向です。ただし、要介護度の高い入居者が多い住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、一部の施設類型では利用者負担導入の検討が続いています。全面有料化と一部施設限定の話が混同されて報じられることもあるため、対象範囲を区別して確認することが大切です。
拡大案がそのまま実現した場合、すでに2割負担・3割負担の方の負担割合が変わることは基本的にありません。今回の見直しは、現在1割負担の方のうち、年金収入等が230万〜280万円程度の範囲にある方を新たに2割負担の対象に加えるかどうかが論点です。すでに280万円以上で2割負担になっている方や、340万円以上で3割負担になっている方への直接的な影響は、現時点の案の内容からは見込まれていません。
もっとも確実なのは、厚生労働省の公式サイトや、社会保障審議会・介護保険部会の議事録・資料です。ニュースサイトの見出しだけでは「検討中の案」なのか「正式決定」なのかが分かりにくいことがあるため、気になる報道を見かけたときは、記事の中で一次情報へのリンクが示されているかを確認し、可能であれば厚生労働省の発表を直接確認する習慣をつけておくと安心です。
ご利用にあたっての免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として介護そっとねっと編集部が作成したものです。介護保険や医療・心理に関わる個別のご判断については、 お住まいの市区町村の地域包括支援センター、主治医、担当ケアマネジャー、または厚生労働省の公式情報をご確認ください。記事は2026.8.20時点の情報に基づきます。
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