【2026年版】高齢の親を夏の熱中症から守る──在宅介護でできる室内対策と新しい警戒アラートの使い方
毎年、夏が近づくと介護をするご家族から聞こえてくるのが、「エアコンをつけてくれない」「水分をあまり摂ってくれない」 という悩みです。
「暑くないよ、と言って冷房を切ってしまう」 「のどが渇かないから、と水を飲んでくれない」 「日中ひとりにする時間が心配でたまらない」
——こうした不安は、決して大げさなものではありません。高齢の親にとって、夏の室内は「命にかかわる場所」になりうるからです。
そして2026年の夏は、その危険がいっそう現実味を帯びています。 気象庁の発表によると、2026年7月中旬〜下旬の西日本の平均気温は、統計を開始した1946年以降でもっとも高い記録となりました。全国で40℃以上の「酷暑日」を観測した地点数も延べ34地点にのぼり、2025年の30地点を上回っています。東海地方では国内初となる5日連続の酷暑日、九州でも観測史上初の酷暑日が記録されました。8月についても、気温がかなり高い日が多くなる見通しが示されています(気象庁 - 2026年7月中旬〜下旬の顕著な高温と今後の見通しについて)。
この記事では、在宅で高齢の家族を介護するご家族に向けて、熱中症の正しい知識・今日からできる室内の対策・2024年から始まった新しい警戒情報の使い方を、公式情報をもとにやさしくまとめました。
この記事でわかること
- なぜ高齢者は熱中症になりやすく、重症化しやすいのか
- 在宅でできる室温・水分・服薬の具体的な対策
- 「熱中症警戒アラート」「特別警戒アラート」「クーリングシェルター」の正しい使い方
- 離れて暮らす親を見守るための工夫
なぜ高齢の親ほど熱中症が危ないのか
「うちの親は元気だから大丈夫」と思っていても、年齢を重ねた体は、若いころとは違う反応をします。
環境省「熱中症環境保健マニュアル」や厚生労働省の啓発資料によると、高齢者が熱中症になりやすいのには、はっきりとした理由があります。
- 暑さを感じにくい:皮膚の感覚が鈍くなり、「暑い」という自覚が遅れる
- のどの渇きを感じにくい:脱水が進んでいても、脳が渇きを感知しにくくなる
- 体温調節が遅い:汗をかきにくく、体に熱がこもりやすい
- 体内の水分量が少ない:もともと若い人より水分の蓄えが少なく、脱水になりやすい
その結果、熱中症は 「気づいたときには重症」 になりがちです。環境省・厚生労働省の資料では、熱中症による死亡者のおよそ8割が65歳以上の高齢者であり、しかもその多くが屋内で発生していることが繰り返し示されています。
ポイント:熱中症は「炎天下の外」だけのものではありません。エアコンを使っていない室内、入浴中、就寝中にも起こります。「家にいるから安心」は、高齢者には通用しません。
2026年夏の救急搬送データが示すこと
この「屋内で多く発生している」「高齢者が中心」という傾向は、2026年の夏も変わらず、むしろ数字として色濃く表れています。 消防庁の集計をもとにしたウェザーニュースの報道によると、2026年7月20日〜26日の1週間だけで、熱中症による救急搬送者数は全国で18,591人にのぼり、前週の10,857人からおよそ7,700人増加しました。搬送者のうち65歳以上の高齢者が1万人以上と、全体の半数以上を占めています。発生場所別に見ると、もっとも多いのは 「住居」 で、「道路」「仕事場」がこれに続きます(ウェザーニュース - 熱中症による救急搬送者 先週から約7,600人増加 高齢者が半数以上)。
つまり、「炎天下で倒れる」というイメージとは裏腹に、もっとも多くの高齢者が熱中症になっているのは、ほかでもない自宅の中なのです。この記事で紹介する室温・水分・アラートの3点管理は、まさにこの「住居」でのリスクに直接効く対策です。
加齢にともなう体の変化への向き合い方は、親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方でも触れていますが、夏の熱中症対策は「本人の感覚に任せず、家族が数字で見守る」ことが何より大切です。
在宅でできる室内の熱中症対策
ここからは、自宅で今日から実践できる対策を、4つの柱に分けて紹介します。
1. 室温と湿度を「数字」で管理する
高齢者は暑さを感じにくいため、本人の「暑くない」という言葉ではなく、温湿度計の数字で判断するのが基本です。
厚生労働省・環境省は、室内での熱中症予防の目安として 室温28℃以下・湿度70%以下 を示しています。
- 居室に温湿度計を置き、いつでも数字が見える場所に貼っておく
- エアコンは「設定温度」ではなく「実際の室温」で調整する(部屋の場所により差が出ます)
- 扇風機やサーキュレーターで空気を循環させ、部屋の温度ムラをなくす
- 直射日光が入る窓は、すだれ・遮光カーテンで日差しをやわらげる
コラム:暑さ指数(WBGT)とは ニュースで耳にする「暑さ指数(WBGT)」は、①湿度、②日射・輻射熱、③気温の3つを取り入れた指標です(環境省)。同じ気温でも湿度が高いと熱中症のリスクは上がります。「気温だけでなく湿度も見る」ことが、室内対策のコツです。
2. 「のどが渇く前に」こまめな水分補給
高齢者はのどの渇きを感じにくいため、渇いてから飲むのでは遅いのが鉄則です。
厚生労働省の高齢者向けリーフレットでは、のどが渇いていなくても、こまめに水分を摂ることが推奨されています。
- 起床時・食事時・入浴前後・就寝前など、時間を決めてコップ1杯の水分を促す
- 手の届く場所に常に飲み物を置いておく
- 大量に汗をかいたときは、水分とあわせて塩分(経口補水液や少量の塩分補給)も意識する
- 食事も水分源になるため、食事量が落ちていないかも見守る
ただし、心臓や腎臓の持病があり水分制限を受けている方は、自己判断で水分量を増やすのは禁物です。かかりつけ医やケアマネジャーに、夏場の適切な水分量を確認しておきましょう。
3. エアコンを「我慢させない」工夫
「電気代がもったいない」「冷房は体に悪い」と、エアコンを我慢してしまう高齢者は少なくありません。けれど、命を守るためにはエアコンの使用が欠かせません。
- 「体に悪いのは冷やしすぎ。28℃くらいなら大丈夫だよ」と、正しい知識を一緒に共有する
- リモコンの操作が難しい場合は、よく使う温度に印をつける、設定をシンプルにしておく
- 就寝中も、タイマーで切らずに朝までつけたままにすることを基本に
- フィルター掃除を夏前に済ませ、効きをよくしておく
4. 服薬と入浴にも注意する
意外と見落とされがちなのが、薬と入浴です。
- 利尿薬・降圧薬など、脱水を起こしやすい薬を服用している場合があります。心配なときは主治医・薬剤師に相談を
- 入浴は体に熱がこもりやすく、脱水も進みます。入浴前後の水分補給と、長湯を避けることを心がけましょう
身体介助そのもののコツは自宅での身体介護、どうすればいい?──家族のための介助とコミュニケーションのコツにまとめています。あわせてご覧ください。
知っておきたい「熱中症警戒アラート」と新しい制度
近年、熱中症対策は国の制度として大きく前進しました。家族が仕組みを知っておくと、「今日は特に気をつける日だ」と判断しやすくなります。
改正気候変動適応法で何が変わったか
2023年(令和5年)に改正された 気候変動適応法 が、2024年(令和6年)4月に全面施行されました。これにより、これまで運用ベースだった熱中症警戒情報が法律に位置づけられ、新たに以下の仕組みが整いました(環境省)。
- 熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)の法定化
- 熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)の創設
- 市町村長による 指定暑熱避難施設(クーリングシェルター) の指定制度
2つのアラートの違い
| 熱中症警戒アラート | 熱中症特別警戒アラート | |
|---|---|---|
| 発表の基準 | 府県予報区内のいずれかの地点で、暑さ指数(WBGT)が33以上と予測される場合 | 都道府県内のすべての地点で、暑さ指数が35以上と予測される場合など |
| 発表のタイミング | 前日午後5時・当日午前5時 | 前日午後2時 |
| 意味あい | 危険な暑さへの警戒 | 過去に例のない危険な暑さ。重大な健康被害のおそれ |
(出典:環境省 熱中症予防情報サイト)
アラートは、テレビ・天気アプリ・環境省のLINEアカウントなどで確認できます。「明日はアラートが出ている」とわかれば、外出の予定を見直したり、こまめな見守りに切り替えたりと、前もって備えられます。
クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)とは
指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)は、危険な暑さから避難できる場所として、公民館や図書館などの冷房のある施設を市町村長が指定したものです。熱中症特別警戒アラートが発表されている期間中は、一般に開放されます(環境省)。
- 自宅のエアコンが故障したとき
- 停電で冷房が使えなくなったとき
- 日中、涼しい場所で過ごしたいとき
——こうした場面で、近くのクーリングシェルターを知っておくと安心です。お住まいの市区町村のホームページや、地域包括支援センターで、最寄りの施設を確認しておきましょう。
ポイント:制度の手続きや地域のサービスについて迷ったら、まずは地域包括支援センターへ。介護保険の相談と同じく、無料で対応してくれます(親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説)。
離れて暮らす親を見守るために
「実家の親が心配だけれど、毎日は通えない」——そんなご家族も多いはずです。遠距離でもできる見守りの工夫があります。
- 電話やビデオ通話のタイミングを暑い時間帯に合わせる:昼下がりに「エアコンつけてる?」とひと声かけるだけでも違います
- アラートが出た日は連絡を増やす:天気アプリで実家の地域のアラートをチェックし、出ている日は朝と夕に連絡を
- 近くの親族・ご近所・ケアマネジャーと連携する:訪問の際に室温を見てもらう、声をかけてもらうようお願いしておく
- 見守り機器やエアコンの遠隔操作を検討する:室温を通知してくれる機器や、スマホから操作できるエアコンも増えています
仕事をしながら親を見守る難しさについては、仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つためにでも詳しく扱っています。「ひとりで抱えない」ことは、夏の見守りでも同じです。
一人で抱え込まないために
夏の介護は、本人だけでなく、見守る家族にとっても心身の負担が大きいものです。「今日も無事に過ごせるだろうか」という緊張が、毎日続きます。
「エアコンをつけてくれない」「水を飲んでくれない」と、思うようにいかずにイライラしてしまう日もあるでしょう。それは、あなたが真剣に親を心配している証拠です。自分を責める必要はありません。
つらさを感じたときのセルフケアについては、介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケアにまとめています。
介護そっとねっとには、同じように親の夏を心配しているご家族がたくさんいます。「うちもエアコン問題で悩んでる」「こう声をかけたらつけてくれた」——そんな小さな工夫や気持ちを、匿名でそっと分かち合える場所です。一人で抱え込まず、同じ気持ちの仲間とつながってみてください。
まとめ
この記事の要点(再掲)
- 2026年の夏は統計開始以来もっとも暑い記録が出るなど、例年以上に警戒が必要
- 熱中症の死亡者の約8割は65歳以上。多くが屋内・在宅で起きている
- 高齢者は暑さ・のどの渇きを感じにくい。室温28℃以下・湿度70%以下を「数字」で管理する
- のどが渇く前にこまめな水分補給。エアコンを我慢させない工夫を
- 2024年施行の改正気候変動適応法で「特別警戒アラート」「クーリングシェルター」が新設
- 離れて暮らす親は、アラートの出た日に連絡を増やすなど、こまめな見守りを
- 思うようにいかなくても、自分を責めないで。一人で抱え込まないで
高齢の親にとって、夏を元気に乗り切ることは、それだけで大きなことです。完璧な対策でなくて構いません。温湿度計をひとつ置く、アラートの日に一本電話をかける——その小さな一歩が、大切な人の命を守ります。
今年の夏も、どうか無理なく、穏やかに過ごせますように。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。持病のある方の水分量・服薬については、必ずかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。
参考情報(一次情報)
- 環境省 熱中症予防情報サイト
- 環境省 熱中症警戒アラート
- 環境省 改正気候変動適応法
- 環境省 指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)
- 厚生労働省 熱中症関連情報
- e-Gov 法令検索(気候変動適応法)
- 気象庁 - 2026年7月中旬〜下旬の顕著な高温と今後の見通しについて
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