「自宅で親の介護をすることになったけれど、体の支え方も、声のかけ方もわからない」——在宅介護を始めたご家族の多くが、同じ不安を抱えています。でも大丈夫。介護のプロが現場で使っている技術には、家庭でもそのまま役立つ考え方 がたくさんあります。この記事では、家族の目線に立って、身体介助の基本・本人とのコミュニケーション・専門職への頼り方をやさしく整理しました。
この記事を読むとわかること
- 腰を痛めず、本人も怖くない介助の基本
- 本人の気持ちに寄り添う声かけと、サインの読み取り方
- ケアマネジャー・訪問看護師など専門職との上手な付き合い方
1. 介助は「観察」から始める
身体介護というと「抱え方」「支え方」の技術がイメージされがちですが、実はいちばん大切なのは 介助の前の「観察」 です。プロの介護職も、体に触れる前に必ず本人の様子を確かめています。
介助前に見ておきたいポイント
| 観察項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 表情・顔色 | 痛そうにしていないか、いつもより元気がないか |
| 体調 | 食事の量、睡眠、トイレの回数に変化はないか |
| 動き | 昨日できていた動作が、今日もできているか |
| 環境 | 床が濡れていないか、車椅子のブレーキ、ベッドの高さ |
「いつもと違う」に気づけるのは、毎日そばにいる家族だからこそです。気づいた変化は、スマホのメモなどに日付つきで残しておきましょう。あとで紹介するケアマネジャーや医師に相談するとき、大きな手がかりになります。
声かけは「前・最中・後」の3段階
介助の声かけは、次の3段階を意識するだけで、本人の安心感が大きく変わります。
- 介助の前: 「これから車椅子に移るよ」と、何をするかを伝える
- 介助の最中: 「いま起き上がるよ、せーの」と、動きを合わせる
- 介助の後: 「ちゃんと座れたね。痛いところはない?」と確認する
家族同士だと、つい声かけを省略しがちです。でも、無言のまま体に触れられると、本人は驚いて体をこわばらせてしまい、かえって転倒のリスクが高まります。「いきなり触れない」 が介助の基本です。
2. 腰を痛めない介助の基本
在宅介護で家族がいちばん痛めやすいのが腰です。介護を長く続けるためにも、自分の体を守る介助 を覚えておきましょう。
体の使い方(ボディメカニクス)の3原則
- 足を肩幅より広く開き、本人に近づく — 離れた位置から腕の力だけで支えない
- 膝を曲げて重心を落とす — 腰を曲げてかがまない
- 持ち上げず、回す・滑らせる — 力ではなく、てこの原理を使う
厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」でも、人の力だけで抱え上げる介助はできる限り避け、リフトやスライディングシートなどの福祉用具を活用することが推奨されています。プロでさえ道具に頼るのですから、家庭の介護ならなおさらです。
福祉用具は介護保険でレンタルできる
「道具に頼るのは申し訳ない」と感じる方もいらっしゃいます。でも、福祉用具は本人の安全と、あなたの体を守るための仕組みです。介護ベッド・手すり・スライディングボードなどの多くは 介護保険の福祉用具貸与 の対象で、月々数百円〜数千円程度の自己負担でレンタルできます。
申請の流れや費用のしくみは、親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説 で詳しく紹介しています。
3. 本人と心が通うコミュニケーション
傾聴の3つの姿勢
介護される側になった親は、「迷惑をかけている」という遠慮から、本音を言えなくなることがあります。だからこそ、話を聴く姿勢が大切です。
- 遮らない — 話し終わるまで待つ。時間がかかっても急かさない
- 否定しない — 「でも」「そうじゃなくて」をできるだけ使わない
- 沈黙を恐れない — 黙っている時間も、一緒にいる時間
言葉にならないサインを読む
認知症のある方や、言葉での意思表示が難しくなった方は、表情・視線・呼吸・体の動き に気持ちが現れます。
| サイン | 推測できる気持ち |
|---|---|
| 視線をそらす | 不快・拒否・恥ずかしさ |
| 呼吸が浅く速い | 不安・痛み |
| 拳を握る | 緊張・痛み |
| 表情が和らぐ | 安心・受け入れ |
「言葉で言わないから大丈夫」ではなく、サインから気持ちを汲み取る 姿勢が、本人の安心につながります。認知症のある方との接し方は、親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方 でも詳しく扱っています。
4. 専門職は「頼っていい相手」
在宅介護は、家族だけで抱えるものではありません。介護はもともと 専門職とのチーム戦 です。
家族を支えてくれる主な専門職
| 職種 | 家族から見た役割 |
|---|---|
| ケアマネジャー | 介護全体の相談窓口。ケアプラン作成とサービス調整 |
| 訪問看護師 | 体調や薬の心配ごとの相談相手。医師との橋渡し |
| リハビリ職(PT・OT・ST) | 「自分でできること」を増やす訓練、介助方法のアドバイス |
| 地域包括支援センター | 介護が始まる前から使える、地域の総合相談窓口 |
ケアマネジャーへの伝え方のコツ
- 変化はメモして具体的に — 「最近元気がない」より「3日前から食事が半分残る」のほうが、適切な対応につながります
- 家族側の悩みも遠慮なく — 「介助の方法がわからない」「自分が疲れてしまった」も立派な相談ごとです
- 介助のやり方は実際に見てもらう — 訪問時に「移乗を見てもらえますか」と頼めば、その場でコツを教えてもらえます
サービス担当者会議には遠慮せず参加を
ケアマネジャーが開く「サービス担当者会議」は、専門職だけの場ではなく、本人と家族の希望を伝える場 です。「お任せします」だけで終わらせず、困っていることや、本人が大切にしている暮らし方を、そのまま言葉にして大丈夫です。
5. 完璧な介護を目指さなくていい
ここまで介助のコツをお伝えしてきましたが、最後にいちばん大切なことを。完璧な介護を目指さなくていい のです。
プロの介護職でも、介助がうまくいかない日はあります。家族のあなたが、すべてを一人で、最初から上手にできるはずがありません。うまくいかない日があっても、それはあなたのせいではありません。
「つらいな」と感じたときのセルフケアについては、介護がつらいと感じたら──介護疲れのサインと、心を守るセルフケア にまとめています。あわせて読んでみてください。
まとめ
この記事の要点
- 介助は「観察 → 声かけ → 体の使い方」の順番で。いきなり触れない
- 腰を守るために、持ち上げない介助と福祉用具レンタルを活用する
- 傾聴と非言語サインの観察が、本人の安心につながる
- ケアマネジャーには家族側の悩みも遠慮なく相談していい
- 完璧を目指さない。うまくいかない日があっても、あなたのせいではない
介護そっとねっとアプリでは、同じように家族の介護に向き合う仲間と、匿名で悩みや工夫を分かち合えます。「わかるよ」と言い合える場所が、きっとあなたの支えになります。
参考情報(一次情報)
本記事の編集方針・訂正ポリシーは 編集方針ページ をご覧ください。
よくある質問
足を肩幅より広く開いて本人に近づく、膝を曲げて重心を落とす、持ち上げずに回す・滑らせる、の3つが基本です。介護ベッドやスライディングシートなどの福祉用具は介護保険で安価にレンタルできるため、人の力だけで頑張らず積極的に活用してください。
「介助の前・最中・後」の3段階で声をかけるのが基本です。「これから車椅子に移るよ」と事前に伝え、動作中は「せーの」と掛け声で動きを合わせ、終わったら痛みがないかを確認します。無言のまま体に触れると本人を驚かせてしまい、転倒の原因にもなります。
本人の体調の変化だけでなく、「介助の方法がわからない」「家族が疲れてしまった」といった家族側の悩みも立派な相談ごとです。日々気づいた変化をメモして具体的に伝えると、サービスの調整や専門職への橋渡しがスムーズになります。
ご利用にあたっての免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として介護そっとねっと編集部が作成したものです。介護保険や医療・心理に関わる個別のご判断については、 お住まいの市区町村の地域包括支援センター、主治医、担当ケアマネジャー、または厚生労働省の公式情報をご確認ください。記事は2026.5.16時点の情報に基づきます。
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