「親が入っている特養から、食費・居住費が8月から上がるお知らせが来た」 「うちは対象になるの?ならないの?」 「そもそも“負担限度額”って何のことかよくわからない」
——特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、介護保険施設に家族を入所させているご家庭にとって、費用の変更は見過ごせない話題です。2026年8月1日から、こうした施設の食費・居住費のうち、低所得の方向けの軽減額(負担限度額)が一部引き上げられます。
ただし、入所者全員が値上げの対象になるわけではありません。所得や資産の状況によって影響の有無が大きく変わるため、「うちは関係あるのか」を正しく知ることが第一歩です。この記事では、制度のしくみと今回の変更点を、公式情報をもとにやさしく整理します。
この記事でわかること
- 「基準費用額」と「負担限度額(補足給付)」の違い
- 2026年8月からの引き上げの対象者と金額
- 自分の家族が対象になるかどうかの見分け方
- 負担限度額認定証の申請方法
- 負担が心配なときの相談先
そもそも「食費・居住費」はどう決まっているのか
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、そしてショートステイ(短期入所生活介護等)を利用すると、介護サービス費とは別に食費・居住費(滞在費)がかかります。これは介護保険の給付対象外で、原則として利用者が全額自己負担する費用です。
この食費・居住費には、次の2つの重要な金額があります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 基準費用額 | 施設の食費・居住費として国が定めた標準的な金額の目安 |
| 負担限度額 | 住民税非課税世帯など低所得の方が、認定を受けた場合に適用される自己負担の上限額 |
基準費用額と負担限度額の差額は、介護保険から施設へ「特定入所者介護サービス費(補足給付)」として支払われます。 つまり、所得が低く資産も一定以下の方は、基準費用額よりも安い「負担限度額」だけを払えばよく、その差額を介護保険が肩代わりしてくれるしくみです(厚生労働省 - 介護保険における利用者負担)。
ポイント:負担限度額認定証を持っていない場合は、所得にかかわらず基準費用額どおりの全額を負担することになります。今回話題になっている「引き上げ」は、この負担限度額(軽減後の金額)の一部が対象です。
2026年8月からの引き上げ、対象は「第3段階①・②」のみ
負担限度額は、本人と世帯の所得状況に応じて第1段階〜第3段階②の4区分に分かれています。今回の引き上げで影響があるのは、このうち所得がやや高めの2区分だけです。
| 所得段階 | 対象となる方の目安 | 2026年8月の変更 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、老齢福祉年金受給者など | 据え置き(変更なし) |
| 第2段階 | 世帯全員が非課税かつ年金収入等が年間80万円以下 | 据え置き(変更なし) |
| 第3段階① | 世帯全員が非課税かつ年金収入等が年間80万円超〜120万円以下 | 食費のみ引き上げ |
| 第3段階② | 世帯全員が非課税かつ年金収入等が年間120万円超 | 食費・居住費とも引き上げ |
見てのとおり、もっとも所得が低い第1・第2段階の方には、今回の変更による負担増はありません。 これは、より所得の高い層に応分の負担を求め、制度の持続可能性を高める狙いによるものです(厚生労働省 老健局、介護保険最新情報 Vol.1506・Vol.1481)。
具体的な引き上げ額
食費(1日あたり)は次のように変わります。
| 段階 | 現行 | 2026年8月〜 | 増額 |
|---|---|---|---|
| 第3段階① | 1,000円 | 1,030円 | +30円/日 |
| 第3段階② | 1,300円 | 1,360円 | +60円/日 |
居住費(1日あたり、多床室の例)は次のとおりです。
| 段階 | 現行 | 2026年8月〜 | 増額 |
|---|---|---|---|
| 第3段階②(多床室) | 430円 | 530円 | +100円/日 |
第3段階②の方の場合、食費60円+居住費100円で1日あたり160円、月換算でおよそ4,800円前後の負担増になる計算です(30日換算の概算)。個室(従来型・ユニット型)の居住費も、同様に1日あたり100円前後の引き上げが予定されています。施設の契約内容によって細かな金額は異なるため、正確な金額は入所先の施設や市区町村の窓口に確認することをおすすめします。
うちは対象になる? 見分け方のポイント
「うちの親は第何段階なのか分からない」という方も多いと思います。負担限度額の対象になるには、大きく分けて次の要件があります(厚生労働省 - 特定入所者介護サービス費(補足給付)について)。
- 本人と世帯全員(配偶者を含む)が住民税非課税であること
- 配偶者も住民税非課税であること(世帯を分離していても対象)
- 預貯金等の資産が、所得段階ごとに定められた基準額以下であること
すでに「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けて施設に提示している場合は、その認定証に記載された段階(第1段階〜第3段階②)で今回の対象かどうかが分かります。認定証をまだ取得していない場合は、そもそも軽減の対象になっていない可能性があるため、次の申請方法を確認してみましょう。
なお、施設に入所する際の契約手続きについては、在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリストでも、費用面の考え方を含めて紹介しています。
負担限度額認定証の申請方法
負担限度額認定証は、自動的に発行されるものではなく、市区町村への申請が必要です。
申請の流れ
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で「介護保険負担限度額認定申請書」を受け取る(窓口や自治体のWebサイトからも入手可能)
- 本人名義の預貯金通帳の写し(本人分・配偶者分)など、資産を確認できる書類を用意する
- 申請書と必要書類をそろえて窓口に提出する
- 審査のうえ、要件を満たせば「介護保険負担限度額認定証」が交付される
認定の有効期間は、申請した月の初日から始まるのが一般的です(自治体により運用の詳細は異なります)。申請が遅れるほど、さかのぼって軽減を受けられない期間が生じるため、対象になりそうな方は早めに申請しておくことが大切です。すでに認定証をお持ちの方も、毎年の更新手続きが必要な点にあわせて注意しましょう。
正確な要件や必要書類は自治体によって細部が異なる場合があるため、最終的にはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で確認してください。
よくある勘違いに注意
制度が複雑なため、次のような勘違いをしてしまうケースもあります。
「介護保険サービス費の1〜3割負担」と混同しない
食費・居住費は、介護保険サービスそのものの自己負担(原則1割、所得により2〜3割)とは別枠の費用です。今回の引き上げは、あくまで食費・居住費(と、その軽減額)に関するものであり、介護サービス費の自己負担割合が変わるわけではありません。
デイサービスの食費は対象外
今回の引き上げが適用されるのは、特養・老健・介護医療院への入所や、ショートステイの利用です。デイサービス(通所介護)などの「通い」のサービスで提供される食費は、この負担限度額制度の対象外のため、直接の影響はありません。
「値上げ」ではなく「軽減額の見直し」
今回の変更は、施設が請求する費用そのもの(基準費用額)が一律に上がるという話ではなく、低所得者向けの軽減幅(負担限度額)の一部を、所得の高い層で縮小するという制度の見直しです。第1・第2段階の方には変更がないことを、あらためて押さえておきましょう。
負担が心配なときは、一人で抱え込まずに相談を
「これ以上の負担は正直厳しい」「このまま施設を続けられるか不安」——そう感じたときは、我慢せずに相談することが何より大切です。
| 相談先 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 施設のケアマネジャー・相談員 | 費用の内訳、他の軽減制度の可能性 |
| 市区町村の介護保険担当窓口 | 負担限度額認定証の申請、所得段階の確認 |
| 地域包括支援センター | 介護全般の相談、家計を踏まえた総合的なアドバイス |
負担限度額認定証のほかにも、1ヶ月の自己負担が一定額を超えた場合に払い戻される「高額介護サービス費」など、家計を支える制度が複数あります。こうした制度の全体像は、親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説でも紹介していますので、あわせてご確認ください。
費用の悩みは、「うちだけ」ではありません。介護そっとねっとには、同じように施設利用の費用に頭を悩ませているご家族がたくさんいます。「うちの親はどの段階だった」「認定証の更新を忘れそうになった」——そんな体験や工夫を、匿名でそっと分かち合える場所です。制度の最終的な確認は市区町村の窓口で行いつつ、気持ちの面では、一人で抱え込まずに仲間とつながってみてください。
まとめ
この記事の要点(再掲)
- 2026年8月1日から、介護保険施設の食費・居住費の「負担限度額」のうち、第3段階①・②のみが引き上げられる。第1・第2段階は据え置き
- 食費は第3段階①が1日30円、第3段階②が1日60円、居住費は第3段階②のみ1日100円程度の増額(月あたり数千円規模)
- 「基準費用額」(施設の標準額)と「負担限度額」(低所得者の軽減後の上限額)は別の概念で、差額を介護保険が補足給付として支給する
- 対象かどうかは、負担限度額認定証の所得段階で決まる。未取得の場合は市区町村窓口への申請を検討する
- 負担が心配なときは、施設のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の窓口に早めに相談を
制度の名前だけを聞くと難しく感じますが、要点はシンプルです。「対象は低所得層の一部だけ」「うちが対象かは認定証の段階次第」「早めの申請と相談がカギ」——この3つを押さえておけば、慌てずに対応できます。
お知らせが届いて不安になったときこそ、一人で抱え込まず、身近な窓口に確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の金額や手続きについては、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口・施設の相談員にご確認ください。制度の詳細は今後の自治体運用により変わる可能性があります。
参考情報(一次情報)
- 厚生労働省 - 介護・高齢者福祉
- 厚生労働省 - 介護保険最新情報 Vol.1506(令和8年5月29日)
- 厚生労働省 - 介護保険最新情報 Vol.1481(令和8年3月13日)
- WAM NET 福祉医療機構
本記事の編集方針・訂正ポリシーは 編集方針ページ をご覧ください。
よくある質問
いいえ、対象は限られています。今回引き上げられるのは、住民税非課税世帯などの低所得者向けに食費・居住費を軽減する「負担限度額(補足給付)」のうち、所得がやや高めの「第3段階①」「第3段階②」の方のみです。生活保護受給者や老齢福祉年金受給者が該当する第1段階、年金収入等が年間80万円以下の第2段階の負担限度額は据え置かれ、引き上げはありません。
食費は、第3段階①が1日30円(1,000円→1,030円)、第3段階②が1日60円(1,300円→1,360円)の引き上げです。居住費は第3段階②のみが対象で、多床室が1日100円(430円→530円)、従来型個室・ユニット型個室なども1日100円程度引き上げられます。月あたりに直すと、第3段階②で食費・居住費合わせておよそ月4,000〜5,000円程度の負担増になる計算です。施行日は2026年8月1日です。
基準費用額は、施設の食費・居住費として国が定めた標準的な金額の目安です。負担限度額は、住民税非課税世帯など低所得の方が「負担限度額認定証」の交付を受けた場合に適用される、実際に自己負担する上限額です。基準費用額と負担限度額の差額は、介護保険から施設へ「特定入所者介護サービス費(補足給付)」として支払われます。今回引き上げられるのは、このうち第3段階①・②の負担限度額です。
本人と世帯全員(配偶者を含む)が住民税非課税であることに加え、預貯金等の資産が段階ごとに定められた基準額以下であることなどの要件を満たす必要があります。市区町村の介護保険担当窓口に「介護保険負担限度額認定申請書」と、預貯金額がわかる通帳の写しなどを提出して申請します。認定を受けていない方は基準費用額どおりの全額を負担することになるため、対象になりそうな場合は早めに窓口へ相談しましょう。
今回の引き上げは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院への入所や、ショートステイ(短期入所生活介護等)の利用が対象です。デイサービスなど通いのサービスにかかる食費は、この負担限度額制度の対象外のため、直接の影響はありません。ただし今後ショートステイの利用を考えている場合は、費用感の参考にしてください。
まずは施設のケアマネジャーや相談員、または地域包括支援センターに相談しましょう。負担限度額認定証の対象になっていないか、高額介護サービス費など他の軽減制度を使えないかなど、家計全体を踏まえたアドバイスを受けられます。市区町村の介護保険担当窓口でも、個別の状況に応じた案内をしてもらえます。
ご利用にあたっての免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として介護そっとねっと編集部が作成したものです。介護保険や医療・心理に関わる個別のご判断については、 お住まいの市区町村の地域包括支援センター、主治医、担当ケアマネジャー、または厚生労働省の公式情報をご確認ください。記事は2026.7.7時点の情報に基づきます。
この記事を書いた人
介護そっとねっと編集部
編集部
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