「訪問看護の費用も、入院した医療費も、今年はいつもより多かった気がする」 「高額介護サービス費の払い戻しは申請したけれど、医療費のほうは何もしていない」 「医療費と介護費用、両方合わせて軽くなる制度があるって聞いたけれど、詳しく知らない」

——介護と医療を両方必要とするご家庭では、それぞれの自己負担が「月単位」では上限内に収まっていても、1年間を通して合計すると家計への負担が重くなっていることがあります。実は、医療保険と介護保険の自己負担を1年間まとめて合算し、基準額を超えた分を払い戻してもらえる「高額医療・高額介護合算療養費制度」という仕組みがあります。

この記事では、厚生労働省・自治体の一次情報にもとづき、この制度がどんな仕組みかすでにある「高額介護サービス費」「高額療養費」とどう違うのか限度額の目安申請の流れを、やさしく整理してお伝えします。

この記事でわかること

  • 高額医療・高額介護合算療養費制度の仕組みと対象期間
  • 「高額介護サービス費」「高額療養費」との違い(月単位 vs 年単位)
  • 所得区分ごとの年間自己負担限度額の目安
  • 申請の流れと必要な書類

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、どんな制度?

医療保険と介護保険、両方の自己負担額を1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)合計し、所得区分ごとの限度額を501円以上超えたら、超えた金額が払い戻される制度です。

2008年4月に創設された比較的新しい制度で、高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)によれば、対象は国民健康保険・被用者保険・後期高齢者医療制度のいずれかに加入し、同じ世帯で介護保険サービスも利用している世帯です。

すでに介護保険には「高額介護サービス費」、医療保険には「高額療養費」という、それぞれ月単位で自己負担の上限を抑える制度があります。合算療養費制度は、その2つの制度を利用してもなお残る自己負担を、年単位でさらに軽減する「もう一段の仕組み」と考えるとわかりやすいでしょう。

月ごとの高額介護サービス費・高額療養費と、年単位の高額医療・高額介護合算療養費制度の関係を示す図。1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた分がさらに払い戻される流れを表す。

「高額介護サービス費」「高額療養費」との違い

制度対象期間軽減の単位
高額介護サービス費介護保険の自己負担1ヶ月単位月ごとの上限額を超えた分
高額療養費医療保険の自己負担1ヶ月単位月ごとの上限額を超えた分
高額医療・高額介護合算療養費医療保険+介護保険の自己負担合計1年間(8月〜翌年7月)年間の限度額を501円以上超えた分

月ごとの制度をどちらも使っていても、月をまたいで通院や介護サービスが続くと、1年間の合計では家計への負担がじわじわ積み重なることがあります。合算療養費制度は、この「積み重なった1年分」に目を向ける制度です。介護保険側の払い戻しについては、高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説で月単位の仕組みを確認しておくと、合算療養費との違いがより整理しやすくなります。


限度額はいくら? 所得区分ごとの目安

年間の自己負担限度額は、所得区分と年齢(70歳以上か70歳未満か)によって19万円〜212万円まで分かれます。

高額医療・高額介護合算療養費制度(横浜市)によると、70歳以上の世帯の限度額(年額)の目安は次のとおりです。

所得区分(70歳以上)年間限度額(目安)
現役並み所得者III(年収約1,160万円以上)212万円
現役並み所得者II(年収約770〜1,160万円)141万円
現役並み所得者I(年収約370〜770万円)67万円
一般(年収約156〜370万円)56万円
低所得者II(住民税非課税世帯)31万円
低所得者I(住民税非課税・年金収入80万円以下等)19万円

70歳未満の世帯が含まれる場合は、区分の下限が異なり(一般区分で60万円、住民税非課税世帯で34万円など)、高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)にまとまった一覧があります。世帯の中に70歳未満の方と70歳以上の方が混在する場合は限度額の考え方も変わるため、正確な区分はお住まいの市区町村・加入している医療保険者に確認するのが確実です。

なお、この限度額は2018年8月の見直し以降、大きな改定は行われていません。介護保険の高額介護サービス費(令和8年8月改定)や、医療保険の高額療養費(2026年8月改定)とは改定のタイミングが別である点に注意してください。合算療養費の限度額自体が変わったかどうかは、申請の際に医療保険者・介護保険者へ最新の基準額を確認することをおすすめします。


申請はどうやって行う? 2段階の手続き

まず介護保険者(市区町村)に申請して「自己負担額証明書」を受け取り、その証明書を添えて医療保険者(健康保険組合・市区町村国保など)に申請する、2段階の流れです。

具体的な手順は次のとおりです。

  1. 介護保険者(市区町村の介護保険担当窓口)に、自己負担額証明書の交付を申請する:1年間(8月〜翌年7月)に支払った介護保険サービスの自己負担額を証明する書類です
  2. 交付された自己負担額証明書を受け取る
  3. 証明書を添えて、医療保険者(加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保・後期高齢者医療制度の窓口など)に支給申請書を提出する
  4. 審査のうえ、限度額を超えた分が指定口座に振り込まれる

高額介護合算療養費支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書(全国健康保険協会)によれば、紙の申請書を郵送する方法のほか、オンライン申請サービスを利用できる場合もあります。

必要な書類の目安

  • 本人確認書類
  • 振込先口座がわかる通帳等のコピー
  • 対象期間中に加入していた医療保険者が変わっている場合は、以前の保険者が発行した自己負担額証明書

年度の途中で転居・転職などにより加入する医療保険が変わった場合は、以前の保険者から証明書を取り寄せる必要があるため、通常より手続きに時間がかかることがあります。心当たりがある方は、早めに窓口へ相談しておくと安心です。


どんな世帯が対象になりやすい?

医療機関への通院・入院が続いている方と、介護保険サービスを使っている方が同じ世帯にいる場合に、対象になりやすい制度です。

たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • 親御さんが介護保険サービス(訪問介護・デイサービス・施設サービスなど)を利用しながら、持病の治療で定期的に通院・入院している
  • ご夫婦のどちらかが要介護状態で介護サービスを利用し、もう一方が医療機関にかかっている
  • 同一世帯に複数の要介護者・通院中の方がいる

一方で、医療保険と介護保険どちらか一方しか利用していない世帯は、合算の対象になりません。あくまで「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担がある世帯が対象です。すでに紹介した高額介護サービス費・高額療養費で毎月の払い戻しを受けていても、それとは別に合算療養費の対象になり得るため、「月ごとの払い戻しを受けているから、もう十分」と考えずに、年間の合計額も一度確認してみる価値があります。

介護費用については、医療費控除という別の軽減制度もあります。介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説では、確定申告で税金の一部が戻ってくる仕組みを解説しています。合算療養費制度で払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象額からは差し引く必要がある点に注意しながら、両方の制度を組み合わせて検討してみてください。


今日からできること

制度の全体像をつかんだら、次の2つから始めてみましょう。

  1. 1年分(8月〜翌年7月)の医療費・介護費用の自己負担額を、大まかでよいのでふり返ってみる:通院・入院の自己負担と、介護サービスの利用料の両方が続いている月が多かったかを思い出してみましょう
  2. お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または加入している医療保険者の窓口に、対象になりそうか問い合わせてみる:正確な限度額・対象期間の自己負担合計額は、窓口でないと確認できません

同一世帯で親御さんの世帯を分けることを検討している方は、世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点もあわせてご覧ください。世帯分離は高額介護サービス費・負担限度額・介護保険料の区分に影響しますが、合算療養費制度も同じく世帯の所得区分で限度額が決まる仕組みのため、世帯分離を検討する際はあわせて確認しておくと判断しやすくなります。

介護そっとねっとには、「制度が複数あって、自分がどれに当てはまるのか分からない」という声が多く寄せられています。まずは窓口に一度問い合わせてみることが、負担を軽くする一歩になります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。限度額・対象可否は個々の状況や年度の改定によって異なるため、具体的な申請についてはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または加入している医療保険者にご確認ください。


よくある質問

Q. 高額介護サービス費や高額療養費とは、どう違いますか?

高額介護サービス費・高額療養費は「1ヶ月単位」で自己負担の上限を超えた分を払い戻す制度です。高額医療・高額介護合算療養費制度は、その2つを利用してもなお残る自己負担を、「1年間(8月〜翌年7月)」で合算し、年間の限度額を超えた分をさらに払い戻す制度です。月単位の制度と年単位の制度は別物で、両方を申請できる場合があります。

Q. 限度額はいくらですか?

所得区分と年齢(70歳以上か70歳未満か)によって年額19万円〜212万円まで分かれます。70歳以上の一般区分(年収約156〜370万円)は年56万円、住民税非課税世帯は年19万円〜31万円が目安です。世帯に70歳未満の方が含まれる場合は区分の下限額が異なります。正確な限度額は医療保険者・介護保険者にご確認ください。

Q. 医療保険か介護保険のどちらか一方しか使っていない場合、対象になりますか?

対象になりません。この制度は「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担がある世帯を対象としています。介護保険サービスのみ利用している世帯は、高額介護サービス費の対象にはなっても、合算療養費制度の対象にはなりません。

Q. 申請はどこで、どのような手順で行いますか?

まず介護保険者(市区町村の介護保険担当窓口)に自己負担額証明書の交付を申請し、証明書を受け取ります。次に、その証明書を添えて医療保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保・後期高齢者医療制度の窓口など)に支給申請書を提出する、2段階の手続きです。

Q. 医療費控除と両方申請できますか?

制度の目的が異なるため、両方の申請自体は可能です。ただし、高額医療・高額介護合算療養費制度で払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象となる医療費の合計額から差し引く必要があります。両方を申請する場合は、払い戻し額の扱いに注意してください。

参考情報(一次情報)

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