在宅で親の介護をしていると、「体調が心配だけど毎回病院に連れて行くのは大変」「医療的な処置が必要だけど、家族だけでは不安」という場面に必ず一度はぶつかります。そんなとき候補にあがるのが訪問看護です。看護師が定期的に自宅まで来てくれるサービスですが、「訪問介護と何が違うの?」「医療保険と介護保険、どっちを使うの?」と、名前が似ているサービスや制度の複雑さに戸惑う家族は少なくありません。

先に、要点をまとめます。

  • 訪問看護は、看護師や准看護師などの医療専門職が自宅を訪問し、医師の指示のもとで健康観察・医療処置・リハビリを行うサービス(家事や身体介助が中心の訪問介護とは役割が異なります)
  • 65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方は、原則「介護保険」の訪問看護が優先。40歳未満の方や、医療保険の対象となる特定の状態の方は「医療保険」の訪問看護になります
  • 介護保険を使う場合の自己負担は1割負担で1回あたりおおむね500〜1,000円台が目安(時間・地域・加算によって変動)
  • 利用回数の上限は、介護保険には基本的になく、医療保険は原則週3回までという違いがあります
  • 2026年6月からは訪問看護にも新たに「介護職員等処遇改善加算(1.8%)」が創設され、担い手不足への対応が進められています

ただし、訪問看護には 「医療保険と介護保険のどちらが適用されるかで、自己負担の仕組みも利用できる回数も変わる」という注意点が1つ あり、この切り替えの仕組みを知らずに戸惑う家族が多いため、記事の後半でくわしく説明します。

この記事では、訪問看護の基本的な仕組みから、費用の目安、頼めること・頼めないこと、利用を始めるまでの流れ、よくある失敗パターンまで、厚生労働省の公式情報をもとにやさしく解説します。


訪問看護とはどんなサービス?

訪問看護とは、看護師・准看護師・保健師・理学療法士などの医療専門職が利用者の自宅を訪問し、主治医の指示のもとで健康状態の観察、医療処置、リハビリテーション、療養上の世話などを行うサービスです。

訪問介護(ホームヘルプ)が生活援助や身体介護を中心とするのに対し、訪問看護は医療的なケアが中心という違いがあります。両者の役割の違いは、訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説でも触れていますが、ここでは訪問看護に絞って具体的に見ていきます。

訪問看護の利用には、必ず 主治医からの「訪問看護指示書」 が必要です。訪問看護ステーションや医療機関の看護師が、この指示書に基づいて計画を立て、定期的に自宅を訪問します。

訪問看護で頼めること

分類具体例
健康状態の観察バイタルチェック(体温・血圧・脈拍)、全身状態の把握、病状の変化の早期発見
医療処置褥瘡(床ずれ)の処置、痰の吸引、経管栄養の管理、カテーテル管理、インスリン注射の介助
リハビリテーション関節可動域の維持・拡大、歩行訓練、日常生活動作(ADL)の訓練(理学療法士・作業療法士が担当する場合あり)
服薬管理薬の飲み忘れ防止の声かけ、副作用のチェック、残薬の整理
療養上の世話清拭・洗髪などの衛生ケア、栄養・食事に関する助言
家族への指導・相談介護方法の助言、急変時の対応方法の説明、精神的な相談への対応
終末期ケア痛みの緩和ケア、看取りに向けた支援(在宅での看取りを希望する場合)

在宅での看取りを検討している家族にとって、訪問看護は特に重要な役割を持ちます。看取り期に向けた心構えについては、「人生会議」とは?家族の意思確認と話し合いのタイミングをやさしく解説もあわせて参考にしてください。

訪問看護で頼めないこと

一方で、訪問看護には対象外の内容もあります。

  • 手術や高度な医療処置(入院・通院が必要な医療行為は対象外)
  • 家事全般(掃除・洗濯・調理などの生活援助は訪問介護の役割)
  • 家族の代わりに終日付き添うこと(訪問看護は1回30分〜1時間程度の訪問が基本で、常駐するサービスではありません)
  • 医師の指示のない独自の医療判断(あくまで医師の指示書に基づいた範囲での医療的ケアに限られます)

「医療的なことは訪問看護、家事や身体介助は訪問介護」と役割で線引きされていますが、実際には訪問看護と訪問介護を併用しているケースも多く、両方をケアプランに組み込むことで在宅生活を支える体制を作ることができます。


医療保険と介護保険、どちらが適用される?

訪問看護でもっとも混乱しやすいのが、医療保険と介護保険のどちらが適用されるかという点です。この違いを理解しておくと、費用や利用回数の見通しが立てやすくなります。

結論から言うと、65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方は、原則として介護保険の訪問看護が優先されます。 40歳以上65歳未満で末期がんなど特定疾病により要介護認定を受けた方も同様に介護保険が優先です。

一方、次のような方は医療保険の訪問看護が適用されます。

  • 40歳未満で訪問看護が必要な方
  • 40歳以上65歳未満で要介護認定を受けていない方(特定疾病に該当しない場合)
  • 要介護認定を受けていても、厚生労働大臣が定める「特掲診療料の施設基準等」の疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症など重い病気)に該当する場合や、主治医が「特別訪問看護指示書」を交付した場合(急性増悪時など)は、介護保険の対象者であっても例外的に医療保険が優先されます

つまり「高齢で要介護認定を受けている=すべて介護保険」というわけではなく、病状によって医療保険に切り替わる場面があるということです。この切り替えの判断は主治医とケアマネジャー・訪問看護ステーションが行うため、家族が制度を完璧に理解している必要はありませんが、「なぜ今回は医療保険なのか」を聞かれたときに戸惑わない程度の知識があると安心です。

利用回数の違い

適用される保険によって、利用できる回数の上限も変わります。

介護保険医療保険
利用回数の上限原則なし(ケアプランに基づき必要な回数を設定)原則週3回まで
例外ケアプランの範囲内で柔軟に調整可能末期がん・「特別訪問看護指示書」がある場合は週4回以上も可能
ケアマネジャーの関与あり(ケアプランに位置づけ)なし(医師の指示書に基づく)

介護保険は要介護度ごとに定められた区分支給限度基準額(1ヶ月に利用できる介護保険サービスの上限額)の枠内で、デイサービスや訪問介護などと合算して管理します。この上限額の考え方は、デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方でも触れているので、あわせて確認しておくと全体の使い方がイメージしやすくなります。


訪問看護の費用はどのくらい?

訪問看護の費用は、適用される保険の種類・訪問時間・提供する事業所(訪問看護ステーションか病院・診療所か)・地域区分・各種加算によって変わるため、全国一律の金額ではありません。ここでは介護保険を利用する場合の目安を紹介します。

介護保険(訪問看護ステーション利用)の目安

訪問時間基本報酬(1割負担の目安)
20分未満313単位(1割負担で約310円)
30分未満451単位(1割負担で約450円)
30分〜1時間未満794単位(1割負担で約790円)
1時間〜1時間30分未満1,090単位(1割負担で約1,090円)

1単位あたりの金額は地域区分によって10〜11円台まで幅があるため、上記は目安です。週2回・30分未満の利用を1ヶ月(月8回)続けた場合、1割負担の自己負担額の目安はおおむね3,600円前後です。ここに、早朝・夜間・深夜の訪問加算、緊急時訪問看護加算、特別管理加算などが上乗せされる場合があります。2割・3割負担の方は、この金額がそれぞれ2倍・3倍程度になる点にも注意してください。

医療保険を利用する場合

医療保険が適用される場合は、年齢や所得に応じた自己負担割合(原則1〜3割)に基づいて計算されます。医療保険の訪問看護は、介護保険とは異なる算定の仕組みになっているため、正確な金額は主治医または訪問看護ステーションに確認するのが確実です。

2026年度の処遇改善加算による変化

2026年度の介護報酬改定では、これまで対象外だった 訪問看護にも「介護職員等処遇改善加算」が新設され、加算率1.8% が設定されました(2026年6月施行)。訪問看護スタッフの人材確保・定着を目的とした改定で、利用者の自己負担にもわずかに影響します。負担増の幅は利用頻度や地域の単価によって差があり、月あたり数百円程度にとどまるケースが多いとされています(1割負担・介護保険分が対象。医療保険での利用には適用されません)。急激な負担増ではありませんが、「先月と金額が少し違う」と感じたときは、訪問看護ステーションからの明細で内訳を確認すると安心です。

医療保険と介護保険、それぞれの訪問看護が適用される対象者と利用回数の違いを示す比較図。65歳以上で要介護・要支援認定がある場合は介護保険が優先、40歳未満または特定疾病等に該当する場合は医療保険が適用されることを整理している。


訪問看護を利用するまでの流れ

訪問看護を使い始めるまでの流れは、介護保険を利用する場合と医療保険を利用する場合で少し異なりますが、基本的な進め方は共通しています。

1. 主治医に相談し「訪問看護指示書」を出してもらう

訪問看護の利用には、必ず主治医の指示書が必要です。退院時や通院時に「自宅でも医療的なケアを続けたい」「体調管理に不安がある」と相談することが最初のステップになります。

2. 訪問看護ステーションを探す

訪問看護指示書をもとに、実際に訪問してくれる訪問看護ステーションを探します。地域の訪問看護ステーションは、地域包括支援センターやケアマネジャーに紹介してもらえることがほとんどです。すでに訪問介護やデイサービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに「訪問看護も検討している」と伝えるとスムーズです。

3. ケアプランへの位置づけ(介護保険の場合)

介護保険で利用する場合は、ケアマネジャーが訪問看護をケアプランに組み込みます。訪問頻度や時間は、本人の状態・他のサービスとのバランスを見ながら調整されます。ケアマネジャーとの連携の重要性は、ケアマネジャーの選び方と変更方法でも詳しく触れているので、「今のケアマネジャーに相談しづらい」と感じている場合はあわせて読んでみてください。

4. 初回訪問・契約

訪問看護ステーションの担当者が自宅を訪問し、契約手続きと初回のアセスメント(状態確認)を行います。ここで訪問の曜日・時間帯・具体的なケア内容のすり合わせが行われます。

5. 定期的な訪問の開始

契約後は、決められた頻度で看護師が自宅を訪問します。体調の変化があれば、随時ケア内容を見直してもらえます。


訪問看護と訪問介護、どう使い分ける?

「結局、訪問看護と訪問介護のどちらを頼めばいいのか分からない」という声もよく聞かれます。判断の目安を整理すると、次のようになります。

  • 医療的な処置・健康観察が中心なら訪問看護(褥瘡の処置、痰の吸引、リハビリ、服薬管理など)
  • 家事・身体介助が中心なら訪問介護(掃除・調理、食事介助、入浴介助、排せつ介助など)
  • 持病があり体調管理と生活支援の両方が必要なら併用(訪問看護で健康状態を見ながら、訪問介護で日常生活を支える体制)

どちらか一方だけで迷う場合は、まずケアマネジャーに現在の困りごとを具体的に伝えてみるのが近道です。「医療的な不安」と「生活の負担」のどちらが大きいかを整理して伝えると、必要なサービスの組み合わせを提案してもらいやすくなります。


失敗しやすいパターンと避け方

訪問看護の導入でつまずきやすいのは、次のようなケースです。

  • 「まだ大丈夫」と様子見して、体調が悪化してから慌てて相談する:訪問看護は医療的な安心材料として早めに取り入れることで、体調悪化の予兆に気づきやすくなります。「そろそろ通院がつらくなってきた」と感じた時点で、一度主治医に相談しておくと安心です
  • 訪問看護と訪問介護の役割を混同し、「なんでも屋」のように期待してしまう:訪問看護はあくまで医療専門職による医療的ケアが中心です。生活援助を期待していると「思っていたサービスと違う」というミスマッチが起きやすいため、契約前に「具体的に何をお願いできるか」を確認しておきましょう
  • 医療保険と介護保険、どちらが適用されるか確認しないまま利用を始める:想定と違う負担額になって驚くケースがあります。契約時に「今回は医療保険・介護保険のどちらが適用されるか」を必ず確認しておくと安心です
  • 家族だけで抱え込み、訪問看護師に困りごとを伝えられない:訪問時間が限られているぶん、事前に「聞きたいこと」「伝えたいこと」をメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます

いずれも「制度を完璧に理解していないと使えない」という話ではなく、契約前・利用開始時に一言確認するだけで防げるものばかりです。今日からできることとして、次に主治医やケアマネジャーと話す機会があれば、「訪問看護について詳しく聞いてみたい」と一言添えてみてください。それだけで、具体的な情報が向こうから提供されるはずです。


よくある質問

Q. 訪問看護は毎日利用できますか?

介護保険の訪問看護には利用回数の上限がなく、ケアプランに基づいて毎日の利用も可能です。ただし区分支給限度基準額の範囲内でやりくりする必要があるため、他のサービスとの兼ね合いで頻度が調整されることがあります。医療保険の場合は原則週3回までですが、末期がんなど重い病気で「特別訪問看護指示書」がある場合は週4回以上も可能です。

Q. 訪問看護と往診・訪問診療はどう違いますか?

往診・訪問診療は医師が自宅を訪問して診察・治療を行うもので、訪問看護は看護師が医師の指示のもとで医療処置やケアを行うものです。役割が異なるため、在宅医療では医師の訪問診療と看護師の訪問看護を組み合わせて利用するケースが一般的です。

Q. 要支援1・2でも訪問看護は利用できますか?

利用できます。要支援1・2の方も「介護予防訪問看護」として、介護保険の訪問看護サービスを利用できます。要介護の方向けの訪問看護と提供内容は基本的に同じですが、予防的な視点でのケアが中心になります。

Q. 訪問看護師に相談できる内容はケアのことだけですか?

医療的なケアだけでなく、介護をしている家族自身の不安や悩みの相談にも対応してもらえます。急変時にどう対応すればよいか、今後の見通しなど、専門職の視点でのアドバイスがもらえるのは訪問看護の大きな利点です。

Q. 訪問看護ステーションはどうやって選べばいいですか?

まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、対応可能なステーションを紹介してもらうのが一般的です。24時間対応の緊急時訪問看護加算があるか、看護師の人数体制、リハビリ職の在籍有無なども選ぶ際のポイントになります。


まとめ

この記事で持ち帰れることは、次の3つです。

  • 訪問看護は、看護師などの医療専門職が医師の指示のもとで行う医療的なケア。家事・身体介助が中心の訪問介護とは役割が異なり、併用も可能
  • 65歳以上で要介護・要支援認定があれば原則「介護保険」が優先、そうでない場合や特定の病気に該当する場合は「医療保険」 という切り替えの仕組みがある
  • 介護保険利用時の自己負担は1割負担で1回あたり数百円台が目安。2026年6月からの処遇改善加算により、わずかに金額が変わる場合がある

「体調が心配だけど、何をどこまで頼めるのか分からない」と感じたら、一人で悩まず、まずは主治医かケアマネジャーに率直に相談してみてください。訪問介護との組み合わせ方に迷う場合は、訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説も参考になります。

介護そっとねっとには、「医療的な処置が必要になってきたけれど、どのサービスを頼ればいいか分からない」という声も寄せられています。制度の正確な運用は主治医・訪問看護ステーション・自治体の窓口で確認しつつ、日々感じている不安は、同じ立場のご家族とそっと分かち合ってみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。適用される保険の種類や費用の詳細については、個々の状態によって異なるため、具体的な相談は主治医または訪問看護ステーション、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。

参考情報(一次情報)

本記事の編集方針・訂正ポリシーは 編集方針ページ をご覧ください。