「葬儀は終わったけれど、介護保険のことは何をすればいいのか分からない」 「保険証は返すの? 保険料はもう払わなくていいの?」 「介護費用の払い戻しの申請をしていた途中で、親が亡くなってしまった」

——親を見送った直後は、届けや支払いの書類が次々に届きます。介護保険の手続きは、それほど多くありません。何を返し、お金がどう精算され、何を請求できるのかを先に知っておくと、届いた書類を落ち着いて読めます。

この記事では、介護保険法・介護保険法施行規則と、国税庁、世田谷区・練馬区の案内をもとに、親が亡くなったあとの介護保険まわりの手続きを整理しました。細かな手順や必要書類は市区町村によって違うため、最後は住民票のあった市区町村の介護保険担当で確認してください。

この記事でわかること

  • 介護保険の資格喪失の届出と、返却するもの
  • 介護保険料の精算のしかたと計算例
  • 亡くなる前の介護費用について、相続人が請求できる払い戻し
  • 医療費控除と準確定申告の関係
  • ケアマネジャーや介護サービスの事業所に伝えること

親が亡くなったら、介護保険では何をする?

返却、精算、請求の3つです。保険証などを市区町村へ返し、介護保険料の過不足を精算し、亡くなる前に使った介護費用の払い戻しがあれば相続人が請求します。

おおまかな流れと期限を表にまとめました。

手続き期限の目安主な窓口
死亡届亡くなったことを知った日から7日以内市区町村の戸籍の窓口
介護保険の資格喪失の届出、保険証などの返却14日以内(返却の期限を設けていない市区町村もある)市区町村の介護保険担当
介護保険料の精算(還付・不足分の納付)市区町村から通知が届いたら市区町村の介護保険担当
高額介護サービス費などの未支給分の請求請求できる時から2年以内市区町村の介護保険担当
準確定申告(必要な場合)相続の開始を知った日の翌日から4か月以内税務署

親が亡くなったあとの介護保険まわりの手続きと期限を示した図。1は7日以内に死亡診断書を添えて死亡届を出す。2は14日以内に介護保険の資格喪失の届出と保険証などの返却。死亡届で処理が進む市区町村もある。3は1か月前後から保険料の精算で、亡くなった月の前月分までを納め、末日に亡くなった場合はその月まで。払い過ぎは相続人へ還付、不足は相続人が納付。4は4か月以内の準確定申告で、必要な場合のみ。医療費控除は亡くなった日までに支払った分。5は2年以内に、高額介護サービス費などの未支給分を相続人が請求。下段には、10月15日に亡くなると資格を失う日は10月16日で9月分まで、10月31日に亡くなると資格を失う日は11月1日で10月分まで納める計算例を示している。

死亡届そのものや、自宅で亡くなったときの連絡の順番は、在宅看取り、家族は何を準備する?──支えてくれる人・亡くなったときの連絡先・費用の考え方で解説しています。この記事は、その後に続く介護保険の手続きを扱います。


資格喪失の届出は必要?何を返せばいい?

決まりとしては、資格を失ってから14日以内に市区町村へ届け出ます。返すのは介護保険の被保険者証と、交付されていれば負担割合証と負担限度額認定証です。死亡届で処理が進み、返却だけで済む市区町村もあります。

介護保険法施行規則第32条は、介護保険の被保険者証が交付されている人が資格を失ったときは、14日以内に届書を市区町村に出すことを定めています。届書には被保険者証と負担割合証を添えることになっています(同規則第33条)。65歳以上の方のほか、40〜64歳で要介護認定を受け、被保険者証が交付されていた方も対象です(e-Gov法令検索 介護保険法施行規則)。

一方で、実際の手続きは市区町村によって違います。たとえば世田谷区は、亡くなった方の介護保険の手続きとして、死亡届のほかに次の書類を返すよう案内しており、返す期限は「なし」としています(世田谷区 亡くなられた方の介護保険手続きについて)。

  • 介護保険被保険者証
  • 介護保険負担割合証(交付されている場合)
  • 介護保険負担限度額認定証(交付されている場合)

返し方も、窓口のほか郵送で受け付ける市区町村があります。住民票のあった市区町村のホームページで「介護保険 死亡」と調べるか、介護保険担当に電話して、届書が必要か、返すだけでよいか、郵送でよいかの3点を確かめると、無駄な往復をせずに済みます。

市区町村によっては、亡くなった方の手続きをまとめて案内する「おくやみ窓口」を設けています(例:さいたま市 おくやみ窓口)。介護保険の返却も同じ日に済ませられることがあるので、窓口があるか確認してから出かけると、役所に行く回数を減らせます。


介護保険料は、いつの分まで払う?

資格を失う日(亡くなった日の翌日)の前月分までです。月の途中で亡くなったときは前の月の分まで、月の末日に亡くなったときはその月の分までになります。払い過ぎは相続人に還付され、不足していれば相続人が納めます。

練馬区は、亡くなった方の介護保険料を「資格喪失日(死亡日の翌日)の前月まで」の月割りで計算すると案内しています(練馬区 死亡や転出により資格喪失した場合の介護保険料について)。計算例は次のとおりです。

亡くなった日資格を失う日保険料を納める月
10月15日10月16日9月分まで
10月31日11月1日10月分まで

計算し直した結果は、市区町村から通知が届きます。

  • 納め過ぎていた場合:相続人に還付されます。世田谷区では資格喪失から1か月程度で還付通知書が届き、必要書類を返送してから約4〜6週間後に振り込まれると案内しています。亡くなった方本人の口座には振り込めないため、請求する人の口座を用意します(世田谷区 介護保険料の還付について)
  • 不足していた場合:相続人が納付書で納めます

保険料を年金から天引きされていた場合は、注意が要ります。練馬区は、年金からの天引きが止まるまでに数か月程度かかり、その間に亡くなったあとに支給される未支給年金からも保険料が引かれることがあると説明しています。引かれ過ぎた分は精算の対象になるので、通知を捨てずにとっておきます。年金そのものの手続きは、年金事務所や年金の窓口で別に行います。


亡くなる前の介護費用の払い戻しは、まだ請求できる?

請求できます。亡くなる前に使った介護サービスの自己負担が上限を超えていた分などは、相続人が受け取ります。給付を受ける権利は2年で時効になるので、届いた申請書は早めに返送します。

介護保険には、1か月の自己負担が上限を超えた分が戻る高額介護サービス費があります。本人が亡くなったあとに支給が確定した分は、相続人が請求します。世田谷区では、未支給の介護給付費が確認できたときに調査書兼申請書を送り、相続人の代表者が記入して返送する流れを案内しています(世田谷区 亡くなられた方の介護保険手続きについて)。

介護保険法第200条は、保険給付を受ける権利と保険料の還付を受ける権利を、行使できる時から2年で時効により消えると定めています(e-Gov法令検索 介護保険法)。葬儀や相続の手続きと重なって書類が埋もれやすい時期なので、市区町村からの封筒は1か所にまとめて置いておきます。

払い戻しの対象になりうる制度は、次のとおりです。

制度対象確認する記事
高額介護サービス費1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えた分高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説
高額医療・高額介護合算療養費1年間の医療と介護の自己負担の合計が上限を超えた分医療費と介護費用、両方が高額なら「合算」で戻ってくることも──高額医療・高額介護合算療養費制度をやさしく解説

合算療養費は、医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度など)の窓口が申請先になります。介護保険の窓口とは別なので、両方に問い合わせが必要な場合があります。

医療費控除は、亡くなった日までに支払った分だけ

亡くなった方にその年の所得があり、確定申告が必要な場合は、相続人が準確定申告をします。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

このとき医療費控除に入れられるのは、亡くなった日までに本人が支払った医療費だけです。亡くなったあとに相続人が支払った医療費は、亡くなった方の準確定申告では医療費控除に含められません(国税庁 No.2022 確定申告を要する人が死亡したとき(準確定申告))。介護サービスのうち医療費控除の対象になるものの範囲は、介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説で整理しています。

介護サービスの請求書は、亡くなった月の分があとから届きます。支払った日付が亡くなる前か後かで扱いが分かれるので、領収書には支払日がわかる形で残しておきます。


ケアマネジャーや介護サービスの事業所には、何を伝える?

まず担当のケアマネジャーに亡くなったことを伝えます。利用していたサービス事業所への連絡や、福祉用具の返却の段取りは、ケアマネジャーと相談しながら進められます。

在宅で介護サービスを使っていた場合、ケアマネジャーは利用していた事業所をすべて把握しています。連絡を受けたケアマネジャーが各事業所に伝えてくれることが多いので、家族が1社ずつ電話をかける前に、どこまで任せられるかを聞いてみてください。

あわせて確認しておくとよいことは、次のとおりです。

  • 福祉用具(介護ベッド・車いすなど)の返却日:回収に来てもらう日を決める
  • 最後の月の利用料の請求:いつ、どの口座から引き落とされるか、または請求書が届くか
  • 施設に入所していた場合:退所の手続き、私物の引き取り、居室の明け渡しの期限、最後の月の費用の精算方法

利用料の計算方法(日割りか月額か)は、サービスの種類や事業所との契約によって違います。契約書や重要事項説明書を手元に置いて確認すると、請求額の根拠が分かりやすくなります。


手続きが重なってつらいときは?

この記事で扱う手続きのうち、期限が決まっているのは死亡届の7日、介護保険の届出の14日、準確定申告の4か月、払い戻しの2年です。そのほかは、届いた通知に沿って進めれば足ります。

親を見送った直後は、葬儀、相続、年金、銀行など、介護保険以外の手続きも重なります。すべてを一度に片づけようとせず、期限のあるものから順に進めてかまいません。きょうだいがいる場合は、「役所の手続き」「事業所への連絡」「書類の保管」のように担当を分けると、一人に負担が集中しにくくなります。分担の決め方は親の介護、兄弟で揉めないために──分担の決め方とお金の話し合い方でも触れています。

手続きが落ち着いたころに、介護をしていた日々のことや、見送ったあとの気持ちが押し寄せてくることもあります。介護そっとねっとでは、親を見送った人の書き込みを読んだり、名前を出さずに自分の気持ちを書いたりできます。


今日からできること

  1. 介護保険の書類を1か所に集める:被保険者証、負担割合証、負担限度額認定証、市区町村からの封筒、介護サービスの請求書と領収書
  2. 市区町村の介護保険担当に確認する:届書が必要か、返すだけでよいか、郵送でよいか
  3. ケアマネジャーに連絡する:事業所への連絡と福祉用具の返却をどこまで任せられるかを聞く

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。手続きの方法・必要書類・受付の窓口は市区町村によって異なるため、住民票のあった市区町村の介護保険担当にご確認ください。相続や税金の個別の判断は、税務署や専門家にご相談ください。

参考情報(一次情報)

(確認日:2026年10月6日)

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