「冷蔵庫に、同じ牛乳が何本も入っていた」 「電話では元気そうだったのに、会ってみたら足取りが弱っていた」 「郵便物が開けられないまま、テーブルに積まれていた」

——久しぶりに帰省して、親の様子にどきっとした経験はありませんか。離れて暮らしていると、親の変化は電話の声だけではなかなかわかりません。年末年始やお盆の帰省は、親の暮らしを自分の目で見られる数少ない機会です。

一方で、帰省の日数は限られています。気づいたことをその場で全部解決しようとすると、親も家族も疲れてしまいます。この記事では、厚生労働省が仕事と介護の両立支援のために公開している「親が元気なうちから把握しておくべきこと」チェックリストなどをもとに、数日の帰省で確かめたいこと、話の切り出し方、帰る前につないでおく相談先を整理しました。

この記事でわかること

  • 帰省中に、家のどこを見れば親の変化に気づけるか
  • 気になる変化を、親を傷つけずに話題にする方法
  • 帰る前に控えておきたい連絡先と、確かめておきたい書類
  • 年末年始に相談したいときの注意点
  • 介護が必要そうなときに、離れてからも進められること

帰省中、家のどこを見れば親の変化がわかる?

台所・郵便物・薬・床や階段・電話の周りなど、毎日の暮らしが表れる場所を見ます。ひとつの変化で判断せず、前回の帰省と比べてどう変わったかを書き留めておきます。

親に「何か困っていない?」と聞いても、「大丈夫」と返ってくることがほとんどです。家の中には、言葉より正直に暮らしの様子が表れます。家族が見ておけることの例を、場所ごとにまとめました。

見る場所気にかけたい様子関係しそうなこと
冷蔵庫・台所同じ食品がいくつもある、賞味期限の切れたものが多い、火を使った料理をしなくなった買い物・料理の負担、もの忘れ
郵便物・請求書開けていない封筒が積まれている、公共料金の督促状があるお金の管理、手続きの負担
薬飲み残しがたまっている、飲んだかどうかを本人が覚えていない服薬の管理、受診の状況
床・階段・浴室床に物が増えた、手すりにつかまって移動している、浴室が寒い転倒、冬の入浴事故
電話・玄関知らない業者のチラシや契約書がある、電話での勧誘の話が増えた訪問販売・電話による詐欺の被害
身なり・会話季節に合わない服を着ている、同じ話を何度もする、外出が減った体調、気持ちの落ち込み、もの忘れ

この表は、家族が気づいたことを整理するための目安です。病気かどうかや、介護が必要かどうかを判定する基準ではありません。ひとつ当てはまったからといって、すぐに何かが必要になるわけでもありません。大切なのは、前回の帰省のときと比べて変わったことをスマートフォンのメモなどに書き留めておくことです。次の帰省や、相談窓口に話すときの材料になります。

家の中での転倒は、見落としやすいけれど気にかけておきたい変化です。東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故」によると、令和2年からの5年間に日常生活の事故で救急搬送された高齢者のうち、事故のときの動作は(その他・不明を除くと)「ころぶ」が8割以上を占め、令和6年だけで73,500人が「ころぶ」事故で搬送されています。住宅の中でも多く起きているため、床に置かれた物や段差、夜間の廊下の暗さも見ておきます。冬に帰省する場合は、脱衣所や浴室の寒さも確かめておきたい場所です(ヒートショック対策、家族は何をすればいい?)。

同じ話を繰り返す、通い慣れた道で迷うなど、もの忘れに関係しそうな変化が気になる場合は、親が認知症かもしれないと思ったときの家族の向き合い方もあわせて読んでみてください。


気になる変化を、どう話題にすればいい?

「できていないこと」を指摘するより、「最近、困っていることはない?」と親自身の困りごとから聞きます。一度の帰省で結論を出そうとせず、今回は様子を知るだけと区切ってもかまいません。

帰省中に気づいたことを、到着してすぐに次々と口にすると、親は責められているように感じてしまいます。親にとっては、子どもに心配をかけたくない、自分のことは自分でできると思っていたい、という気持ちがあるからです。言い方の例を並べます。

避けたい言い方言い換えの例
「冷蔵庫、同じものばっかりじゃない」「買い物、重くて大変じゃない?配達してもらう方法もあるみたい」
「薬、ちゃんと飲んでないでしょ」「薬の数が多くて大変そう。飲む時間をまとめられないか、今度病院で聞いてみようか」
「このままじゃ一人で暮らすのは無理だよ」「この先どんなふうに暮らしたいか、一度ゆっくり聞かせてほしい」

厚生労働省のチェックリストは、親に介護が必要になる前に、親の老後の生き方や、介護が必要になったときの暮らし方の希望を知っておくことを、親の状況を把握する最初の項目に挙げています。話すきっかけの目安として、親が介護保険の保険証が届く65歳になったとき、あるいは子どもが介護保険料を納め始める40歳になったときを挙げています(厚生労働省 仕事と介護の両立支援~両立に向けての具体的ツール~)。家族がそろう帰省は、こうした話をするきっかけのひとつになります。

ただ、帰省の数日で親の考えをすべて聞き出す必要はありません。「今回は、困っていることがないかを聞けた」で十分です。将来の医療やケアの希望を少しずつ話し合う方法は、家族のための人生会議(ACP)のはじめ方で紹介しています。

兄弟姉妹がいる場合は、親に話す前に、気づいたことを兄弟姉妹で共有しておくと、親に伝える内容がぶれにくくなります。同じチェックリストは、兄弟姉妹・配偶者の間で意見をとりまとめる人を事前に決めておくことも勧めています。分担の話し合い方は、親の介護、兄弟の分担はどう決める?が参考になります。


帰る前に、何を決めておけばいい?

親の住む地域の地域包括支援センターの場所と連絡先を控え、近所で親の様子を気にかけてくれる人と連絡先を交換しておきます。大切な書類の置き場所も、親と一緒に確かめておきます。

帰省が終わって自宅に戻ると、気になっていたことも日々の忙しさにまぎれがちです。帰る前の1日を使って、離れてからも動けるように「つなぎ先」を用意しておきます。

帰省中に家族ができることを3つの順番で示した図。1.見る(冷蔵庫・郵便物・薬・床や浴室・電話の周り。前回と比べて変わったことをメモ)、2.話す(親自身の困りごとを聞く。どう暮らしたいかを少しずつ。兄弟姉妹で気づいたことを共有)、3.つなぐ(親の住む地域の地域包括支援センターの連絡先を控える、近所の人と連絡先を交換、大切な書類の置き場所を確かめる)。下段に、年末年始は相談窓口が休みのことがあるので受付日を帰省前に確かめる、急な体調の悪化は119番、という注意。

地域包括支援センターの場所と連絡先を控える

地域包括支援センターは、高齢者や家族からの介護・福祉・健康の相談を受ける窓口です。厚生労働省のチェックリストでは、中学校の通学区域におおよそ1か所の割合で置かれているとし、連絡すれば要介護認定の申請手続きや介護サービスの情報を得られると案内しています。

ここで気をつけたいのは、相談先は親の住む地域のセンターだということです。介護保険のサービスは本人の住んでいる場所が基準になるため、子どもの住む地域のセンターでは、親の地域のサービスの手続きは進められません。親の住所から担当のセンターを、市区町村のホームページで調べておきます。市区町村によっては、介護保険とは別に独自の支援サービスを用意していることもあるので、あわせて確かめておくと役に立ちます。

帰省中に時間があれば、親と一緒にセンターに顔を出しておく方法もあります。まだ介護が必要でなくても、「離れて暮らしているので、何かあったら相談したい」と伝えておくだけで、次に電話するときに話が早くなります。

近所で様子を見てくれる人と連絡先を交換する

親と付き合いのある近所の人や、地域の活動仲間の名前と連絡先も、厚生労働省のチェックリストで把握しておく項目に挙げられています。家族が離れていても、ふだんの様子を知っている人がいると、変化に早く気づけます。地域には、住民の相談に応じる民生委員もいます(厚生労働省 民生委員・児童委員について)。担当の民生委員は、市区町村の窓口や地域包括支援センターで教えてもらえます。

連絡先を交換するときは、親の了解を得てからにします。親が「近所に迷惑をかけたくない」と言う場合は、「何かあったときに、私に連絡をもらえるようにしておきたい」と、親の暮らしに口を出すためではないことを伝えると受け入れてもらいやすくなります。

大切な書類の置き場所を確かめる

同じチェックリストは、健康保険証・介護保険証・病院の診察カード・年金手帳・生命保険証書・預金通帳・印鑑類の保管場所を把握しておく項目として挙げています。親のかかりつけ医と、飲んでいる薬(市販薬やサプリメントを含む)も確かめておく項目です。

中身を家族が預かる必要はありません。どこにあるかを親と一緒に確かめておくだけでも、急な入院のときに慌てずに済みます。お金の管理そのものに不安がある場合は、成年後見制度の家族向け入門で、親のお金と契約を守る仕組みを紹介しています。

電話の詐欺への備えを一緒にする

帰省中に家族ができる対策のひとつが、電話の設定の見直しです。警察庁は、特殊詐欺の対策として、固定電話の番号表示・非通知拒否のサービス、国際電話の着信を拒否する対策、防犯機能付き電話の導入を案内しています(警察庁 SOS47 特殊詐欺対策ページ)。親と一緒に電話機の設定を確かめ、「お金の話の電話があったら、まず家族に連絡する」という約束をしておきます。


年末年始に相談したいときは、どこに連絡する?

地域包括支援センターは年末年始に休みになることがあります。帰省する前に受付日を確かめておき、急な体調の悪化や呼びかけに反応しないときは、休みに関係なく119番に連絡します。

帰省のタイミングで相談しようと思っても、年末年始は役所や相談窓口が休みに入っていることがあります。たとえば東京都練馬区は、2025年度の年末年始に、区内の地域包括支援センターを12月28日から1月4日まで休みにすると案内していました(練馬区 年末年始の区役所・区立施設の休業のご案内)。休みの期間はセンターや自治体ごとに違います。

場面連絡先の例
急な体調の悪化、呼びかけに反応しない、転んで動けない119番
介護サービスや介護保険の申請について相談したい親の住む地域の地域包括支援センター(休みの日は休み明けに連絡)
もう介護サービスを使っている担当のケアマネジャー(休みの期間は事業所に確かめておく)
体調や薬について相談したいかかりつけ医(休みの日の連絡方法は受診のときに確かめておく)

年末年始の帰省で気づいたことは、休み明けに電話で相談できるよう、話す内容をメモにまとめておくと進めやすくなります。「いつから、どんな変化があるか」「親はどう言っているか」「家族はどのくらい通えるか」の3つを書いておくと、相談のときに状況を伝えやすくなります。


介護が必要そうなら、離れてからも何を進められる?

要介護認定の申請は親の住む市区町村で行い、家族や地域包括支援センターが代わりに申請することもできます。帰省中に窓口と必要なものを確かめておけば、離れてからは電話でのやり取りを中心に進められます。

介護保険のサービスを使うには、要介護認定を受けます。申請から結果の通知までは原則30日以内で、その間に、認定調査員が自宅などを訪ねて心身の状態を聞き取る認定調査があります。申請は本人のほか、家族やケアマネジャー、地域包括支援センターが代わりに行うこともできます。流れははじめての介護保険の申請から費用までで詳しく紹介しています。

認定調査には、できれば家族も立ち会い、ふだんの様子を伝えます。帰省中に書き留めたメモは、ここでも役に立ちます。日程の調整が難しい場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに、家族が立ち会える日を相談してみてください。

離れて暮らしながら親を支える仕組み全体(見守りサービス、ケアマネジャーとのオンラインでのやり取り、介護帰省割引など)は、一人っ子・遠距離介護で親をどう支えるかにまとめています。


今日からできること

  1. 帰省の日程が決まったら、親の住む地域の地域包括支援センターの受付日を調べる:年末年始の休みも、市区町村のホームページで確かめられることが多いです
  2. 帰省中に見ることを、スマートフォンのメモに書いておく:冷蔵庫・郵便物・薬・床や浴室・電話の周り。前回と比べて変わったことを残します
  3. 帰る前の1日を「つなぐ日」にする:センターの連絡先、近所の人の連絡先、書類の置き場所を、親と一緒に確かめます

帰省で親の変化に気づいたとき、家族の気持ちは「どうにかしなければ」と「まだ大丈夫かもしれない」の間で揺れがちです。介護そっとねっとは、介護をしている家族やこれから向き合う家族が、名前を出さずに経験を話せるアプリです。帰省のあとに残った気がかりを言葉にしてみたいときに使ってください。介護が必要かどうかや、病気の有無を判断する場ではない点はご了承ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。相談窓口の受付時間や休みの期間、介護保険の手続き、市区町村独自の支援は、地域によって異なります。個別のことは、親の住む市区町村の窓口や地域包括支援センターにご確認ください。

参考情報(一次情報)

(確認日:2026年11月8日)

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