認知症ケアの最新情報

介護そっとねっと編集部(編集部)
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認知症は、現在日本で約600万人以上が罹患していると言われており、65歳以上の高齢者の約6人に1人が認知症を抱えています(2020年推計)。「最近、親の物忘れが気になる」「同じことを何度も聞いてくる」「外出先で迷子になってしまった」——そのような変化に不安を感じているご家族も多いのではないでしょうか。

認知症は適切なケアとサポートによって、ご本人もご家族も穏やかに過ごすことができます。この記事では、認知症の基本的な知識から、家族が日常的に実践できるケアのポイントまでをお伝えします。

認知症の種類と特徴

認知症にはさまざまな原因があり、種類によって症状の特徴や進行のしかたが異なります。主な4種類をご紹介します。

アルツハイマー型認知症

認知症全体の約60〜70%を占める最も一般的な型です。脳内に異常なタンパク質(アミロイドβやタウ)が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅することで発症します。

主な特徴

  • 近い過去の出来事を忘れる「近時記憶障害」が最初に現れることが多い
  • ゆっくりと進行する
  • 同じことを何度も話したり聞いたりする
  • 時間・場所・人の認識が徐々に難しくなる(見当識障害)
  • 初期には本人が物忘れを自覚していることも多い

血管性認知症

認知症全体の約20%を占め、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こります。

主な特徴

  • 脳血管障害の後に突然症状が現れたり、階段状に悪化したりする
  • できることとできないことの差が大きい「まだら認知症」が見られる場合がある
  • 感情のコントロールが難しくなり、些細なことで泣いたり怒ったりする「感情失禁」が起こりやすい
  • 脳血管障害の再発予防が重要

レビー小体型認知症

脳内にレビー小体という異常なタンパク質が蓄積することで起こります。

主な特徴

  • 「人や動物がいる」「虫がいる」といった幻視(ありありとした幻覚)が比較的早期から現れる
  • 手足が震える、動作が遅くなるなどパーキンソン症状を伴う
  • 認知機能が日によって大きく波打つ「認知機能の変動」がある
  • 睡眠中に大きな声を出したり手足を激しく動かしたりする(レム睡眠行動障害)

前頭側頭型認知症

前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こり、比較的若い年齢(65歳未満)で発症することもあります。

主な特徴

  • 社会的なルールやマナーを守れなくなる(万引き、食べ物への強いこだわりなど)
  • 同じ行動を繰り返す(常同行動)
  • 感情が平板になる、または些細なことで激しく怒る
  • 物忘れは初期には目立たないことが多い

初期症状のサイン

認知症は早期に気づき、専門医に相談することが大切です。以下の変化に気づいたら、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談しましょう。

記憶に関するサイン

  • 最近の出来事(昨日の夕食など)を忘れる
  • 同じことを短時間に何度も繰り返して話す、または聞く
  • 大切な約束を忘れる
  • 置き場所を忘れて探し回る

日常生活に関するサイン

  • 慣れたはずの料理の手順がわからなくなる
  • 電化製品の操作ができなくなる
  • お金の計算が難しくなる
  • 以前は問題なかった趣味や仕事ができなくなる

見当識・行動に関するサイン

  • 今日の日付や曜日がわからなくなる
  • 慣れた道で迷子になる
  • 季節に合わない服を着ようとする
  • 性格が変わったように感じる(怒りやすくなった、疑い深くなったなど)

一方、「加齢による物忘れ」との違いも大切です。 加齢による物忘れは、「何を食べたか忘れる」程度ですが、認知症では「食事をしたこと自体を忘れる」という特徴があります。加齢による物忘れでは日常生活に支障が出ないことがほとんどです。

家族ができるケアのポイント

1. 安心できる環境をつくる

認知症の方は、慣れ親しんだ環境や人の顔を覚えていることが多いです。できるだけ生活パターンを変えず、同じ人が関わるようにすることで、安心感を保つことができます。

  • 家具の配置を急に変えない
  • 毎日の生活リズムを一定に保つ
  • 慣れ親しんだ写真や思い出の品を身近に置く
  • 家の中の安全を確保する(段差解消、鍵の確認など)

2. 「その人らしさ」を大切にする

認知症になってもその方の人生の歴史や好み、価値観は変わりません。記憶や機能が低下していても、「その人らしさ」を尊重することが、尊厳あるケアの基本です。

  • 好きな音楽をかける
  • 趣味や得意なことを続けられるようにサポートする
  • 話の中に出てくる昔の思い出に耳を傾ける
  • 「できないこと」ではなく「できること」に注目する

3. 身体の健康管理

認知症の症状悪化には、身体的な不調が関係していることがあります。

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 適度な運動(散歩など)を取り入れる
  • 水分補給に気をつける(認知症の方は脱水を起こしやすい)
  • 定期的な通院と服薬管理を行う

コミュニケーションのコツ

認知症の方との会話は、いくつかのコツを押さえると格段にスムーズになります。

話しかけるときの基本

  • 目線を合わせる: 立ったまま上から話しかけるのではなく、相手と同じ目の高さになるよう、かがんで話しかけましょう
  • ゆっくり、はっきりと: 一度に多くの情報を伝えず、短い文でゆっくり話しましょう
  • 一つずつ伝える: 「食事して、お薬飲んで、歯も磨いてね」と同時に複数のことを伝えるのではなく、一つのことが終わってから次を伝えます
  • 穏やかな口調で: 声のトーンや表情は、言葉の内容以上に相手に伝わります

否定しない

「そんなことはしていません」「さっきも言いましたよ」「また間違えて」といった言葉は、認知症の方を傷つけ、不安や怒りを生む原因になります。

  • 「そうなんですか」「それは大変でしたね」と共感する
  • 事実の誤りを直接訂正しない(「財布が盗まれた」という訴えに対して、一緒に探すふりをして見つけるなど)
  • 怒りや悲しみの感情を受け止める

困った行動への対応

認知症の症状として、介護する家族が特に戸惑う「周辺症状(BPSD)」があります。

徘徊: 外に出て迷子になってしまう行動です。「行かせてあげる場所がない」「用事があると感じている」などの理由が背景にあることが多いです。玄関に鈴をつける、GPSを活用する、地域の見守りネットワークを利用するなどの対策が有効です。

もの盗られ妄想: 「財布を盗まれた」と家族を疑うことがあります。否定せず「一緒に探しましょう」と対応し、普段から大切なものを一緒にしまう習慣をつけておくと良いでしょう。

夜間の不穏: 夜になると落ち着かなくなる「日没症候群」が起こる場合があります。昼間に適度な活動をして生活リズムを整える、昼寝を短くするなどが助けになります。

利用できる支援サービス

認知症のご家族を抱えた場合、ひとりで抱え込まず、地域の支援を積極的に活用することが大切です。

医療機関

認知症が疑われる場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて「もの忘れ外来」(神経内科・精神科・老年科など)に紹介してもらえます。早期診断により、薬物療法で症状の進行を遅らせることができる場合もあります。

地域包括支援センター

高齢者の総合相談窓口です。認知症に関する相談を無料で受け付けており、介護保険の申請支援や地域のサービス情報の提供も行っています。

認知症初期集中支援チーム

専門職(医師・看護師・介護福祉士など)がチームを組み、認知症が疑われる方や認知症の方のご家族のもとを訪問し、初期の支援を行う専門チームです。各市区町村に設置されています。

認知症カフェ(オレンジカフェ)

認知症の方とご家族、地域の方、専門家が集う場です。悩みを話し合ったり、情報交換したりすることができます。「同じ立場の人がいる」という安心感は、介護者の孤独感の軽減につながります。

認知症の人と家族の会

全国規模の組織で、電話相談(0120-294-456)も行っています。

まとめ

認知症のケアに「完璧な対応」はありません。時に怒鳴ってしまったり、疲れ果ててしまったりすることがあっても、それは皆が通る道です。大切なのは、ご本人の気持ちに寄り添い、「その人らしさ」を大切にしながら、無理なく続けることです。

一人で抱え込まず、地域の支援や専門家の力を借りながら、ご家族全員が少しでも穏やかに過ごせる環境づくりを目指しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や対応については、専門医や認知症専門士にご相談ください。

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