# 介護そっとねっと — LLM向け完全版ドキュメント > 本ファイルは、大規模言語モデル(LLM)クローラー向けに「介護そっとねっと」の全コンテンツを機械可読な形でまとめた完全版ドキュメントです。サービス概要、よくある質問、全コラム記事本文を1ファイルに統合しています。商用利用・引用時は出典として「介護そっとねっと(https://kaigo-sottonet.com)」の明記を推奨します。 ## サービスサマリー - **サービス名**: 介護そっとねっと - **提供会社**: 株式会社ゼットリンカー - **サービスURL**: https://kaigo-sottonet.com - **コーポレートサイト**: https://zetlinker.com - **サービス分類**: 介護家族向け匿名共感SNS - **コアバリュー**: 介護家族が孤立しない社会をつくるための匿名共感SNS。共感ボタン・感情ベースの投稿・そっとねっとコラムで支え合う場を提供 --- ## よくあるご質問 ### Q. 登録や利用に料金はかかりますか? A. いいえ、登録・利用は完全無料です。アプリのダウンロードから、すべての基本機能のご利用まで、一切費用はかかりません。安心してお使いいただけます。 ### Q. 介護の経験が浅くても利用できますか? A. はい、介護経験の有無に関わらず、どなたでもご利用いただけます。経験豊富な方から初心者の方まで、幅広い方々が情報交換をしています。わからないことがあれば、コミュニティで質問することもできます。 ### Q. 投稿内容は誰に見られますか? A. 投稿内容の公開範囲は、投稿時に設定できます。全体公開、友達のみ、非公開など、ご自身で選択可能です。プライバシーに配慮した設計になっておりますので、安心してご利用いただけます。 ### Q. 実名で登録する必要はありますか? A. いいえ、実名での登録は必須ではありません。ニックネームやペンネームでの登録も可能です。個人情報の保護を重視しており、匿名でも安心してコミュニティに参加できます。 ### Q. スマートフォンとタブレットの両方で使えますか? A. はい、スマートフォン(iOS/Android)とタブレットの両方に対応しています。同じアカウントで複数のデバイスからログインして利用することも可能です。 ### Q. 投稿した内容は後から編集・削除できますか? A. はい、ご自身が投稿した内容はいつでも編集・削除が可能です。投稿詳細画面から「編集」または「削除」ボタンをタップしてください。 --- ## コラム記事(全35本・本文付き) ### 要介護の親は障害者控除の対象?──「障害者控除対象者認定」の申請と、年末調整・確定申告での使い方 - **slug**: shogaisha-kojo-youkaigo-family-guide - **公開日**: 2026.10.13 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/shogaisha-kojo-youkaigo-family-guide **要約**: 結論、要介護認定だけでは障害者控除は受けられませんが、市区町村の「障害者控除対象者認定」を受ければ、障害者手帳がなくても対象になります。控除額、申請の流れ、扶養している子が使う条件、過去5年分の還付申告までを整理します。 **本文**: # 要介護の親は障害者控除の対象?──「障害者控除対象者認定」の申請と、年末調整・確定申告での使い方 > **この記事の要点(3行)** > > - 要介護認定を受けただけでは、障害者控除は受けられない。65歳以上で障害者手帳がない方は、市区町村の「障害者控除対象者認定」を受けると対象になる > - 控除額は所得税で27万円(特別障害者40万円、同居特別障害者75万円)、住民税で26万円(同30万円、同53万円)。親を扶養している子どもも、自分の申告で使える > - その年の控除は12月31日の状況で判定する。年末調整に間に合わなくても確定申告で受けられ、過去の年分は5年以内なら還付申告ができる 「親が要介護になったら、税金が安くなると聞いた」 「年末調整の書類に『障害者』の欄があるけれど、親は手帳を持っていない」 「同僚は親の分で控除を受けているらしい。うちは何をすればいいの?」 ——障害者手帳を持っていない親でも、介護が必要な状態であれば、税金の「障害者控除」を受けられることがあります。ただし、要介護認定とは別に、市区町村の認定を受ける手続きが必要です。この手続きを知らないまま、何年も控除を受けていなかった家族もいます。 この記事では、国税庁の案内と、杉並区・千葉市・名古屋市・神戸市・港区の案内をもとに、**要介護の親が障害者控除を受けるための条件と手続き**を家族向けに整理しました。年末調整の書類が配られる前に、対象かどうかを確かめておくと手続きが慌ただしくなりません。 > この記事でわかること > - 要介護認定と「障害者控除対象者認定」の違い > - 控除額と、税金がどのくらい少なくなるかの計算のしかた > - 認定を申請する流れと、必要なもの > - 親を扶養している子どもが使う条件 > - 年末調整・確定申告での使い方と、過去の年分の扱い --- ## 要介護認定を受けていれば、障害者控除は受けられる? **要介護認定だけでは受けられません。65歳以上で障害者手帳がない方は、市区町村の「障害者控除対象者認定」で障害者に準ずると認定されると、対象になります。** 所得税の障害者控除の対象には、障害者手帳を持っている人のほかに、「精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人」が含まれています([国税庁 No.1160 障害者控除](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm))。この認定を受けると交付されるのが「障害者控除対象者認定書」です。 要介護認定と障害者控除対象者認定は、判定の基準が違います。千葉市は「要介護認定とは基準が異なるため、要介護度が重度の方であっても対象者として認定されない場合があります」と案内しています([千葉市 障害者控除対象者認定](https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/koreishogai/korei/shougaishanintei.html))。要介護度だけで「対象になる」「ならない」を決めずに、市区町村に申請して判定を受けます。 障害者手帳をすでに持っている方は、手帳で障害者控除を受けられるため、この認定は通常いりません(千葉市の案内)。手帳を持っていても、介護が必要になって状態が変わったときは、どちらの区分で申告するのがよいかを市区町村の窓口で尋ねてみてください。 要介護認定そのものの申請や、介護度が実態と合わないときの見直しは、[要介護認定の「区分変更申請」とは?](/columns/kubun-henkou-shinsei-family-guide)で解説しています。 --- ## どんな状態なら「障害者」「特別障害者」と認定される? **基準は市区町村が定めています。多くの市区町村では、要介護認定のときに判定される「日常生活自立度」をもとに判断します。** 認定には「障害者」と「特別障害者」の2つの区分があり、特別障害者のほうが控除額が大きくなります。杉並区の基準は、次のとおりです([杉並区 障害者控除対象者認定](https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/zei/kaigo/1004620.html))。 | 区分 | 杉並区の基準 | | --- | --- | | 特別障害者(身体障害者1・2級に準ずる) | 要介護3以上で、障害高齢者の日常生活自立度がB以上 | | 特別障害者(知的障害者・重度に準ずる) | 要介護3以上で、認知症高齢者の日常生活自立度が3以上 | | 障害者(身体障害者3〜6級に準ずる) | 要支援・要介護の認定を受けていて、障害高齢者の日常生活自立度がA以上 | | 障害者(知的障害者・軽度・中度に準ずる) | 要支援・要介護の認定を受けていて、認知症高齢者の日常生活自立度が2以上 | 日常生活自立度は、要介護認定の調査や主治医意見書で判定されるもので、「寝たきり度」「認知症の程度」を段階で表したものです。親の自立度は、市区町村に申請すると確認されるほか、ケアマネジャーに尋ねると目安がわかることがあります。 国税庁の案内では、特別障害者には「その年の12月31日の現況で引き続き6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする」人も含まれます。名古屋市も、6か月以上ねたきりで食事・排泄などの日常生活に支障がある方を認定の対象に挙げています([名古屋市 ねたきり・認知症高齢者等の税の障害者控除](https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016427/1016439.html))。 上の表は杉並区の例です。基準の書き方や区分は市区町村ごとに違うので、親が住んでいる市区町村の案内で確かめます。 --- ## 控除額はいくらで、税金はどのくらい少なくなる? **控除額は所得税で27万〜75万円、住民税で26万〜53万円です。少なくなる税額は、控除額に税率をかけた額が目安です。** 控除額は、所得から差し引かれる額です。所得税と住民税で金額が違います([国税庁 No.1160](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm)、[港区 所得税・住民税の障害者控除](https://www.city.minato.tokyo.jp/kenko/fukushi/shogaisha/genmen/shotoku.html))。 | 区分 | 所得税 | 住民税 | | --- | --- | --- | | 障害者 | 27万円 | 26万円 | | 特別障害者 | 40万円 | 30万円 | | 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 | 「同居特別障害者」は、扶養親族などが特別障害者で、納税者本人や配偶者、生計を一にする親族のいずれかと同居していることがふだんの状態である場合です(港区の案内)。 ![要介護の親の障害者控除を確かめる4つの順番を示す図。1.親が65歳以上で要介護・要支援の認定を受けているか確かめる(障害者手帳がある人は手帳で控除を受けられる)、2.市区町村に障害者控除対象者認定を申請する(要介護度とは別の基準で判定)、3.認定書の区分が障害者か特別障害者かを確かめる(同居かどうかでも控除額が変わる)、4.会社員は年末調整、それ以外は確定申告で申告する(過去の年分は翌年1月1日から5年間、還付申告できる)。下段に控除額の表として、障害者は所得税27万円・住民税26万円、特別障害者は40万円・30万円、同居特別障害者は75万円・53万円。](/column-figures/shogaisha-kojo-youkaigo-flow.svg) ### 計算例:同居している親が特別障害者と認定された場合 以下は控除額のしくみを説明するための計算例です。実際の税額は、所得や他の控除によって変わります。自分の源泉徴収票の数字に置き換えて確認してください。 - 所得税率が10%の子どもが、同居する親(特別障害者)を扶養している場合 - 所得税:75万円×10%=7万5,000円少なくなる(復興特別所得税を除く) - 住民税:53万円×10%=5万3,000円少なくなる(住民税の所得割の税率10%で計算) 所得税率は所得に応じて5%から45%まで分かれています。所得税がかからない方は、障害者控除を申告しても所得税は変わりません。 --- ## 認定の申請はどうすればいい? **親が住んでいる市区町村の高齢者福祉や介護保険の担当窓口に、申請書を出します。本人だけでなく、扶養している家族が申請できる市区町村が多くあります。** 申請の流れは、おおむね次のとおりです。 1. **親の住む市区町村の案内を探す**:「(市区町村名) 障害者控除対象者認定」で検索すると、申請書と基準が見つかります 2. **申請書と必要書類をそろえる**:千葉市は申請書と介護保険被保険者証の写しの2点を挙げています。名古屋市は、申請者の本人確認書類と、本人・親族以外の第三者が申請する場合の委任状を求めています 3. **窓口・郵送・電子申請で出す**:杉並区はダウンロードした申請書を窓口か郵送で受け付け、事前の相談をすすめています。名古屋市はマイナンバーカードを使った電子申請にも対応しています 4. **認定書を受け取る**:要介護認定の調査結果などをもとに判定され、対象になれば「障害者控除対象者認定書」が届きます 申請できる人について、千葉市と神戸市は「本人または本人を扶養している家族」、名古屋市は「本人またはその親族」と案内しています([神戸市 障害者控除対象者認定](https://www.city.kobe.lg.jp/a39067/kenko/fukushi/koreshafukushi/am06/nenkin/kaigozeikoujyo.html))。離れて暮らしている親の分を申請するときは、窓口が親の住所地の市区町村になる点に注意してください。 年末調整に間に合わせたい場合は、勤務先の書類の締め切りから逆算して、早めに申請します。認定までにかかる日数は市区町村によって違います。 --- ## 親を扶養している子どもが控除を受けるには? **親が子どもの「扶養親族」であれば、子どもの所得税・住民税で障害者控除を受けられます。扶養親族になるには、生計を一にしていることと、親の所得が一定以下であることが必要です。** 障害者控除は、納税者本人のほか、同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合にも受けられます(国税庁 No.1160)。親を扶養親族にするには、次の2つを満たす必要があります([国税庁 No.1180 扶養控除](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm))。 - **生計を一にしていること**:同居していなくても、生活費を送っているなど生計を一にしていれば該当することがあります - **親の合計所得金額が一定以下であること**:令和7年分までは58万円以下、令和8年分以後は62万円以下 親の収入が年金だけの場合、合計所得金額は年金の収入から公的年金等控除を差し引いた額です。親の年金額で判定が変わるため、親の年金の源泉徴収票を手元に用意して確かめます。 扶養控除と障害者控除は別の控除なので、条件を満たせば両方受けられます。たとえば70歳以上の親を扶養している場合は、老人扶養親族として扶養控除(同居老親等なら58万円、それ以外は48万円)を受けたうえで、障害者控除も加わります。 ### 施設に入所している親の場合 国税庁は、扶養控除の「同居老親等」について、老人ホームなどへ入所している場合は同居に当たらないとしています(国税庁 No.1180)。施設に入所している親を扶養している場合は、同居特別障害者(75万円)ではなく特別障害者(40万円)として扱われることがあるため、どちらに当たるかを税務署や勤務先に確認してから申告します。 親を誰が扶養するかは、兄弟姉妹の間で決めることになります。同じ親を2人以上が扶養親族として申告することはできないので、[親の介護、兄弟の分担はどう決める?](/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide)で整理したお金の話し合いの中で、誰の扶養に入れるかも決めておくと、申告が重なりません。 --- ## 年末調整と確定申告、どちらで使う? **会社員は年末調整で、自営業や年金生活の方は確定申告で使います。年末調整に間に合わなかった場合も、確定申告で受けられます。** | 申告する人 | 使う手続き | 書くところ | | --- | --- | --- | | 親を扶養している会社員の子ども | 年末調整 | 勤務先に出す「扶養控除等(異動)申告書」の障害者の欄 | | 年末調整に間に合わなかった会社員 | 確定申告(還付申告) | 確定申告書の障害者控除の欄 | | 所得税がかかっている親本人 | 確定申告 | 確定申告書の障害者控除の欄 | 障害者に当たるかどうかは、その年の12月31日の状況で判定します(国税庁 No.1160)。年の途中で認定を受けた場合でも、12月31日に障害者・特別障害者であれば、その年の分の控除を受けられます。 親が年の途中で亡くなった場合は、判定の時点が12月31日とは異なる扱いになります。親が亡くなったあとの介護保険の手続きは[親が亡くなったら介護保険の手続きは?](/columns/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide)にまとめています。税金の扱いは税務署に確認してください。 ### 過去の年分は、さかのぼって受けられる? 所得税の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます([国税庁 No.2030 還付申告](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm))。ただし、さかのぼるには、その年分の認定書が必要です。千葉市は「最長で5年分を遡及して申請することができます」と案内していますが、過去の資料にもとづいて判定するため、5年分すべてが対象にならない場合があるとしています。 さかのぼれる年数や判定のしかたは市区町村によって違います。「何年分から申請できるか」を、申請の前に窓口で尋ねてください。 --- ## ほかの控除や制度とは、どう組み合わせる? **障害者控除は、医療費控除や高額介護サービス費とは別の制度なので、条件を満たせば一緒に使えます。** 介護の費用に関係する制度は、しくみごとに窓口が分かれています。 - **医療費控除**:おむつ代や訪問看護などの費用を、所得から差し引く税金の控除です。対象範囲は[介護費用は医療費控除の対象になる?](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)で確認できます - **高額介護サービス費**:介護サービスの自己負担が月の上限を超えたときに払い戻される介護保険の制度です([高額介護サービス費とは?](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)) - **世帯分離**:住民票の世帯を分ける手続きで、介護保険料や負担限度額の判定に関わります。税金の扶養とは別のしくみなので、住民票の世帯を分けても、生計を一にしていれば扶養親族のままでいられることがあります([世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?](/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide)) 障害者控除を受けると、住民税の所得割が少なくなります。住民税の課税状況は、介護保険料の段階や負担限度額の判定にも使われるため、親本人の申告で控除を受けた場合は、翌年度の保険料や負担の段階が変わることがあります。どの判定にどう影響するかは、市区町村の介護保険の窓口で確かめます。 --- ## 今日からできること 1. **親の介護保険被保険者証を確かめる**:要介護度と認定の有効期間を見て、親が65歳以上で認定を受けているかを確かめる 2. **親の住む市区町村の案内を探す**:「(市区町村名) 障害者控除対象者認定」で検索し、基準と申請書、さかのぼれる年数を確認する 3. **扶養の状況を確かめる**:親が自分の扶養親族になっているか、兄弟姉妹の誰の扶養に入っているかを、年末調整の書類が届く前に確認する 手続きの判断は市区町村や税務署に確かめつつ、「親の手続きを一人で抱えて疲れている」という気持ちは、同じように介護をしている家族と分かち合うこともできます。介護そっとねっとは介護家族どうしで経験や気持ちを共有する場で、税金や認定の個別判断を行う窓口ではありません。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。認定の基準・手続き、控除の適用は、市区町村や税務署、勤務先によって確認が必要な点があります。個別の判断は、親の住む市区町村の担当窓口や税務署にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [国税庁 - No.1160 障害者控除](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm) - [国税庁 - No.1180 扶養控除](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm) - [国税庁 - No.2030 還付申告](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm) - [杉並区 - 障害者控除対象者認定](https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/zei/kaigo/1004620.html) - [千葉市 - 障害者控除対象者認定](https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/koreishogai/korei/shougaishanintei.html) - [名古屋市 - ねたきり・認知症高齢者等の税の障害者控除](https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016427/1016439.html) - [神戸市 - 障害者控除対象者認定](https://www.city.kobe.lg.jp/a39067/kenko/fukushi/koreshafukushi/am06/nenkin/kaigozeikoujyo.html) - [港区 - 所得税・住民税の障害者控除](https://www.city.minato.tokyo.jp/kenko/fukushi/shogaisha/genmen/shotoku.html) (確認日:2026年10月13日) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護保険料は2026年度に値上がりした?──65歳以上と40〜64歳で違う決まり方と、天引き額が変わる理由 - **slug**: kaigo-hokenryo-2026-family-guide - **公開日**: 2026.10.9 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kaigo-hokenryo-2026-family-guide **要約**: 結論、65歳以上の介護保険料の基準額は2024〜2026年度の3年間同じで、次の見直しは2027年4月です。40〜64歳は毎年度見直され、協会けんぽは2026年3月分から1.62%に上がりました。天引き額が変わる理由と、通知の見分け方を整理します。 **本文**: # 介護保険料は2026年度に値上がりした?──65歳以上と40〜64歳で違う決まり方と、天引き額が変わる理由 > **この記事の要点(3行)** > > - 65歳以上の介護保険料は、住んでいる市区町村が3年ごとに決める。2024〜2026年度は同じ基準額が続く期間で、全国平均は月6,225円。次の見直しは2027年4月 > - 40〜64歳の介護保険料は、加入している医療保険が毎年度見直す。協会けんぽの料率は2026年3月分から1.59%→1.62%に上がった > - 天引き額が変わったときは、所得段階の変化、仮徴収と本徴収の差、医療保険料に加わった子ども・子育て支援金のどれかであることが多い。通知の内訳の行で見分けられる 「10月の年金振込通知を見たら、介護保険料の天引きが増えていた」 「給与明細の介護保険料が、春から少し上がっている」 「ニュースで保険料が過去最高と聞いたけれど、うちの親も上がったの?」 ——介護保険料は、65歳以上と40〜64歳で決まり方も、見直しの時期も違います。同じ「介護保険料が上がった」という話でも、どちらの保険料のことか、どの通知の数字かで答えが変わります。 この記事では、厚生労働省の審議会資料、全国健康保険協会(協会けんぽ)、大田区・柏市・世田谷区の案内をもとに、**2026年度の介護保険料の動きと、天引き額が変わったときの見分け方**を家族向けに整理しました。施設の食費・居住費や、介護サービスを使うときの自己負担(1〜3割)は、この記事で扱う保険料とは別のものです。 > この記事でわかること > - 65歳以上と40〜64歳で、介護保険料の決まり方がどう違うか > - 2026年度に上がったもの、変わっていないもの > - 年金からの天引き額が10月に変わる理由 > - 子ども・子育て支援金と介護保険料の違い > - 通知を見るときに確かめる行 --- ## 介護保険料は2026年度に上がった? **65歳以上の基準額は、多くの市区町村で2025年度と同じです。40〜64歳の保険料は毎年度見直され、協会けんぽでは料率が上がりました。** 介護保険の費用は、半分を保険料、半分を税金(公費)でまかなっています。保険料を納めるのは40歳以上の人で、65歳以上の「第1号被保険者」と、40〜64歳の「第2号被保険者」に分かれます。介護保険のしくみ全体は[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しています。 2026年度の動きを表にまとめました。 | | 65歳以上(第1号) | 40〜64歳(第2号) | | --- | --- | --- | | 金額を決めるところ | 住んでいる市区町村 | 加入している医療保険(協会けんぽ・健保組合・共済・国民健康保険など) | | 見直しの時期 | 3年ごと | 毎年度 | | 2026年度の動き | 2024〜2026年度は同じ基準額の期間。全国平均は月6,225円 | 1人当たり月額の見込みが6,202円(2025年度)から6,360円(2026年度)に | | 次の大きな節目 | 2027年4月(第10期の保険料) | 毎年3月分・4月分ごろ | | 納め方 | 年金からの天引き、または納付書・口座振替 | 健康保険料と一緒に納める | ![65歳以上と40〜64歳の介護保険料の決まり方の比較図。65歳以上は住んでいる市区町村が3年ごとに決め、2024〜2026年度は同じ基準額で全国平均は月6,225円、所得段階は前年の所得や世帯の住民税の課税状況で毎年変わりうる、年金が年18万円以上なら天引き、次の見直しは2027年4月。40〜64歳は加入している医療保険が毎年度決め、1人当たり月額の見込みは6,202円から6,360円、協会けんぽの料率は2026年3月分から1.59%から1.62%、会社員は会社と半分ずつ負担。下段に、2026年4月分からの子ども・子育て支援金は医療保険料に上乗せされる別の負担と注記。](/column-figures/kaigo-hokenryo-2026-comparison.svg) 厚生労働省が2026年3月の社会保障審議会介護保険部会に出した資料には、65歳以上の保険料(基準額の全国平均)と40〜64歳の保険料(1人当たり月額)の推移が載っています。65歳以上は2024〜2026年度の3年間が月6,225円、40〜64歳は2026年度が6,360円の見込みで、どちらも制度が始まってから最も高い水準です([厚生労働省 第134回社会保障審議会介護保険部会 資料4 令和8年度介護納付金の算定について](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001668457.pdf))。 --- ## 65歳以上の介護保険料は、どう決まる? **住んでいる市区町村が、3年分の介護サービスの見込みから「基準額」を決め、本人の所得や世帯の住民税の課税状況に応じた段階ごとに金額を割り当てます。** 65歳以上の保険料は、市区町村が3年ごとにつくる介護保険事業計画にもとづいて決まります。2024〜2026年度は「第9期」と呼ばれる期間で、この3年間は同じ基準額が使われます。厚生労働省によると、第9期の基準額の全国平均は月6,225円で、第8期(2021〜2023年度)の6,014円から上がりました([厚生労働省 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40211.html))。金額は市区町村によって違うので、親の保険料は住民票のある市区町村の案内で確かめます。 本人が納める額は、基準額に段階ごとの割合をかけて決まります。段階は、次の2つで決まります。 - **本人の前年の所得**(年金収入を含む) - **世帯の住民税の課税状況**(同じ世帯の家族に住民税がかかっているか) 大田区は、2026年度の保険料を「2025年1月から12月までの所得等」をもとにした住民税の課税状況で決めたと案内しています([大田区 令和8年度の介護保険料納入通知書を郵送します(65歳以上第1号被保険者)](https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/fukushi/kaigo/kaigohokenryotsuti2026.html))。基準額が3年間同じでも、前年の所得や世帯の状況が変われば、本人の段階は毎年動きます。 同じ世帯の家族の課税状況で段階が変わるしくみは、世帯分離を考える家族がよく確認する点です。影響と注意点は[世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点](/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide)で整理しています。 ### 2026年度に限った計算の特例 2025年度の税制改正で、給与所得控除の最低額が55万円から65万円に引き上げられました。大田区は、この改正で給与所得が下がる人がいるため、2026年度の介護保険料に限り、改正前の給与所得控除額を使って計算する特例を設けたと案内しています。パートやアルバイトの給与収入がある65歳以上の方は、税金の計算と介護保険料の計算で使う所得が違うことがあります。 --- ## 40〜64歳の介護保険料は、どう決まる? **加入している医療保険が、国に納める介護の費用(介護納付金)をもとに毎年度決めます。会社員は健康保険料と一緒に給与から引かれ、会社と半分ずつ負担します。** 40〜64歳の保険料は、協会けんぽ・健康保険組合・共済組合・国民健康保険といった医療保険が集め、「介護納付金」として社会保険診療報酬支払基金にまとめて納めます。必要な額は年度ごとに決まるため、料率も毎年度見直されます([協会けんぽ 協会けんぽの介護保険料率について](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/002/index.html))。 協会けんぽの介護保険料率は、2025年度の1.59%から、2026年度は1.62%になりました。会社員などの一般の加入者は2026年3月分(4月納付分)から、任意継続の加入者などは4月分からの適用です。会社員の保険料は、本人と会社が半分ずつ負担します([e-Gov法令検索 健康保険法 第161条](https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070))。 標準報酬月額30万円の会社員の場合で計算すると、次のようになります。 | | 2025年度(1.59%) | 2026年度(1.62%) | | --- | --- | --- | | 介護保険料(月額) | 4,770円 | 4,860円 | | うち本人負担(半分) | 2,385円 | 2,430円 | 本人負担は月45円の増加です。健康保険組合や共済組合は料率をそれぞれ決めているので、勤め先の保険の案内や給与明細で確かめます。国民健康保険の方は、市区町村が保険料(税)の「介護分」を年度ごとに決めています。 --- ## 年金からの天引き額が10月に変わるのはなぜ? **4月・6月・8月は前の年度と同じ額を仮に引き、10月・12月・2月にその年度の正しい額との差を調整するからです。年度の保険料が前の年度と違うと、10月から天引き額が変わります。** 65歳以上で年金を年額18万円以上受け取っている方は、介護保険料が年金から天引きされます(特別徴収)。柏市の案内では、天引きは年6回で、次のように分かれています([柏市 介護保険料の通知と納付方法](https://www.city.kashiwa.lg.jp/kourei/kaigo/kaigohoken/hokenryo/hokenryo.html))。 | 年金の支給月 | 呼び方 | 引かれる額 | | --- | --- | --- | | 4月・6月・8月 | 仮徴収 | 前の年度と同じ額 | | 10月・12月・2月 | 本徴収 | その年度の年額から仮徴収分を差し引いた残りを3回に分けた額 | 4月の時点では前年の所得がまだ確定していないため、前の年度と同じ額を仮に引いておき、所得が確定した後の本徴収で調整するしくみです。年度の保険料は6〜7月ごろに届く通知書で知らされます(柏市は毎年6月、大田区は2026年7月10日ごろから郵送と案内)。 たとえば、所得段階が上がって年額が増えた方は、10月からの天引き額が4〜8月より多くなります。段階が下がった方は少なくなります。大田区は、仮徴収と本徴収の差が大きくなりそうな方について、6月・8月の額を調整して年間の額をならす処理をしていると案内しています。同じような調整をしている市区町村もあるので、6月・8月の額が前年度と違っていても慌てずに通知を確かめます。 ### 65歳になった年は、納め方が変わる 65歳になると、健康保険料と一緒に納めていた40〜64歳の介護保険料はかからなくなり、市区町村に納める65歳以上の保険料に切り替わります。柏市は、65歳になった方は天引きの準備が整うまでの半年から1年ほどは納付書などで納め、その後に年金からの天引きに切り替わると案内しています。親が65歳になった年に「納付書が届いた」「しばらくして天引きが始まった」という変化があったときは、納め方が切り替わる途中の可能性があるので、届いた通知の対象期間を確かめます。 --- ## 子ども・子育て支援金は、介護保険料の値上げ? **いいえ、別の負担です。2026年4月分から、医療保険料とあわせて納める新しい項目として加わりました。** 協会けんぽは、40〜64歳の加入者について、健康保険料率と全国一律の介護保険料率(1.62%)に加えて、2026年4月分(5月納付分)から子ども・子育て支援金(0.23%)が加わると案内しています([協会けんぽ 令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3130/r08/))。国民健康保険でも、世田谷区は2026年4月分から、医療分・後期高齢者支援分・介護分に加えて「子ども・子育て支援金分」を合算して納めると案内しています([世田谷区 令和8年度より国民健康保険料に子ども・子育て支援金分が加算されます](https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/32027.html))。 65歳以上の方は、介護保険料とは別に、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料も年金から天引きされていることがあります。年金振込通知書や給与明細では、介護保険料と医療保険料(支援金を含む)は別の行に書かれています。**「介護保険料」の行が変わったのか、別の行が変わったのか**を見ると、何が増えたのかを取り違えずに済みます。 --- ## 2027年度には何が変わる? **65歳以上の保険料は、2027年4月から第10期の基準額に切り替わります。金額は、市区町村が2026年度中に計画をつくって決めます。** 第9期の基準額が使われるのは2026年度(2027年3月)までです。2027年度からの3年間の基準額は、各市区町村がこれからつくる第10期の介護保険事業計画にもとづいて決まります。親の住む市区町村の金額は、2027年春ごろの広報や、6〜7月ごろに届く2027年度の通知書で確かめられます。 国の審議会では、介護サービスを使うときの自己負担(2割負担の対象拡大)など、保険料以外の負担の見直しも議論されてきました。議論の経緯は[2027年度の介護保険改正で何が変わる?──2割負担の対象拡大は「先送り」、ケアプラン有料化の議論を家族向けに整理](/columns/kaigo-hoken-2027-reform-family-guide)にまとめています。 施設に入っている親の「食費・居住費」が上がった場合は、介護保険料とは別の話です。2026年8月の改定については[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で確認できます。 --- ## 通知が届いたら、どこを見ればいい? **決定通知書の「所得段階」と「年額」を前年度の通知と並べ、年金振込通知書や給与明細では「介護保険料」の行だけを比べます。** 親の介護保険料が上がったように見えたときは、次の順で確かめると、原因を絞り込みやすくなります。 1. **どの保険料かを確かめる**:介護保険料の行か、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料の行か 2. **決定通知書の所得段階を前年度と比べる**:段階が変わっていれば、前年の所得か世帯の課税状況が変わった可能性がある 3. **年額を前年度と比べる**:年額が同じなのに10月から天引き額が変わったなら、仮徴収と本徴収の調整による 4. **わからなければ市区町村に聞く**:通知書に書かれた介護保険担当の電話番号に、「段階が変わった理由」を尋ねる 親が亡くなったあとの保険料の精算(前月分までの月割り、払い過ぎの還付)は、[親が亡くなったら介護保険の手続きは?──保険証の返却・保険料の精算・払い戻しの請求を家族向けに整理](/columns/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide)で扱っています。 --- ## 今日からできること 1. **親の決定通知書を探す**:2026年6〜7月ごろに届いた介護保険料の通知書(決定通知書・納入通知書)と、2025年度の通知を並べる 2. **10月の年金振込通知書を見る**:介護保険料の行が4〜8月と比べてどう変わったかを確かめる 3. **給与明細の介護保険料を見る**:40〜64歳の方は、3月分(4月支給の給与)からの額を確かめる ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。保険料の金額・段階・納め方は市区町村や加入している医療保険によって異なります。個別の金額は、通知書に記載の市区町村の介護保険担当や、加入している医療保険の窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 第134回社会保障審議会介護保険部会 資料4 令和8年度介護納付金の算定について(報告)](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001668457.pdf) - [厚生労働省 - 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40211.html) - [全国健康保険協会(協会けんぽ) - 協会けんぽの介護保険料率について](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/002/index.html) - [全国健康保険協会(協会けんぽ) - 令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3130/r08/) - [e-Gov 法令検索 - 健康保険法(第161条 保険料の負担)](https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070) - [大田区 - 令和8年度の介護保険料納入通知書を郵送します(65歳以上第1号被保険者)](https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/fukushi/kaigo/kaigohokenryotsuti2026.html) - [柏市 - 介護保険料の通知と納付方法(特別徴収・普通徴収)](https://www.city.kashiwa.lg.jp/kourei/kaigo/kaigohoken/hokenryo/hokenryo.html) - [世田谷区 - 令和8年度より国民健康保険料に子ども・子育て支援金分が加算されます](https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/32027.html) (確認日:2026年10月9日) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 親が亡くなったら介護保険の手続きは?──保険証の返却・保険料の精算・払い戻しの請求を家族向けに整理 - **slug**: kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide - **公開日**: 2026.10.6 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide **要約**: 結論、介護保険の資格は亡くなった日の翌日に失われ、保険証などの返却と保険料の精算が必要です。届出の期限は14日以内ですが、死亡届で処理が進む市区町村もあります。払い過ぎた保険料や高額介護サービス費の未支給分は相続人が受け取れます。 **本文**: # 親が亡くなったら介護保険の手続きは?──保険証の返却・保険料の精算・払い戻しの請求を家族向けに整理 > **この記事の要点(3行)** > > - 介護保険の資格は、亡くなった日の翌日に失われる。介護保険の被保険者証・負担割合証・負担限度額認定証を市区町村へ返す。届出の期限は14日以内だが、死亡届で処理が進み、返却だけで済む市区町村もある > - 介護保険料は、資格を失う日の前月分までを月割りで計算し直す。払い過ぎは相続人に還付され、不足は相続人が納める。年金からの天引きは止まるまで数か月かかることがある > - 亡くなる前に使った介護サービスの高額介護サービス費などの払い戻しは、相続人が請求できる。給付を受ける権利は2年で時効になるので、届いた書類は後回しにしない 「葬儀は終わったけれど、介護保険のことは何をすればいいのか分からない」 「保険証は返すの? 保険料はもう払わなくていいの?」 「介護費用の払い戻しの申請をしていた途中で、親が亡くなってしまった」 ——親を見送った直後は、届けや支払いの書類が次々に届きます。介護保険の手続きは、それほど多くありません。何を返し、お金がどう精算され、何を請求できるのかを先に知っておくと、届いた書類を落ち着いて読めます。 この記事では、介護保険法・介護保険法施行規則と、国税庁、世田谷区・練馬区の案内をもとに、**親が亡くなったあとの介護保険まわりの手続き**を整理しました。細かな手順や必要書類は市区町村によって違うため、最後は住民票のあった市区町村の介護保険担当で確認してください。 > この記事でわかること > - 介護保険の資格喪失の届出と、返却するもの > - 介護保険料の精算のしかたと計算例 > - 亡くなる前の介護費用について、相続人が請求できる払い戻し > - 医療費控除と準確定申告の関係 > - ケアマネジャーや介護サービスの事業所に伝えること --- ## 親が亡くなったら、介護保険では何をする? **返却、精算、請求の3つです。保険証などを市区町村へ返し、介護保険料の過不足を精算し、亡くなる前に使った介護費用の払い戻しがあれば相続人が請求します。** おおまかな流れと期限を表にまとめました。 | 手続き | 期限の目安 | 主な窓口 | | --- | --- | --- | | 死亡届 | 亡くなったことを知った日から7日以内 | 市区町村の戸籍の窓口 | | 介護保険の資格喪失の届出、保険証などの返却 | 14日以内(返却の期限を設けていない市区町村もある) | 市区町村の介護保険担当 | | 介護保険料の精算(還付・不足分の納付) | 市区町村から通知が届いたら | 市区町村の介護保険担当 | | 高額介護サービス費などの未支給分の請求 | 請求できる時から2年以内 | 市区町村の介護保険担当 | | 準確定申告(必要な場合) | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 | 税務署 | ![親が亡くなったあとの介護保険まわりの手続きと期限を示した図。1は7日以内に死亡診断書を添えて死亡届を出す。2は14日以内に介護保険の資格喪失の届出と保険証などの返却。死亡届で処理が進む市区町村もある。3は1か月前後から保険料の精算で、亡くなった月の前月分までを納め、末日に亡くなった場合はその月まで。払い過ぎは相続人へ還付、不足は相続人が納付。4は4か月以内の準確定申告で、必要な場合のみ。医療費控除は亡くなった日までに支払った分。5は2年以内に、高額介護サービス費などの未支給分を相続人が請求。下段には、10月15日に亡くなると資格を失う日は10月16日で9月分まで、10月31日に亡くなると資格を失う日は11月1日で10月分まで納める計算例を示している。](/column-figures/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-timeline.svg) 死亡届そのものや、自宅で亡くなったときの連絡の順番は、[在宅看取り、家族は何を準備する?──支えてくれる人・亡くなったときの連絡先・費用の考え方](/columns/zaitaku-mitori-family-guide)で解説しています。この記事は、その後に続く介護保険の手続きを扱います。 --- ## 資格喪失の届出は必要?何を返せばいい? **決まりとしては、資格を失ってから14日以内に市区町村へ届け出ます。返すのは介護保険の被保険者証と、交付されていれば負担割合証と負担限度額認定証です。死亡届で処理が進み、返却だけで済む市区町村もあります。** 介護保険法施行規則第32条は、介護保険の被保険者証が交付されている人が資格を失ったときは、**14日以内**に届書を市区町村に出すことを定めています。届書には被保険者証と負担割合証を添えることになっています(同規則第33条)。65歳以上の方のほか、40〜64歳で要介護認定を受け、被保険者証が交付されていた方も対象です([e-Gov法令検索 介護保険法施行規則](https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036))。 一方で、実際の手続きは市区町村によって違います。たとえば世田谷区は、亡くなった方の介護保険の手続きとして、死亡届のほかに次の書類を返すよう案内しており、返す期限は「なし」としています([世田谷区 亡くなられた方の介護保険手続きについて](https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2223.html))。 - 介護保険被保険者証 - 介護保険負担割合証(交付されている場合) - 介護保険負担限度額認定証(交付されている場合) 返し方も、窓口のほか郵送で受け付ける市区町村があります。住民票のあった市区町村のホームページで「介護保険 死亡」と調べるか、介護保険担当に電話して、**届書が必要か、返すだけでよいか、郵送でよいか**の3点を確かめると、無駄な往復をせずに済みます。 市区町村によっては、亡くなった方の手続きをまとめて案内する「おくやみ窓口」を設けています(例:[さいたま市 おくやみ窓口](https://www.city.saitama.lg.jp/007/008/001/p089128.html))。介護保険の返却も同じ日に済ませられることがあるので、窓口があるか確認してから出かけると、役所に行く回数を減らせます。 --- ## 介護保険料は、いつの分まで払う? **資格を失う日(亡くなった日の翌日)の前月分までです。月の途中で亡くなったときは前の月の分まで、月の末日に亡くなったときはその月の分までになります。払い過ぎは相続人に還付され、不足していれば相続人が納めます。** 練馬区は、亡くなった方の介護保険料を「資格喪失日(死亡日の翌日)の前月まで」の月割りで計算すると案内しています([練馬区 死亡や転出により資格喪失した場合の介護保険料について](https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/kaigohoken/hokenryo/kaigo_soushitu.html))。計算例は次のとおりです。 | 亡くなった日 | 資格を失う日 | 保険料を納める月 | | --- | --- | --- | | 10月15日 | 10月16日 | 9月分まで | | 10月31日 | 11月1日 | 10月分まで | 計算し直した結果は、市区町村から通知が届きます。 - **納め過ぎていた場合**:相続人に還付されます。世田谷区では資格喪失から1か月程度で還付通知書が届き、必要書類を返送してから約4〜6週間後に振り込まれると案内しています。亡くなった方本人の口座には振り込めないため、請求する人の口座を用意します([世田谷区 介護保険料の還付について](https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2294.html)) - **不足していた場合**:相続人が納付書で納めます 保険料を年金から天引きされていた場合は、注意が要ります。練馬区は、年金からの天引きが止まるまでに数か月程度かかり、その間に亡くなったあとに支給される未支給年金からも保険料が引かれることがあると説明しています。引かれ過ぎた分は精算の対象になるので、通知を捨てずにとっておきます。年金そのものの手続きは、年金事務所や年金の窓口で別に行います。 --- ## 亡くなる前の介護費用の払い戻しは、まだ請求できる? **請求できます。亡くなる前に使った介護サービスの自己負担が上限を超えていた分などは、相続人が受け取ります。給付を受ける権利は2年で時効になるので、届いた申請書は早めに返送します。** 介護保険には、1か月の自己負担が上限を超えた分が戻る**高額介護サービス費**があります。本人が亡くなったあとに支給が確定した分は、相続人が請求します。世田谷区では、未支給の介護給付費が確認できたときに調査書兼申請書を送り、相続人の代表者が記入して返送する流れを案内しています([世田谷区 亡くなられた方の介護保険手続きについて](https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2223.html))。 介護保険法第200条は、保険給付を受ける権利と保険料の還付を受ける権利を、**行使できる時から2年**で時効により消えると定めています([e-Gov法令検索 介護保険法](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123))。葬儀や相続の手続きと重なって書類が埋もれやすい時期なので、市区町村からの封筒は1か所にまとめて置いておきます。 払い戻しの対象になりうる制度は、次のとおりです。 | 制度 | 対象 | 確認する記事 | | --- | --- | --- | | 高額介護サービス費 | 1か月の介護サービスの自己負担が上限を超えた分 | [高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide) | | 高額医療・高額介護合算療養費 | 1年間の医療と介護の自己負担の合計が上限を超えた分 | [医療費と介護費用、両方が高額なら「合算」で戻ってくることも──高額医療・高額介護合算療養費制度をやさしく解説](/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide) | 合算療養費は、医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度など)の窓口が申請先になります。介護保険の窓口とは別なので、両方に問い合わせが必要な場合があります。 ### 医療費控除は、亡くなった日までに支払った分だけ 亡くなった方にその年の所得があり、確定申告が必要な場合は、相続人が**準確定申告**をします。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。 このとき医療費控除に入れられるのは、**亡くなった日までに本人が支払った医療費だけ**です。亡くなったあとに相続人が支払った医療費は、亡くなった方の準確定申告では医療費控除に含められません([国税庁 No.2022 確定申告を要する人が死亡したとき(準確定申告)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm))。介護サービスのうち医療費控除の対象になるものの範囲は、[介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)で整理しています。 介護サービスの請求書は、亡くなった月の分があとから届きます。支払った日付が亡くなる前か後かで扱いが分かれるので、領収書には支払日がわかる形で残しておきます。 --- ## ケアマネジャーや介護サービスの事業所には、何を伝える? **まず担当のケアマネジャーに亡くなったことを伝えます。利用していたサービス事業所への連絡や、福祉用具の返却の段取りは、ケアマネジャーと相談しながら進められます。** 在宅で介護サービスを使っていた場合、ケアマネジャーは利用していた事業所をすべて把握しています。連絡を受けたケアマネジャーが各事業所に伝えてくれることが多いので、家族が1社ずつ電話をかける前に、どこまで任せられるかを聞いてみてください。 あわせて確認しておくとよいことは、次のとおりです。 - **福祉用具(介護ベッド・車いすなど)の返却日**:回収に来てもらう日を決める - **最後の月の利用料の請求**:いつ、どの口座から引き落とされるか、または請求書が届くか - **施設に入所していた場合**:退所の手続き、私物の引き取り、居室の明け渡しの期限、最後の月の費用の精算方法 利用料の計算方法(日割りか月額か)は、サービスの種類や事業所との契約によって違います。契約書や重要事項説明書を手元に置いて確認すると、請求額の根拠が分かりやすくなります。 --- ## 手続きが重なってつらいときは? **この記事で扱う手続きのうち、期限が決まっているのは死亡届の7日、介護保険の届出の14日、準確定申告の4か月、払い戻しの2年です。そのほかは、届いた通知に沿って進めれば足ります。** 親を見送った直後は、葬儀、相続、年金、銀行など、介護保険以外の手続きも重なります。すべてを一度に片づけようとせず、期限のあるものから順に進めてかまいません。きょうだいがいる場合は、「役所の手続き」「事業所への連絡」「書類の保管」のように担当を分けると、一人に負担が集中しにくくなります。分担の決め方は[親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方](/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide)でも触れています。 手続きが落ち着いたころに、介護をしていた日々のことや、見送ったあとの気持ちが押し寄せてくることもあります。介護そっとねっとでは、親を見送った人の書き込みを読んだり、名前を出さずに自分の気持ちを書いたりできます。 --- ## 今日からできること 1. **介護保険の書類を1か所に集める**:被保険者証、負担割合証、負担限度額認定証、市区町村からの封筒、介護サービスの請求書と領収書 2. **市区町村の介護保険担当に確認する**:届書が必要か、返すだけでよいか、郵送でよいか 3. **ケアマネジャーに連絡する**:事業所への連絡と福祉用具の返却をどこまで任せられるかを聞く ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。手続きの方法・必要書類・受付の窓口は市区町村によって異なるため、住民票のあった市区町村の介護保険担当にご確認ください。相続や税金の個別の判断は、税務署や専門家にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [e-Gov 法令検索 - 介護保険法(第11条 資格喪失の時期、第200条 時効)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) - [e-Gov 法令検索 - 介護保険法施行規則(第32条 資格喪失の届出、第33条 届書の記載事項等)](https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100036) - [世田谷区 - 亡くなられた方の介護保険手続きについて](https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2223.html) - [世田谷区 - 介護保険料の還付について](https://www.city.setagaya.lg.jp/02061/2294.html) - [練馬区 - 死亡や転出により資格喪失した場合の介護保険料について](https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/kaigohoken/hokenryo/kaigo_soushitu.html) - [国税庁 - No.2022 確定申告を要する人が死亡したとき(準確定申告)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm) - [さいたま市 - おくやみ窓口](https://www.city.saitama.lg.jp/007/008/001/p089128.html) (確認日:2026年10月6日) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 在宅看取り、家族は何を準備する?──支えてくれる人・亡くなったときの連絡先・費用の考え方 - **slug**: zaitaku-mitori-family-guide - **公開日**: 2026.10.2 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/zaitaku-mitori-family-guide **要約**: 結論、在宅看取りは訪問診療の医師と訪問看護を軸に支える人を決め、呼吸が止まったときに最初に電話する先を家族で共有しておくことが準備の中心です。医師が立ち会えなくても死亡診断書は交付され得ること、119番との違い、費用の制度まで整理しました。 **本文**: # 在宅看取り、家族は何を準備する?──支えてくれる人・亡くなったときの連絡先・費用の考え方 > **この記事の要点(3行)** > > - 在宅看取りは、訪問診療の医師と訪問看護師を中心に、ケアマネジャーやヘルパーが加わるチームで支える。家族がすべてを抱える形ではない > - 準備の要は「呼吸が止まったときに最初に電話する先」を家族全員で共有しておくこと。119番に通報すると、救急隊は救命を主眼に動くため、心肺蘇生や搬送が始まることがある > - 医師が亡くなる瞬間に立ち会えなくても、生前に診療していた病気による死亡と判定できれば死亡診断書は交付され得る。家で看取ると決めたあとで、入院や施設に切り替えることもできる 「親が『最期は家で』と言っている。でも、家族だけで本当に看られるのか分からない」 「夜中に息が止まったら、救急車を呼べばいいの?」 「訪問診療の先生から在宅看取りの話が出たけれど、何を準備すればいいのか見当がつかない」 ——親の病気が進み、残された時間を意識するようになったご家族から、こうした声が届きます。家で最期を過ごすことは、医療と介護の専門職が自宅に来てくれる仕組みを使えば、家族が医療の知識を持っていなくても選べる道です。 この記事では、厚生労働省の通知・ガイドラインと東京消防庁の案内をもとに、**在宅看取りを支える人**、**家族が前もって準備すること**、**呼吸が止まったときの連絡の順番**、**費用を軽くする制度**、そして**気持ちが揺れたときの考え方**を整理しました。病状や治療の判断は、主治医や訪問看護師に確認してください。 > この記事でわかること > - 在宅看取りを支えてくれる人と、それぞれの役割 > - 家族が前もって準備しておく4つのこと > - 呼吸が止まったときに、どこへ電話するか > - 医師が立ち会えなかったときの死亡診断書の扱い > - 費用を軽くする制度と、途中で方針を変えたくなったときの考え方 --- ## 在宅看取りは、誰が支えてくれる? **訪問診療の医師と訪問看護師が中心になり、ケアマネジャー、ホームヘルパー、福祉用具の事業者などがチームで支えます。家族は本人のそばで過ごし、変化に気づいたらチームに連絡する役割を担います。** 在宅看取りに関わる主な人と役割は、次のとおりです。 | 支える人 | 主な役割 | | --- | --- | | 訪問診療の医師 | 定期的に自宅で診察し、痛みや息苦しさを和らげる治療を考える。急な変化のときの往診、死亡の確認と死亡診断書の作成 | | 訪問看護師 | 体調の観察、医師の指示による医療的な処置、痛みや苦しさへの対応。家族への介助の助言。24時間対応の体制がある事業所では夜間の電話相談も | | ケアマネジャー | 介護保険のサービスを組み合わせたケアプランを作り、事業所との調整を行う | | ホームヘルパー・訪問入浴 | おむつ交換、体位の交換、身体を清潔に保つ介助など | | 福祉用具の事業者 | 介護ベッドやエアマットなどの貸与 | 訪問診療を担う診療所のうち「在宅療養支援診療所」には、**24時間連絡を受ける体制、24時間往診できる体制、24時間訪問看護を提供できる体制**を整えることが、国の基準として求められています([厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の資料](https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479591.pdf))。まずは今の主治医に、訪問診療をしている医療機関を紹介してもらえるか相談します。かかりつけ医がいない場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談できます。 訪問看護は、介護保険と医療保険のどちらを使うかで回数や費用の仕組みが変わります。末期がんなど病状によっては医療保険の訪問看護になることもあるため、[訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安・頼めることをやさしく解説](/columns/visiting-nursing-care-guide)で仕組みを確かめておくと、説明を受けたときに話が追いやすくなります。 --- ## 在宅看取りを始める前に、家族は何を準備する? **本人の希望を聞くこと、支える人を決めること、連絡先を1枚にまとめること、家族が休む段取りを決めることの4つです。とくに連絡先は、家族全員が同じ紙を見て動けるようにしておきます。** ![在宅看取りの準備と、呼吸が止まったときの連絡を示した図。上段は、本人の希望を聞く、支える人を決める、連絡先を1枚にまとめる、家族の休みを決める、の4つの準備。下段は、在宅看取りを決めていて呼吸が止まったと気づいたら、決めておいた訪問看護ステーションまたは訪問診療の医師へ連絡し、医師が訪問して確認し、死亡診断書を添えて7日以内に死亡届を出す流れ。看取りを想定していない急変・事故や、連絡先につながらないときは119番に通報することも示している。](/column-figures/zaitaku-mitori-family-guide-flow.svg) ### 1. 本人の希望を聞く どこで過ごしたいか、どんな医療を受けたいか、受けたくないかを、本人の言葉で聞いておきます。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、本人による意思決定を基本とし、本人の意思は時間の経過や心身の状態の変化で**変わりうるもの**として、話し合いを繰り返すことが重要だとしています([厚生労働省 ガイドライン(2018年3月改訂)](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf))。 本人と話すきっかけのつくり方や、最初にかける一言の例は、[親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方](/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide)で紹介しています。話した内容は、訪問診療の医師や訪問看護師にも伝えておきます。 ### 2. 支える人を決める 訪問診療の医師、訪問看護ステーション、ケアマネジャーが決まったら、最初の面談で次の点を聞いておくと、後で慌てずに済みます。 - 夜間・休日に電話したとき、誰が出て、往診や訪問をしてもらえるか - 自宅での看取りに対応しているか - 痛みや息苦しさが強くなったとき、どんな対応ができるか - 介護ベッドなどの福祉用具を、いつまでに用意すればよいか 介護ベッドやエアマットは介護保険の福祉用具貸与で借りられます。選び方は[介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase)で解説しています。 ### 3. 連絡先を1枚にまとめる 連絡先は、家族の誰が見ても分かるように1枚の紙にまとめ、電話のそばに貼っておきます。次のような表にしておくと、夜中でも迷いにくくなります。 | 書いておくこと | 記入例(自分の家の内容に置き換えて書きます) | | --- | --- | | 最初に電話する先 | 訪問看護ステーションの24時間連絡先 | | 次に電話する先 | 訪問診療の診療所の夜間連絡先 | | 家族への連絡の順番 | 同居の長女 → 遠方の長男 → 叔母 | | 介護サービスの連絡先 | ケアマネジャー、ヘルパー事業所 | | 手元に置くもの | 保険証、お薬手帳、本人の希望を話し合った内容のメモ | ### 4. 家族が休む段取りを決める 看取り期は、夜間の見守りが続くこともあります。付き添いの交代の順番を決め、一人が眠れる時間をつくっておきます。働いている家族は、介護休業(対象家族1人につき3回まで、通算93日)や介護休暇を使える場合があります([厚生労働省 介護休業](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/))。会社への伝え方は[介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度](/columns/work-care-balance-2025-law)、きょうだいでの分担は[親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方](/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide)を参考にしてください。 --- ## 呼吸が止まったら、最初にどこへ電話する? **在宅看取りを決めている場合は、事前に決めておいた訪問看護ステーションか訪問診療の医師に電話します。119番に通報すると、救急隊は救命を主眼に動くため、心肺蘇生や搬送が始まることがあります。** 東京消防庁は、本人と家族が医師らと話し合って自宅での看取りの意思を固めていても、慌てた家族が119番に通報した場合、救急隊は救命を主眼とするため、そのままでは本人の意思に沿うことができないと説明しています([東京消防庁 心肺蘇生を望まない傷病者への対応について](https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu_adv/acp.html))。 東京消防庁では、人生会議(ACP)が行われていて、本人が心肺蘇生を望んでいないことなどを救急隊が**かかりつけ医に確認できた場合**に、心肺蘇生を中止してかかりつけ医や家族に引き継ぐ運用を定めています。ただし、こうした運用の有無や手順は地域の消防本部によって異なります。どの地域でも確実なのは、最初の電話先を訪問看護・訪問診療にしておくことです。 一方で、次のようなときは**ためらわず119番に通報してください**。 - 転倒や窒息など、看取りとして想定していなかった事故や急変が起きた - 決めておいた連絡先に電話がつながらない - 本人がどんな状態なのか分からず、判断がつかない 迷ったときにすぐ相談できるよう、訪問看護師に「こういうときは、まずここへ電話」という線引きを前もって確認しておくと、いざというときに迷う時間が短くなります。 --- ## 医師が間に合わなかったら、死亡診断書はもらえない? **もらえる場合があります。医師が立ち会えず、最後の診察から24時間を過ぎていても、死亡後に改めて診察し、生前に診療していた病気に関連する死亡と判定できれば、死亡診断書を交付できます。** 「最後の診察から24時間を過ぎて亡くなると、死亡診断書が書けず警察に届けなければならない」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。厚生労働省は2012年の通知で、これは医師法第20条の**誤った解釈**であり、こうした誤解で在宅での看取りが適切に行われていないケースがあると指摘しています([厚生労働省 医師法第20条ただし書の適切な運用について(通知)](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb8648&dataType=1&pageNo=1))。 通知の内容を家族の側から整理すると、次のようになります。 | 場面 | 扱い | | --- | --- | | 最後の診察から24時間以内に、診療していた病気で亡くなった | 改めて診察しなくても死亡診断書を交付できる | | 24時間を過ぎていても、死亡後の診察で、診療していた病気に関連する死亡と判定できた | 死亡診断書を交付できる | | 診療していた病気に関連する死亡と判定できない | 死体の検案を行う。異状があると認められる場合は警察署へ届け出る | この仕組みが成り立つのは、**日頃から訪問診療で診てもらっていること**が前提です。在宅看取りを考え始めたら、早めに訪問診療につながっておきます。 死亡診断書を受け取ったら、死亡届を出します。死亡届は、届出をする人が死亡の事実を知った日から**7日以内**に、死亡診断書を添えて出すことが戸籍法第86条で定められています([e-Gov法令検索 戸籍法](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224))。提出先や受付時間は、市区町村の案内で確かめてください。介護保険証の返却や保険料の精算など、その後に続く介護保険の手続きは[親が亡くなったあとの介護保険の手続き(保険証の返却・保険料の精算・払い戻しの請求)](/columns/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide)にまとめています。 --- ## 在宅看取りの費用はどう考える? **訪問診療などの医療保険の自己負担と、介護保険サービスの自己負担が別々にかかります。金額は病状や利用するサービスで大きく変わるため、医療機関とケアマネジャーにそれぞれ見積もりを聞くのが確実です。** 費用は、おおまかに次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。 | 費用の種類 | 例 | 負担を軽くする制度 | | --- | --- | --- | | 医療保険の自己負担 | 訪問診療、往診、医療保険の訪問看護、薬代 | 高額療養費 | | 介護保険の自己負担 | 訪問介護、介護保険の訪問看護、訪問入浴、福祉用具貸与 | 高額介護サービス費 | | 保険の対象外の費用 | おむつなどの消耗品、交通費など | 一部は医療費控除の対象になる場合がある | 介護保険の自己負担が1ヶ月の上限を超えたときは[高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)、医療と介護の両方の自己負担が1年間で高額になったときは[医療費と介護費用、両方が高額なら「合算」で戻ってくることも──高額医療・高額介護合算療養費制度をやさしく解説](/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide)で、対象と申請の流れを確認できます。訪問看護の費用などの医療費控除の扱いは[介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)で整理しています。 領収書は、医療機関・介護事業所ごとにまとめて保管しておくと、後で払い戻しの申請や確定申告をするときに探す手間が減ります。 --- ## 「やっぱり家では無理かもしれない」と感じたら? **入院や施設への切り替えも、選んでよい道です。一度決めた場所を守り通すことが目的ではありません。本人の苦痛や家族の限界を感じたら、訪問診療の医師や訪問看護師に相談します。** 先に紹介した厚生労働省のガイドラインは、本人の意思が変わりうることを前提に、その都度話し合うことを求めています。家族の状況が変わることも同じです。 - 本人の痛みや息苦しさが、家での対応では和らがない - 夜間の見守りが続き、家族が眠れていない - 家族の誰かが体調を崩した こうしたときは、在宅で続けるための手立て(訪問の回数を増やす、ヘルパーを増やすなど)と、入院・施設に移る選択肢の両方を、医師・訪問看護師・ケアマネジャーと一緒に検討します。家族自身の心が限界に近いと感じたら、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)も読んでみてください。 最期の場所がどこになっても、本人の希望を聞き、迷いながら選んだ過程そのものに意味があります。 --- ## 今日からできること 在宅看取りを考え始めたら、次の3つから手をつけます。 1. **本人に、どこで過ごしたいかを聞いてみる**:答えが出なくても、話題にしたこと自体を医師や訪問看護師に伝える 2. **主治医に、訪問診療について相談する**:今の通院先で訪問診療をしているか、紹介してもらえるかを聞く 3. **連絡先の紙をつくる**:最初に電話する先が決まっていなくても、家族の連絡の順番から書き始める 看取りの時期は、医療や制度の相談とは別に、揺れる気持ちを誰かに聞いてほしくなることがあります。介護そっとねっとでは、家で親を見送った人や、在宅か入院かで迷った人の書き込みを読んだり、名前を出さずに自分の気持ちを書いたりできます。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上の判断を行うものではありません。病状・治療・看取りの方針は主治医や訪問看護師に、介護サービスの利用は担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、119番通報時の救急隊の対応はお住まいの地域の消防本部の案内にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(2018年3月改訂)](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf) - [厚生労働省 - 医師法第20条ただし書の適切な運用について(通知)(2012年8月31日)](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb8648&dataType=1&pageNo=1) - [厚生労働省 - 令和6年度診療報酬改定 質の高い在宅医療・訪問看護の確保(在宅療養支援診療所の基準)](https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479591.pdf) - [東京消防庁 - 心肺蘇生を望まない傷病者への対応について](https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuu_adv/acp.html) - [厚生労働省 - 介護休業](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/) - [e-Gov 法令検索 - 戸籍法](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### ヒートショック対策、家族は何をすればいい?──冬の入浴事故を防ぐ準備と声かけ、もしもの対応 - **slug**: heat-shock-bath-safety-family-guide - **公開日**: 2026.9.25 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/heat-shock-bath-safety-family-guide **要約**: 結論、脱衣所と浴室を先に暖め、湯温は41度以下・つかるのは10分までを目安にし、入浴前後の一声で異変に早く気づくことが柱です。消費者庁の資料をもとに、在宅介護の家族ができる準備と、浴槽でぐったりしていたときの対応を整理しました。 **本文**: # ヒートショック対策、家族は何をすればいい?──冬の入浴事故を防ぐ準備と声かけ、もしもの対応 > **この記事の要点(3行)** > > - 2023年(令和5年)に浴槽での事故で亡くなった65歳以上の方は6,541人で、同じ年の65歳以上の交通事故死者(2,116人)の約3倍。11月〜4月の冬季に多く起きている > - 家族ができる準備の柱は、脱衣所と浴室を先に暖める、湯温41度以下・つかるのは10分まで、食後すぐ・飲酒後・服薬後の入浴を避ける、入浴前の一声と入浴中の声かけ > - 浴槽でぐったりしていたら、栓を抜いて助けを呼び、沈まないようにして119番。自宅の入浴が不安になったら、デイサービスや訪問入浴などの介護サービスも選べる 「冬になると、親が一人でお風呂に入るのが心配」 「実家の脱衣所が寒いけれど、何から手をつければいいのか分からない」 「長湯の親に、どう声をかければいいのか迷う」 ——寒くなる季節を前に、こうした不安を抱えるご家族は少なくありません。冬の入浴中の事故は、持病や前兆がない人にも起こるおそれがあると消費者庁も注意を呼びかけています。 この記事では、消費者庁・健康長寿ネットの公開資料をもとに、**冬の入浴で何が起きているのか**、**入浴の前・入浴中・出るときに家族ができること**、**もしものときの対応**、そして**自宅での入浴が不安になったときに使える介護サービス**を整理しました。夏の暑さ対策は[【2026年版】高齢者の熱中症予防、在宅介護でどう防ぐ?──室温28℃・水分補給・警戒アラート](/columns/elderly-heatstroke-prevention-home-care)で扱っています。夏は「室温を下げる」、冬は「部屋と部屋の温度差を小さくする」と考えると、季節ごとの備えを整理しやすくなります。 > この記事でわかること > - 冬の入浴中の事故がどれくらい起きているか > - ヒートショックが入浴中に危ない理由 > - 入浴の前・入浴中・出るときに家族ができる準備と声かけ > - 浴槽でぐったりしていたときの対応の手順 > - 自宅での入浴が不安になったときの介護サービス --- ## 冬の入浴中の事故は、どれくらい起きている? **2023年(令和5年)に浴槽での事故で亡くなった65歳以上の方は6,541人でした。同じ年に交通事故で亡くなった65歳以上の方(2,116人)の約3倍です。** 消費者庁の[コラム「高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」(2024年12月)](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20241219/)によると、厚生労働省の人口動態統計(令和5年)で、浴槽での事故による65歳以上の死亡者は6,541人、そのうち家や居住施設の浴槽での死亡者は6,073人です。「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった高齢者の約8割が入浴中に亡くなっています。 事故が多いのは冬です。消費者庁の[注意喚起「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042)では、家や居住施設の浴槽での事故は**11月〜4月の冬季を中心に**多く起きているとしています。健康長寿ネットの[「高齢者の入浴事故 ヒートショック対策と予防」](https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-sumai/koreisha-hitoshokkutaisakutoyobo.html)では、ヒートショックは12月〜2月の冬場に年間の約半数が集中するとされています。 本格的に冷え込む前の秋のうちに、実家の脱衣所の寒さや、入浴の時間帯を一度確かめておくと、冬の準備が間に合います。 --- ## ヒートショックとは? なぜ入浴中に危ないの? **急な温度の変化で血圧が大きく上下し、失神や不整脈などが起きることをいいます。湯船の中で意識を失うと、そのまま溺れてしまうおそれがあります。** 消費者庁の資料では、入浴時の血圧の動きを次のように説明しています。 1. 暖かい居間から、寒い脱衣所・浴室に入ると、血圧が上がる 2. その後、温かい湯につかると、血圧が下がる 3. 高齢になると血圧を正常に保つ働きが弱まるため、急な変動で脳の血流が減り、意識を失うことがある もう一つの危険は、**熱い湯に長くつかることによる体温の上昇**です。消費者庁によると、42度の湯に10分入ると体温が38度近くに達し、意識がもうろうとして浴槽から出られなくなったり、浴槽内にしゃがみ込んだりして溺れるおそれがあります。 また、居間や脱衣所が18度未満の住宅では、42度以上の「熱め入浴」が増えるという調査結果も紹介されています。寒い家ほど熱い湯に長くつかりたくなるため、**部屋を暖めることと、湯温を上げすぎないことはセットで考える**必要があります。 --- ## 入浴の前に、家族ができる準備は? **脱衣所と浴室を先に暖めること、食後すぐ・飲酒後・服薬後の入浴を避けること、入る前に家族へ一声かけてもらうことの3つです。** ![冬の入浴で家族と一緒に確認する3つの場面を示した図。入浴の前は脱衣所と浴室を暖め、食後すぐ・飲酒後・服薬後は避け、入る前に一声かける。湯につかっている間は湯温41度以下・10分までを目安にし、家族がこまめに声をかける。浴槽から出るときは手すりを使ってゆっくり立ち上がる。下段には浴槽でぐったりしていたときの対応手順をまとめている。](/column-figures/heat-shock-bath-safety-steps.svg) ### 1. 脱衣所と浴室を先に暖める 脱衣所には暖房器具を置き、入浴の少し前から暖めておきます。浴室に暖房設備がない場合、消費者庁は次の方法を紹介しています。 - 湯を浴槽に入れるときに、**シャワーから給湯する** - 湯が沸いたら十分にかき混ぜて蒸気を立て、**ふたを外しておく** 居室だけでなく家全体を暖かくし、部屋ごとの温度差を小さくすることが大切だとされています。 ### 2. 食後すぐ・飲酒後・服薬後の入浴は避ける 食後は血圧が下がりすぎる「食後低血圧」で失神することがあり、飲酒でも一時的に血圧が下がります。消費者庁は、食後すぐの入浴、アルコールが抜けるまでの入浴、精神安定剤や睡眠薬などの服用後の入浴を避けるよう呼びかけています。体調が悪い日も入浴を控えます。 親御さんが夕食後すぐにお風呂に入る習慣がある場合は、「夕食の前に入る」「食後は少し時間をあけてから入る」など、入浴の時間帯を一緒に見直してみてください。服薬の時間との兼ね合いは、かかりつけ医や薬剤師に確認しておくと、入浴の時間帯を決めやすくなります。 ### 3. 入る前に「今から入るね」と一声 入浴中の異変は、周りの人に早く気づいてもらうことが大切です。入る前に同居の家族へ一声かけてもらうと、家族は「いま入浴中だ」と意識できます。 消費者庁は、寒さが厳しい日には、気象情報からヒートショックのリスクの目安を示す「ヒートショック予報」なども参考にするよう勧めています。日本気象協会の[ヒートショック予報](https://tenki.jp/heatshock/)で、実家のある地域の目安を見ておくのも一つの方法です。 --- ## 湯につかっている間、家族はどう見守ればいい? **湯温は41度以下、つかるのは10分までを目安にします。家族はこまめに声をかけ、長すぎる・音がしない・大きな音がした、というときはためらわずに様子を確かめます。** 入浴そのものの目安として、消費者庁は次の点を挙げています。 | 場面 | 目安 | | --- | --- | | 湯の温度 | 41度以下 | | 湯につかる時間 | 10分まで | | 湯につかる前 | かけ湯をていねいに行う | | 浴槽から出るとき | 手すりや浴槽のへりを使って、ゆっくり立ち上がる | 湯の中では体に水圧がかかっています。急に立ち上がると、圧迫されていた血管が一気に広がり、脳へ行く血液が減って立ちくらみや一時的な意識障害を起こすことがあります。浴槽から出るときは、ゆっくり立ち上がるよう伝えておきましょう。 家族の見守りとして、消費者庁は次のような異常に気づいたら、ためらわずに声をかけるよう呼びかけています。 - いつもより入浴時間が長い - 浴室から音がしない - 突然、大きな音がした 「長湯を注意されるのが嫌」という親御さんもいます。入浴中に何度も声をかけるのが気まずい場合は、「上がったら『出たよ』と声をかけてね」と約束しておき、10分を過ぎても声がなければ様子を見に行く、という決まりにしておくと、お互いに気をつかわずに続けやすくなります。 ### 離れて暮らす親の場合は? 一人暮らしの親の入浴は、家族がその場で見守ることができません。電話をかける時間帯を入浴後に合わせる、寒い日は入浴の時間を早めにしてもらう、といった工夫を親御さんと話し合っておくとよいでしょう。離れて暮らす親の見守り全般は、[一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?──きょうだいがいない・離れて暮らす家族のための備えと使えるサービス](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)でも紹介しています。 --- ## 浴槽でぐったりしていたら、どうすればいい? **まず浴槽の栓を抜いて大声で助けを呼び、沈まないようにしてすぐに119番します。浴槽から出せたら、反応と呼吸を確かめ、呼吸がなければ胸骨圧迫を始めます。** 消費者庁は、浴槽でぐったりしている人を見つけたときの対応を、次の手順で案内しています(可能な範囲で行います)。 1. **浴槽の栓を抜く**。大声で助けを呼び、人を集める 2. 浴槽から出せるようであれば出す。**出せない場合は、ふたに上半身を乗せるなどして沈まないようにする**。すぐに救急車を呼ぶ 3. 浴槽から出せた場合は、肩をたたきながら声をかけ、反応があるか確かめる 4. 反応がない場合は、呼吸を確かめる 5. 呼吸がない場合は、胸骨圧迫を始める 6. 人工呼吸ができる場合は、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す。できなければ胸骨圧迫だけを続ける いざというときに体が動くよう、消防署などが開いている救命講習を受けておくことも勧められています。手順を紙に書いて、脱衣所の近くに貼っておくご家庭もあります。 --- ## 自宅での入浴が不安になったら、どんな介護サービスがある? **デイサービスで入浴する、訪問入浴介護で自宅に浴槽を持ち込んでもらう、ヘルパーに入浴介助を頼む、といった方法があります。浴室の手すりの取付けは介護保険の住宅改修の対象です。** 要介護認定を受けている方は、介護保険のサービスで入浴を支えてもらうこともできます。 | 方法 | どんなときに検討するか | | --- | --- | | デイサービス(通所介護)での入浴 | 通う体力があり、自宅の浴室が寒い・狭いなどで家での入浴に不安がある | | 訪問入浴介護 | 自宅の浴槽での入浴が難しく、寝たきりに近い状態でも家で入浴したい | | 訪問介護(ホームヘルプ)の入浴介助 | 自宅の浴室で、介助があれば入浴できる | | 住宅改修(手すりの取付けなど) | 浴槽から立ち上がるときにつかまる場所がほしい | デイサービスの入浴の様子や選び方は[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方、親が行きたがらないときの対応まで解説](/columns/day-service-guide)、専用の浴槽を持ち込んで自宅で入浴する方法は[訪問入浴介護とは?対象者・料金・サービスの流れをやさしく解説](/columns/visiting-bath-care-guide)で詳しく紹介しています。 浴室の手すりの取付けは、介護保険の住宅改修の対象になる6種類の工事の一つです。一方で、浴室暖房機の設置はこの6種類に含まれていません。手すりの取付けを検討する場合は、[介護保険の住宅改修は20万円まで──手すり・段差解消の対象工事と申請の流れ](/columns/jutaku-kaishu-20man-guide)で、着工前の申請の流れを確かめてください。 どのサービスが合うかは、身体の状態や家の造りによって変わります。「冬の入浴が心配になってきた」と、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに伝えるところから始めてください。 --- ## 今日からできること 寒くなる前に、次の3つから始めてみましょう。 1. **実家の脱衣所と浴室の寒さを確かめる**:暖房器具を置けるか、シャワーで湯はりができるかを見ておく 2. **入浴の決まりごとを家族で話す**:入る前の一声、「出たよ」の合図、食後すぐは入らない、を共有する 3. **もしものときの手順を貼っておく**:栓を抜く、助けを呼ぶ、119番の順番を、脱衣所の近くに書いておく 親の入浴の見守りは、毎日のことだからこそ家族の気がかりになりやすいテーマです。介護そっとねっとには、冬の入浴をどう見守っているか、どんな声かけをしているかといった経験を、匿名で分かち合っているご家族がいます。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。持病のある方や、入浴中にめまい・立ちくらみを起こしたことがある方は、入浴の仕方についてかかりつけ医に相談してください。介護サービスの利用は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [消費者庁 - 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!(2020年11月)](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_042) - [消費者庁 - コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―(2024年12月)](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20241219/) - [健康長寿ネット - 高齢者の入浴事故 ヒートショック対策と予防](https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koureisha-sumai/koreisha-hitoshokkutaisakutoyobo.html) - [日本気象協会(tenki.jp) - ヒートショック予報](https://tenki.jp/heatshock/) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 医療費と介護費用、両方が高額なら「合算」で戻ってくることも──高額医療・高額介護合算療養費制度をやさしく解説 - **slug**: kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide - **公開日**: 2026.9.22 - **更新日**: 2026.10.13 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide **要約**: 結論、1年間(8月〜翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担を世帯で合算し、限度額を501円以上超えたら払い戻されます。高額介護サービス費・高額療養費との違い、限度額の目安、2段階の申請手順をやさしく整理しました。 **本文**: # 医療費と介護費用、両方が高額なら「合算」で戻ってくることも──高額医療・高額介護合算療養費制度をやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 結論、1年間(毎年8月〜翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担額を世帯で合算し、所得区分ごとの限度額を501円以上超えたら、超えた分が払い戻される制度です。月ごとの「高額介護サービス費」「高額療養費」とは別に、年単位でもう一段の軽減があります > - 限度額は所得区分によって年額19万円〜212万円まで6〜7段階に分かれ、70歳以上か70歳未満かでも区分が異なります > - 申請はまず介護保険者(市区町村)に届け出て「自己負担額証明書」を受け取り、その証明書を添えて医療保険者(健康保険組合・市区町村国保など)に申請する2段階の手続きです 「訪問看護の費用も、入院した医療費も、今年はいつもより多かった気がする」 「高額介護サービス費の払い戻しは申請したけれど、医療費のほうは何もしていない」 「医療費と介護費用、両方合わせて軽くなる制度があるって聞いたけれど、詳しく知らない」 ——介護と医療を両方必要とするご家庭では、それぞれの自己負担が「月単位」では上限内に収まっていても、**1年間を通して合計すると家計への負担が重くなっている**ことがあります。実は、医療保険と介護保険の自己負担を1年間まとめて合算し、基準額を超えた分を払い戻してもらえる「高額医療・高額介護合算療養費制度」という仕組みがあります。 この記事では、厚生労働省・自治体の一次情報にもとづき、**この制度がどんな仕組みか**、**すでにある「高額介護サービス費」「高額療養費」とどう違うのか**、**限度額の目安**、**申請の流れ**を、やさしく整理してお伝えします。 > この記事でわかること > - 高額医療・高額介護合算療養費制度の仕組みと対象期間 > - 「高額介護サービス費」「高額療養費」との違い(月単位 vs 年単位) > - 所得区分ごとの年間自己負担限度額の目安 > - 申請の流れと必要な書類 --- ## 高額医療・高額介護合算療養費制度とは、どんな制度? **医療保険と介護保険、両方の自己負担額を1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)合計し、所得区分ごとの限度額を501円以上超えたら、超えた金額が払い戻される制度です。** 2008年4月に創設された比較的新しい制度で、[高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/kogakukaigogassanryoyohiseido.html)によれば、対象は国民健康保険・被用者保険・後期高齢者医療制度のいずれかに加入し、同じ世帯で介護保険サービスも利用している世帯です。 すでに介護保険には「高額介護サービス費」、医療保険には「高額療養費」という、それぞれ**月単位**で自己負担の上限を抑える制度があります。合算療養費制度は、その2つの制度を利用してもなお残る自己負担を、**年単位**でさらに軽減する「もう一段の仕組み」と考えるとわかりやすいでしょう。 ![月ごとの高額介護サービス費・高額療養費と、年単位の高額医療・高額介護合算療養費制度の関係を示す図。1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた分がさらに払い戻される流れを表す。](/column-figures/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide-structure.svg) ### 「高額介護サービス費」「高額療養費」との違い | 制度 | 対象 | 期間 | 軽減の単位 | | --- | --- | --- | --- | | 高額介護サービス費 | 介護保険の自己負担 | 1ヶ月単位 | 月ごとの上限額を超えた分 | | 高額療養費 | 医療保険の自己負担 | 1ヶ月単位 | 月ごとの上限額を超えた分 | | **高額医療・高額介護合算療養費** | 医療保険+介護保険の自己負担合計 | **1年間(8月〜翌年7月)** | **年間の限度額を501円以上超えた分** | 月ごとの制度をどちらも使っていても、月をまたいで通院や介護サービスが続くと、1年間の合計では家計への負担がじわじわ積み重なることがあります。合算療養費制度は、この「積み重なった1年分」に目を向ける制度です。介護保険側の払い戻しについては、[高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)で月単位の仕組みを確認しておくと、合算療養費との違いがより整理しやすくなります。 --- ## 限度額はいくら? 所得区分ごとの目安 **年間の自己負担限度額は、所得区分と年齢(70歳以上か70歳未満か)によって19万円〜212万円まで分かれます。** [高額医療・高額介護合算療養費制度(横浜市)](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/kogaku/high-cost-kaigo.html)によると、70歳以上の世帯の限度額(年額)の目安は次のとおりです。 | 所得区分(70歳以上) | 年間限度額(目安) | | --- | --- | | 現役並み所得者III(年収約1,160万円以上) | 212万円 | | 現役並み所得者II(年収約770〜1,160万円) | 141万円 | | 現役並み所得者I(年収約370〜770万円) | 67万円 | | 一般(年収約156〜370万円) | 56万円 | | 低所得者II(住民税非課税世帯) | 31万円 | | 低所得者I(住民税非課税・年金収入82万6,500円以下等) | 19万円 | 70歳未満の世帯が含まれる場合は、区分の下限が異なり(一般区分で60万円、住民税非課税世帯で34万円など)、[高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/kogakukaigogassanryoyohiseido.html)にまとまった一覧があります。**世帯の中に70歳未満の方と70歳以上の方が混在する場合は限度額の考え方も変わる**ため、正確な区分はお住まいの市区町村・加入している医療保険者に確認するのが確実です。 なお、年間の限度額(19万円〜212万円)そのものは、2018年8月の見直し以降、大きな改定は行われていません。一方で、**低所得者I区分を判定する年金収入の基準額は、2026年8月1日から80万6,700円→82万6,500円に見直されました**(2026年8月以降の療養分に適用。[厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1516](https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/jouhou_vol1516-pdf))。これは高額療養費・高額介護サービス費の基準額見直しと同時に行われたものです。7月までの療養分は従来の基準で判定されるため、自分の世帯がどの区分になるかは、申請の際に医療保険者・介護保険者へ確認することをおすすめします。 --- ## 申請はどうやって行う? 2段階の手続き **まず介護保険者(市区町村)に申請して「自己負担額証明書」を受け取り、その証明書を添えて医療保険者(健康保険組合・市区町村国保など)に申請する、2段階の流れです。** 具体的な手順は次のとおりです。 1. **介護保険者(市区町村の介護保険担当窓口)に、自己負担額証明書の交付を申請する**:1年間(8月〜翌年7月)に支払った介護保険サービスの自己負担額を証明する書類です 2. **交付された自己負担額証明書を受け取る** 3. **証明書を添えて、医療保険者(加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保・後期高齢者医療制度の窓口など)に支給申請書を提出する** 4. **審査のうえ、限度額を超えた分が指定口座に振り込まれる** [高額介護合算療養費支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書(全国健康保険協会)](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r120/)によれば、紙の申請書を郵送する方法のほか、オンライン申請サービスを利用できる場合もあります。 ### 必要な書類の目安 - 本人確認書類 - 振込先口座がわかる通帳等のコピー - 対象期間中に加入していた医療保険者が変わっている場合は、以前の保険者が発行した自己負担額証明書 年度の途中で転居・転職などにより加入する医療保険が変わった場合は、以前の保険者から証明書を取り寄せる必要があるため、通常より手続きに時間がかかることがあります。心当たりがある方は、早めに窓口へ相談しておくと安心です。 --- ## どんな世帯が対象になりやすい? **医療機関への通院・入院が続いている方と、介護保険サービスを使っている方が同じ世帯にいる場合に、対象になりやすい制度です。** たとえば、次のようなケースが考えられます。 - 親御さんが介護保険サービス(訪問介護・デイサービス・施設サービスなど)を利用しながら、持病の治療で定期的に通院・入院している - ご夫婦のどちらかが要介護状態で介護サービスを利用し、もう一方が医療機関にかかっている - 同一世帯に複数の要介護者・通院中の方がいる 一方で、**医療保険と介護保険どちらか一方しか利用していない世帯は、合算の対象になりません**。あくまで「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担がある世帯が対象です。すでに紹介した高額介護サービス費・高額療養費で毎月の払い戻しを受けていても、それとは別に合算療養費の対象になり得るため、「月ごとの払い戻しを受けているから、もう十分」と考えずに、年間の合計額も一度確認してみる価値があります。 介護費用については、医療費控除という別の軽減制度もあります。[介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)では、確定申告で税金の一部が戻ってくる仕組みを解説しています。合算療養費制度で払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象額からは差し引く必要がある点に注意しながら、両方の制度を組み合わせて検討してみてください。 --- ## 今日からできること 制度の全体像をつかんだら、次の2つから始めてみましょう。 1. **1年分(8月〜翌年7月)の医療費・介護費用の自己負担額を、大まかでよいのでふり返ってみる**:通院・入院の自己負担と、介護サービスの利用料の両方が続いている月が多かったかを思い出してみましょう 2. **お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または加入している医療保険者の窓口に、対象になりそうか問い合わせてみる**:正確な限度額・対象期間の自己負担合計額は、窓口でないと確認できません 同一世帯で親御さんの世帯を分けることを検討している方は、[世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点](/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide)もあわせてご覧ください。世帯分離は高額介護サービス費・負担限度額・介護保険料の区分に影響しますが、合算療養費制度も同じく世帯の所得区分で限度額が決まる仕組みのため、世帯分離を検討する際はあわせて確認しておくと判断しやすくなります。 介護そっとねっとには、「制度が複数あって、自分がどれに当てはまるのか分からない」という声が多く寄せられています。まずは窓口に一度問い合わせてみることが、負担を軽くする一歩になります。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。限度額・対象可否は個々の状況や年度の改定によって異なるため、具体的な申請についてはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または加入している医療保険者にご確認ください。 --- ## よくある質問 ### Q. 高額介護サービス費や高額療養費とは、どう違いますか? 高額介護サービス費・高額療養費は「1ヶ月単位」で自己負担の上限を超えた分を払い戻す制度です。高額医療・高額介護合算療養費制度は、その2つを利用してもなお残る自己負担を、「1年間(8月〜翌年7月)」で合算し、年間の限度額を超えた分をさらに払い戻す制度です。月単位の制度と年単位の制度は別物で、両方を申請できる場合があります。 ### Q. 限度額はいくらですか? 所得区分と年齢(70歳以上か70歳未満か)によって年額19万円〜212万円まで分かれます。70歳以上の一般区分(年収約156〜370万円)は年56万円、住民税非課税世帯は年19万円〜31万円が目安です。世帯に70歳未満の方が含まれる場合は区分の下限額が異なります。正確な限度額は医療保険者・介護保険者にご確認ください。 ### Q. 医療保険か介護保険のどちらか一方しか使っていない場合、対象になりますか? 対象になりません。この制度は「医療保険」と「介護保険」の両方の自己負担がある世帯を対象としています。介護保険サービスのみ利用している世帯は、高額介護サービス費の対象にはなっても、合算療養費制度の対象にはなりません。 ### Q. 申請はどこで、どのような手順で行いますか? まず介護保険者(市区町村の介護保険担当窓口)に自己負担額証明書の交付を申請し、証明書を受け取ります。次に、その証明書を添えて医療保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保・後期高齢者医療制度の窓口など)に支給申請書を提出する、2段階の手続きです。 ### Q. 医療費控除と両方申請できますか? 制度の目的が異なるため、両方の申請自体は可能です。ただし、高額医療・高額介護合算療養費制度で払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象となる医療費の合計額から差し引く必要があります。両方を申請する場合は、払い戻し額の扱いに注意してください。 ## 参考情報(一次情報) - [高額介護合算療養費制度(健康長寿ネット)](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/kogakukaigogassanryoyohiseido.html) - [高額医療・高額介護合算療養費制度(横浜市)](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/iryo/kogaku/high-cost-kaigo.html) - [高額介護合算療養費支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書(全国健康保険協会)](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r120/) - [高額介護合算療養費制度(厚生労働省)](https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-29.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説 - **slug**: iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide - **公開日**: 2026.9.18 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide **要約**: 結論、訪問看護など医療系サービスは単体で医療費控除の対象、訪問介護やデイサービスは医療系サービスと同じ月に併用した場合だけ対象です。おむつ代の証明書、施設サービスの控除割合まで国税庁の一次情報で解説します。 **本文**: # 介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 訪問看護・訪問リハビリなど「医療系」の介護サービスは単体で医療費控除の対象。訪問介護やデイサービスは、同じ月に医療系サービスと組み合わせている場合だけ対象になる > - 紙おむつ代は、医師が「おおむね6ヶ月以上の寝たきりで、おむつ使用が必要」と認めた場合に限り、医師の証明書(または市区町村発行の証明書)があれば対象になる > - 特別養護老人ホームは自己負担額の50%、介護老人保健施設・介護医療院は100%が医療費控除の対象。年間の医療費(世帯合算可)が10万円を超えたら確定申告を検討する 「訪問看護とデイサービス、両方使っているけれど、介護の費用って医療費控除の対象になるの?」 「おむつ代がかさんでいるけれど、これも申告できるって聞いたことがある」 「確定申告の時期に慌てないよう、対象になるかどうかを先に知っておきたい」 ——介護サービスの費用は決して安くありません。実は、サービスの種類によっては**医療費控除の対象になり、確定申告で税金の一部が戻ってくる**ことがあります。ただし「介護保険サービスならなんでも対象」というわけではなく、サービスの性質によって対象・条件付き対象・対象外に分かれるため、わかりにくいと感じる方も多いようです。 この記事では、国税庁の一次情報にもとづき、**どの介護サービスが医療費控除の対象になるか**、**おむつ代を控除するための証明書の取り方**、**施設サービスの控除割合**を、やさしく整理してお伝えします。 > この記事でわかること > - 医療費控除の対象になる介護サービス・条件付きで対象になるサービスの違い > - 紙おむつ代を医療費控除の対象にするための手続き(おむつ使用証明書) > - 特養・老健など施設サービスの控除対象割合 > - 確定申告の目安(年間10万円)と、他の軽減制度との関係 --- ## 介護サービスの費用は、医療費控除の対象になる? **サービスの内容によって「常に対象」「条件付きで対象」「対象外」の3つに分かれます。すべての介護保険サービスが自動的に対象になるわけではありません。** 国税庁の取扱いでは、居宅サービスを大きく2つのグループに分けて考えます([国税庁 - 医療費控除の対象となる居宅サービス](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1127.htm))。 - **①医療系サービス(単体で対象)**:訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護など、看護師やリハビリ専門職による「治療・療養上の世話」を含むサービス - **②福祉系サービス(条件付きで対象)**:訪問介護(身体介護中心)、デイサービス(通所介護)、訪問入浴介護、短期入所生活介護、小規模多機能型居宅介護など。**同じ月のケアプラン(サービス利用票)に①の医療系サービスが含まれている場合に限り**、②の福祉系サービスの利用料も医療費控除の対象になります ![サービスの種類によって医療費控除の対象・条件付き対象・対象外に分かれることを示す比較図。訪問看護・訪問リハビリ等の医療系サービスは常に対象、訪問介護・デイサービス等の福祉系サービスは医療系サービスと同じ月に併用した場合のみ条件付きで対象、生活援助中心の訪問介護や福祉用具レンタル料・グループホーム利用料・住宅改修費・理美容代は対象外であることを表す。](/column-figures/iryohi-kojo-kaigo-target-comparison.svg) つまり、**デイサービスだけを単体で利用している月は医療費控除の対象になりません**が、同じ月に訪問看護も利用していれば、デイサービスの利用料もあわせて対象になる、というイメージです。ケアマネジャーが作成するケアプランに医療系サービスが組み込まれているかどうかが、判断の分かれ目になります。 ### 対象外になる費用 次のような費用は、原則として医療費控除の対象になりません。 - **生活援助中心の訪問介護**(掃除・買い物代行など、身体介護を伴わないもの) - **福祉用具のレンタル料**(別記事で解説している「[介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase)」も参考にしてください) - **グループホームの利用料、住宅改修費の自己負担分** - **理美容代などの実費、日常生活費** 「介護保険で1〜3割を払っているものはすべて医療費」と思い込みやすいポイントなので、まずはご自身が使っているサービスがどちらのグループに当たるかを確認してみましょう。 --- ## 紙おむつ代は控除の対象になる? 証明書の取り方 **紙おむつ代は、医師が「おおむね6ヶ月以上にわたって寝たきりの状態にあり、治療上おむつの使用が必要」と判断した場合に限り、医療費控除の対象になります。** 国税庁の質疑応答事例では、この要件が明記されています([国税庁 - 寝たきりの者のおむつ代](https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/54.htm))。単に「介護のためにおむつを使っている」というだけでは対象にならず、**医師による医学的な必要性の判断**が前提になる点に注意してください。 ### 必要な証明書は2種類 1. **おむつ使用証明書(医師発行)**:初めて申告する年は、主治医に「おむつ使用証明書」を書いてもらう必要があります 2. **おむつ使用の確認書(市区町村発行)**:2年目以降は、要件を満たしていれば、医師の証明書に代えて市区町村が発行する簡易な証明書(自治体により名称は「確認書」「おむつに係る費用の医療費控除の申告に関する証明書」など異なる)で申告できる場合があります([国税庁 - おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて](https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/241009/index.htm)) 市区町村発行の証明書を使うには、要介護認定の主治医意見書などで寝たきり状態が確認できることが条件になるのが一般的です。お住まいの自治体の介護保険課・高齢福祉課に、証明書の発行要件と申請方法を確認してみてください(申請書の様式や必要書類は自治体ごとに異なります)。 > ⚠️ おむつ代の領収書は、控除の証拠書類として確定申告まで必ず保管しておきましょう。レシートに「おむつ代」と分かる記載があるかも、購入時に確認しておくと安心です。 --- ## 施設に入所している場合の控除割合 **施設サービスは、施設の種類によって控除の対象になる割合が異なります。** 国税庁の取扱いでは、次の4類型が対象です([国税庁 - 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1125.htm))。 | 施設の種類 | 控除対象になる割合 | | --- | --- | | 特別養護老人ホーム・地域密着型介護老人福祉施設 | 介護費・食費・居住費の自己負担額の**50%** | | 介護老人保健施設 | 介護費・食費・居住費の自己負担額の**100%** | | 介護医療院 | 介護費・食費・居住費の自己負担額の**100%** | **特別養護老人ホーム(特養)だけは、自己負担額の半分だけが対象**という点は見落としやすいポイントです。理美容代などの日常生活費は施設サービスでも対象外です。多くの施設では、領収書に「医療費控除の対象となる金額」があらかじめ記載されているため、個別に計算する必要はほとんどありません。届いた領収書の記載をそのまま確定申告書に転記できるか、施設の窓口で確認してみるとよいでしょう。 なお、施設の食費・居住費そのものの負担を軽くする「負担限度額認定証」という別の制度もあります。こちらは医療費控除とは仕組みが異なる軽減制度なので、[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)であわせて確認しておくと、施設費用の全体像がつかみやすくなります。 --- ## 確定申告はいつ、どうやって行う? **1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計額(生計を一にする家族分も合算可)が10万円(所得200万円未満の方は所得の5%)を超えたら、確定申告での医療費控除を検討する目安になります。** 介護保険サービスの自己負担分に加え、通院の交通費や病院での支払いなど、家族全員分の医療費を合算できます。介護している親御さんの医療費・介護費用を、生計を同じくする子が申告するケースも一般的です。 確定申告の際は、次のような書類・記録を準備しておくとスムーズです。 - 各サービス事業者から発行される領収書(医療費控除対象額の記載があるか確認) - おむつ代を含める場合は、おむつ使用証明書または市区町村発行の確認書 - 医療費控除の明細書(国税庁のフォーマットに、支払先・金額をまとめて記入) - 高額療養費・高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額(あれば、その分を医療費の合計額から差し引く必要があります) 払い戻しを差し引く点は忘れやすいポイントです。[高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)で払い戻しの仕組みを確認したうえで、医療費控除の申告額を計算するとミスを防ぎやすくなります。 --- ## 「うちは対象になりそう?」と思ったら、まず確認したいこと ここまで制度の全体像を見てきましたが、実際に確認する際は、次の2点から始めるとスムーズです。 1. **ケアプラン(サービス利用票)を見返す**:訪問看護・訪問リハビリなど医療系サービスが含まれているか、ケアマネジャーに確認してみましょう 2. **1年間の領収書を集めておく**:介護サービス・通院・おむつ代など、家族全員分の領収書をひとつの封筒にまとめておくと、確定申告の時期に慌てません 同居する親御さんと世帯を分ける「世帯分離」を検討している方は、[世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点](/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide)もあわせてご覧ください。医療費控除は世帯を分けても「生計を一にする」家族であれば合算申告できるため、世帯分離の判断とは切り離して考えられる点も知っておくと安心です。 まずは今日、手元にある介護サービスの領収書を1枚だけ見返して、「医療費控除対象額」の記載があるかどうかを確かめてみてください。それだけでも、確定申告の時期にあわてず準備を始める一歩になります。 --- ## よくある質問 ### Q. デイサービスだけを利用している場合、医療費控除の対象になりますか? 原則として対象になりません。デイサービス(通所介護)は「福祉系サービス」に分類され、同じ月のケアプランに訪問看護や訪問リハビリなどの「医療系サービス」が含まれている場合に限り、条件付きで対象になります。デイサービス単体の利用月は対象外と考えておきましょう。詳しくはケアマネジャーにケアプランの内容を確認してください。 ### Q. おむつ代を医療費控除の対象にするには、何が必要ですか? 医師が「おおむね6ヶ月以上の寝たきり状態で、治療上おむつの使用が必要」と判断していることが前提です。初めて申告する年は医師発行の「おむつ使用証明書」が必要で、2年目以降は要件を満たせば市区町村発行の簡易な証明書で代用できる場合があります。証明書の発行要件・様式は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の介護保険課にご確認ください。 ### Q. 特別養護老人ホームの費用は、全額が医療費控除の対象になりますか? いいえ、特別養護老人ホーム(特養)は自己負担額(介護費・食費・居住費)の50%のみが対象です。これに対し、介護老人保健施設や介護医療院は自己負担額の100%が対象になります。施設の種類によって割合が異なる点に注意してください。理美容代などの日常生活費はどの施設でも対象外です。 ### Q. 確定申告はいくらから必要ですか? 1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計額が10万円(総所得金額等が200万円未満の方は所得の5%)を超えたら、医療費控除の申告を検討する目安になります。介護費用だけでなく、通院費や薬代なども合算でき、生計を一にする家族全員分をまとめて申告できます。 ### Q. 高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合、どう扱えばいいですか? 高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額は、医療費控除の対象となる医療費の合計額から差し引く必要があります。払い戻しを受けた分と控除対象額を混同すると、申告額を誤ってしまうため注意してください。高額介護サービス費の仕組みそのものは別記事で詳しく解説しています。 ### Q. 訪問介護と訪問看護、どちらも使っている場合はどうなりますか? 同じ月に訪問看護(医療系サービス)と訪問介護(福祉系サービス)の両方を利用していれば、訪問介護の利用料もあわせて医療費控除の対象になります。訪問看護のようにそれ単体で対象になるサービスが同じ月のケアプランに含まれているかどうかが、訪問介護側の可否を左右するポイントです。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **訪問看護・訪問リハビリ等の「医療系」サービスは単体で医療費控除の対象。訪問介護・デイサービス等の「福祉系」サービスは、同じ月に医療系サービスと併用した場合だけ条件付きで対象** - **紙おむつ代は、医師が6ヶ月以上の寝たきりとおむつの必要性を認めた場合に限り、証明書(医師発行または市区町村発行)があれば対象** - **施設サービスは種類によって控除割合が異なる(特養50%、老健・介護医療院100%)。年間医療費が10万円を超えたら確定申告を検討する** 介護の費用は日々の生活の中で見えにくくなりがちですが、こうした制度を知っているかどうかで、家計の負担は変わってきます。 介護そっとねっとには、「制度が複雑で、自分がどれに当てはまるのか分からない」という声も多く寄せられています。正確な適用可否は税務署や国税庁の情報で確認しつつ、日々のやりくりの悩みは、同じ立場のご家族とそっと分かち合ってみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。医療費控除の対象可否・控除額の計算は個々の状況によって異なるため、具体的な申告については所轄の税務署または税理士にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [国税庁 - 医療費控除の対象となる居宅サービス](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1127.htm) - [国税庁 - 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1125.htm) - [国税庁 - 寝たきりの者のおむつ代](https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/54.htm) - [国税庁 - おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(情報)](https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/241009/index.htm) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは?24時間対応の仕組みと費用、訪問介護との違いをやさしく解説 - **slug**: teiki-junkai-zuiji-taiou-guide - **公開日**: 2026.9.15 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/teiki-junkai-zuiji-taiou-guide **要約**: 結論、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は1日複数回の定期訪問と24時間つながる随時対応を組み合わせた地域密着型サービスで、料金は要介護度別の月額定額制です。一体型・連携型の違い、通常の訪問介護との併用制限まで解説します。 **本文**: # 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは?24時間対応の仕組みと費用、訪問介護との違いをやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、**1日複数回の定期訪問**と**24時間つながる随時対応**を組み合わせた地域密着型サービスで、要介護1〜5の方が対象 > - 料金は訪問介護と違い**要介護度別の月額定額制**。夜間・深夜に随時訪問しても追加料金がかからない仕組み > - **一体型**(介護と看護を1つの事業所が提供)と**連携型**(訪問介護事業所が訪問看護事業所と連携)があり、訪問介護・訪問看護(連携型利用時を除く)とは原則併用できない 「夜中にトイレに行きたがるけれど、一人で行かせるのは心配」「訪問介護の時間が決まっているから、それ以外の時間帯に何かあったらと思うと気が抜けない」——介護そっとねっとのアプリには、日中のヘルパー利用だけでは埋まらない夜間・随時のケアに不安を抱えるご家族の声が寄せられます。 そんなときに選択肢の一つになるのが**定期巡回・随時対応型訪問介護看護**です。1日に複数回の巡回訪問と、何かあったときに通報できる24時間対応をあわせ持つ、在宅介護向けの介護保険サービスです。この記事では、厚生労働省の資料をもとに、サービスの仕組み・費用・訪問介護との違いから、利用開始前に確認しておきたい注意点までやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の仕組みと「一体型」「連携型」の違い > - 対象者と料金(月額定額制)の考え方 > - 通常の訪問介護・訪問看護との違い、併用できないサービス > - 利用を始めるまでの流れ なお、このサービスに登録すると、通常の訪問介護・訪問看護(連携型利用時を除く)は**原則として併用できなくなります**。この点については記事の後半でくわしく説明します。 --- ## 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とはどんな仕組み? **定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、利用者の心身の状況に応じて、1日複数回の定期訪問と、随時の通報への対応を24時間365日体制で柔軟に提供する、地域密着型の介護保険サービスです。** [厚生労働省の資料](https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001plgp-att/2r9852000001pliw.pdf)によると、このサービスは2012年(平成24年)4月の介護報酬改定で創設されました。要介護状態になっても、住み慣れた自宅でできる限り生活を続けられるよう支援することを目的としています。 サービスは大きく3つの要素で構成されます。 - **定期巡回**:あらかじめ立てた計画にもとづき、1日に複数回、短時間の訪問を行う(入浴・排泄・食事などの介助、安否確認、服薬確認など) - **随時対応**:利用者や家族からの通報を、オペレーターが24時間いつでも受け付ける - **随時訪問**:随時対応の内容に応じて、必要なタイミングで訪問する(夜間の排泄介助、体調急変時の対応など) これに加えて、看護師による訪問看護(医療的なケアや健康観察)も組み合わせて提供されます。訪問介護と訪問看護が別々の窓口ではなく、**同じ枠組みの中で介護と看護が連携する**点が、通常の訪問介護との大きな違いです。 ![訪問介護をバラバラに契約する場合と、定期巡回・随時対応型訪問介護看護1本に集約する場合の違いを示したBefore/After比較図。](/column-figures/teiki-junkai-zuiji-taiou-comparison.svg) ### 「一体型」と「連携型」の違い 定期巡回・随時対応型訪問介護看護には、提供体制の異なる2つのタイプがあります。 - **一体型事業所**:1つの事業所が訪問介護と訪問看護の両方を自前で提供する - **連携型事業所**:訪問介護事業所が、地域の訪問看護事業所と契約・連携してサービスを提供する どちらのタイプでも、利用者から見た「1日複数回の定期訪問+24時間の随時対応」という基本的な仕組みは変わりません。地域によって一体型・連携型のどちらの事業所があるかは異なるため、担当のケアマネジャーや[地域包括支援センター](/columns/nursing-insurance-basics)に確認するとよいでしょう。 --- ## 対象者は?費用はどのくらいかかる? **要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。要支援1・2の方はこのサービスを利用できません。** また地域密着型サービスのため、原則として事業所と同じ市区町村に住民票がある方が対象になります。 ### 料金は要介護度別の月額定額制 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の基本料金は、通常の訪問介護のように「1回訪問するたびに料金が発生する」仕組みではなく、**要介護度に応じた月額定額制**です。 | 区分 | 月額利用者負担の目安(1割負担・訪問看護利用ありの場合) | | --- | --- | | 要介護1 | 8千円台前半 | | 要介護2 | 1万2千円台後半 | | 要介護3 | 1万9千円台後半 | | 要介護4 | 2万4千円台前半 | | 要介護5 | 2万9千円台 | ※金額は厚生労働省が定める介護報酬(要介護度別の基本報酬)をもとにした概算の目安で、訪問看護利用の有無・地域区分・加算により変動します。正確な金額は利用予定の事業所に確認してください。2割・3割負担に該当する方は、上記の目安がそのまま2倍・3倍になります。 **月額定額制のため、夜間や深夜に随時訪問を利用しても、その分の追加料金は発生しません。** 訪問のたびに料金がかさむことを心配せず、必要なタイミングで通報できる点が、このサービスの安心材料の一つです。 --- ## 通常の訪問介護・訪問看護と何が違う? **最大の違いは、決まった時間の訪問だけでなく、随時の通報にも24時間対応できるかどうかです。** - **通常の訪問介護・訪問看護を組み合わせる場合**:あらかじめ決めた曜日・時間に訪問してもらう仕組みのため、それ以外の時間帯に体調の変化や困りごとが起きても、すぐに来てもらえるとは限りません。訪問介護の基本は[訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと](/columns/home-help-service-guide)で、訪問看護の仕組みは[訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安](/columns/visiting-nursing-care-guide)で詳しく解説しています - **定期巡回・随時対応型訪問介護看護を使う場合**:決まった時間の定期訪問に加えて、「今日はいつもと様子が違う」「転倒してしまった」といった随時の通報に、24時間体制のオペレーターが対応し、必要なら随時訪問してもらえます 一方で、**すでに気に入っている訪問介護事業所やヘルパーがいる場合**は、このサービスに切り替えると、その事業所との契約を続けられなくなる点に注意が必要です。「決まった時間の訪問だけで足りているか」「夜間・随時の不安が大きいか」を軸に考えると判断しやすくなります。 在宅で複数のサービスを柔軟に組み合わせたい場合は、[小規模多機能型居宅介護](/columns/small-multifunctional-care-guide)という選択肢もあります。小規模多機能は「通い」を中心に訪問・泊まりを組み合わせる仕組みで、定期巡回は「訪問」に特化して24時間対応を強化する仕組みという違いがあります。どちらが合うかは、通いの必要性が高いか、夜間・随時の対応を重視したいかで変わってきます。 ### 利用を検討したいケース - 夜間・深夜に排泄介助や見守りが必要な場面が定期的に発生している - 体調の急変が心配で、決まった時間の訪問だけでは不安が拭えない - 訪問介護と訪問看護をそれぞれ別の事業所と契約する調整の手間を減らしたい ### 随時対応の具体的なイメージ 「随時対応」と言われても、実際にどんな場面で使うのかイメージしづらいという声もあります。想定されている典型的な利用場面は次のようなものです。 - 夜間、トイレに起きたが一人で立ち上がれず、通報して随時訪問を依頼した - 体調がいつもと違うと感じ、オペレーターに相談して看護師からの助言を受けた - 転倒してしまい、通報してすぐに訪問してもらい状態を確認してもらった いずれも「決まった訪問時間まで待てない」場面での利用が想定されており、家族が同居していない時間帯や、家族自身が就寝している深夜帯の安心材料として使われることが多いサービスです。 --- ## 利用開始前に必ず確認しておきたい注意点 **このサービスは、通常の訪問介護・訪問看護に置き換わる仕組みだと理解しておく必要があります。** ### ① 通常の訪問介護・訪問看護は原則併用できない 厚生労働省の資料によると、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する場合、**訪問介護(通院等乗降介助を除く)、訪問看護(連携型利用時を除く)、夜間対応型訪問介護とは併用できません。** サービス内容が重複するためです。今のヘルパーや訪問看護師との関係を続けたい場合は、切り替え前によく確認しておきましょう。 ### ② 地域密着型サービスのため事業所数が限られる 市町村ごとの指定制のサービスであり、通常の訪問介護に比べて対応事業所の数が少ない地域もあります。検討を始めたら、早めにケアマネジャーや地域包括支援センターに、居住地域で利用できる事業所があるかを確認しておくと安心です。 ### ③ ケアプランの見直しが必要になる このサービスに切り替える場合、現在のケアプラン全体を見直す必要があります。[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)で紹介している「合わないから変える」ケースとは事情が異なり、あくまでサービス内容の組み替えにともなう見直しである点を理解しておきましょう。 --- ## 利用を始めるまでの流れ 1. **ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談する**:夜間・随時の不安など、具体的な困りごとを伝える 2. **事業所を探す**:地域密着型サービスのため、住民票のある市区町村内で、一体型・連携型いずれかの事業所を探す 3. **既存サービスとの調整を確認する**:現在利用している訪問介護・訪問看護が継続できなくなる旨を理解したうえで検討する 4. **契約・ケアプランの見直し**:事業所と契約し、ケアプランを定期巡回・随時対応型訪問介護看護を組み込んだ内容に見直す 5. **利用開始・状況に応じた見直し**:定期訪問の回数や内容は、利用開始後も体調の変化に応じて随時見直される --- ## よくある質問 ### Q. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要支援の人でも利用できますか? いいえ。このサービスの対象は要介護1〜5の認定を受けた方に限られ、要支援1・2の方は利用できません。要支援の方で夜間の見守りに不安がある場合は、地域包括支援センターに他の支援策を相談してください。 ### Q. 夜中に何度も通報すると、そのぶん料金は高くなりますか? いいえ。料金は要介護度別の月額定額制のため、随時訪問の回数が増えても基本料金自体は変わりません。ただし、あまりに頻回な通報が続く場合は、ケアプラン自体の見直しが必要になることもあるため、担当のケアマネジャーに状況を共有しておくとよいでしょう。 ### Q. 今使っている訪問看護は続けられますか? 一体型事業所を利用する場合、訪問看護は原則としてその事業所が提供するものに切り替わります。連携型事業所を利用する場合は、連携先の訪問看護事業所を利用する形になるため、今の訪問看護ステーションがその連携先であるかを事業所に確認してください。 ### Q. 小規模多機能型居宅介護とは何が違いますか? 小規模多機能型居宅介護は「通い」を中心に訪問・泊まりを組み合わせる仕組みで、日中の居場所づくりや急な宿泊への対応に強みがあります。定期巡回・随時対応型訪問介護看護は「訪問」に特化し、1日複数回の定期訪問と24時間の随時対応に強みがあります。日中の通いの必要性が高いか、夜間・随時対応を重視したいかで選び方が変わります。 ### Q. 一体型と連携型、どちらを選べばよいですか? 利用者から見たサービスの基本的な仕組み(定期訪問+24時間の随時対応)に大きな違いはありません。地域によって一体型・連携型どちらの事業所があるかが異なるため、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、居住地域で利用できる事業所の種類を確認するとよいでしょう。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、1日複数回の定期訪問と24時間の随時対応を組み合わせたサービス**で、料金は要介護度別の月額定額制 - **通常の訪問介護・訪問看護と違い、決まった時間以外の随時の通報にも対応できる**のが最大の特徴 - **利用すると通常の訪問介護・訪問看護(連携型利用時を除く)は原則併用できなくなる**ため、今の事業所との関係も踏まえて検討する 「日中のヘルパーだけでは夜間の不安が拭えない」と感じているなら、一度ケアマネジャーや地域包括支援センターに、定期巡回・随時対応型訪問介護看護という選択肢があることを相談してみてください。介護そっとねっとには、夜間・随時のケアに悩んだご家族の声も寄せられています。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。料金や利用条件の詳細は事業所・地域によって異なるため、具体的な相談は担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 定期巡回・随時対応サービスの基準・報酬について(社会保障審議会介護給付費分科会資料)](https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001plgp-att/2r9852000001pliw.pdf) - [厚生労働省 - 介護サービス情報公表システム「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group23.html) - [厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 小規模多機能型居宅介護とは?「通い・訪問・泊まり」を1つの事業所で組み合わせる仕組みをやさしく解説 - **slug**: small-multifunctional-care-guide - **公開日**: 2026.9.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/small-multifunctional-care-guide **要約**: 結論、小規模多機能型居宅介護は1つの事業所が「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を状況に応じて柔軟に組み合わせる地域密着型サービスで、料金は要介護度別の月額定額制です。デイサービスとの違いや、利用開始でケアマネジャーが変わる注意点まで解説します。 **本文**: # 小規模多機能型居宅介護とは?「通い・訪問・泊まり」を1つの事業所で組み合わせる仕組みをやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 小規模多機能型居宅介護は、**1つの事業所**が「通い」を中心に、状況に応じて「訪問」「泊まり」を組み合わせて提供する**地域密着型サービス** > - 料金は**要介護度別の月額定額制**で、利用回数が増えても基本料金は変わらない(食費・宿泊費等の実費は別) > - 登録すると**専属のケアマネジャーに引き継がれ**、これまでのデイサービス・訪問介護は原則併用できなくなる点に注意 「デイサービスの日は通えているけれど、それ以外の日の見守りが心配」「急に泊まりが必要になったとき、いつものショートステイの予約が取れるか分からない」——介護そっとねっとのアプリには、複数のサービスを綱渡りのように組み合わせて在宅介護を続けているご家族から、こうした不安の声が寄せられます。 そんなときに選択肢の一つになるのが**小規模多機能型居宅介護**です。「通い」「訪問」「泊まり」を別々の事業所と契約するのではなく、**1つの事業所・なじみの職員**が、そのときの状態や希望に応じて柔軟に組み合わせて提供してくれるサービスです。 ただし、便利な反面「これまでのデイサービスやヘルパーが使えなくなる」「ケアマネジャーが変わる」といった見落としやすい注意点もあります。この記事では、厚生労働省の資料をもとに、サービスの仕組み・料金・デイサービスとの違いから、利用開始前に確認しておきたいポイントまでやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 小規模多機能型居宅介護の仕組みと「通い・訪問・泊まり」の内容 > - 対象者と料金(月額定額制)の考え方 > - デイサービス・訪問介護・ショートステイとの違い > - 利用開始前に必ず確認しておきたい注意点(ケアマネジャー変更・サービスの併用制限) > - 利用を始めるまでの流れ なお、小規模多機能型居宅介護に登録すると、**今使っているケアマネジャーが変わる**という、利用者にとって見落としやすい仕組みがあります。この点については記事の後半でくわしく説明します。 --- ## 小規模多機能型居宅介護とはどんな仕組み? **小規模多機能型居宅介護とは、利用者の心身の状況や希望に応じて、1つの事業所が「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を組み合わせて提供する、地域密着型の介護保険サービスです。** [厚生労働省の資料](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001113809.pdf)によると、このサービスは2006年(平成18年)4月に創設されました。中重度の要介護状態になっても、住み慣れた自宅での生活を続けられるよう支援することを目的としています。 最大の特徴は、**3つのサービス形態を、別々の事業所ではなく同じ事業所が一体で提供する**ことです。 ![小規模多機能型居宅介護の仕組み。1つの事業所が「通い」を中心に、状況に応じて「訪問」「泊まり」を組み合わせて提供する構造を示したハブ&スポーク図。](/column-figures/small-multifunctional-care-hub.svg) - **通い**:事業所に日帰りで通い、入浴・食事・機能訓練などを受ける(3つのサービスの中心) - **訪問**:職員が自宅を訪れ、安否確認・服薬確認・生活援助などを行う - **泊まり**:事業所に短期間宿泊し、夜間の見守りなどを受ける この3つを、あらかじめ決まった曜日・回数にこだわらず、「今週は通いを増やしたい」「急に泊まりが必要になった」という状況の変化に合わせて、同じ職員が柔軟に対応してくれる点が、デイサービスや訪問介護を個別に契約する場合との大きな違いです。 ### 事業所の規模と職員体制 厚生労働省の基準では、1事業所の**登録定員は29名以下**、そのうち「通い」の利用定員は登録定員の2分の1〜15名程度(一定の要件を満たす場合は最大18名)、「泊まり」の利用定員は通いの利用定員の3分の1〜9名程度と定められています。小規模な体制だからこそ、なじみの職員が利用者一人ひとりの状態を把握しやすいという特徴があります。 また、地域住民・利用者家族・市町村職員・地域包括支援センター職員などが参加する「運営推進会議」が、おおむね2か月に1回以上開かれ、サービスの状況について協議・報告・評価を行う仕組みも設けられています。外部の視点が入ることで、閉鎖的になりやすい小規模サービスの質を確保する狙いがあります。 --- ## 対象者は?費用はどのくらいかかる? **要介護1〜5の方は「小規模多機能型居宅介護」、要支援1・2の方は「介護予防小規模多機能型居宅介護」として利用できます。** 原則65歳以上の方が対象ですが、特定疾病が認められる40〜64歳の方(第2号被保険者)も、要介護・要支援認定を受けていれば利用できます。 地域密着型サービスのため、**原則としてサービス事業所と同じ市区町村に住民票がある方**が対象になる点にも注意してください(自治体間の協議により例外的に利用できる場合もあります)。 ### 料金は要介護度別の月額定額制 小規模多機能型居宅介護の基本料金は、通い・訪問・泊まりをどれだけ組み合わせても、**要介護度に応じた月額定額制**です。デイサービスや訪問介護のように「1回利用するたびに料金が発生する」仕組みとは異なります。 | 区分 | 月額基本料金の目安(1割負担) | | --- | --- | | 要支援1(介護予防) | 1万円台前半 | | 要支援2(介護予防) | 1万円台後半〜2万円台前半 | | 要介護1 | 1万円台後半 | | 要介護2 | 2万円台前半〜半ば | | 要介護3 | 2万円台後半〜3万円前後 | | 要介護4〜5 | 3万円台前半〜半ば | ※金額は厚生労働省が定める介護報酬(要介護度別の基本報酬)をもとにした概算の目安で、地域区分・加算の有無により変動します。正確な金額は利用予定の事業所に確認してください。 この基本料金のほかに、食費・宿泊費・おむつ代などの日常生活費は**利用実態に応じた実費**が別途かかります。「泊まりを増やしたら、食費・宿泊費の実費分だけ請求額が増えた」というケースはありますが、基本料金そのものが変動するわけではない点を理解しておくと、請求内容を確認しやすくなります。 2割・3割負担に該当する方は、上記の目安がそのまま2倍・3倍になります。月々の利用量が[区分支給限度基準額](/columns/nursing-insurance-basics)の考え方とは別枠で管理されるのも特徴で、小規模多機能型居宅介護の登録者は区分支給限度基準額の対象から外れ、独自の月額定額の中でサービスを組み合わせる仕組みになります。 --- ## デイサービス・訪問介護・ショートステイと何が違う? **最大の違いは、「通い・訪問・泊まり」を別々の事業所と契約するか、1つの事業所にまとめるかです。** - **デイサービスを中心に組み立てる場合**:通いはデイサービス事業所、訪問はホームヘルプ事業所、泊まりはショートステイ事業所と、それぞれ別の事業者と契約します。事業所ごとに担当者・車の送迎ルート・記録方法が異なるため、家族が情報を整理して伝える負担が生じやすくなります。デイサービス単体の内容は[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方](/columns/day-service-guide)で、訪問介護は[訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと](/columns/home-help-service-guide)で、ショートステイは[ショートステイとは?費用の目安・予約の流れ](/columns/short-stay-respite-guide)で詳しく解説しています - **小規模多機能型居宅介護を使う場合**:同じ事業所・なじみの職員が3つのサービスを一体で把握しているため、「先週の様子はどうだったか」を毎回説明し直す必要が少なく、状態の変化に応じてその場で通い・訪問・泊まりの配分を柔軟に調整してもらいやすいのが利点です 一方で、**すでに気に入っているデイサービスや、長年お願いしているヘルパーがいる場合**は、小規模多機能型居宅介護に登録するとその事業所を離れることになる点がデメリットになり得ます。「バラバラな窓口をまとめたいか」「今の事業所との関係を続けたいか」を軸に考えると、判断しやすくなります。 なお、日中の「通い」の必要性は薄く、夜間や随時の訪問対応を特に重視したい場合は、[定期巡回・随時対応型訪問介護看護](/columns/teiki-junkai-zuiji-taiou-guide)という選択肢もあります。こちらは「訪問」に特化して24時間の随時対応を強化する仕組みで、小規模多機能型居宅介護とは強みが異なります。 ### 利用を検討したいケース - 通いだけでなく、訪問による見守りや、急な泊まりのニーズが定期的に発生している - 複数の事業所とのやり取り(連絡帳の記入、送迎時間の調整など)が家族の負担になっている - 体調の波が大きく、あらかじめ決まった曜日・回数のサービスでは対応しきれないと感じている --- ## 利用開始前に必ず確認しておきたい注意点 **小規模多機能型居宅介護の登録は、単に新しいサービスを追加するのではなく、ケアプラン全体の管理者が切り替わる仕組みだと理解しておく必要があります。** ### ① ケアマネジャーが変わる 小規模多機能型居宅介護事業所には専属の介護支援専門員(ケアマネジャー)が配置されており、通い・訪問・泊まりを一元的に管理する仕組みになっています。そのため、これまで居宅介護支援事業所のケアマネジャーに担当してもらっていた場合、登録と同時に**小規模多機能型居宅介護事業所のケアマネジャーへ引き継がれる**のが一般的です。「合わないから変えたい」と感じたときの一般的な変更方法は[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)で解説していますが、小規模多機能型への登録にともなう変更は、通常の「合わないから変える」ケースとは事情が異なる点に注意してください。 ### ② これまでのデイサービス・ヘルパーは原則使えなくなる 小規模多機能型居宅介護に登録すると、その事業所が通い・訪問・泊まりを一体で提供する仕組み上、**これまで利用していた別のデイサービスや訪問介護(ホームヘルプ)は、原則として継続利用できなくなります。** 福祉用具貸与・住宅改修や、訪問看護・訪問リハビリなど一部の医療系サービスは併用できる場合があるため、個別に確認が必要です。 「今のデイサービスの職員さんに慣れているのに、変えて大丈夫だろうか」という不安がある場合は、登録前にケアマネジャーへ率直に伝え、比較検討する時間を取ってもらいましょう。 ### ③ 定員に空きがあるかは事業所ごとに異なる 登録定員が最大29名までと定められているため、地域によっては人気の事業所で空きがなく、すぐに利用を開始できないケースもあります。検討を始めたら、早めに地域包括支援センターやケアマネジャーに空き状況を確認しておくと安心です。 --- ## 利用を始めるまでの流れ 1. **ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談する**:現在の困りごと(見守りの空白時間、急な泊まりへの不安など)を具体的に伝える 2. **事業所を探す・見学する**:地域密着型サービスのため、住民票のある市区町村内の事業所から選ぶ。可能であれば見学し、職員の雰囲気や設備を確認する 3. **既存サービスとの調整を確認する**:現在利用しているデイサービス・訪問介護が継続できなくなる旨を理解したうえで検討する 4. **契約・ケアマネジャーの引き継ぎ**:小規模多機能型居宅介護事業所と契約し、ケアプランの管理が事業所専属のケアマネジャーへ引き継がれる 5. **利用開始・状況に応じた見直し**:通い・訪問・泊まりの配分は、利用開始後も体調や希望の変化に応じて随時見直される --- ## よくある質問 ### Q. 小規模多機能型居宅介護を使うと、今のデイサービスやヘルパーは使えなくなりますか? 小規模多機能型居宅介護に登録すると、その事業所が「通い・訪問・泊まり」を一体で提供する仕組みになるため、原則としてこれまで利用していた別のデイサービスや訪問介護(ホームヘルプ)は継続利用できません。福祉用具貸与や住宅改修、訪問看護・訪問リハビリなど一部の医療系サービスは併用できる場合があるため、担当者に確認してください。 ### Q. 利用を始めると、今のケアマネジャーは変更になりますか? 多くの場合、変更が必要です。小規模多機能型居宅介護には専属のケアマネジャーが配置されており、通い・訪問・泊まりを一元的に管理する仕組みのため、登録と同時に居宅介護支援事業所の担当ケアマネジャーから、小規模多機能型居宅介護事業所のケアマネジャーへ引き継がれるのが一般的です。 ### Q. 「泊まり」は急に頼んでも対応してもらえますか? 小規模多機能型居宅介護は、あらかじめ登録した利用者の状態や希望に応じて柔軟に対応することを想定した仕組みのため、通常のショートステイより急な宿泊に対応しやすいとされています。ただし「泊まり」の定員には上限があり、事業所の空き状況によっては対応できないこともあるため、急な宿泊が必要になりそうな場合は早めに事業所へ相談しておくと安心です。 ### Q. 料金は利用回数が増えるほど高くなりますか? いいえ。小規模多機能型居宅介護の基本料金は要介護度別の月額定額制のため、月の途中で通いの回数を増やしたり、訪問や泊まりを追加したりしても、その月の基本料金自体は変わりません。ただし食費・宿泊費・おむつ代などの実費は利用実態に応じて別途かかります。 ### Q. 利用できる年齢や要介護度に制限はありますか? 要支援1・2の方は「介護予防小規模多機能型居宅介護」として、要介護1〜5の方は「小規模多機能型居宅介護」として利用できます。原則65歳以上の方が対象ですが、特定疾病が認められる40〜64歳の方(第2号被保険者)も要介護・要支援認定を受けていれば対象になります。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所が「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を状況に応じて柔軟に組み合わせるサービス**で、料金は要介護度別の月額定額制 - **デイサービス・訪問介護・ショートステイを別々の事業所と契約する場合と違い、なじみの職員が状態の変化にその場で対応してくれる**のが利点 - **登録するとケアマネジャーが引き継がれ、これまでのデイサービス・ヘルパーは原則併用できなくなる**ため、今の事業所との関係も踏まえて検討する 「複数のサービスをやりくりするだけで一日が終わってしまう」と感じているなら、一度ケアマネジャーや地域包括支援センターに、小規模多機能型居宅介護という選択肢があることを相談してみてください。介護そっとねっとには、サービスの組み合わせ方に悩んだご家族の声も寄せられています。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。料金や利用条件の詳細は事業所・地域によって異なるため、具体的な相談は担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 小規模多機能型居宅介護(社会保障審議会介護給付費分科会資料)](https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001113809.pdf) - [厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 訪問入浴介護とは?対象者・料金・サービスの流れをやさしく解説 - **slug**: visiting-bath-care-guide - **公開日**: 2026.9.8 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/visiting-bath-care-guide **要約**: 結論、訪問入浴介護は看護職員1名+介護職員2名の3名体制で自宅に浴槽を持ち込むサービスで、要介護1以上が対象、費用は1割負担・全身浴で1回1,200円台が目安です。訪問介護の入浴介助・デイサービスとの使い分けまで解説します。 **本文**: # 訪問入浴介護とは?対象者・料金・サービスの流れをやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 訪問入浴介護は、**看護職員1名+介護職員2名の3名体制**で自宅に浴槽を持ち込み入浴を介助するサービスで、**要介護1以上**が対象(要支援1・2は「介護予防訪問入浴介護」) > - 費用は1割負担なら**全身浴で1回1,200円台**が目安。部分浴・清拭はその7割程度に下がる > - 「デイサービスに通うのが難しい」「自宅の浴室では入浴できない」という方に向いたサービスで、訪問介護の入浴介助・デイサービスの入浴とは対象者の状態で使い分ける 「もう何日もお風呂に入れていない」「デイサービスに通うこと自体がつらくなってきた」——介護そっとねっとのアプリには、寝たきりに近い状態のご家族の入浴について、こうした切実な声が寄せられます。自宅の浴槽をまたぐことも、施設に通うことも難しくなったとき、選択肢として名前が挙がるのが**訪問入浴介護**です。 ただし「訪問介護の入浴介助」「デイサービスでの入浴」と何が違うのか、費用はどのくらいかかるのか、実際に使ったことがない方にとっては分かりにくいサービスでもあります。この記事では、訪問入浴介護のサービス内容・対象者・費用の目安から、他の入浴支援サービスとの使い分けまで、健康長寿ネット・厚生労働省の公式情報にもとづいてやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 訪問入浴介護で受けられるサービスの内容と流れ > - 対象者(要介護度)と費用の目安 > - 訪問介護の入浴介助・デイサービスとの違いと使い分け > - 利用を始めるまでの手順 > - 失敗しやすいポイントと避け方 なお、訪問入浴介護には**看護職員が同行する**という他の入浴支援サービスにはない特徴があります。「医療的な管理が必要な状態でも入浴できるのか」という疑問については、記事の後半でくわしく触れます。 --- ## 訪問入浴介護とはどんなサービス? **訪問入浴介護とは、寝たきりなど自宅の浴槽での入浴が難しい要介護者に対して、専用の浴槽を自宅に持ち込んで入浴の介護を行う訪問系の介護保険サービスです。** [健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-service/humon-nyuyoku.html)によると、サービスは看護職員(看護師または准看護師)1名以上、介護職員2名以上の**計3名体制**で提供されるのが標準です。看護職員が入浴前に体温・血圧・脈拍などのバイタルサインを確認し、その日の体調に応じて全身浴・部分浴・清拭のいずれで対応するかを判断します。入浴後は着替えの介助まで含めて行われます。 ### サービスの流れ(1回あたり) 1. **到着・準備**:スタッフ3名が浴槽・給排水ホース・タオル類などの機材一式を車で自宅前まで運び入れる 2. **バイタルチェック**:看護職員が体温・血圧・脈拍を測定し、その日の入浴可否と方法(全身浴/部分浴/清拭)を判断する 3. **入浴介助**:組み立てた浴槽で全身浴、または部分浴・清拭を実施。洗髪・洗身も行う 4. **入浴後の観察・着替え**:入浴後の体調変化がないか観察しながら、着替えと整容を介助する 5. **片付け・記録**:浴槽・機材を撤収し、その日の体調やケア内容を記録に残す 1回あたりの所要時間は準備・片付けを含めておおむね40〜60分程度が目安です(体調や住環境により前後します)。 浴槽は組み立て式のものを持ち込み、居室や玄関先など浴槽を設置できるスペースで入浴します。給水はキッチンや浴室の蛇口から専用ホースで取り込み、排水も同様にホースで行うため、必ずしも自宅の浴室を使う必要はありません。この「自宅の浴室を使わずに入浴できる」という点が、住環境の制約が大きいご家庭にとって訪問入浴介護が選ばれる理由のひとつです。 --- ## 対象者は?要支援でも利用できる? **介護保険の訪問入浴介護は、要介護1以上の認定を受けた方が対象です。** 要支援1・2の方は「介護予防訪問入浴介護」として、内容はほぼ同じまま予防的な観点を加えたサービスを利用できます([健康長寿ネット](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-service/humon-nyuyoku.html))。 利用にあたって特別な疾患名の指定はありませんが、実際に選ばれるのは次のような状況の方が中心です。 - 寝たきり、またはそれに近い状態で、自宅の浴槽をまたぐこと自体が困難 - 体調の変動が大きく、通所系サービス(デイサービス等)への外出そのものが負担になっている - 医療的な管理(褥瘡がある、酸素療法中など)があり、入浴中も看護職員による観察が必要 - 家族だけでの入浴介助では転倒などのリスクが大きいと感じている - 認知症の周辺症状(不安や混乱)が強く、入浴を嫌がって家族だけでは対応が難しい これらに一つでも心当たりがある場合は、「まだ大丈夫」と様子を見続けるより、一度ケアマネジャーに相談してみる価値があります。実際に利用するかどうかは、相談したうえで決めれば問題ありません。 要介護認定の申請方法や区分の基本については、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しています。「今の要介護度で本当に訪問入浴を頼めるのか分からない」という場合は、まずケアマネジャーに現在の状態を具体的に伝えるところから始めましょう。 --- ## 費用はどのくらいかかる? **1割負担の場合、全身浴で1回あたり1,200円台が目安です。** [健康長寿ネット](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-service/humon-nyuyoku.html)の整理によると、標準的な体制(看護職員1名+介護職員2名)による全身浴の基本料金は1割負担で1,256円程度とされています。 | 対応内容 | 1割負担の目安 | | --- | --- | | 全身浴(看護職員1名+介護職員2名) | 1,256円程度 | | 全身浴(介護職員のみ3名で対応する場合) | 上記の95%程度 | | 部分浴・清拭 | 上記の70%程度(875円程度) | | 要支援者(介護予防訪問入浴介護) | 845円程度 | 2割・3割負担に該当する方はこの金額がそのまま2倍・3倍になります。実際の請求額は、事業所ごとの加算(サービス提供体制強化加算、処遇改善加算など)や地域区分によって上下するため、**契約前に必ず利用予定の事業所から具体的な見積もりを確認**してください。 また、他の在宅サービスと同様に、月々の利用量が[区分支給限度基準額](/columns/nursing-insurance-basics)を超えると、超えた分は全額自己負担になります。デイサービスや訪問介護など他のサービスと組み合わせて使う場合は、ケアマネジャーとケアプラン全体のバランスを相談しておくと安心です。費用負担が重くなってきたと感じたら、[高額介護サービス費](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)の払い戻し制度も確認しておきましょう。 ![訪問入浴介護・訪問介護の入浴介助・デイサービスの入浴の3つを、対象となる状態像で使い分ける目安を示した比較図。](/column-figures/visiting-bath-care-guide-comparison.svg) --- ## 訪問介護の入浴介助・デイサービスとは何が違う? **入浴を支援する介護保険サービスには、訪問入浴介護のほかに「訪問介護の入浴介助」「デイサービスでの入浴」があり、体の状態によって向き不向きが変わります。** - **訪問入浴介護が向いている方**:寝たきりに近く自宅の浴槽をまたげない方、医療的な観察が必要な方、デイサービスへの外出自体が負担な方。専用浴槽を持ち込むため、自宅の浴室が狭い・古いといった住環境の制約を受けにくいのも特徴です - **訪問介護の入浴介助が向いている方**:自宅の浴室設備を使えるものの、見守りや一部の介助(洗身・洗髪など)があれば入浴できる方。訪問介護全体の内容は、[訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説](/columns/home-help-service-guide)で詳しく解説しています - **デイサービスでの入浴が向いている方**:要介護度が比較的軽く、通所すること自体には問題がない方。入浴だけでなく日中の活動や他者との交流も兼ねられるのが利点です。デイサービス全体の内容は[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方](/columns/day-service-guide)を参考にしてください どれか一つに絞り込む必要はなく、体調の波に合わせて「調子の良い週はデイサービス、体調を崩した週だけ訪問入浴」のように併用しているご家庭も少なくありません。判断に迷ったときは、担当のケアマネジャーに「本人が今、お風呂でどこにいちばん困っているか」を具体的に伝えると、状態に合ったサービスの組み合わせを提案してもらいやすくなります。 ### 家族による入浴介助の負担が大きい理由 「サービスを使わず、家族だけで入浴させられないか」と考える方もいますが、体重を支えながらの入浴介助は、専門職でも2〜3名がかりで行うのが標準的な体制であることからも分かるとおり、家族一人・二人で担うには負担が大きい介助です。浴室は床が滑りやすく、狭い空間での立ち座りや抱え上げは腰や膝への負担も大きいため、家族が無理をして介助を続けると、共倒れのリスクが高まります。「入浴の介助だけは専門職に任せ、それ以外の時間で家族らしく過ごす」という役割分担も、両立を続けるための現実的な選択肢です。 --- ## 介護保険が使えない場合の選択肢は? 要介護認定を受けていない方や、区分支給限度基準額を使い切ってしまった月は、介護保険の訪問入浴介護を利用できません。この場合の選択肢として、自治体によっては**介護保険外の自費入浴サービス**を提供する事業者や、市区町村独自の高齢者福祉サービスとして訪問入浴を実施しているケースがあります。 自費サービスは全額自己負担になるぶん料金は高くなりますが、要介護認定を受けていない方や、認定の結果を待っている間のつなぎとして利用されることがあります。自治体独自のサービスの有無や料金体系は地域差が大きいため、**まずは[地域包括支援センター](/columns/nursing-insurance-basics)や市区町村の高齢福祉担当窓口に問い合わせて確認する**のが確実です。要介護認定の申請自体をまだ済ませていない場合は、認定を受けることで介護保険の訪問入浴介護が使えるようになるため、あわせて申請を検討しましょう。 --- ## 利用を始めるまでの流れ 1. **ケアマネジャーに相談する**:現在の入浴状況(デイサービスに通えない、自宅の浴室が使えない等)を伝え、ケアプランへの位置づけを依頼する 2. **事業所を選ぶ**:地域の訪問入浴介護事業所をケアマネジャーに紹介してもらう。訪問可能な曜日・時間帯、緊急時の対応体制などを確認する 3. **初回訪問・アセスメント**:看護職員が自宅を訪問し、体調・持病・住環境(浴槽を搬入するスペース、給排水の確保など)を確認する 4. **契約・利用開始**:訪問頻度(週1〜2回程度が一般的)を決め、契約後にサービスが始まる 5. **継続的なモニタリング**:利用開始後も、体調の変化に応じて頻度や入浴方法(全身浴/部分浴/清拭)が見直される 自宅の間取りによっては浴槽の搬入経路や給排水の確保が課題になることがあるため、初回訪問時に住環境の確認をしっかり行ってもらうことが、後々のトラブルを防ぐポイントです。 ### 事業所を選ぶときに確認したいポイント 同じ地域に複数の訪問入浴介護事業所がある場合、以下のような点を比較すると選びやすくなります。 | 確認ポイント | 見るべき理由 | | --- | --- | | 訪問可能な曜日・時間帯 | 希望の頻度・時間帯に対応できるか | | 緊急時・体調急変時の対応体制 | 入浴中に体調が悪化した場合、どう対応してもらえるか | | 看護職員の配置状況 | 医療的な観察が必要な状態の場合、経験豊富な看護職員がいるか | | キャンセル・振替のルール | 体調不良で当日キャンセルした場合の扱い | | 利用者・家族からの評判 | ケアマネジャーや地域包括支援センターに、実際の評判を聞いてみる | 複数の候補がある場合は、ケアマネジャーに「他にどんな事業所があるか」を聞いてみると、比較材料が増えて選びやすくなります。 --- ## 失敗しやすいパターンと避け方 - **「まだ家族で入浴させられる」と無理を続け、転倒やヒヤリハットが起きてから相談する**:体重を支えての入浴介助は、家族にとって想像以上に体力を消耗します。「最近、お風呂の介助がつらくなってきた」と感じた時点で、一度ケアマネジャーに相談しておくと安心です - **訪問入浴=全身浴だけと思い込み、体調不良時の対応を確認していない**:実際には看護職員がその日の体調を見て、全身浴が難しければ部分浴・清拭に切り替える運用が前提です。契約前に「体調が悪い日はどう対応してもらえるか」を確認しておきましょう - **費用の内訳を確認せず契約し、想定より高い請求に驚く**:基本料金に加算が上乗せされるケースがあるため、契約前に見積もりの内訳を確認しておくと安心です - **住環境の制約(浴槽搬入経路・給排水)を伝えないまま契約してしまう**:初回訪問時に住環境を正直に伝えることで、当日になって「浴槽が入らない」といった事態を防げます いずれも、契約前・利用開始時に一言確認するだけで防げるものばかりです。今日からできることとして、次にケアマネジャーと話す機会があれば、「体調が悪い日はどう対応してもらえるか」を一言聞いてみてください。それだけで、当日困る場面をかなり減らせます。 --- ## よくある質問 ### Q. 訪問入浴介護は毎日利用できますか? 利用回数に法律上の上限はありませんが、[区分支給限度基準額](/columns/nursing-insurance-basics)の範囲内でケアプランに組み込む必要があるため、他のサービスとのバランスを見ながら週1〜2回程度に設定されることが一般的です。体調や希望に応じてケアマネジャーに相談してみてください。 ### Q. 感染症にかかっていても利用できますか? 事業所ごとに感染症への対応方針や実施可否の判断基準が異なります。持病や現在の体調(発熱、感染症の有無など)は、契約前・利用のたびに正直に伝えることが、安全な入浴と事業所側の適切な準備につながります。心配な場合は事前に事業所へ確認しておきましょう。 ### Q. 訪問入浴介護と訪問介護の入浴介助、費用はどちらが高いですか? 訪問入浴介護は3名体制で専用浴槽を持ち込むぶん、訪問介護の身体介護(入浴介助)1回あたりの費用より高めに設定されています。ただし訪問介護の入浴介助は自宅の浴室設備が使える方向けであり、単純な金額だけでなく「その状態で安全に入浴できるか」を基準に選ぶことが大切です。 ### Q. マンションなど住環境によっては利用できないことがありますか? 浴槽や給排水ホースを搬入するスペース、電源の確保などが必要なため、住環境によっては対応が難しいケースもあります。契約前の初回訪問時に、事業所のスタッフが実際の住環境を確認したうえで可否を判断します。 ### Q. 家族は入浴介助中、立ち会う必要がありますか? 必須ではありませんが、初回は本人の普段の様子や好みを伝えるために立ち会うご家族が多いようです。慣れてきたら、その時間を家族自身の休息にあてているご家庭もあります。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **訪問入浴介護は、看護職員1名+介護職員2名の3名体制で専用浴槽を自宅に持ち込む、要介護1以上(要支援は介護予防訪問入浴介護)向けのサービス**で、費用は1割負担・全身浴で1回1,200円台が目安 - **訪問介護の入浴介助・デイサービスの入浴とは、本人の状態像(寝たきりに近いか、外出できるか、医療的観察が必要か)で使い分ける**ものであり、どれか一つに絞り込む必要はなく併用も可能 - **契約前に「体調が悪い日の対応」「住環境の制約」「費用の内訳」を確認しておく**ことが、利用開始後のトラブルを防ぐ 「デイサービスに通うのがつらくなってきた」「自宅のお風呂に入れられなくなってきた」と感じたら、一人で抱え込まず、まずはケアマネジャーに今の入浴の様子を具体的に伝えてみてください。介護そっとねっとには、同じように入浴の悩みを抱えるご家族の声もそっと寄せられています。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。費用や利用条件の詳細は事業所・地域によって異なるため、具体的な相談は担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団) - 訪問入浴介護とは](https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-service/humon-nyuyoku.html) - [厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点 - **slug**: setai-bunri-kaigo-hiyou-guide - **公開日**: 2026.9.4 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide **要約**: 結論、世帯分離は高額介護サービス費・負担限度額・介護保険料の3制度で軽減効果が出ることがありますが、国保料増や扶養手当喪失などのデメリットもあります。仕組み・費用感・手続きの流れをやさしく解説します。 **本文**: # 世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点 > **この記事の要点(3行)** > > - 結論、世帯分離は「高額介護サービス費」「負担限度額(食費・居住費)」「介護保険料」の3つが世帯の所得で決まる制度である以上、親世帯の所得区分が下がれば介護費用の負担軽減につながる場合があります > - ただし国民健康保険料の世帯按分が崩れる、扶養手当が受けられなくなる、複数の要介護者がいる世帯では高額介護サービス費の合算ができなくなるなど、見落としやすいデメリットもあります > - 「介護費用を安くしたいから」という理由だけで市区町村窓口に申請すると、生活実態と合わないとして受理されないことがあります。まず何が変わるかを整理してから判断しましょう 「親と同居しているけれど、世帯を分ければ介護費用が安くなるらしい」——そんな話を、ケアマネジャーや同じ境遇の知人から聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。介護そっとねっとのコミュニティにも、「世帯分離をすすめられたけれど、本当にお得なのか判断がつかない」という声が寄せられています。 結論から言うと、世帯分離は多くのご家庭にとって有効な選択肢になり得ますが、**万能の節約術ではありません**。効果が出るかどうかは「誰の所得がいくらで、誰と世帯を分けるか」という個別の家計状況に大きく左右され、逆に負担が増えるケースも実在します。 ただし1つだけ、先に押さえておきたい注意点があります。それは「介護費用を安くしたいから」という理由をそのまま窓口で伝えると、手続きが円滑に進まないことがあるという点です。これについては後半の「手続きの注意点」で詳しく説明します。 この記事では、世帯分離によって介護費用がどう変わるのかという仕組みから、実際にかかる費用感、メリットとデメリットの比較、手続きの流れ、そして「うちの場合はどうか」を判断するための考え方まで、家族向けにやさしく整理します。 ## この記事でわかること - 世帯分離が介護保険の3つの負担軽減制度にどう影響するかの仕組み - 軽減される金額の目安と、逆に負担が増えるケースの費用感 - メリットとデメリットの一覧比較 - 市区町村窓口での手続きの流れと必要書類 - 「うちは対象になるか」を考えるためのチェックポイント ## 世帯分離とは?介護費用にどう関係するのか? **住民票上の世帯を分けることで、介護保険の負担額が「世帯の所得」を基準に再計算されるからです。** 世帯分離とは、同じ住所に住み続けたまま、住民票上の世帯を2つ(またはそれ以上)に分ける手続きです。たとえば親と子が同居していても、世帯を「親のみの世帯」「子のみの世帯」に分けることができます。実際に引っ越す必要はなく、市区町村の窓口で「世帯変更届」を提出するだけで完了します。 介護保険には、負担を軽減する制度がいくつかありますが、その多くが**世帯全員の住民税課税状況や世帯の所得**を基準に判定されます。同居していても世帯を分ければ、判定の基準が「親と子を合わせた世帯」から「親だけの世帯」に変わるため、子に一定の収入があっても、親の所得だけで軽減制度の対象になるかどうかが判断されるようになります。 これが「世帯分離で介護費用が安くなる」と言われる理由です。ただし、これはあくまで「制度上の判定基準が変わる」という話であり、**世帯分離そのものが介護費用を直接下げる魔法の手続きというわけではありません**。親の所得がもともと高い場合や、分離後もなお課税世帯に該当する場合は、効果がほとんど出ないこともあります。 ## どの制度が世帯分離の影響を受ける? **主に「高額介護サービス費」「負担限度額(食費・居住費の軽減)」「介護保険料」の3つです。** それぞれ判定基準が少しずつ異なるため、1つずつ確認しましょう。 ### 高額介護サービス費への影響 [高額介護サービス費](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)は、1ヶ月の介護サービス自己負担額が上限を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。上限額は「世帯の課税状況」で決まる所得区分によって、令和8年8月時点でおおむね月額15,000円〜140,100円の間で段階的に設定されています。 親と子が同一世帯で子に一定の収入がある場合、世帯全体としては「課税世帯」の区分に入り、上限額が高め(一般的な例では月44,400円程度)に設定されることがあります。世帯分離によって親だけの世帯になり、親の年金収入等が住民税非課税の水準であれば、上限額がより低い区分(非課税世帯で月24,600円程度など)に変わり、払い戻しを受けやすくなる可能性があります。 ### 負担限度額(食費・居住費の軽減)への影響 特別養護老人ホームや介護老人保健施設など介護保険施設に入所している場合、[食費・居住費の負担軽減(負担限度額・補足給付)](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)を受けられることがあります。この制度の対象になるための要件の1つが「本人と世帯全員が住民税非課税であること」です。 子と同一世帯のままだと、子に収入があるために「世帯全員が非課税」の要件を満たせず対象外になっていたケースでも、世帯分離によって親だけの世帯となり、親自身が非課税であれば、この要件をクリアできる可能性があります。ただし預貯金等の資産要件も別途あるため、所得だけでなく資産状況もあわせて確認が必要です。 ### 介護保険料への影響 65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料は、本人の所得に加えて**世帯の住民税課税状況**によっても段階が決まります。子と同一世帯で子が課税されていると、親自身は非課税でも「世帯内に課税者がいる」区分に分類され、保険料が高めに設定されることがあります。世帯分離で親だけの世帯になり、親自身が非課税であれば、より低い段階に変わり、年間の保険料負担が下がる可能性があります。 段階が変わると、年金から天引きされる額は本徴収が始まる10月から変わります。天引きのしくみと通知の見方は[2026年度の介護保険料の決まり方と天引き額が変わる理由](/columns/kaigo-hokenryo-2026-family-guide)で解説しています。 なお、医療機関への通院・入院も多いご家庭は、[高額医療・高額介護合算療養費制度](/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide)もあわせて確認しておきましょう。この制度も高額介護サービス費と同じく世帯の所得区分で限度額が決まる仕組みのため、世帯分離による区分の変化が、年間の医療費・介護費の合算にも影響することがあります。 ## 世帯分離で実際どのくらい安くなる?費用感の目安 **制度ごとに数千円〜数万円/月の差が出ることがありますが、「必ずこの金額」と断定できるものではありません。** 具体的な軽減額は、親の年金収入・預貯金額・要介護度・利用しているサービスの種類によって大きく変わります。目安として、以下のような差が生じ得ます。 | 制度 | 課税世帯のまま(目安) | 世帯分離後・非課税該当(目安) | |---|---|---| | 高額介護サービス費(月額上限) | 一般区分で月44,400円程度 | 非課税世帯で月24,600円程度 | | 負担限度額(施設の食費・居住費) | 対象外(基準費用額を全額負担) | 第2〜3段階に該当すれば差額分が軽減 | | 介護保険料(年額・目安) | 世帯内課税ありの区分 | 非課税該当の区分でやや低め | いずれも「所得区分が実際に変わる場合」の差であり、**親の年金収入がもともと高く、分離後も課税世帯の区分にとどまる場合は、これらの差は発生しません**。世帯分離を検討する際は、まず親自身の年金額・年間収入がどの区分に該当しそうかを、市区町村の窓口やケアマネジャーに事前に確認しておくことをおすすめします。 ## 世帯分離のデメリットは?見落としやすい注意点 **負担が増える制度もあるため、軽減される制度とセットで確認する必要があります。** メリットばかりが強調されがちですが、以下のようなデメリット・注意点も実在します。 - **国民健康保険料が世帯単位で二重にかかることがある**:親が国民健康保険に加入している場合、世帯分離によって親が独立した世帯主になり、それぞれの世帯で保険料が計算されます。子の世帯と合算していたときより、世帯全体での保険料の合計が増えるケースがあります。 - **複数の要介護者がいる世帯では、高額介護サービス費の世帯合算ができなくなる**:夫婦がともに要介護状態で同一世帯の場合、2人分の自己負担額を合算して上限額を判定できますが、世帯分離で世帯を分けると、この合算ができなくなり、かえって払い戻し額が減ることがあります。 - **子の会社から扶養手当・家族手当を受けている場合、対象から外れる可能性がある**:企業の扶養手当は税法上の扶養や住民票上の世帯を要件にしていることが多く、世帯分離によって親が形式的に「扶養家族」でなくなると、手当が支給されなくなる場合があります。勤務先の就業規則・手当規定を事前に確認しましょう。 - **各種手続きに委任状が必要になる場面が増える**:世帯分離後は、住民票上は親子であっても別世帯になるため、親の代わりに子が住民票や課税証明書を取得する際、委任状の提出を求められることがあります。以前より一手間増える点は理解しておきましょう。 これらのデメリットは、家庭の状況(国保加入の有無、扶養手当の有無、要介護者が1人か複数か)によって当てはまるかどうかが変わります。メリットだけを見て判断せず、ご自身の家庭に当てはまる項目があるかを1つずつ確認することが大切です。 ![世帯分離のメリット(高額介護サービス費・負担限度額・介護保険料の軽減)とデメリット(国保料増・合算不可・扶養手当喪失)を左右に並べて比較した図](/column-figures/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide-comparison.svg) ## メリット・デメリットのどちらが大きいか、どう判断する? **「軽減される金額」と「増える負担・手間」を、両方とも数字で見積もってから比較するのが確実です。** 判断の目安として、以下のようなケースに分けて考えると整理しやすくなります。 - **親の年金収入が少なく、子に一定以上の収入がある** → 高額介護サービス費・負担限度額の軽減効果が出やすい典型パターン。ただし国保料・扶養手当への影響を必ず確認 - **夫婦とも要介護状態で同一世帯** → 高額介護サービス費の合算ができなくなるデメリットが大きくなりやすいため、慎重な試算が必要 - **親がすでに住民税非課税世帯に近い水準** → 世帯分離してもしなくても区分がほぼ変わらず、効果が薄いことがある - **子が扶養手当・家族手当を受給中** → 手当の支給要件(税法上の扶養か、住民票上の世帯かなど)を勤務先に確認してから判断 迷う場合は、施設のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口に、世帯分離を検討している旨を伝えて相談してみましょう。窓口では個別の所得状況に応じた具体的な試算までは行わないことも多いですが、対象となる制度の要件確認や、申請の流れについては案内してもらえます。 ## 世帯分離の手続きの流れは? **市区町村の窓口で「世帯変更届」を提出するだけで、実際の引っ越しは不要です。** 1. **事前確認**:世帯分離によって影響を受ける制度(国保・扶養手当など)を洗い出し、勤務先や保険者に確認する 2. **必要書類の準備**:本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)、国民健康保険証(加入している場合)、印鑑(自治体による) 3. **窓口での届出**:市区町村の住民課・戸籍住民課で「世帯変更届」を記入・提出する。代理人が届け出る場合は委任状が必要 4. **反映の確認**:住民票の世帯構成が変更されたことを確認し、介護保険料・利用者負担の区分が見直されるタイミングを介護保険担当窓口に確認する 窓口では「なぜ世帯を分けるのか」を聞かれることがあります。**「介護費用を安くしたいから」とだけ伝えると、制度の趣旨と異なる目的での届出として、確認や説明を求められる場合があります。** 世帯分離は本来、生計を別にする世帯の実態を届け出る手続きであるため、「生活費や家計を分けて管理しているため」など、実態に即した説明ができるようにしておくと手続きがスムーズです。実態を伴わない書類上だけの分離は、後から住民税・保険料の調査で指摘を受けるリスクもゼロではないため、必ず実態を伴った判断を行いましょう。 ## 世帯分離でよくある失敗例と回避策 **「軽減効果だけを見て手続きしたら、想定外の負担増に気づかなかった」という失敗が典型です。** 制度の仕組み上、次のようなパターンで「想定外」が起きやすいことがわかっています。それぞれの回避策とあわせて確認しましょう。 - **失敗パターン1:介護費用だけを見て世帯分離したのに、国保料の合計が上がってしまう** 親を国民健康保険に加入させたまま世帯分離すると、高額介護サービス費の上限額は下がっても、世帯ごとに保険料が計算し直されるため、国保料の世帯合計がかえって上がってしまうことがあります。 **回避策**:世帯分離を検討する時点で、介護保険担当窓口だけでなく国民健康保険担当窓口にも影響を確認しておくと、こうした想定外を防げます。 - **失敗パターン2:夫婦2人とも要介護なのに世帯を分けてしまい、合算による還付が受けられなくなる** 高額介護サービス費は同一世帯であれば複数の要介護者の自己負担額を合算できますが、世帯分離でこの合算ができなくなり、結果として払い戻し額が減ってしまうことがあります。 **回避策**:世帯内に要介護者が複数いる場合は、分離前に必ず合算の仕組みを確認し、分離後の見込み額を試算してから判断しましょう。 - **失敗パターン3:扶養手当が支給対象外になり、世帯全体の手取りが減る** 子の会社から支給されていた家族手当(扶養手当)が、世帯分離を機に支給対象外と判定され、数ヶ月後の給与明細で気づいてしまうケースがあります。 **回避策**:世帯分離の届出前に、勤務先の人事・総務担当に「扶養手当の支給要件(税法上の扶養か、住民票上の世帯か)」を確認しておくことで防げます。 これらの失敗パターンに共通するのは、**「介護費用の軽減」という1つの側面だけを見て判断してしまった**ことです。世帯分離は介護保険だけでなく、国民健康保険・税制・企業の福利厚生制度にもまたがる手続きだからこそ、関係する制度を横断して確認する視点が欠かせません。 もし「うちの場合、何を確認すればいいかわからない」と感じたら、まずは今お使いの健康保険証が国民健康保険か会社の健康保険(被用者保険)かを確認してみてください。国民健康保険に加入している場合は保険料への影響を、会社の健康保険(被用者保険)に加入している場合は扶養手当への影響を、それぞれ重点的に確認するとよいでしょう。この一手間だけで、上記のいずれのパターンにも事前に気づける可能性が高まります。 ## まとめ:世帯分離は「仕組みを理解してから」判断を この記事を読んで、世帯分離が介護費用にどう影響するかの仕組みと、自分の家庭が対象になりそうかを考える材料が手に入ったはずです。特に「高額介護サービス費」「負担限度額」「介護保険料」の3つがそれぞれ別の基準で軽減されること、そして国保料・扶養手当・合算不可などのデメリットが状況によっては軽減効果を上回ることもある、という点を押さえておけば、窓口や専門家に相談する際にも的確に質問できるようになります。 まずは今月分の年金振込通知書や課税証明書を手元に用意し、親御さんの年金収入がどのくらいの水準かを確認するところから始めてみてください。そのうえで、施設のケアマネジャーや地域包括支援センターに「世帯分離を検討しているが、うちの場合はどうか」と相談してみると、具体的な次の一歩が見えてきます。 介護費用の負担軽減について、他にも[高額介護サービス費の詳しい上限額と申請方法](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)や、[介護施設の食費・居住費の負担限度額のしくみ](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)、[親の介護が始まったときの介護保険の基本](/columns/nursing-insurance-basics)もあわせてご覧ください。 介護そっとねっとのコミュニティでは、同じように世帯分離や介護費用の軽減制度について悩む家族とつながり、情報交換をすることもできます。制度の理解を深めながら、同じ悩みを持つ方の声にも触れてみませんか。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な手続きや軽減額については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口・国民健康保険担当窓口にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護保険における利用者負担](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) --- 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方 - **slug**: kyodai-kaigo-buntan-family-guide - **公開日**: 2026.9.4 - **更新日**: 2026.10.9 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide **要約**: 結論、親の介護を誰がどれだけ担うかに法律で決まった順番はなく、子どもは全員が親の扶養義務者です。話し合いがまとまらないときは家庭裁判所の調停も使えます。状況の書き出しから費用の分け方まで、揉めにくい4ステップを解説します。 **本文**: # 親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方 > **この記事の要点(3行)** > > - 親の介護を誰がどれだけ担うかに、法律で決まった順番はない。民法上、子どもは全員が親の扶養義務者で、順番や方法は兄弟の話し合いで決める。まとまらなければ家庭裁判所が定める > - 話し合いを先送りすると、最初に動いた人に負担が固まりやすい。要介護認定が出たころなど、落ち着いた時点で一度役割を書き出して決め直す > - 状況の棚卸し→親の希望とお金の確認→役割とお金の割り振り→公的な窓口を間に入れる、の4ステップで話し合うと、感情論になりにくくなります 「介護は私ばかり」「兄はお金だけ出して何もしない」——親の介護が始まると、それまで表面化していなかった兄弟間の温度差が一気に見えてきます。住んでいる場所も、仕事も、家計の事情も違う兄弟が、同じ親のことで役割を決めるのは簡単ではありません。 この記事では、なぜ兄弟間の介護分担で揉め事が起きやすいのかという構造的な理由から、実際に話し合いを始める前に整理しておきたいこと、揉めずに決めるための4つのステップ、そしてお金の話し合い方まで、家族向けにやさしく整理します。ただし、話し合いがどうしてもまとまらない場合の法的な手段についても後半で触れます。「揉めたくない」という気持ちだけでは解決しない場面も実際にはあるからです。 ## なぜ兄弟間の介護分担は揉めやすいのか? **「誰が介護すべきか」の優先順位は、法律で決まっていないからです。** 介護というと「長男の嫁がするもの」「同居している子がするもの」という考え方が根強く残っている地域や家庭もありますが、これは法律上のルールではなく、慣習や思い込みにすぎません。 民法877条第1項は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています([e-Gov法令検索 民法](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089))。親と子は直系血族なので、子どもは全員が親の扶養義務者です。扶養義務者が複数いるときの順番は、民法878条で「当事者間の協議」で決め、協議がまとまらないときは家庭裁判所が定めるとされています。長男・長女、同居しているかどうか、性別によって順番が決まる規定はありません。 扶養義務の重さについては、条文ではなく解釈として、大きく分けて2つの考え方が使われています。 - **生活保持義務**:自分と同じ水準の生活を保障する強い義務。主に夫婦間・親から未成熟の子への義務に適用される考え方です - **生活扶助義務**:自分の生活を犠牲にしない範囲で援助する義務。成人した子どもが親を扶養する場合は、一般にこちらに位置づけられます つまり、法的には「自分の生活を壊してまで親の介護を負担する義務」までは求められていません。この前提を兄弟全員が正しく理解していないと、「やって当然」「なぜ協力しないのか」という一方的な感情がぶつかり合い、話し合いが感情論になりやすくなります。まずは「誰か一人に義務が偏っているわけではない」という共通認識を持つことが、揉めない話し合いの土台になります。 なお、話し合いで解決できない場合は、民法878条・879条により、家庭裁判所に扶養の順位や程度・方法を定めてもらう調停・審判の手続きもあります。裁判所の案内では、扶養請求調停は親を引き取って扶養するか、扶養料をどう支払うかなどの話し合いがまとまらないときに使え、扶養義務者が他の扶養義務者を相手方として申し立てることもできます([裁判所 扶養請求調停](https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_11/index.html))。「最後は第三者が決める手続きがある」と知っておくと、一方的な負担の押し付けに対して声を上げやすくなります。 ## 話し合いを始める前に、何を整理しておくべき? **兄弟それぞれの「できること」を、感情ではなく事実で見える化しておくことです。** 話し合いがこじれる典型的なパターンは、「気持ち」の話から入ってしまうことです。「なんで手伝ってくれないの」「そっちこそ何もしてないじゃない」という感情のぶつけ合いは、事実の確認が済んでいないまま始まるからこそ起こります。 話し合いの前に、兄弟それぞれが以下を紙に書き出しておくと、感情論になりにくくなります。 - **住んでいる場所と、親の家までの距離・移動時間** - **勤務形態・勤務時間(在宅勤務の可否、休みの取りやすさ)** - **自分の家族構成(配偶者の理解、子どもの年齢、自分自身の持病の有無)** - **現在の貯蓄・収入から、月々どのくらいの金額なら継続的に負担できるか** 書き出す作業自体は地味ですが、「誰が何をできて、何ができないか」が可視化されると、「あの人は何もしていない」という印象論が、「あの人は遠方で頻繁に通えないが、費用は多めに負担できる」という具体的な役割分担の材料に変わります。 ここでもう一つ大切なのが、**親自身の希望とお金の状況を先に確認しておく**ことです。親がどこでどう暮らしたいか、施設入居も選択肢に入れているか、貯蓄・年金額はどの程度あるかを、できれば本人を交えて確認しておきましょう。介護費用は、まず親自身の財産でまかなうのが原則です。この前提を飛ばして兄弟間の負担割合だけを先に議論すると、「そもそも親のお金はどうなっているのか」という疑問が後から蒸し返され、話し合いをやり直すことになりがちです。 ## 揉めずに決める、分担の4ステップ **「状況の棚卸し→親の希望とお金の確認→役割とお金の割り振り→公的な窓口を間に入れる」の順で進めると、感情論に流れにくくなります。** ![揉めずに決める、兄弟で分担する4ステップ(状況を紙に書き出す・親の希望とお金を確認・役割とお金を具体的に割り振る・公的な窓口も間に入れる)を示すステップ図解](/column-figures/kyodai-kaigo-buntan-steps.svg) ### ステップ1:状況を紙に書き出す 前章で触れた「住んでいる場所・勤務形態・家族構成・健康状態」を、兄弟全員がそれぞれ紙やメッセージアプリで共有します。声だけの会話だと「言った・言わない」のすれ違いが起きやすいため、文字に残すことをおすすめします。 ### ステップ2:親の希望とお金を確認する 親本人の暮らし方の希望、貯蓄・年金額の目安を、できれば本人を交えて確認します。話しにくいテーマですが、「今後の準備のために聞いておきたい」という前置きをすると切り出しやすくなります。たとえば「お母さんがこの先どんなふうに暮らしたいか、みんなで考えたいから聞かせてほしい」というように、詮索ではなく本人の希望を尊重する姿勢を先に伝えると、お金の話にも自然につなげやすくなります。金額そのものより、「大まかにどのくらいの蓄えがあるか」「年金だけで足りそうか」という大枠がつかめれば十分です。 ### ステップ3:役割とお金を具体的に割り振る 「通院の付き添い」「行政手続きや書類対応」「日常の見守り連絡」といった役割と、「月々の費用のうち誰がいくら負担するか」を、それぞれ別の軸として割り振ります。役割分担と費用分担は必ずしも一致させる必要はありません。近くに住んで頻繁に通う人は身体的な負担が大きい分、費用は少なめに、遠方で通えない人はその分費用を多めに、といった調整も現実的な選択肢です。大切なのは「できる範囲」で分けることで、同居している家族や、たまたま最初に動き始めた人に全てを背負わせないことです。 ### ステップ4:公的な窓口も間に入れる 身内だけで話し合うと、過去の感情的なわだかまりが顔を出してしまうことがあります。地域包括支援センターやケアマネジャーに同席を依頼すると、第三者の視点が入り、事実ベースの話し合いに戻りやすくなります。ケアマネジャーとの付き合い方や、相性が合わないと感じたときの対処法は、[ケアマネジャーの選び方と変更方法──「合わないかも」と思ったら見る5つのサイン](/columns/care-manager-selection-and-change)で詳しく解説しています。 ## 揉めやすいのはどんなとき? **最初に動いた人への負担の固定、お金の話の先送り、連絡の途切れ、文字だけのやり取りの4つが、すれ違いの起点になりやすい場面です。** 以下は、兄弟の分担で起こりやすいすれ違いを場面ごとに整理した確認例です。特定の家族の事例ではありません。自分たちの状況に当てはまるものがないか確かめてください。 - **「最初に動いた人」が、そのまま主担当に固定されてしまう**:親が倒れた直後、たまたま近くに住んでいた・たまたま仕事の融通が利いた兄弟が対応を始めると、他の兄弟が「もう任せておけば大丈夫」と考えてしまい、役割分担の話し合いが永久に先送りになるケースです。回避策は、対応が落ち着いた段階(多くは要介護認定が出た頃)で、一度立ち止まって役割を明文化する時間を作ることです - **お金の話を切り出すタイミングを逃し続ける**:「お金の話をするのは薄情に思われるのでは」という遠慮から誰も切り出せず、気づけば一人が立て替えを続けていた、ということが起こります。回避策は、介護が始まった初期段階、まだ関係がこじれていないうちに「今後のために、費用の話も早めにしておきたい」と切り出しておくことです - **「手伝えない」ことへの罪悪感が、かえって連絡を遠ざける**:遠方に住む兄弟が「何もできない自分」への引け目から連絡を減らしてしまい、それが同居家族には「無関心」に見えてしまう、というすれ違いです。回避策は、手伝えない側から先に「今はこれくらいならできる」と、できる範囲を具体的に申し出ることです - **話し合いの場を一切設けず、SNSやメッセージの文面だけで判断し合う**:短い文章のやり取りだけでは温度感が伝わらず、誤解が誤解を呼びます。回避策は、たとえ短時間でもビデオ通話や対面で、表情の見える形で一度は話す機会を作ることです どの場面も、誰かが悪意を持っているとは限りません。遠慮や言い出しにくさ、タイミングのずれが積み重なって起こります。だからこそ、感情がこじれる前の早い段階で、前章の4ステップを一度回してみることに意味があります。 ## お金の話し合い、何を確認すればいい? **介護費用は原則として親の財産でまかない、不足分をどう分担するかを兄弟間で話し合うのが基本の流れです。** 費用の話し合いで押さえておきたいポイントは次の3つです。 - **費用の総額と内訳を、家計簿のように共有する**:介護保険サービスの自己負担分、おむつ代などの実費、通院の交通費まで含めて、月にどのくらいかかっているかを定期的に共有します。内訳が見えないまま「もっと出して」と言われると、不信感につながります。在宅介護の場合、介護保険サービスの自己負担(1〜3割)に加えて、おむつ代・介護食・移動の交通費といった保険適用外の実費がかかります。この実費部分は内訳が見えにくいので、レシートや領収書を月ごとにまとめて共有しておきます - **月々の負担額を、無理のない範囲で決める**:一時的な感情で高い金額を約束すると、後で継続できなくなり、かえってトラブルの種になります。長期化することを前提に、継続可能な金額で合意しましょう。介護は数ヶ月で終わるとは限らず、数年単位で続くこともあるため、「今だけ頑張れる金額」ではなく「この先ずっと続けられる金額」で線を引くことが長続きのコツです - **介護保険の負担軽減制度も活用する**:高額介護サービス費や負担限度額認定証など、費用そのものを抑える公的な制度もあります。負担額の話し合いの前に、こうした制度を使い切れているかを確認しておくと、兄弟間で分担すべき金額自体を減らせます。介護保険の基本的なしくみは[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しています。高額介護サービス費の上限額や申請方法については[高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)で詳しく整理しています なお、先述のとおり、親の扶養義務を負う子どもが複数いる場合、法律上は誰か一人に費用負担を負わせる順位は決まっていません。「介護をしない兄弟にも費用だけは分担してほしい」という要望は、子ども全員が扶養義務者であるという民法の考え方に沿ったものです。ただし、それを一方的に通告するのではなく、「事実の共有→役割とお金の割り振り」というステップを踏んだ上で伝えたほうが、関係を壊さずに合意にたどり着きやすくなります。 ## 仕事を休む役割は、兄弟でどう分けられる? **会社員なら、介護休業や介護休暇は兄弟それぞれが自分の勤め先で取れます。休みが必要な時期を兄弟で分けると、一人が仕事を辞める方向に追い込まれにくくなります。** 厚生労働省の介護休業制度特設サイトによると、介護休業は要介護状態の家族1人につき**3回まで、通算93日まで**取れます([厚生労働省 介護休業](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/))。対象は家族を介護する労働者なので、親1人に対して、働いている兄弟がそれぞれの勤め先で取れます。 分け方の例を表にしました。家族ごとに事情は違うので、自分たちの予定に置き換えて考えてください。 | 休みが要る場面 | 分け方の例 | | --- | --- | | 入院・退院の前後、施設探し | 近くに住む人が介護休業を数日〜数週間、遠方の人は書類と見学の予約を担当 | | 要介護認定の調査、ケアマネジャーとの面談 | 都合のつく人が介護休暇(年5日、時間単位でも取れる)で立ち会う | | 日々の通院の付き添い | 曜日や月ごとに交代し、交代表を共有する | 2025年4月からは、会社に対して介護に直面した社員への制度の個別の案内などが義務になっています。勤め先で使える制度は、[介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度](/columns/work-care-balance-2025-law)で確認できます。 ## 何もしない兄弟がいる場合、どう対応すればいい? **まず「本当に何もできないのか」を確認し、それでも動かない場合は第三者を介した話し合いに切り替えます。** 「何もしない」ように見えても、実際には勤務先の状況や家庭の事情で身動きが取れないケースは少なくありません。感情的に責める前に、ステップ1の「状況の棚卸し」を改めて依頼し、事実として何ができないのかを確認しましょう。 そのうえで、経済的な負担すらも拒否する場合は、地域包括支援センターに相談し、話し合いの場を設けてもらうことが現実的な一手です。それでも解決しない場合は、家庭裁判所の扶養請求調停・審判があります。費用の負担よりも感情的な対立が中心なら、円満な関係を回復するための話し合いの場として親族関係調整調停もあります([裁判所 親族関係調整調停](https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_06/index.html))。どちらも申立ての費用は収入印紙1,200円分と郵便切手です。ただし、関係がさらにこじれるおそれもあるため、まずは公的な窓口を間に入れた話し合いを試します。 一人っ子で頼れる兄弟がそもそもいない場合や、兄弟はいても全員が遠方に住んでいる場合は、悩みの性質が少し異なります。そうしたケースの備えと使えるサービスは[一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?──きょうだいがいない・離れて暮らす家族のための備えと使えるサービス](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)にまとめていますので、あわせてご覧ください。 ## 話し合いの前に、家族の意思確認もしておきたい 介護の役割分担と合わせて、実は「もしものときにどうしたいか」という本人の意思確認も、早いうちに済ませておくと後々の判断がぐっと楽になります。延命治療の希望や、最期を迎えたい場所についての話し合いは、いざというときに慌てて決めるにはあまりに重いテーマだからです。人生会議(ACP)の始め方は[親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方](/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide)で解説しています。介護の分担会議と同じタイミングで、少しずつ話題に出してみるのもよいでしょう。 ## まとめ:この記事で持ち帰れること この記事を読むことで、次のことが判断できるようになります。 - 兄弟間の介護分担に法律上の優先順位は無いこと、そして扶養義務の範囲(生活を壊してまでの負担は求められないこと) - 感情論を避けるための「状況の棚卸し→親の希望とお金の確認→役割とお金の割り振り→公的な窓口を間に入れる」という話し合いの型 - 費用分担で確認すべき3つのポイントと、何もしない兄弟がいる場合の現実的な対応段階 今日からできる小さな一歩として、まずはご自身の「住んでいる場所・勤務形態・今の家族の状況」を、メモ帳アプリでもいいので3行だけ書き出してみてください。それだけで、次に兄弟に連絡するときの話しやすさが変わってきます。 兄弟には言いにくい気持ちを、同じ立場の人に聞いてほしいときは、介護そっとねっとで名前を出さずに書き込めます。兄弟との分担に悩む人の書き込みを読むこともできます。 ## よくある質問 ### Q. 介護をしない兄弟に、費用だけでも請求できますか? A. 求めることはできます。民法877条で子どもは全員が親(直系血族)の扶養義務者とされており、介護を担っていない兄弟にも、費用の面で役割を分けるよう話し合いを求められます。話し合いがまとまらないときは、扶養義務者どうしで家庭裁判所に扶養請求調停を申し立てることもでき、調停では各自の経済状況や生活状況、親の意向が考慮されます。 ### Q. 「長男(長女)だから介護すべき」という考え方は正しいですか? A. 法律上の根拠はありません。民法は、子どもの誰が優先して親を扶養するかを定めておらず、順番は当事者の話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めるとしています(民法878条)。長男・長女といった続柄で決まるものではありません。 ### Q. 話し合いがまとまらない場合、最終的にどうすればいいですか? A. 民法878条・879条により、扶養の順位や程度・方法は家庭裁判所に定めてもらうことができ、そのための扶養請求調停があります。費用の負担ではなく感情的な対立が中心なら、円満な関係を回復するための話し合いの場として親族関係調整調停もあります。どちらも関係が悪化するおそれがあるので、まずは地域包括支援センターやケアマネジャーなど第三者を交えた話し合いを試すのが現実的です。 ### Q. 費用の分担割合は、収入に応じて変えるべきですか? A. 法律で決まった割合はなく、兄弟間の話し合いで決めます。役割(通院同行・書類対応など)と費用負担を別の軸として考え、身体的な負担が大きい人の費用負担を軽くするなど、実情に応じた調整が一般的です。 ### Q. 遠方に住んでいて何も手伝えない場合、どうすればいいですか? A. 通えない分を、費用の負担、書類や手続きの担当、電話での見守りなど、離れていてもできる役割で引き受ける方法があります。会社員なら、介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回まで)を兄弟それぞれが取れるので、入退院や施設探しの時期に合わせて交代で休む分け方もできます。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。扶養の順位や負担の割合など個別の法的な判断は、家庭裁判所の家事手続案内や弁護士などの専門家にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [e-Gov 法令検索 - 民法(第877条 扶養義務者、第878条 扶養の順位、第879条 扶養の程度又は方法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) - [裁判所 - 扶養請求調停](https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_11/index.html) - [裁判所 - 親族関係調整調停](https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_06/index.html) - [厚生労働省 - 介護休業(介護休業制度特設サイト)](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/) (確認日:2026年10月9日) --- 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安・頼めることをやさしく解説 - **slug**: visiting-nursing-care-guide - **公開日**: 2026.9.1 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/visiting-nursing-care-guide **要約**: 結論、65歳以上で要介護・要支援認定があれば介護保険の訪問看護が優先され、自己負担は1割で1回数百円台が目安です。医療保険との切り替えの仕組み、頼めること・頼めないこと、2026年6月からの処遇改善加算まで解説します。 **本文**: # 訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安・頼めることをやさしく解説 在宅で親の介護をしていると、「体調が心配だけど毎回病院に連れて行くのは大変」「医療的な処置が必要だけど、家族だけでは不安」という場面に必ず一度はぶつかります。そんなとき候補にあがるのが**訪問看護**です。看護師が定期的に自宅まで来てくれるサービスですが、「訪問介護と何が違うの?」「医療保険と介護保険、どっちを使うの?」と、名前が似ているサービスや制度の複雑さに戸惑う家族は少なくありません。 先に、要点をまとめます。 - **訪問看護は、看護師や准看護師などの医療専門職が自宅を訪問し、医師の指示のもとで健康観察・医療処置・リハビリを行うサービス**(家事や身体介助が中心の訪問介護とは役割が異なります) - **65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方は、原則「介護保険」の訪問看護が優先**。40歳未満の方や、医療保険の対象となる特定の状態の方は「医療保険」の訪問看護になります - **介護保険を使う場合の自己負担は1割負担で1回あたりおおむね500〜1,000円台が目安**(時間・地域・加算によって変動) - **利用回数の上限は、介護保険には基本的になく、医療保険は原則週3回まで**という違いがあります - 2026年6月からは訪問看護にも新たに「介護職員等処遇改善加算(1.8%)」が創設され、担い手不足への対応が進められています ただし、訪問看護には **「医療保険と介護保険のどちらが適用されるかで、自己負担の仕組みも利用できる回数も変わる」という注意点が1つ** あり、この切り替えの仕組みを知らずに戸惑う家族が多いため、記事の後半でくわしく説明します。 この記事では、訪問看護の基本的な仕組みから、費用の目安、頼めること・頼めないこと、利用を始めるまでの流れ、よくある失敗パターンまで、厚生労働省の公式情報をもとにやさしく解説します。 --- ## 訪問看護とはどんなサービス? **訪問看護とは、看護師・准看護師・保健師・理学療法士などの医療専門職が利用者の自宅を訪問し、主治医の指示のもとで健康状態の観察、医療処置、リハビリテーション、療養上の世話などを行うサービスです。** 訪問介護(ホームヘルプ)が生活援助や身体介護を中心とするのに対し、訪問看護は**医療的なケア**が中心という違いがあります。両者の役割の違いは、[訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説](/columns/home-help-service-guide)でも触れていますが、ここでは訪問看護に絞って具体的に見ていきます。 訪問看護の利用には、必ず **主治医からの「訪問看護指示書」** が必要です。訪問看護ステーションや医療機関の看護師が、この指示書に基づいて計画を立て、定期的に自宅を訪問します。 ### 訪問看護で頼めること | 分類 | 具体例 | | --- | --- | | 健康状態の観察 | バイタルチェック(体温・血圧・脈拍)、全身状態の把握、病状の変化の早期発見 | | 医療処置 | 褥瘡(床ずれ)の処置、痰の吸引、経管栄養の管理、カテーテル管理、インスリン注射の介助 | | リハビリテーション | 関節可動域の維持・拡大、歩行訓練、日常生活動作(ADL)の訓練(理学療法士・作業療法士が担当する場合あり) | | 服薬管理 | 薬の飲み忘れ防止の声かけ、副作用のチェック、残薬の整理 | | 療養上の世話 | 清拭・洗髪などの衛生ケア、栄養・食事に関する助言 | | 家族への指導・相談 | 介護方法の助言、急変時の対応方法の説明、精神的な相談への対応 | | 終末期ケア | 痛みの緩和ケア、看取りに向けた支援(在宅での看取りを希望する場合) | 在宅での看取りを検討している家族にとって、訪問看護は特に重要な役割を持ちます。看取り期に向けた心構えについては、[親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方](/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide)、訪問診療の医師や訪問看護とのチームづくりと、亡くなったときの連絡の順番については[在宅看取り、家族は何を準備する?](/columns/zaitaku-mitori-family-guide)もあわせて参考にしてください。 ### 訪問看護で頼めないこと 一方で、訪問看護には対象外の内容もあります。 - **手術や高度な医療処置**(入院・通院が必要な医療行為は対象外) - **家事全般**(掃除・洗濯・調理などの生活援助は訪問介護の役割) - **家族の代わりに終日付き添うこと**(訪問看護は1回30分〜1時間程度の訪問が基本で、常駐するサービスではありません) - **医師の指示のない独自の医療判断**(あくまで医師の指示書に基づいた範囲での医療的ケアに限られます) 「医療的なことは訪問看護、家事や身体介助は訪問介護」と役割で線引きされていますが、実際には**訪問看護と訪問介護を併用しているケースも多く**、両方をケアプランに組み込むことで在宅生活を支える体制を作ることができます。 --- ## 医療保険と介護保険、どちらが適用される? 訪問看護でもっとも混乱しやすいのが、**医療保険と介護保険のどちらが適用されるか**という点です。この違いを理解しておくと、費用や利用回数の見通しが立てやすくなります。 **結論から言うと、65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方は、原則として介護保険の訪問看護が優先されます。** 40歳以上65歳未満で末期がんなど特定疾病により要介護認定を受けた方も同様に介護保険が優先です。 一方、次のような方は医療保険の訪問看護が適用されます。 - **40歳未満**で訪問看護が必要な方 - **40歳以上65歳未満**で要介護認定を受けていない方(特定疾病に該当しない場合) - 要介護認定を受けていても、**厚生労働大臣が定める「特掲診療料の施設基準等」の疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症など重い病気)に該当する場合**や、**主治医が「特別訪問看護指示書」を交付した場合**(急性増悪時など)は、介護保険の対象者であっても例外的に医療保険が優先されます つまり「高齢で要介護認定を受けている=すべて介護保険」というわけではなく、病状によって医療保険に切り替わる場面があるということです。この切り替えの判断は主治医とケアマネジャー・訪問看護ステーションが行うため、家族が制度を完璧に理解している必要はありませんが、**「なぜ今回は医療保険なのか」を聞かれたときに戸惑わない程度の知識**があると安心です。 ### 利用回数の違い 適用される保険によって、利用できる回数の上限も変わります。 | | 介護保険 | 医療保険 | | --- | --- | --- | | 利用回数の上限 | 原則なし(ケアプランに基づき必要な回数を設定) | 原則週3回まで | | 例外 | ケアプランの範囲内で柔軟に調整可能 | 末期がん・「特別訪問看護指示書」がある場合は週4回以上も可能 | | ケアマネジャーの関与 | あり(ケアプランに位置づけ) | なし(医師の指示書に基づく) | 介護保険は要介護度ごとに定められた**区分支給限度基準額**(1ヶ月に利用できる介護保険サービスの上限額)の枠内で、デイサービスや訪問介護などと合算して管理します。この上限額の考え方は、[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方](/columns/day-service-guide)でも触れているので、あわせて確認しておくと全体の使い方がイメージしやすくなります。 --- ## 訪問看護の費用はどのくらい? 訪問看護の費用は、**適用される保険の種類・訪問時間・提供する事業所(訪問看護ステーションか病院・診療所か)・地域区分・各種加算**によって変わるため、全国一律の金額ではありません。ここでは介護保険を利用する場合の目安を紹介します。 ### 介護保険(訪問看護ステーション利用)の目安 | 訪問時間 | 基本報酬(1割負担の目安) | | --- | --- | | 20分未満 | 313単位(1割負担で約310円) | | 30分未満 | 451単位(1割負担で約450円) | | 30分〜1時間未満 | 794単位(1割負担で約790円) | | 1時間〜1時間30分未満 | 1,090単位(1割負担で約1,090円) | **1単位あたりの金額は地域区分によって10〜11円台まで幅があるため、上記は目安**です。**週2回・30分未満の利用を1ヶ月(月8回)続けた場合、1割負担の自己負担額の目安はおおむね3,600円前後**です。ここに、早朝・夜間・深夜の訪問加算、緊急時訪問看護加算、特別管理加算などが上乗せされる場合があります。2割・3割負担の方は、この金額がそれぞれ2倍・3倍程度になる点にも注意してください。 ### 医療保険を利用する場合 医療保険が適用される場合は、年齢や所得に応じた自己負担割合(原則1〜3割)に基づいて計算されます。医療保険の訪問看護は、介護保険とは異なる算定の仕組みになっているため、正確な金額は主治医または訪問看護ステーションに確認するのが確実です。 ### 2026年度の処遇改善加算による変化 2026年度の介護報酬改定では、これまで対象外だった **訪問看護にも「介護職員等処遇改善加算」が新設され、加算率1.8%** が設定されました(2026年6月施行)。訪問看護スタッフの人材確保・定着を目的とした改定で、利用者の自己負担にもわずかに影響します。**負担増の幅は利用頻度や地域の単価によって差があり、月あたり数百円程度にとどまるケースが多いとされています**(1割負担・介護保険分が対象。医療保険での利用には適用されません)。急激な負担増ではありませんが、「先月と金額が少し違う」と感じたときは、訪問看護ステーションからの明細で内訳を確認すると安心です。 ![医療保険と介護保険、それぞれの訪問看護が適用される対象者と利用回数の違いを示す比較図。65歳以上で要介護・要支援認定がある場合は介護保険が優先、40歳未満または特定疾病等に該当する場合は医療保険が適用されることを整理している。](/column-figures/visiting-nursing-care-guide-insurance-comparison.svg) --- ## 訪問看護を利用するまでの流れ 訪問看護を使い始めるまでの流れは、介護保険を利用する場合と医療保険を利用する場合で少し異なりますが、基本的な進め方は共通しています。 ### 1. 主治医に相談し「訪問看護指示書」を出してもらう 訪問看護の利用には、必ず主治医の指示書が必要です。退院時や通院時に「自宅でも医療的なケアを続けたい」「体調管理に不安がある」と相談することが最初のステップになります。 ### 2. 訪問看護ステーションを探す 訪問看護指示書をもとに、実際に訪問してくれる訪問看護ステーションを探します。地域の訪問看護ステーションは、[地域包括支援センター](/columns/nursing-insurance-basics)やケアマネジャーに紹介してもらえることがほとんどです。すでに訪問介護やデイサービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに「訪問看護も検討している」と伝えるとスムーズです。 ### 3. ケアプランへの位置づけ(介護保険の場合) 介護保険で利用する場合は、ケアマネジャーが訪問看護をケアプランに組み込みます。訪問頻度や時間は、本人の状態・他のサービスとのバランスを見ながら調整されます。ケアマネジャーとの連携の重要性は、[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)でも詳しく触れているので、「今のケアマネジャーに相談しづらい」と感じている場合はあわせて読んでみてください。 ### 4. 初回訪問・契約 訪問看護ステーションの担当者が自宅を訪問し、契約手続きと初回のアセスメント(状態確認)を行います。ここで訪問の曜日・時間帯・具体的なケア内容のすり合わせが行われます。 ### 5. 定期的な訪問の開始 契約後は、決められた頻度で看護師が自宅を訪問します。体調の変化があれば、随時ケア内容を見直してもらえます。 --- ## 訪問看護と訪問介護、どう使い分ける? 「結局、訪問看護と訪問介護のどちらを頼めばいいのか分からない」という声もよく聞かれます。判断の目安を整理すると、次のようになります。 - **医療的な処置・健康観察が中心なら訪問看護**(褥瘡の処置、痰の吸引、リハビリ、服薬管理など) - **家事・身体介助が中心なら訪問介護**(掃除・調理、食事介助、入浴介助、排せつ介助など) - **持病があり体調管理と生活支援の両方が必要なら併用**(訪問看護で健康状態を見ながら、訪問介護で日常生活を支える体制) どちらか一方だけで迷う場合は、まずケアマネジャーに現在の困りごとを具体的に伝えてみるのが近道です。「医療的な不安」と「生活の負担」のどちらが大きいかを整理して伝えると、必要なサービスの組み合わせを提案してもらいやすくなります。 --- ## 失敗しやすいパターンと避け方 訪問看護の導入でつまずきやすいのは、次のようなケースです。 - **「まだ大丈夫」と様子見して、体調が悪化してから慌てて相談する**:訪問看護は医療的な安心材料として早めに取り入れることで、体調悪化の予兆に気づきやすくなります。「そろそろ通院がつらくなってきた」と感じた時点で、一度主治医に相談しておくと安心です - **訪問看護と訪問介護の役割を混同し、「なんでも屋」のように期待してしまう**:訪問看護はあくまで医療専門職による医療的ケアが中心です。生活援助を期待していると「思っていたサービスと違う」というミスマッチが起きやすいため、契約前に「具体的に何をお願いできるか」を確認しておきましょう - **医療保険と介護保険、どちらが適用されるか確認しないまま利用を始める**:想定と違う負担額になって驚くケースがあります。契約時に「今回は医療保険・介護保険のどちらが適用されるか」を必ず確認しておくと安心です - **家族だけで抱え込み、訪問看護師に困りごとを伝えられない**:訪問時間が限られているぶん、事前に「聞きたいこと」「伝えたいこと」をメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます いずれも「制度を完璧に理解していないと使えない」という話ではなく、**契約前・利用開始時に一言確認するだけで防げる**ものばかりです。今日からできることとして、次に主治医やケアマネジャーと話す機会があれば、「訪問看護について詳しく聞いてみたい」と一言添えてみてください。それだけで、具体的な情報が向こうから提供されるはずです。 --- ## よくある質問 ### Q. 訪問看護は毎日利用できますか? 介護保険の訪問看護には利用回数の上限がなく、ケアプランに基づいて毎日の利用も可能です。ただし区分支給限度基準額の範囲内でやりくりする必要があるため、他のサービスとの兼ね合いで頻度が調整されることがあります。医療保険の場合は原則週3回までですが、末期がんなど重い病気で「特別訪問看護指示書」がある場合は週4回以上も可能です。 ### Q. 訪問看護と往診・訪問診療はどう違いますか? 往診・訪問診療は医師が自宅を訪問して診察・治療を行うもので、訪問看護は看護師が医師の指示のもとで医療処置やケアを行うものです。役割が異なるため、在宅医療では医師の訪問診療と看護師の訪問看護を組み合わせて利用するケースが一般的です。 ### Q. 要支援1・2でも訪問看護は利用できますか? 利用できます。要支援1・2の方も「介護予防訪問看護」として、介護保険の訪問看護サービスを利用できます。要介護の方向けの訪問看護と提供内容は基本的に同じですが、予防的な視点でのケアが中心になります。 ### Q. 訪問看護師に相談できる内容はケアのことだけですか? 医療的なケアだけでなく、介護をしている家族自身の不安や悩みの相談にも対応してもらえます。急変時にどう対応すればよいか、今後の見通しなど、専門職の視点でのアドバイスがもらえるのは訪問看護の大きな利点です。 ### Q. 訪問看護ステーションはどうやって選べばいいですか? まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、対応可能なステーションを紹介してもらうのが一般的です。24時間対応の緊急時訪問看護加算があるか、看護師の人数体制、リハビリ職の在籍有無なども選ぶ際のポイントになります。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **訪問看護は、看護師などの医療専門職が医師の指示のもとで行う医療的なケア**。家事・身体介助が中心の訪問介護とは役割が異なり、併用も可能 - **65歳以上で要介護・要支援認定があれば原則「介護保険」が優先、そうでない場合や特定の病気に該当する場合は「医療保険」** という切り替えの仕組みがある - **介護保険利用時の自己負担は1割負担で1回あたり数百円台が目安**。2026年6月からの処遇改善加算により、わずかに金額が変わる場合がある 「体調が心配だけど、何をどこまで頼めるのか分からない」と感じたら、一人で悩まず、まずは主治医かケアマネジャーに率直に相談してみてください。訪問介護との組み合わせ方に迷う場合は、[訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説](/columns/home-help-service-guide)も参考になります。 介護そっとねっとには、「医療的な処置が必要になってきたけれど、どのサービスを頼ればいいか分からない」という声も寄せられています。制度の正確な運用は主治医・訪問看護ステーション・自治体の窓口で確認しつつ、日々感じている不安は、同じ立場のご家族とそっと分かち合ってみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。適用される保険の種類や費用の詳細については、個々の状態によって異なるため、具体的な相談は主治医または訪問看護ステーション、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [厚生労働省 - 社会保障審議会(介護給付費分科会)](https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698_00022.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 要介護認定の「区分変更申請」とは?──介護度が実態と合わないと感じたときの、申請の流れと認定調査で伝えるコツ - **slug**: kubun-henkou-shinsei-family-guide - **公開日**: 2026.8.28 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kubun-henkou-shinsei-family-guide **要約**: 結論、区分変更申請は認定の有効期間中でも「介護度が実態と合わない」と感じたときに次の更新を待たず見直しを求められる制度です。悪化・改善どちらのケースも対象になり、申請すべきタイミングの目安から、認定調査で家族が立ち会うときに伝えるコツまでやさしく解説します。 **本文**: # 要介護認定の「区分変更申請」とは?──介護度が実態と合わないと感じたときの、申請の流れと認定調査で伝えるコツ > **この記事の要点(3行)** > > - 区分変更申請は、認定の有効期間中でも「今の介護度が実態と合わない」と感じたときに、次の更新を待たずに見直しを求められる制度 > - 病状の悪化・認知症の進行・退院直後など、申請すべきタイミングは決まっている > - 認定調査での伝え方ひとつで結果が変わることもあり、家族の立ち会いと事前の準備が重要 「半年前に要介護1の認定を受けたけれど、最近はほとんど自分で歩けなくなってしまった」 「認知症の症状が急に進んで、目を離すとどこかへ出かけてしまう」 「入院してから体力がすっかり落ちて、退院後は今までのサービス量では足りなさそう」 ——介護保険の認定には原則6ヶ月〜12ヶ月の有効期間がありますが、その途中で心身の状態が大きく変わることは珍しくありません。「次の更新までまだ半年もあるのに、今のケアプランでは全然足りない」——そんなとき知っておきたいのが、**区分変更申請**という制度です。 この記事では、区分変更申請の基本的なしくみ、申請すべきタイミングの具体例、実際の申請から結果通知までの流れに加え、**認定調査で家族が立ち会うときに気をつけたいポイント**まで、厚生労働省の一次情報や介護保険法の規定にもとづいてやさしく整理します。ただし1点だけ注意点があります。区分変更申請は「出せば必ず介護度が上がる」制度ではなく、状態によっては変わらない、あるいは下がることもあります。その理由は記事の後半で詳しく説明します。 > この記事でわかること > - 区分変更申請とはどんな制度で、更新申請と何が違うのか > - 申請を検討すべき具体的なタイミングの目安 > - 申請から結果通知までの流れと、通常の新規申請との違い > - 認定調査に家族が立ち会うときに伝えるべきこと・避けたいこと > - 「介護度が上がらなかった」ときに知っておきたい考え方 --- ## 区分変更申請とは、そもそもどんな制度? **すでに要介護・要支援の認定を受けている方が、認定の有効期間中に心身の状態が変化したとき、次回の更新を待たずに要介護度の見直しを求める申請です。** 介護保険の認定には原則6ヶ月〜12ヶ月(状態が安定している場合は最長48ヶ月)の有効期間があり、期間が終わると自動的に「更新申請」を行うのが通常の流れです。しかし、認定の有効期間はあくまで「その時点の心身の状態がおおむね続く」という前提で設定されているため、途中で骨折・入院・認知症の進行などが起きると、実際の状態と認定された要介護度のあいだにズレが生じます。 区分変更申請は介護保険法に定められた手続きで、このズレを**有効期間の途中でも是正できる**しくみです([厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html))。「状態が悪化したときだけ使える制度」と思われがちですが、リハビリなどで状態が改善した場合にも申請できる点は意外と知られていません。 ### 更新申請との違いを整理する 区分変更申請と更新申請は、どちらも「あらためて要介護度を判定してもらう」という点は同じですが、次のように性質が異なります。 | | 区分変更申請 | 更新申請 | | --- | --- | --- | | タイミング | 有効期間の途中、状態が変化したとき | 有効期間の満了が近づいたとき(自治体から案内) | | 申請のきっかけ | 本人・家族・ケアマネジャーが「変化した」と判断 | 有効期間の満了(自動的に案内が届く) | | 認定調査 | あらためて実施される | あらためて実施される | | 有効期間の起算 | 変更後の認定日から新たにカウント | 従来の有効期間の翌日から新たにカウント | どちらも認定調査・主治医意見書・一次判定・二次判定という流れ自体は共通しています。区分変更申請の最大の特徴は、**待たなくていい**という一点に尽きます。 ### なぜ区分が実態と合わないと困るのか 要介護度が変わると、1ヶ月に利用できる介護保険サービスの上限額(区分支給限度基準額)も変わります。2024年度基準では、要介護1が約167,650円、要介護3が約270,480円、要介護5が約362,170円と、区分が上がるごとに使える枠が広がっていきます(基準額は改定により変動するため、最新の正確な額はケアマネジャーに確認してください)。 実態が要介護3相当なのに要介護1のままだと、必要なサービスを組もうとしても限度額をすぐに超えてしまい、超えた分は全額自己負担になります。逆に、実態より高い区分のままにしておくと、本人にとって不要な調整が生じたり、限られた介護保険財源の観点でも望ましくありません。**区分変更申請は、この「使える枠」と「実際に必要な支援量」のズレを、有効期間の途中でも合わせ直すための手続き**と理解しておくと、制度の意味がつかみやすくなります。 --- ## 申請を検討すべきタイミングは? 具体的な目安 **「今の介護度では対応しきれない」と感じる出来事があったときが、申請を検討する目安です。** 代表的なケースは次のとおりです。 ### 状態が悪化したケース - **転倒・骨折・入院をきっかけに、身体機能が明らかに落ちた**(歩行が不安定になった、自分でトイレに行けなくなったなど) - **認知症の症状が急激に進んだ**(目を離せなくなった、物忘れが増えて日常生活に支障が出るようになった) - **持病が悪化し、医療的なケアの頻度が増えた**(服薬管理が複雑になった、痛みや息苦しさが強くなったなど) - **今のケアプランのサービス量(区分支給限度基準額)では、必要なサービスを組みきれなくなった** ### 状態が改善したケース - **リハビリの効果で、以前より自立してできることが増えた** - **在宅復帰後、生活が安定して介助の必要度が下がった** 改善のケースでは「介護度が下がると使えるサービス量が減るのでは」と申請をためらう方もいますが、実態に合わない高い区分のままにしておくメリットは基本的にありません。正確な区分に見直すことは、本人にとっても、限られた介護保険財源全体にとっても本来あるべき姿です。 ### 退院前後は特に「タイミング」が重要 入院をきっかけに状態が変わった場合、**退院の1〜2週間前に区分変更申請を出しておく**のが実務上のポイントです。退院後すぐに必要な介護サービスを切れ目なく使い始めるには、退院までに新しい区分の見通しが立っている状態が望ましいためです。入院中の病院にはたいてい医療ソーシャルワーカーがいるので、退院支援の相談と合わせて「区分変更をいつ出すべきか」を確認しておくとスムーズです。 ![状態が悪化・改善したケースそれぞれの具体例と、退院前後は1〜2週間前が申請の目安であることを示す図。悪化の例として転倒骨折・認知症進行・持病悪化・サービス量不足、改善の例としてリハビリ効果・在宅復帰後の安定を挙げている。](/column-figures/kubun-henkou-timing-cases.svg) ここで一つだけ、先に触れておきたい注意点があります。区分変更申請をすれば必ず希望どおりの結果になるわけではなく、**認定調査でどう状態が伝わるかによって結果が左右される**という点です。この点は、記事の後半で詳しく説明します。 --- ## 申請から結果通知までの流れは? 通常の申請と何が違う? **流れ自体は通常の新規申請とほぼ同じですが、「すでに認定を受けている」という前提がある分、押さえておきたいポイントが2つ加わります。** ### 基本の流れ 1. **申請書を提出する**:市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターに、要介護状態区分変更申請書と被保険者証を提出します 2. **認定調査を受ける**:調査員が自宅や入院先を訪問し、全74項目についてあらためて調査します 3. **主治医意見書を取得する**:市区町村がかかりつけ医に意見書の作成を依頼します 4. **一次判定(コンピュータ判定)**:全国一律の基準で要介護認定等基準時間を算出します 5. **二次判定(介護認定審査会)**:一次判定の結果に、認定調査の特記事項と主治医意見書を加味して、医療・保健・福祉の有識者が最終的な区分を決定します 6. **結果通知**:申請から**原則30日以内**に、新しい要介護度が通知されます ![区分変更申請から結果通知までの6ステップフロー図。申請書提出、認定調査、主治医意見書取得、一次判定、二次判定、結果通知(原則30日以内)の流れを示し、申請は本人・家族・ケアマネジャーが代行できる旨を付記する。](/column-figures/kubun-henkou-process-flow.svg) ### 通常の新規申請と違う2つのポイント **1つ目は、申請できるのは「本人・家族・ケアマネジャー」に加えて、施設サービス計画を作成している介護保険施設等も含まれる点です。** すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、状態の変化を伝えれば、申請書の準備から窓口への提出まで代行してもらえるのが一般的です。「自分で市役所に行く時間がない」という場合も、まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。 **2つ目は、暫定ケアプランのリスクがより身近になる点です。** 結果が出るまでの間も、暫定ケアプランを作成すればサービスを利用し続けられますが、もし新しい認定が想定より低い区分になった場合、暫定プランで使った分のうち区分支給限度基準額を超えた分は**全額自己負担**になる可能性があります。状態が悪化していると感じていても、認定結果は認定調査・主治医意見書・審査会の総合判断で決まるため、「絶対に上がる」という前提でサービス量を大きく増やすのは避け、ケアマネジャーとよく相談しながら暫定プランの内容を決めることが大切です。 --- ## 認定調査、家族はどう立ち会えばいい? 伝え方で結果が変わる理由 **認定調査の結果は、家族の同席と伝え方によって精度が大きく左右されます。とくに大切なのは「困りごとの具体的なエピソード」を伝えることです。** 要介護認定の判定は、認定調査員が記入する調査票(基本調査74項目+特記事項)と、主治医意見書をもとに行われます。この調査には、家族が意識しておきたい特有の難しさがあります。 ### 「取り繕い」への対応が家族の最重要な役割 高齢者の方は、調査員という「初対面の人」を前にすると、普段はできないことも「できます」と答えてしまったり、実際より元気に振る舞ってしまったりすることがあります。専門的にはこれを「取り繕い」と呼びます。認知症の症状がある方にはとくに起こりやすく、悪気があるわけではなく、初対面の人の前では気を張ってしまう、あるいはご本人自身が自分の状態を正確に把握できていない、という自然な反応です。 家族が同席していれば、調査員が質問した後に「実は普段は◯◯で困っています」と、具体的な場面を補足できます。この補足があるかどうかで、調査票の「特記事項」欄に記載される内容の厚みが変わり、二次判定での審査会の判断材料が変わってきます。 ### 事前に準備しておきたいこと - **直近1〜2週間の具体的な困りごとをメモしておく**(「夜中に何度もトイレに起きて、その都度付き添いが必要だった」など、日付と状況が分かる形で) - **できないことを正直に伝える**(本人が「大丈夫」と言っても、実際の様子を家族が補足する) - **反対に、状態を過度に大げさに伝えない**(主治医意見書の内容と大きく食い違うと、かえって再調査や慎重な判定につながることがあります) - **調査当日、いつも通りの生活の様子が伝わるようにする**(調査のために特別に片付けたり、いつもと違う対応をしたりしない) ![認定調査に立ち会う家族の準備を示す図。事前準備として困りごとのメモ・正直に伝える・過度な誇張を避ける・普段通りの生活を見せる、の4項目を整理している。](/column-figures/kubun-henkou-checklist-visual.svg) このあたりの伝え方は、[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)でも触れたとおり、日頃から状況を共有できているケアマネジャーがいると、調査前の準備段階から「どんな点を伝えるべきか」を一緒に整理してもらいやすくなります。区分変更を検討する段階になったら、まずは担当のケアマネジャーに率直に相談してみることをおすすめします。 --- ## 「介護度が上がらなかった」ときはどう考えればいい? **区分変更申請は「必ず希望どおりの結果になる制度」ではありません。** 認定調査・主治医意見書・審査会の総合判断の結果、申請前と同じ区分になることも、まれに区分が下がることもあります。 これは制度の欠陥ではなく、**全国一律の基準で公平に判定するための仕組み**であることを理解しておくと、結果を受け止めやすくなります。もし結果に納得がいかない場合は、次の2つの選択肢があります。 1. **再度、区分変更申請を行う**:状態がさらに変化した、あるいは前回の調査で十分に状態が伝わらなかったと感じる場合は、あらためて申請できます。回数の制限はありません 2. **不服申立て(審査請求)を行う**:認定結果の通知を受けた翌日から起算して3ヶ月以内に、都道府県の介護保険審査会に不服申立てができます。ただし、審査には数ヶ月かかることが多く、区分変更申請のほうが早く結果を得られるケースが多いのが実情です 現場感覚としては、結果に納得がいかない場合は**まずは区分変更申請をやり直す方が現実的**という声が多く聞かれます。ケアマネジャーに相談し、前回の調査で伝えきれなかった点がなかったかを一緒に振り返ってみるとよいでしょう。 なお、要介護度や認定調査で判定される日常生活自立度は、税金の障害者控除を受けるための「障害者控除対象者認定」の判定にも使われることがあります。区分が変わったときに確かめておきたい点は、[要介護の親は障害者控除の対象?──「障害者控除対象者認定」の申請と、年末調整・確定申告での使い方](/columns/shogaisha-kojo-youkaigo-family-guide)にまとめています。 ### よくある失敗パターンと避け方 区分変更申請でつまずきやすいのは、次のようなケースです。 - **「そのうち落ち着くだろう」と様子見して申請が遅れる**:状態が変化してから申請までの期間が長引くほど、暫定ケアプランでの自己負担リスクにさらされる期間も長くなります。「様子見」の判断は、変化に気づいた時点でケアマネジャーに一度相談し、「今すぐ申請すべきか、もう少し経過を見るべきか」の判断だけでも仰いでおくと安心です - **本人だけで認定調査に対応し、実態が伝わらない**:前述の「取り繕い」が起きやすく、結果として区分が変わらないまま終わってしまうケースです。家族の同席が難しい場合は、事前にケアマネジャーへ困りごとのメモを渡しておくだけでも変わります - **主治医意見書の内容と、家族が伝えた状態に大きなズレがある**:普段の受診時に「実はこんなことに困っている」と主治医に伝えられていないと、意見書に反映されず、家族の訴えだけが浮いてしまうことがあります。区分変更を検討し始めた段階で、次回の受診時に主治医にも状況を伝えておくと、認定調査の結果と意見書の整合性が取れやすくなります これらはいずれも「申請そのものの手続き」ではなく、**申請前後の情報共有**でつまずくパターンです。逆に言えば、日頃からケアマネジャーや主治医と状況を共有できていれば、区分変更申請自体は難しい手続きではありません。 今日からできることとしては、直近1〜2週間で「困った」「大変だった」と感じた場面を、スマートフォンのメモ機能でもいいので、日付と一緒に3つほど書き出してみてください。それだけでも、次に認定調査を受けるとき、あるいはケアマネジャーに相談するときの材料になります。 --- ## よくある質問 ### Q. 区分変更申請は何回でも申請できますか? 回数の制限はありません。前回の申請から一定期間を置く必要もなく、状態が変化したと感じるたびに申請できます。ただし、認定調査のたびに本人・家族の負担も生じるため、明らかな状態変化があったタイミングで申請するのが現実的です。 ### Q. 区分変更申請をすると、今より介護度が下がることもありますか? あります。区分変更申請は「悪化したときだけ使える」制度ではなく、状態を正確に反映させるための申請なので、リハビリなどで状態が改善していれば区分が下がる可能性もあります。逆に、状態が悪化したと感じて申請しても、認定調査・主治医意見書の内容次第では区分が変わらないこともあります。 ### Q. ケアマネジャーに任せず、家族だけで申請することはできますか? できます。申請書を市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターに直接提出すれば、家族だけでも申請可能です。ただし、認定調査でどのような点を伝えるべきかを事前に整理する上で、担当のケアマネジャーに相談しながら進めるほうがスムーズなケースが多いです。 ### Q. 認定調査に家族が立ち会えない場合はどうすればいいですか? 立ち会いは必須ではありませんが、可能な範囲で同席するか、難しい場合は事前に困りごとのメモを調査員やケアマネジャーに渡しておくことをおすすめします。本人だけで対応すると「取り繕い」が起きやすく、実際の状態が正確に伝わらない可能性があるためです。 ### Q. 退院を機に区分変更申請をする場合、いつ出せばいいですか? 退院の1〜2週間前を目安に申請するのが実務上のポイントです。退院後すぐに必要な介護サービスを切れ目なく使い始められるよう、退院までに新しい区分の見通しを立てておくことが望ましいためです。入院先の医療ソーシャルワーカーに、退院支援の相談と合わせて確認してみてください。 ### Q. 結果に納得できない場合はどうすればいいですか? 再度、区分変更申請を行うか、認定結果の通知を受けた翌日から3ヶ月以内に都道府県の介護保険審査会へ不服申立て(審査請求)を行う、という2つの選択肢があります。不服申立ては審査に数ヶ月かかることが多いため、前回の調査で伝えきれなかった点を整理した上で、区分変更申請をやり直すほうが早く結果を得られるケースが多いです。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **区分変更申請は、認定の有効期間中でも「今の介護度が実態と合わない」と感じたときに使える見直し制度**。悪化だけでなく改善のケースでも申請できる - **申請から結果通知までは原則30日以内**。流れは通常の新規申請とほぼ同じだが、暫定ケアプランで超過分が自己負担になるリスクには注意 - **認定調査での伝え方が結果を左右する**。家族の立ち会いと、具体的なエピソードのメモが「取り繕い」を防ぐカギになる 「次の更新まで待つべきか、それとも今すぐ申請すべきか」で迷ったときは、一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに率直に相談してみてください。介護保険の住宅改修([手すりの取付けなど20万円までの住宅改修](/columns/jutaku-kaishu-20man-guide))のように、区分が変わることで新たに使えるようになる制度もあります。 介護そっとねっとには、「介護度が実態と合わない気がするけれど、申請していいのか分からない」という声も寄せられています。制度の正確な運用は自治体の窓口で確認しつつ、日々感じている違和感や戸惑いは、同じ立場のご家族とそっと分かち合ってみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。区分変更申請の可否や結果の見通しについては、個々の状態によって異なるため、具体的な相談は担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護保険制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html) - [厚生労働省 - 要介護認定に係る制度の概要](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/nintei/gaiyo2.html) - [東京都福祉局 - 介護保険の審査請求(不服申立て)](https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/yokyu) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説 - **slug**: kougaku-kaigo-service-hi-guide - **公開日**: 2026.8.25 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide **要約**: 結論、1ヶ月の介護サービス自己負担が上限額を超えたら、申請すれば超えた分が払い戻されます。令和8年8月からは所得区分の基準額が80.9万円から82万6,500円に見直されます。上限額の一覧・申請の流れ・振込までの期間を家族向けに整理しました。 **本文**: # 高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 高額介護サービス費は、1ヶ月の介護サービス自己負担が所得区分ごとの上限額(世帯15,000円〜140,100円)を超えたとき、超えた分が申請により払い戻される制度 > - 令和8年8月1日から、住民税非課税世帯の判定に使う基準額が80.9万円から82万6,500円に見直される(負担上限額そのものは変わらない) > - 申請書は自治体から自動的に届くのが一般的だが、届いてから2年で時効になるため、忘れずに手続きすることが大切 「デイサービスと訪問介護、ショートステイを組み合わせていたら、今月の利用料がいつもよりだいぶ高くなってしまった」 「後から一部お金が戻ってくる制度があるらしいけれど、自分から何か申請しないといけないの?」 「令和8年8月から金額が変わるって聞いたけど、うちの負担額も上がるの?」 ——介護サービスを複数組み合わせて使っていると、月によって自己負担額が普段より膨らむことがあります。そんなときに知っておきたいのが、**高額介護サービス費**という払い戻しの制度です。あまり知られていない制度ですが、対象になっていれば数千円〜数万円が戻ってくることもあります。 この記事では、高額介護サービス費のしくみと上限額の一覧、申請から振込までの流れに加え、**令和8年8月1日から実施される基準額の見直し**について、厚生労働省の一次情報にもとづいてやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 高額介護サービス費の基本的なしくみと対象になるサービス > - 所得区分ごとの負担上限額(世帯15,000円〜140,100円の6段階) > - 令和8年8月からの基準額改定で何が変わり、何が変わらないか > - 申請から振込までの具体的な流れと時効の注意点 > - 食費・居住費の負担限度額との違い --- ## 高額介護サービス費とは、そもそもどんな制度? **1ヶ月に支払った介護保険サービスの利用者負担額(1〜3割)の合計が、所得に応じた上限額を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。** 介護サービスを利用すると、原則として費用の1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割)を自己負担します。訪問介護、デイサービス、ショートステイ、施設サービスなど、複数のサービスを同じ月に組み合わせて使うと、その分だけ自己負担の合計額も増えていきます。 高額介護サービス費は、この**月ごとの自己負担合計額に「上限」を設け、超えた分を返す**ことで、利用者の負担が際限なく重くならないようにするための制度です([厚生労働省 - 介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて](https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf))。窓口で支払う金額そのものが安くなるわけではなく、**あとから申請して差額を受け取る**しくみである点をまず押さえておきましょう。 ### 対象になるサービス・対象にならないサービス 高額介護サービス費の対象になるのは、介護保険の給付対象になっている居宅サービス・施設サービスの利用者負担分です。一方で、次のような費用は対象外です。 - **福祉用具の購入費・住宅改修費の自己負担分**(別の助成制度が用意されています) - **施設の食費・居住費**(「負担限度額認定証」による別制度の対象。詳しくは後述します) - **サービス提供事業者に直接支払う日常生活費**(おむつ代の実費、レクリエーション参加費など、保険給付の対象外のもの) 「介護保険サービスに関する費用ならなんでも対象」ではない点に注意してください。 --- ## 上限額はいくら? 所得区分ごとの一覧 **上限額は、本人と同一世帯の65歳以上の方(第1号被保険者)の所得状況に応じて、世帯15,000円〜140,100円の6段階に分かれます。** 厚生労働省の通知にもとづく、令和8年8月時点の負担上限額(月額)は次のとおりです([厚生労働省 - 介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて(別添2)](https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf))。 | 所得区分 | 負担上限額(月額) | | --- | --- | | 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 世帯140,100円 | | 課税所得380万円以上690万円未満(年収約770万円〜約1,160万円) | 世帯93,000円 | | 市町村民税課税〜課税所得380万円未満(年収約770万円未満) | 世帯44,400円 | | 世帯の全員が市町村民税非課税 | 世帯24,600円 | | 上記のうち、公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が82万6,500円以下等 | 世帯24,600円(個人15,000円) | | 生活保護を受給している方等 | 個人15,000円 | ![所得区分ごとの高額介護サービス費の負担上限額を示す図。課税所得690万円以上は世帯140,100円、380万〜690万円未満は世帯93,000円、市町村民税課税世帯は世帯44,400円、住民税非課税世帯は世帯24,600円、年金収入等82万6,500円以下または生活保護受給者はさらに軽減される段階構造を表す。](/column-figures/kougaku-kaigo-service-hi-tiers.svg) もっとも多くの方が該当するのは、**市町村民税は課税されているが課税所得380万円未満(年収約770万円未満)の「世帯44,400円」の区分**です。ここに該当する方が最も多いため、まずはご家族の負担割合証や課税状況から、どの区分に近いかを確認してみるとよいでしょう。 **この上限額は、あくまで「本人の負担分」の話です。** 同一世帯に複数の第1号被保険者がいる場合は、世帯全員の利用者負担額を合算した上で、世帯の上限額と比較します。世帯で介護サービスを利用している方が複数いるご家庭ほど、高額介護サービス費の対象になりやすい点も知っておくとよいでしょう。 --- ## 令和8年8月から何が変わるのか? 基準額改定のポイント **変わるのは「住民税非課税世帯かどうか」の中でもさらに軽減される区分を判定するための基準額で、80.9万円から82万6,500円に引き上げられます。負担上限額そのもの(15,000円・24,600円・44,400円など)は変わりません。** 厚生労働省が令和8年7月31日付で発出した通知([介護保険最新情報Vol.1532](https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf))によると、この見直しの理由は次のとおりです。 > 令和7年(1〜12月)に支給される老齢基礎年金(満額)が826,500円となったことを踏まえ、特定入所者介護(予防)サービス費及び高額介護(予防)サービス費等についても令和8年8月1日から利用者負担段階の基準額の見直しを行うこととしております。 つまり、**老齢基礎年金の満額(毎年度改定される)に合わせて、判定に使う基準額を毎年見直す**という運用ルールに沿った改定であり、負担を増やすための改正ではありません。基準額が上がることで、これまで「82万6,500円未満」の基準に届かず一般区分だった方の一部が、改定後は軽減区分に該当しやすくなる可能性があります。**利用者にとって不利益になる改定ではなく、むしろ軽減対象がわずかに広がる方向の見直し**と理解しておくとよいでしょう。 ### 医療保険の高額療養費制度も同時に基準額が統一される 同じ令和8年8月から、医療保険の高額療養費制度でも自己負担限度額の見直しが行われ、所得区分の基準額が82万6,500円に統一されます。介護保険・医療保険の両方を利用している世帯では、[高額医療・高額介護合算療養費制度](/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide)(1年間の医療費と介護費の合計が一定額を超えた場合の払い戻し制度)にも影響する可能性があるため、両方の制度を利用している方は、市区町村の窓口で今後の負担区分を確認しておくと安心です。 **施行日は令和8年8月1日です。** 7月分までのサービス利用については従来の基準額(80.9万円)で判定され、8月1日以降にサービスを利用した分から新しい基準額(82万6,500円)が適用されます。 --- ## 申請しないと払い戻されない? 手続きの流れ **はい、高額介護サービス費は原則として申請が必要です。ただし、多くの市区町村では「初回だけ申請書を提出すれば、2回目以降は自動的に指定口座へ振り込まれる」しくみを設けています。** 一般的な流れは、次のとおりです。 1. **介護サービスを利用する**:訪問介護・デイサービス・ショートステイなど、複数のサービスを組み合わせて利用し、その月の自己負担合計額が確定します 2. **市区町村が上限超過を確認**:国民健康保険団体連合会(国保連合会)からの給付実績データをもとに、市区町村が上限額を超えている方を確認します 3. **「支給申請のお知らせ」が届く**:サービス利用月からおおむね3ヶ月前後で、対象者に申請書が郵送されます 4. **申請書を提出する**:氏名・住所・振込先口座などを記入し、市区町村の介護保険担当窓口に提出(郵送可の自治体が大半です) 5. **審査後、指定口座に振り込まれる**:申請から1〜2ヶ月程度で、超過分が指定口座に振り込まれます ![高額介護サービス費の申請から振込までの5ステップフロー図。サービス利用から上限超過の確認、支給申請のお知らせ到着(約3ヶ月後)、申請書提出、審査、指定口座への振込(申請から1〜2ヶ月後)までの流れを示す。](/column-figures/kougaku-kaigo-service-hi-flow.svg) 一度申請して口座を登録すると、以降は上限を超えた月に**自動的に**同じ口座へ振り込まれる運用にしている市区町村が多いのも特徴です。ただし運用は自治体ごとに異なるため、届いた案内文をよく読み、「今回だけの申請なのか」「今後は自動なのか」を確認しておきましょう。 ### 申請には時効があるので注意 高額介護サービス費を受け取る権利には、**サービスを利用した月の翌月1日から2年間**という時効があります([厚生労働省 - 介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて](https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf))。2年を過ぎると、たとえ上限額を超えていても払い戻しを受けられなくなってしまいます。「お知らせが届いたのに、忙しくて申請書を出しそびれていた」ということがないよう、届いたら早めに手続きすることをおすすめします。もし申請書が見当たらない、いつ届くか分からないという場合は、市区町村の介護保険担当窓口に直接問い合わせても対応してもらえます。 --- ## 食費・居住費の負担限度額とは何が違うの? **高額介護サービス費は「サービス利用料(1〜3割負担分)」が対象で、施設の食費・居住費は対象外です。食費・居住費を軽減する制度は「負担限度額認定証」による別の制度で、対象も申請方法も異なります。** この2つの制度は名前が似ているため混同されがちですが、次のように整理できます。 | | 高額介護サービス費 | 負担限度額認定証(補足給付) | | --- | --- | --- | | 対象 | サービス利用料の1〜3割負担分 | 施設の食費・居住費 | | 誰が対象になりやすいか | 利用回数・サービス量が多い方 | 住民税非課税世帯で施設入所中の方 | | 申請のタイミング | 上限を超えた月ごとに事後申請(初回のみ) | 事前に認定証の交付を受けておく | | 併用 | 可能(別制度として両方使える) | 可能 | 特別養護老人ホームなどに入所していて、食費・居住費の負担が心配な方は、[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)もあわせてご覧ください。こちらは2026年8月からすでに実施されている、食費・居住費側の変更点をまとめた記事です。**今回の記事で扱った高額介護サービス費の基準額改定とは別の制度・別の改定**である点を、ぜひ整理して押さえておいてください。 なお、介護保険の申請そのものが初めての方は、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で全体の流れを紹介しています。高額介護サービス費は、介護保険の利用が始まった後に関わってくる軽減制度の一つと位置づけて読んでいただくと分かりやすいかもしれません。 さらに、同居する親と世帯を分ける「世帯分離」によって、この高額介護サービス費の上限額そのものが下がる可能性があることをご存知でしょうか。[世帯分離で親の介護費用は本当に安くなる?──メリット・デメリットと手続きの注意点](/columns/setai-bunri-kaigo-hiyou-guide)では、世帯分離の仕組みとあわせて見落としやすいデメリットも解説していますので、あわせてご確認ください。 なお、高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額は、確定申告で医療費控除を申告する際に医療費の合計額から差し引く必要があります。[介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)で、払い戻しと医療費控除の関係もあわせて確認しておくと、申告額を誤らずに済みます。 --- ## 「うちは対象になりそう?」と思ったら、まず確認したいこと ここまで制度のしくみを見てきましたが、実際に「自分の家庭が対象になるか」を判断するには、次の2点を確認するのが近道です。 1. **今月、複数の介護サービスを併用していないか**:訪問介護+デイサービス+ショートステイのように組み合わせて使った月は、自己負担額が普段より膨らみやすく、上限額に達する可能性が高まります 2. **世帯の課税状況・年金収入のおおよその額**:市町村民税が非課税かどうか、年金収入等がどのくらいかによって、該当する上限区分が変わります。前述の一覧表と照らし合わせてみてください 対象になっているかどうかは、基本的には**自治体側で自動的に確認して案内が届く**ため、利用者側で複雑な計算をする必要はありません。ただし、引っ越しをした直後や、世帯構成が変わった直後は判定が遅れることもあるため、心当たりがある場合は市区町村の窓口やケアマネジャーに一声かけておくと安心です。 まずは今月の介護サービスの利用明細を1枚だけ見返して、自己負担の合計額がどれくらいになっているか、ざっくりで構わないので確かめてみてください。上限額の目安と照らし合わせるだけでも、「戻ってくるお金があるかもしれない」という見通しが立てやすくなります。 --- ## よくある質問 ### Q. 高額介護サービス費とは、具体的にどんな制度ですか? 1ヶ月に支払った介護保険サービスの利用者負担(1〜3割)の合計額が、所得に応じて決められた上限額を超えたときに、その超えた分が払い戻される制度です。窓口での支払い自体が安くなるわけではなく、後から申請して差額を受け取るしくみです。対象は訪問介護・デイサービス・ショートステイ・施設サービスなど、介護保険の給付対象になっているサービス全般で、福祉用具購入費や住宅改修費、施設の食費・居住費(負担限度額の対象外の部分)は原則含まれません。 ### Q. 上限額はいくらですか? 本人と同一世帯の第1号被保険者(65歳以上)の所得状況によって、世帯15,000円〜140,100円まで6段階に分かれます。一般的な所得の方(市町村民税課税・課税所得380万円未満)は世帯44,400円、住民税非課税世帯は原則世帯24,600円、生活保護受給者等は個人15,000円が上限です。課税所得が380万円以上の方は世帯93,000円、690万円以上の方は世帯140,100円とさらに高い区分になります。 ### Q. 令和8年8月からの改定で何が変わるのですか? 住民税非課税世帯のうち「公的年金等収入金額+その他の合計所得金額が一定額以下」の方を判定する基準額が、令和8年8月1日から80.9万円(令和7年度の老齢基礎年金満額に基づく額)から82万6,500円(令和8年度の老齢基礎年金満額)へ引き上げられます。基準額そのものが変わるだけで、各段階の負担上限額(15,000円・24,600円・44,400円など)自体は据え置きです。医療保険の高額療養費制度でも同時期に基準額が見直され、介護・医療とも82万6,500円に統一されます。 ### Q. 申請しないと払い戻しは受けられないのですか? はい、申請が必要です。上限額を超えた月の数ヶ月後、市区町村から「高額介護サービス費支給申請のお知らせ」と申請書が届くのが一般的な流れです。申請書に振込先口座などを記入して提出すると、審査を経て指定口座に払い戻されます。一度申請すると、2回目以降は同じ口座に自動的に振り込まれる「口座登録(自動払い)」の仕組みを設けている市区町村も多いので、届いた書類の案内をよく確認してください。 ### Q. 振込まではどれくらいかかりますか? サービスを利用した月から、お知らせが届くまでにおよそ3ヶ月前後、申請してから振り込まれるまでにさらに1〜2ヶ月程度かかるのが一般的です。そのため、実際に手元にお金が戻ってくるまでには、サービス利用月から半年近く見ておくと安心です。申請期限は利用月の翌月初日から2年間で、この期間を過ぎると時効により受け取れなくなるため、届いた書類は早めに手続きすることをおすすめします。 ### Q. 食費・居住費の負担限度額とは何が違うのですか? 高額介護サービス費は「サービス利用料(1〜3割負担分)」を対象に、月ごとの自己負担に上限を設ける制度です。一方、施設の食費・居住費の負担軽減は「負担限度額認定証」による別の制度(特定入所者介護サービス費)で、対象も金額の決め方も異なります。2つは併用できる別制度なので、混同しないよう注意してください。食費・居住費の負担限度額については[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で詳しく解説しています。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **高額介護サービス費は、月の自己負担合計が上限(世帯15,000円〜140,100円)を超えたら申請で戻ってくる制度**。福祉用具費や食費・居住費は対象外 - **令和8年8月からは判定基準額が80.9万円→82万6,500円に引き上げ**。負担上限額そのものは変わらず、軽減対象がわずかに広がる方向の改定 - **申請書は自治体から自動的に届くのが一般的だが、時効は2年**。届いたら早めに手続きするのが安心 介護サービスの費用は、複数のサービスを組み合わせるほど月々の変動が大きくなりがちです。「今月ちょっと高いな」と感じたときこそ、この制度を思い出してみてください。 介護そっとねっとには、「費用のことは誰に聞けばいいか分からない」「制度が複雑で調べるだけで疲れてしまう」という声も多く寄せられています。制度の正確な内容は市区町村の窓口や一次情報で確認しつつ、日々の疲れや戸惑いは、同じ立場のご家族とそっと分かち合ってみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。負担上限額の判定は個々の所得・世帯状況によって異なるため、具体的な金額や該当区分については、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護保険制度における利用者負担等の事務処理の取扱いについて(介護保険最新情報Vol.1532)](https://www.mhlw.go.jp/content/001737209.pdf) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 2027年度の介護保険改正で何が変わる?──2割負担の対象拡大は「先送り」、ケアプラン有料化の議論を家族向けに整理 - **slug**: kaigo-hoken-2027-reform-family-guide - **公開日**: 2026.8.20 - **更新日**: 2026.9.22 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/kaigo-hoken-2027-reform-family-guide **要約**: 結論、2割負担の対象拡大は2025年12月25日に結論が先送りされ、2027年度の第10期介護保険事業計画開始までにあらためて判断されます。先送りされた拡大案の内容とケアプラン有料化の議論の現在地を、一次情報にもとづき家族向けにやさしく整理します。 **本文**: # 2027年度の介護保険改正で何が変わる?──2割負担の対象拡大案とケアプラン有料化の議論を家族向けに整理 > **この記事の要点(3行)** > > - 2025年12月25日、社会保障審議会・介護保険部会が意見をとりまとめ、「2割負担」の対象拡大(年収280万円以上から230万〜260万円程度への引き下げ案)は**結論を先送りし、2027年度に始まる第10期介護保険事業計画の開始までに結論を出す**と正式に決まった。2022年以降、実質4回目の先送りとなる > - ケアプラン作成の全面有料化は見送りの方向。一部の住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では利用者負担が導入される方向で議論が進んでいる > - つまり「2027年度から2割負担の対象が広がる」と決まったわけではない。対象拡大の是非そのものが、あらためて2027年度以降に持ち越された段階 「来年、介護保険の負担割合が上がるかもしれないってニュースで見たけど、うちは対象になるの?」 「ケアプランがお金かかるようになるって本当?」 「まだ決まってないなら、今は何もしなくていいの?」 ——2025年末から2026年にかけて、2027年度の介護保険制度改正に向けた議論のニュースを目にする機会が増えました。介護そっとねっとのアプリにも、こうした改正報道への戸惑いの声が寄せられています。ただ、報道の見出しだけを見ると「もう決まったこと」のように感じてしまいますが、実際には**2割負担の対象拡大は、2025年12月に「結論を先送りする」という方針そのものが正式に決まった段階**です。「拡大が決まった」わけでも「議論が続いているだけ」でもない、この経緯を正しく知っておくことが大切です。 この記事では、2025年12月の社会保障審議会・介護保険部会の意見とりまとめの内容と、「2割負担の対象拡大案」「ケアプラン有料化の議論」がそれぞれ今どうなっているのかを、公開されている一次情報にもとづいて整理します。**なお、この記事の後半で「今の時点で家族としてできる備え」についても触れます**。先送りが決まったからこそ、慌てず、しかし気を抜かずに準備をしておくことが大切です。 > この記事でわかること > - 現行の介護保険の負担割合(1〜3割)のしくみ > - 「2割負担」の対象を広げる案の具体的な年収基準と対象人数 > - 急激な負担増を抑える「配慮措置」の内容 > - ケアプラン有料化の議論がどこまで進んでいるか > - 改正が実現するとしたらいつからか、今できる備えは何か --- ## そもそも介護保険の自己負担割合は、今どう決まっているのか? **介護サービスの利用料は原則1割負担ですが、本人と世帯の所得が一定以上の場合は2割、さらに所得が高い「現役並み所得」の場合は3割になります。** 現行制度での判定基準は、おおむね次のとおりです([厚生労働省 - 介護保険における利用者負担](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html))。 | 負担割合 | 判定の目安(単身世帯の場合) | | --- | --- | | 1割 | 上記の2割・3割に該当しない方(大多数の利用者) | | 2割 | 本人の合計所得金額160万円以上、かつ年金収入等が年間280万円以上 | | 3割 | 本人の合計所得金額220万円以上、かつ年金収入等が年間340万円以上(現役並み所得) | 判定は市区町村が前年の所得をもとに毎年見直し、7月頃に「介護保険負担割合証」が交付される流れです。この基準にもとづいて、いま「2割負担」の対象となる年収ラインを引き下げ、対象者を広げる案が検討されています。 --- ## 「2割負担」の対象は、どこまで広がる可能性があるのか? **厚生労働省は、社会保障審議会・介護保険部会に対し、現行「年収280万円以上」となっている2割負担の基準を、「年収230万円以上」から「年収260万円以上」の範囲で引き下げる案を選択肢として示しています。** これは、介護費用の急増と現役世代の保険料負担の限界という構造的な課題に対応するための議論の一環です([介護ニュースJoint - 介護2割負担、対象拡大へ具体案](https://www.joint-kaigo.com/articles/42226/))。 もっとも対象が広がる「年収230万円以上」の案が採用された場合、**高齢者の所得上位30%、およそ35万人が新たに2割負担の対象になる**と見込まれています。年収260万円の案であれば、対象人数はこれより少なくなります。 ![現行制度と拡大案の比較図。2割負担の年収基準が280万円から230〜260万円へ引き下げられる案、対象人数が最大約35万人増える見込み、配慮措置として月7,000円の負担上限案があること、実施時期が2027年度想定であることを示す。](/column-figures/kaigo-hoken-2027-reform-comparison.svg) ### 急激な負担増を抑える「配慮措置」も検討されている 対象者の負担が一度に重くならないよう、厚生労働省は次のような緩和策もあわせて示しています。 - **当分の間、月7,000円を負担増の上限とする**(1割から2割に変わっても、増える金額が月7,000円を超えないようにする案) - **預貯金が少ない高齢者を、条件付きで1割に戻す**選択肢 つまり「基準に該当したら即座にフルの負担増になる」わけではなく、資産状況などを踏まえた緩和策とセットで検討されているのが現状です。ただし、これらの数値も**あくまで検討段階の案**であり、審議会での議論を経て変更される可能性がある点には注意してください。 --- ## 「2割負担の対象拡大」は、結局どうなったのか? **2025年12月25日の社会保障審議会・介護保険部会で、2割負担の対象拡大は「結論を先送りし、2027年度に始まる第10期介護保険事業計画の開始までにあらためて結論を出す」という方針で意見がとりまとめられました。これは「拡大しない」という決定ではなく、「今回はまだ決めない」という先送りの決定です。** 介護保険の負担割合は、制度創設から段階的に引き上げられてきました。 | 時期 | 制度の変化 | | --- | --- | | 2000年〜2015年3月 | 全員1割負担 | | 2015年8月〜 | 一定以上の所得がある方は2割負担が導入 | | 2018年8月〜 | さらに所得が高い「現役並み所得」の方は3割負担が導入(対象は当時の推計で約12万人) | | 2022年以降 | 2割負担の対象拡大が繰り返し議論されるも、いずれも結論を先送り(2025年12月の先送りで実質4回目) | | 2027年度〜(あらためて結論) | 第10期介護保険事業計画の開始までに結論を出す方針 | [社会保険研究所 - 第133回社会保障審議会介護保険部会(2025年12月25日)の意見とりまとめ](https://media.shaho.co.jp/n/n8229cf8f3db7)によると、対象として検討されていた「単身年収230万〜260万円程度」の層について、部会委員から「利用者の負担能力の実態を調査すべき」との意見が出たほか、医療系団体のアンケートでは「2割負担になった場合、40.8%の利用者がサービス利用回数を減らす」と回答した結果が報告されたことも、先送りの背景として報じられています([共同通信 - 介護2割負担拡大見送り 政府、26年度末までに結論](https://news.yahoo.co.jp/articles/0c4da241cbc27e6ee8cace3ac4b2f5c42291dbcf))。 過去に対象拡大が見送られてきた背景には、**物価高騰の影響への懸念、医療の窓口負担見直しなど他の社会保障改革との兼ね合い、そして利用者団体・介護事業者団体からの反発**があったと報じられています([ニッセイ基礎研究所 - 介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?](https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77759?site=nli))。今回も同様の構図で先送りとなりましたが、**介護費用の急増という構造的な課題そのものは解消されていない**ため、2027年度に向けてあらためて議論が再開される見通しです。「今回は先送りされた」という事実と、「今後も検討課題として残っている」という事実の両方を押さえておくことが大切です。 --- ## ケアプランの有料化は、結局どうなるのか? **ケアマネジメント(ケアプラン作成)全体への利用者負担導入は、2025年末時点の議論では広範な反対意見を踏まえて見送られる方向です。ただし、一部の住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では、利用者負担を求める方向での検討が進んでいます。** ケアプラン有料化は、以前から「介護保険財政の効率化」の論点の一つとして繰り返し取り上げられてきました。2025年12月には介護保険部会で意見の取りまとめが行われ、要介護度の高い入居者が多い施設や、医療的ケアを重点的に提供する施設など、一部の類型に限って利用者負担を導入する方向性が示されたと報じられています([NDソフトウェア - 2027年介護保険制度改正への動向](https://www.ndsoft.jp/kohamacolumn/394060)、[ワイズマン - ケアプラン有料化とは?](https://www.wiseman.co.jp/column/inhome-care-support/35383/))。 一方で、居宅介護支援(在宅で暮らす方のケアプラン作成)全体への一律の利用者負担導入については、ケアマネジャーの団体や利用者団体からの反対意見が根強く、**2027年度改正での全面導入は見送られる公算が大きい**とする報道が複数見られます。ただし、この論点自体が完全になくなったわけではなく、将来的な改正であらためて議論される可能性は残っています。 **現時点で確実に言えるのは「議論が続いている」ということまでで、対象範囲や金額の詳細はまだ固まっていません。** 続報が出るたびに条件が変わる可能性があるため、「もう決まった」という情報を見かけても、一次情報(厚生労働省・審議会資料)にあたって確認する習慣を持っておくと安心です。 --- ## この改正はいつから始まるのか? 決定までの流れを知っておく **2割負担の対象拡大は「2027年度に始まる第10期介護保険事業計画の開始までに結論を出す」方針に変わったため、実施されるとしても早くて2027年度以降で、それまでにあらためて審議・決定のプロセスを経る必要があります。** つまり、今すぐ何かの手続きが必要になるわけではありません。 決定までのおおまかな流れを整理すると、次のようになります([社会保険研究所 - 第133回社会保障審議会介護保険部会意見とりまとめ](https://media.shaho.co.jp/n/n8229cf8f3db7)、[介護経営ドットコム - 2027年度の介護保険制度改正に向けたスケジュール・論点](https://kaigokeiei.com/news/efK8UB7VtkHG/))。 1. **2025年12月25日(完了)**:社会保障審議会・介護保険部会が意見をとりまとめ、2割負担の対象拡大は結論を先送り。第10期介護保険事業計画(2027年度開始)の開始までに、あらためて結論を出す方針が正式に決定 2. **2026年度**:先送りされた論点について、部会で再度審議される見通し(具体的な再開時期は本記事執筆時点では未定) 3. **再開後、結論が出た場合**:通常国会に介護保険法などの改正案を提出し、成立を目指す 4. **改正法成立後**:具体的な介護報酬改定の内容や施行日が決定 5. **早くて2027年度以降**:結論が出て法改正が成立した場合に制度がスタート(各市区町村の「第10期介護保険事業計画」の期間中に反映される可能性) つまり、**「2027年度から2割負担の対象が広がる」と決まったわけではなく、対象拡大の是非そのものが、あらためて2027年度以降に持ち越された**のが現状です。ニュースで見かける「〇〇の案が示された」という報道の多くは、先送り前の議論段階の出来事であることが多いため、続報が今回の先送り以降のものかどうかを確認する習慣を持っておくとよいでしょう。 ## 今のうちにできることは? とはいえ、「今は関係ない」と情報から距離を置いてしまうと、いざ制度が固まったときに慌てることになりかねません。今のうちにできることとして、次の3つを意識しておくとよいでしょう。 1. **親(またはご自身)の所得区分をおおまかに把握しておく**:毎年届く「介護保険負担割合証」に記載の割合と、年金収入のおおよその額を確認しておくと、拡大案が実現した場合に対象になりそうかどうかの見当がつきます 2. **家計の中で介護費用に使える上限をイメージしておく**:負担割合が変わった場合の家計への影響を、大まかにでも試算しておくと心の準備になります 3. **一次情報の発信元をブックマークしておく**:厚生労働省の報道発表や、介護保険部会の議事録・資料は[厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html)で確認できます。ニュースの見出しだけでなく、一次情報で「まだ案の段階か、決定したか」を確認するくせをつけておくと安心です ### 具体的な年金収入で見ると、対象になりそうかどうか 「年収230万〜260万円」と言われても、実際にどれくらいの年金収入の方が該当するのか、イメージしにくいかもしれません。あくまで拡大案が実現した場合の**目安**として、次のように整理できます。 | 年金収入等の目安(単身) | 現行制度 | 年収230万円案が実現した場合 | 年収260万円案が実現した場合 | | --- | --- | --- | --- | | 200万円程度 | 1割負担 | 1割負担のまま | 1割負担のまま | | 240万円程度 | 1割負担 | **2割負担に変わる可能性** | 1割負担のまま | | 270万円程度 | 1割負担 | 2割負担に変わる可能性 | **2割負担に変わる可能性** | | 280万円以上 | 2割負担(現行) | 2割負担(変更なし) | 2割負担(変更なし) | このように、**すでに280万円以上で2割負担になっている方には、今回の見直しによる新たな影響はありません。** 影響を受ける可能性があるのは、現在1割負担でありながら年金収入等が230万〜280万円程度の範囲にある方です。ご自身やご家族がこのレンジに近いかどうかを、次に負担割合証が届いたときの参考にしてください(実際の判定は所得や資産の状況を踏まえて市区町村が行うため、上記はあくまで目安です)。 すでに施設利用にかかる費用の変化については、2026年8月から一部引き上げられた「食費・居住費の負担限度額」の記事もあわせてご覧ください。[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)では、今回すでに実施されている変更点を解説しています。今回の記事で取り上げた2027年度の改正は、これとは別の**今後の変更点**である点を混同しないようにしましょう。 また、高額介護サービス費や負担限度額認定証など、今すでに使える負担軽減の制度については、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で全体像を紹介しています。将来の負担増に備える意味でも、今使える制度を漏れなく利用しておくことが土台になります。 制度改正は、介護保険だけで起きているわけではありません。2025年には仕事と介護の両立支援に関する法律も改正されており、[介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度](/columns/work-care-balance-2025-law)もあわせて知っておくと、負担の増減だけでなく「働きながらどう介護を続けるか」という視点でも備えが進みます。親のお金や契約の管理に不安がある場合は、[成年後見制度とは?親のお金と契約を守る家族向け入門──2026年6月成立の改正法で何が変わるか](/columns/adult-guardianship-family-guide)も、あわせて制度改正への備えとして役立ちます。 --- ## よくある質問 ### Q. 2割負担の対象拡大は、もう決定したのですか? 対象拡大そのものは決定していません。2025年12月25日、社会保障審議会・介護保険部会が意見をとりまとめ、「年収230万円以上」から「年収260万円以上」の範囲で対象を拡大する案について、結論を先送りし、2027年度に始まる第10期介護保険事業計画の開始までにあらためて結論を出す方針が正式に決まりました。「拡大しないと決まった」のではなく「まだ決めないと決まった」段階です。同様の見直しは2022年以降、今回で実質4回目の先送りとなります。 ### Q. 今すぐ何か手続きをする必要はありますか? 現時点では、家族が何か手続きをする必要はありません。対象拡大の結論自体が2027年度の介護保険事業計画開始までに持ち越されたため、実施されるとしても早くてそれ以降で、制度の詳細もまだ固まっていません。今できることは、ご家族の「介護保険負担割合証」に記載された現在の負担割合と、おおよその年金収入を把握しておくことです。制度が固まった段階で、対象になりそうかどうかをすぐに判断できます。 ### Q. ケアプランの利用者負担は、結局始まるのですか? 在宅で暮らす方向けのケアプラン作成(居宅介護支援)全体への一律の利用者負担導入は見送られる方向です。ただし、要介護度の高い入居者が多い住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など、一部の施設類型では利用者負担導入の検討が続いています。全面有料化と一部施設限定の話が混同されて報じられることもあるため、対象範囲を区別して確認することが大切です。 ### Q. すでに2割・3割負担になっている人にも影響がありますか? 先送りされた拡大案がそのまま実現した場合でも、すでに2割負担・3割負担の方の負担割合が変わることは基本的にありません。今回の論点は、現在1割負担の方のうち、年金収入等が230万〜280万円程度の範囲にある方を新たに2割負担の対象に加えるかどうかでした。すでに280万円以上で2割負担になっている方や、340万円以上で3割負担になっている方への直接的な影響は、先送り前の案の内容からも見込まれていません。 ### Q. 最新の情報はどこで確認すればよいですか? もっとも確実なのは、厚生労働省の公式サイトや、社会保障審議会・介護保険部会の議事録・資料です。ニュースサイトの見出しだけでは「検討中の案」なのか「先送りが決まった」のかが分かりにくいことがあるため、気になる報道を見かけたときは、記事の中で一次情報へのリンクが示されているかを確認し、可能であれば厚生労働省の発表を直接確認する習慣をつけておくと安心です。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **2割負担の対象拡大(年収230万〜260万円への引き下げ案)は、2025年12月25日に結論が先送りされ、2027年度の第10期介護保険事業計画開始までにあらためて判断される**。「拡大が決まった」わけでも「拡大しないと決まった」わけでもない - **ケアプラン有料化は、全面導入は見送りの方向**だが、一部の施設類型では利用者負担導入の議論が続いている - **今すぐの手続きは不要**だが、対象拡大の議論は2027年度以降に再開される見通し。所得区分の把握と一次情報の確認習慣を、今のうちに持っておくと安心 制度改正のニュースは、見出しだけを見ると不安になりがちです。今回取り上げた2割負担の対象拡大は、**「先送り」という形で一区切りがついた**段階であり、今日明日で何かが変わるわけではありません。まずは、ご家族の「介護保険負担割合証」がどの区分になっているか、次に届いたときに確認してみてください。それだけで、議論が再開されたときに慌てずに済みます。 介護そっとねっとには、「制度のニュースを見るたびに不安になる」「まわりに聞ける人がいない」という声が数多く寄せられています。同じように将来の制度改正を気にかけているご家族と、匿名でそっと情報や気持ちを分かち合える場所です。正式な制度の確認は厚生労働省の一次情報で行いつつ、気持ちの面では一人で抱え込まず、同じ立場の方とつながってみてください。 ※本記事は2026年9月時点で公開されている報道・審議会資料をもとにした情報提供です。2割負担の対象拡大は2025年12月25日時点で結論が先送りされていますが、今後の審議で内容が変更される可能性があります。最新の情報は厚生労働省の公式発表でご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [社会保険研究所 - 制度の見直し意見をとりまとめ「2割負担の拡大は引き続きの検討課題に」第133回社会保障審議会介護保険部会(2025年12月25日)](https://media.shaho.co.jp/n/n8229cf8f3db7) - [共同通信(Yahoo!ニュース) - 介護2割負担拡大見送り 政府、26年度末までに結論](https://news.yahoo.co.jp/articles/0c4da241cbc27e6ee8cace3ac4b2f5c42291dbcf) - [介護ニュースJoint - 介護2割負担、対象拡大へ具体案 厚労省](https://www.joint-kaigo.com/articles/42226/) - [NDソフトウェア - 2027年介護保険制度改正への動向](https://www.ndsoft.jp/kohamacolumn/394060) - [ワイズマン - ケアプラン有料化とは?](https://www.wiseman.co.jp/column/inhome-care-support/35383/) - [ニッセイ基礎研究所 - 介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?](https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77759?site=nli) - [介護経営ドットコム - 2027年度の介護保険制度改正に向けたスケジュール・論点](https://kaigokeiei.com/news/efK8UB7VtkHG/) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?──きょうだいがいない・離れて暮らす家族のための備えと使えるサービス - **slug**: hitorikko-enkyori-kaigo-guide - **公開日**: 2026.8.18 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide **要約**: 結論、遠距離介護は「頼れる窓口を先に知っておく」ことが最大の備えです。地域包括支援センター・ケアマネジャー・介護休暇制度・見守りサービスの4つを軸に、一人っ子や離れて暮らす家族が直面しやすい壁と、実務的な備え方をやさしく解説します。 **本文**: # 一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?──きょうだいがいない・離れて暮らす家族のための備えと使えるサービス > **この記事の要点(3行)** > > - 一人っ子・遠距離介護は「相談相手を家族内で分担できない」ことが最大の壁。頼れる先を家族の外にあらかじめ複数持っておくことが備えになる > - 地域包括支援センター・ケアマネジャー・会社の相談窓口・近隣の見守りサービスの4つが、離れていても使える柱 > - 介護休業(通算93日・3回分割)と介護休暇(年5日、対象家族2人以上で年10日)は、別居でも一人っ子でも取得できる制度 「きょうだいがいれば、誰かに相談できるのに」 「実家に帰るたび、これで大丈夫なのかと不安になる」 「自分しかいないから、全部自分でやらなきゃと思ってしまう」 ——介護そっとねっとのアプリには、こうした**一人っ子・遠距離介護ならではの孤独**を訴える声が数多く寄せられます。きょうだいがいる家庭であれば、通院の付き添いや実家の片付け、お金の管理などを自然と分担できます。しかし一人っ子の場合、その役割分担の相手が家族の中にいません。離れて暮らしていればなおさら、「何かあったらすぐ駆けつけられない」という不安が常につきまといます。 この記事では、一人っ子・遠距離介護という状況に特有の課題を整理したうえで、**家族の外に頼れる窓口をどう確保するか**を、厚生労働省などの公式情報にもとづいて具体的に解説します。 > この記事でわかること > - 一人っ子・遠距離介護で起きやすい3つのつまずき > - 離れていても使える相談窓口の具体的な使い方 > - 遠距離の交通費・帰省にまつわる制度の実情 > - 「呼び寄せる」「地元に戻る」を考えるときの判断材料 > - 今日からできる備えのはじめ方 ただし、これらの窓口を知っているだけでは十分ではありません。**実際に「誰が」「いつ」「何を」頼るかを決めていないと、いざというときに動けない**という落とし穴があります。この点は記事の後半、備えの具体的な手順のところで詳しくお伝えします。 --- ## 一人っ子・遠距離介護で、なぜ負担が集中しやすい? **きょうだいがいる家庭では自然に発生する「役割分担」が、一人っ子の場合は最初から存在しません。すべての意思決定・実務・心理的な重さが、一人に集中する構造になっています。** 総務省統計局のデータでも、家族と離れて暮らしながら親の介護をする世帯の割合は年々増加傾向にあるとされ、単身高齢者世帯の増加とあわせて、遠距離介護に直面する家族は今後も増えていくと見込まれます。一人っ子・遠距離介護で起きやすいつまずきは、大きく3つに整理できます。 ### つまずき1:情報が「現地」に集中し、自分には入ってこない 親の体調の変化、近所付き合い、日々の困りごとは、離れて暮らしていると自然には伝わってきません。電話をしても「大丈夫」としか言われず、実際に帰省して初めて、冷蔵庫の中身が傷んでいたり、薬の飲み忘れが続いていたりして、状況の深刻さに気づく、というケースは少なくありません。本人は心配をかけまいと、体調の変化や困りごとを控えめに伝える傾向があるため、電話だけで状況を正確に把握しようとすること自体に、そもそも限界があります。 ### つまずき2:緊急時に「今すぐ動ける人」が自分しかいない きょうだいがいれば、近くに住む方が先に駆けつけ、遠方の方は後から合流するといった分担ができます。一人っ子の場合、緊急連絡が来ても、移動時間そのものが対応の遅れに直結します。深夜や早朝の連絡だと、始発を待つ間の数時間、何もできずにただ不安を抱えて過ごすことになりがちです。この「今すぐ動けない時間」をどう埋めるかは、次章で紹介する近隣の見守り窓口が担う役割の一つです。 ### つまずき3:「全部自分がやらなければ」という思い込みが負担を増やす 相談相手が家族内にいないため、「弱音を吐ける相手もいない」「決断は全部自分」という孤独感が強まりやすい傾向があります。介護そっとねっとのアプリのコミュニティ機能に、同じ立場の家族から「誰にも相談できず涙が出た」という声が寄せられるのも、こうした構造が背景にあります。実際には、家族の代わりに頼れる専門的な窓口は複数存在します。次の章で、その具体的な使い方を整理します。 --- ## 離れていても頼れる窓口は、具体的に何がある? **結論、離れていても使える窓口は「地域包括支援センター」「ケアマネジャー」「会社の相談窓口」「近隣の見守りサービス」の4つです。まずこの4つの役割の違いを押さえておくと、いざというときに迷わず動けます。** ![一人で抱えない、遠距離介護で頼れる4つの窓口を示す図。地域包括支援センター・ケアマネジャー・会社の相談窓口・近隣の見守りサービスがハブから放射状につながっている。](/column-figures/hitorikko-enkyori-kaigo-guide-support-hub.svg) ### 1. 地域包括支援センター──最初の相談先 地域包括支援センターは、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種を基本に構成される、市区町村ごとに設置された相談拠点です。**親が実際に住んでいる地域**の地域包括支援センターに、離れて暮らす家族からも相談できます。要介護認定がまだの場合の申請相談から、その後のサービス選びまで、幅広く対応してくれる窓口です。「何をどう相談していいか分からない」という段階でも、まずはここに電話するところから始めて構いません。 ### 2. ケアマネジャー──要介護認定後の実務パートナー 要介護認定を受けた後は、ケアプランを作成するケアマネジャーが実務上の窓口になります。訪問診療や訪問介護の手配だけでなく、電話やオンラインでの状況共有にも応じてくれることが多く、[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)で解説したとおり、「合わない」と感じたら変更することも可能です。遠距離介護では特に、こまめに連絡を取り合える相性の良いケアマネジャーを見つけることが、安心材料になります。 ### 3. 会社の相談窓口──働きながら介護を続けるための制度 働きながら遠距離介護を担う場合、会社の人事・相談窓口も重要な味方です。2025年4月の育児・介護休業法改正により、会社には介護に直面した社員への個別周知・意向確認が義務づけられました。制度の詳細は[仕事を辞めずに介護を続けるために](/columns/work-care-balance-2025-law)で解説していますが、要点だけ先に触れると、**介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回に分割して取得可能)と介護休暇(対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日、1日または時間単位)は、同居・別居を問わず取得できる制度**です。一人っ子で頼れる家族がいない状況こそ、こうした制度を積極的に使う理由になります。 ### 4. 近隣の見守りサービス──「気にかけてくれる目」を増やす 民生委員、自治会、郵便局や新聞配達、宅配事業者などが提供する見守りサービスは、離れて暮らす家族にとって心強い存在です。多くの自治体では、こうした見守りサービスの一覧を地域包括支援センターや市区町村の高齢福祉課で紹介しています。すべてを家族だけで見守ろうとせず、地域の目を借りるという発想の転換が、精神的な負担を軽くします。 --- ## 要介護認定の申請、本人が窓口に行けなくても大丈夫? **結論、家族や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所による代理申請、自治体によっては郵送申請にも対応しています。ただし自治体ごとにルールが異なるため、事前確認が必須です。** 要介護認定の申請は、本人以外にも家族、地域包括支援センター、指定の居宅介護支援事業所や介護保険施設が代行できます。自治体によっては郵送での申請書類提出にも対応しており、遠方に住む家族が窓口に出向けなくても手続きを進められます。とはいえ、代理申請に必要な書類や委任状の要否は自治体ごとに異なるため、まずは親の住む市区町村の介護保険担当課、または地域包括支援センターに電話で確認するのが確実です。[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)では、申請の基本的な流れをより詳しく解説しています。 認定調査そのものは原則として本人への面談が必要ですが、家族が立ち会えない場合でも、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員が同席してくれるケースもあります。「立ち会えないから申請できない」と諦める前に、まず窓口に相談してみることが大切です。 --- ## 遠距離の交通費、補助や割引はある? **結論、国による遠距離介護専用の交通費補助・税控除は現時点でありません。ただし航空会社の介護帰省割引や、勤務先独自の補助制度が使える場合があります。** 遠距離介護でかさむ交通費は、家計への負担としてよく話題にのぼります。本人の通院に付き添う際の交通費は医療費控除の対象になり得ますが、**家族が帰省するためだけの交通費は、医療費控除の対象外**です。国レベルでの専用の補助制度も、現時点では整備されていません。 一方で、民間の割引制度は活用の余地があります。 | 制度 | 内容 | 対象 | | --- | --- | --- | | JAL 介護帰省割引 | 航空券の割引運賃 | 二親等以内の親族。事前登録・介護保険被保険者証等の提示が必要 | | ANA 介護割引 | 同上 | 同上。早期の登録が推奨される | | 新幹線の早期予約割引 | 介護専用ではないが、早特・ネット予約割引が使える | 利用者全般 | | 勤務先の帰省補助 | 企業によっては帰省距離に応じた補助金制度あり | 就業規則・福利厚生規程による | これらの制度は申請登録や証明書の提出が事前に必要なケースが多いため、**「いざ緊急事態が起きてから調べる」のではなく、平時のうちに登録だけ済ませておく**のが実務的な備え方です。勤務先に補助制度があるかどうかも、この機会に一度、就業規則や福利厚生の担当窓口に確認しておくと安心です。 --- ## 「呼び寄せる」「地元に戻る」、どう判断すればいい? **結論、どちらか一方が絶対に正しいという答えはなく、「本人の希望」「今の生活基盤」「使える制度」の3つを並べて考える必要があります。** 遠距離介護を続けるうちに、多くの家族が「親をこちらに呼び寄せるか」「自分が地元に戻るか」という選択を検討し始めます。それぞれにメリットと難しさがあります。 **呼び寄せの場合**:家族が日常的に見守れる安心感がある一方、本人にとっては住み慣れた環境・人間関係・かかりつけ医から離れることになり、環境の変化がストレスや状態悪化につながることもあります。特に認知症のある方は、住環境の急な変化そのものが混乱を招きやすいとされるため、呼び寄せを決める前に、まず短期のお試し滞在から始めるなど、段階を踏む配慮も検討したいところです。 **地元に戻る場合**:本人の生活環境を維持できますが、家族自身の仕事や配偶者・子どもの生活基盤に大きな影響が及びます。転職やテレワークへの切り替えが現実的かどうかも、事前に検討が必要です。「戻ればすべて解決する」と思い込んで踏み切った結果、今度は自分自身の仕事や家庭との両立で行き詰まってしまう、という失敗例も少なくありません。決断の前に、[仕事を辞めずに介護を続けるために](/columns/work-care-balance-2025-law)で紹介した介護休業・介護休暇の制度を使い切れないかを、先に検討する価値があります。 **どちらも選ばない場合**:訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの在宅サービスを組み合わせ、遠距離のまま介護を続けるという選択肢もあります。[在宅介護、何から始めればいい?](/columns/home-care-preparation)や[ショートステイとは?](/columns/short-stay-respite-guide)で紹介しているサービスを組み合わせることで、毎日は難しくても、無理のない頻度で見守りを続けている家族も多くいます。三択のどれか一つに決め切る必要はなく、本人の状態や家族の状況の変化に応じて、時間をかけて見直していくものだと捉えておくと、気持ちが楽になります。 いずれの選択も、本人の意思を最優先にしながら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しつつ、時間をかけて検討することをおすすめします。一度決めたら変更できない、というものではありません。 --- ## 今日からできる、遠距離介護の備え方 **結論、備えの第一歩は「情報」ではなく「連絡先の実物」を用意することです。頭の中で分かっているつもりでも、緊急時には思い出せません。** ここまで紹介した窓口や制度は、知っているだけでは十分に機能しません。実際に使うタイミングで迷わないよう、次のような準備をしておくと安心です。 1. **地域包括支援センターの電話番号を控える**:親の住む地域を管轄する地域包括支援センターの名称・電話番号を、スマートフォンの連絡先やメモアプリに保存しておく 2. **近隣の連絡先を最低1つ確保する**:民生委員、隣人、行きつけの店など、緊急時に様子を見に行ってもらえる現地の連絡先を一つでも持っておく 3. **勤務先の介護休暇制度を確認する**:就業規則を確認し、介護休暇・介護休業の申請方法を人事に一度聞いておく 4. **交通手段の割引登録を済ませる**:航空会社の介護帰省割引など、事前登録が必要な制度は平時のうちに済ませておく 5. **本人の医療・介護情報を家族で共有できる形にする**:かかりつけ医、服用中の薬、持病などを書面やメモアプリでまとめておく これらは、どれも今日一人で始められることばかりです。まずは今週末、地域包括支援センターの連絡先を調べてスマートフォンに保存するところから始めてみるのがおすすめです。それだけで、「何かあったときにまず誰に電話するか」が明確になり、心理的な負担がぐっと軽くなります。 冒頭で触れた「実際に『誰が』『いつ』『何を』頼るかを決めていないと動けない」という落とし穴は、まさにこの準備を後回しにしてしまうことから生まれます。窓口を知っているだけで終わらせず、連絡先を実際に控えておくところまでを、備えの完了ラインにしてください。 --- ## まとめ この記事を読んで持ち帰れることは、次の3つです。 - 一人っ子・遠距離介護で頼れる先は、家族以外にも地域包括支援センター・ケアマネジャー・会社の相談窓口・近隣の見守りサービスと複数ある - 介護休業・介護休暇は、別居でも一人っ子でも取得できる制度であり、勤務先への確認が備えの第一歩になる - 「呼び寄せ」「地元に戻る」「遠距離のまま続ける」に正解はなく、本人の希望を軸に専門職と一緒に検討していい きょうだいがいないこと、離れて暮らしていることは、決して「一人で抱えなければならない理由」にはなりません。頼れる窓口を先に知り、連絡先を手元に控えておくこと。それだけで、いざというときの動き方が大きく変わります。 反対に、きょうだいが複数いる場合は「分担できるはず」の相手がいるからこそ、役割やお金の話し合いがこじれてしまうケースもあります。そうした悩みは[親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方](/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide)で解説していますので、きょうだいがいるご家族はあわせてご覧ください。 まずは今日、地域包括支援センターの連絡先をスマートフォンに保存することから、始めてみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な制度の利用可否や手続きは、お住まいの自治体・勤務先の規定によって異なります。詳しくは地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口、または勤務先の人事担当にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護休業制度特設サイト](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/) - [厚生労働省 - 介護休暇|介護休業制度特設サイト](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shorttime-leave/) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [総務省統計局 - 就業構造基本調査](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説 - **slug**: home-help-service-guide - **公開日**: 2026.8.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/home-help-service-guide **要約**: 結論、訪問介護は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3本柱で、費用は1割負担なら1回あたり数百円〜千円台が目安です。同居家族がいると生活援助が使えないという制度の壁、掃除・調理でできること/できないことまで、厚生労働省の公式情報をもとにやさしく解説します。 **本文**: # 訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと、費用の目安をやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 訪問介護(ホームヘルプ)は、ヘルパーが自宅を訪問して行う「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3本柱のサービス > - 費用は1回あたり数百円〜千円台が目安(1割負担の場合)。ただし**同居家族がいると生活援助が使えないのが原則**という、多くのご家族がつまずく落とし穴がある > - 掃除・調理などの「できること」と、庭木の手入れや来客対応などの「できないこと」を、厚生労働省の通知にもとづいて整理 「デイサービスには行きたがらないけれど、家の中のことは正直、手が回っていない」 「離れて暮らす親の家に、誰かちょっとでも顔を出してくれたら安心なのに」 「同居しているのに、ヘルパーさんに掃除をお願いしていいのか分からない」 ——介護そっとねっとのアプリには、こうした「通いのサービスより先に、まず家の中を手伝ってほしい」という声が数多く寄せられます。日中の見守りと生活のハリを支えるのがデイサービスなら、**暮らしている場所そのものを支える**のが訪問介護(ホームヘルプ)です。 この記事では、訪問介護で受けられるサービスの内容、費用の目安、利用の始め方までを、厚生労働省の公式情報にもとづいてやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 訪問介護の3本柱(身体介護・生活援助・通院等乗降介助)の違い > - 1回あたりの費用の目安 > - 掃除や調理で「できること」「できないこと」の具体例 > - 同居家族がいる場合に知っておきたい注意点 > - 利用を始めるまでの流れ ただし、実際に利用を検討し始めた家庭の多くが最初につまずくのは、サービス内容そのものよりも、**「同居している家族がいると使えないサービスがある」という制度上のルール**です。この壁との向き合い方は、記事の後半でくわしくお伝えします。 --- ## 訪問介護とはどんなサービス? **訪問介護(ホームヘルプ)とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行う介護保険サービスです。内容は大きく「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分けられます。** 要介護1〜5と認定された方が対象で、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけたうえで利用します(要介護認定の基本的な流れは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しています)。要支援1・2の方は、介護保険の訪問介護ではなく、市区町村が実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」の訪問型サービスが受け皿になります。 ### 身体介護 利用者の体に直接触れて行う介助です。 | 内容 | 具体例 | | --- | --- | | 食事介助 | スプーンでの食事の介助、とろみ調整など | | 排せつ介助 | トイレ誘導、おむつ交換 | | 入浴介助 | 洗身・洗髪、浴槽への出入りの介助 | | 着替え・整容 | 衣服の着脱、洗面、整髪 | | 体位変換・移乗 | ベッドと車椅子の間の移動、寝返りの介助 | | 通院等乗降介助 | 通院時の車への乗り降り、受診手続きの介助(訪問介護員が運転する場合) | ### 生活援助 利用者本人の日常生活を支えるための家事支援です。**「本人以外の家族のための家事」や「日常生活に最低限必要な範囲を超える家事」は対象外**という制約があります(詳しくは後述)。 | 内容 | 具体例 | | --- | --- | | 掃除 | 利用者が使う居室、トイレなどの掃除・整頓 | | 洗濯 | 洗濯、干す・取り込む、収納 | | 調理 | 一般的な調理、配膳、後片付け | | 買い物 | 日常品の買い物、薬の受け取り | | ベッドメイキング | シーツ交換など | 厚生労働省の通知では、生活援助は「利用者が単身、または家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの」と定義されています([訪問介護サービスの生活援助の取扱いについて/厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/050412/dl/9-3.pdf))。この「困難な場合」という条件が、後述する同居家族の壁につながります。 ![訪問介護の3本柱(身体介護・生活援助・通院等乗降介助)と、それぞれの主な内容を示すハブ&スポーク図。中心の「訪問介護」から3方向に枝分かれし、それぞれの代表的なサービス内容が並ぶ。](/column-figures/home-help-service-three-pillars.svg) --- ## 費用はどれくらいかかるの? **訪問介護の費用は、サービスの種類と時間によって決まる「単位数」に、地域ごとの単価(1単位おおむね10〜11円台)をかけて計算されます。1割負担の場合、1回あたり数百円〜千円台が目安です。** たとえば身体介護であれば、時間が長くなるほど単位数(=費用)が上がる仕組みで、20分ほどの短時間の介助から、1時間を超える介助まで幅があります。生活援助は身体介護よりも単位数が低く設定されており、掃除・調理を30〜45分程度お願いする場合で、1割負担なら数百円程度が目安です。身体介護に引き続いて生活援助を行う「身体介護に引き続き行う生活援助」という組み合わせ方もあります。 正確な単位数は2024年度介護報酬改定にもとづき地域区分・事業所の加算状況によって変わるため、契約前に事業所から**サービス提供時間ごとの料金表**をもらって確認するのが確実です。 また、訪問介護の利用料は、要介護度ごとに定められた**区分支給限度基準額**(1ヶ月に利用できる介護保険サービスの上限額)の枠内でやりくりします。デイサービスや福祉用具レンタルなど他のサービスと合算して管理する点は、[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方](/columns/day-service-guide)や[介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase)で紹介した考え方と共通です。区分支給限度基準額の要介護度別の目安は、[親の介護が始まったら](/columns/nursing-insurance-basics)にまとめています。医療的な処置が必要になってきた場合は、看護師が訪問してケアを行う[訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安・頼めることをやさしく解説](/columns/visiting-nursing-care-guide)もあわせて検討してみてください。 --- ## 同居家族がいると生活援助は使えない?知っておきたい制度の壁 **原則として、同居家族がいる場合、生活援助(掃除・洗濯・調理などの家事支援)は介護保険の対象になりません。ただし、家族が病気や仕事などのやむを得ない事情で家事ができない場合は、例外的に利用が認められます。** ここが、多くのご家庭が最初につまずくポイントです。「息子と同居しているから、ヘルパーさんに家事は頼めないと言われた」「日中は一人で仕事に出ているのに、なぜダメなのか」——こうした戸惑いの声は、介護そっとねっとのアプリにもたびたび寄せられます。 制度上、生活援助はあくまで「本人が自分でできないことを代行する」サービスであり、同居家族がいれば家事を分担できるという考え方が前提になっています。しかし、市区町村の運用指針では、次のような事情があれば「やむを得ない場合」として認められる余地があります。 - 同居家族が障害・疾病などにより家事を行うことが困難 - 同居家族が仕事などで日中不在にしており、本人の状態を放置すると心身に悪影響が及ぶおそれがある - 同居家族との関係が著しく困難で、支援が避けられない事情がある 一方、「家族の仲があまり良くない」「家事をした経験がない」「他の家族が忙しそうで頼みにくい」といった理由だけでは、原則として対象になりません。判断はケアマネジャーが利用者の状況をアセスメントしたうえで、ケアプランに位置づけて行われます。「うちの場合はどうなのか」を自己判断せず、まずは担当のケアマネジャーに実際の生活状況を伝えて相談してみてください。 反対に、親が一人で暮らしていて子どもが離れて住んでいる場合は、生活援助を含めた訪問介護が暮らしの支えの中心になりやすくなります。遠方から見守る家族の備えや頼れる窓口は、[一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)で整理しています。 --- ## 訪問介護でできないこと **訪問介護の生活援助は、あくまで利用者本人の日常生活に必要な範囲に限られます。家族のための家事や、日常的に行わない特別な家事は対象外です。** 厚生労働省の通知(平成12年老計第10号)では、次のような行為は生活援助に含まれないと明記されています。 | 分類 | できないことの例 | | --- | --- | | 本人以外のための家事 | 家族の食事作り、来客の応対、利用者以外の部屋の掃除、家族の洗濯 | | 日常生活に支障が生じない行為 | 庭の草むしり、花木の水やり、ペットの散歩・世話 | | 日常的に行わない家事 | 大掃除、家具・家電の修理や模様替え、ペンキ塗り、正月・節句のための特別な調理 | | 保険給付の対象外の行為 | 商品の販売、農作業などの生業の手伝い | これらは「ヘルパーが冷たい」わけではなく、介護保険が公的な保険料と税金で運営されている以上、**給付の範囲を利用者本人の生活維持に限定する**というルールに基づいています。範囲外のことを依頼したい場合は、市区町村の生活支援サービスや、保険外の自費サービス(利用者と事業者の契約に基づく自由なサービス)を組み合わせる方法もあります。「これはお願いできるだろうか」と迷ったときは、依頼する前にケアマネジャーやサービス提供責任者に確認する習慣をつけておくと、当日のトラブルを避けられます。 --- ## デイサービスとの違い・使い分け **デイサービスが「日中、施設に通って過ごす」サービスであるのに対し、訪問介護は「暮らしている自宅に来てもらう」サービスです。目的や本人の状態によって使い分け、併用することもできます。** | 観点 | 訪問介護 | デイサービス | | --- | --- | --- | | 場所 | 自宅 | 施設に通う | | 主な目的 | 個別の身体介護・生活援助 | 入浴・食事・レクリエーション・機能訓練、社会的な交流 | | 介護者の負担軽減 | ヘルパーが来る間、外出や休息が可能 | 日中まとまった時間、介護から離れられる | | 向いているケース | 環境の変化を嫌う方、外出が難しい方、家事支援が中心のニーズ | 日中の見守りや他者との交流を増やしたい方 | 「本人が外出や人との交流を嫌がるので、まず訪問介護で生活を支えながら、慣れてきたら少しずつデイサービスも試す」という組み合わせ方をされるご家庭も少なくありません。デイサービスの費用や1日の流れ、見学のポイントについては[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方、親が行きたがらないときの対応まで解説](/columns/day-service-guide)で詳しく解説しています。どちらか一方だけで判断せず、本人の状態や希望に合わせてケアマネジャーと一緒に組み合わせを考えるのがおすすめです。 「通い」と「訪問」、ときどきの「泊まり」を、なじみの職員がいる1つの事業所でまとめて受けたい場合は、[小規模多機能型居宅介護](/columns/small-multifunctional-care-guide)という選択肢もあります。ただし登録すると、それまでの訪問介護やデイサービスは原則として併用できず、多くの場合ケアマネジャーも変わるため、切り替える前に確認しておきましょう。 --- ## 利用を始めるまでの流れ **訪問介護は、要介護認定を受けたあと、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけて利用を開始します。** 1. **要介護認定を受ける**(またはすでに認定済みであることを確認する) 2. **ケアマネジャーに相談する**:現在の生活状況や困りごとを具体的に伝える 3. **ケアプランに訪問介護を組み込む**:サービス内容・頻度・時間帯を決める 4. **事業所と契約する**:重要事項説明書・料金表の説明を受け、サービス提供責任者と初回の顔合わせを行う 5. **サービス開始**:初回は本人の生活動線やこだわりを確認しながら進むことが多い 利用を始めたあとで本人の状態が大きく変わり、今の要介護度の枠では必要な回数の訪問がまかなえないと感じたときは、[要介護認定の「区分変更申請」](/columns/kubun-henkou-shinsei-family-guide)をケアマネジャーに相談する方法もあります。 ケアマネジャーが決まっていない、または今の担当者に相談しづらいと感じている場合は、[ケアマネジャーの選び方と変更方法](/columns/care-manager-selection-and-change)も参考にしてください。ケアマネジャーには、家族側の「本当は誰にも言いにくい困りごと」も遠慮なく相談していい相手です。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは次の3つです。 - 訪問介護は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3本柱で、費用は1割負担なら1回あたり数百円〜千円台が目安 - 同居家族がいると生活援助は原則対象外だが、やむを得ない事情があれば例外的に利用できる - 「できないこと」は家族のための家事や特別な家事に限られ、本人の生活を支える範囲は幅広くカバーされる 冒頭でお伝えした「同居家族がいると使えないかもしれない」という壁は、実際には**個別の事情を伝えれば道が開けることも多い**制度です。まずは、今の暮らしの中で「誰が」「何に」困っているのかを、簡単なメモでいいので書き出してみてください。それを持ってケアマネジャーに相談するだけで、使えるサービスの選択肢がぐっと広がります。 介護保険の申請やケアマネジャーとのやり取りに不安がある方は、まず**地域包括支援センター**に相談されることをおすすめします。介護保険の申請支援からサービスの利用調整まで、幅広くサポートしてくれます。 --- ### 出典・参考情報 - [訪問介護サービスの生活援助の取扱いについて/厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kaigi/050412/dl/9-3.pdf) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) ※単位数・料金は2024年度介護報酬改定時点の目安です。地域区分や事業所の加算状況によって異なるため、実際の金額は契約前に事業所へご確認ください。 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方、親が行きたがらないときの対応まで解説 - **slug**: day-service-guide - **公開日**: 2026.8.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/day-service-guide **要約**: 結論、デイサービス(通所介護)の費用は、1割負担・通常規模・7〜8時間で1回658〜1,148円に食費などが加わるのが目安です。デイケアとの違い、1日の流れ、見学の5つのチェックポイント、親が行きたがらないときの対応まで、厚生労働省の公式情報をもとにやさしく解説します。 **本文**: # デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方、親が行きたがらないときの対応まで解説 > **この記事の要点(3行)** > > - デイサービス(通所介護)は、要介護1〜5の方が日帰りで施設に通い、食事・入浴・機能訓練・送迎を受けられる介護保険サービス。要支援1・2の方は市区町村の総合事業などが受け皿になる > - 費用は「介護サービス費(1〜3割負担)+食費+日常生活費」の合計。1割負担・通常規模・7〜8時間なら、介護サービス費は1回658〜1,148円が目安 > - 選ぶときは見学・体験利用がいちばんの近道。雰囲気・機能訓練・入浴・食事・送迎の5点を確認する。「親が行きたがらない」ときの向き合い方も紹介 「帰省したら、親がこの前より弱っていて驚いた」 「日中ずっと家にいて、テレビの前から動かない。会話も減った気がする」 「自分が仕事に行っているあいだ、一人にしておくのが心配で……」 ——夏の帰省シーズンは、離れて暮らす親の変化に気づくきっかけが増える時期でもあります。介護そっとねっとのアプリにも、こうした戸惑いの声が寄せられます。日中の見守りと生活のハリ、その両方を支えてくれるのが**デイサービス**(通所介護)です。 この記事では、デイサービスの仕組みと利用できる人、費用の目安、1日の流れ、後悔しない選び方までを、厚生労働省の公式情報にもとづいてやさしく整理します。 > この記事でわかること > - デイサービスで受けられるサービスと、利用できる人 > - デイケア(通所リハビリテーション)や認知症対応型との違い > - 1回あたりの費用の目安と、費用を考えるときの注意点 > - 到着から帰りの送迎までの1日の流れ > - 見学でみる5つのチェックポイント ただし、実際に多くのご家庭がつまずくのは、制度や費用のことよりも、**親本人が行きたがらないという壁**です。この壁との向き合い方は、記事の後半でくわしくお伝えします。 --- ## デイサービスとは?どんなことをしてくれるサービスなの? **デイサービス(通所介護)は、要介護1〜5の方が日帰りで施設に通い、食事・入浴などの生活支援と機能訓練を受けられる介護保険サービスです。自宅と施設のあいだの送迎も含まれます。** 「デイサービス」は法律上の名前を「通所介護」といいます。朝に送迎車が自宅まで迎えに来て、日中を施設で過ごし、夕方に自宅まで送り届けてもらう——という日帰りのサービスで、施設ではおおむね次のような支援を受けられます([厚生労働省 介護サービス情報公表システム](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group7.html))。 | 受けられる支援 | 内容 | | --- | --- | | 食事 | 昼食の提供、必要に応じて食事の介助 | | 入浴 | 設備の整った浴室での入浴、入浴介助 | | 機能訓練 | 体操や歩行訓練など、心身の機能維持を目指す取り組み | | レクリエーション | 体を動かす遊び、脳トレ、季節の行事、趣味活動など | | 送迎 | 自宅と施設のあいだの送迎(基本のサービスに含まれる) | | 健康チェック | 到着時の体温・血圧などの確認 | 本人にとっては「家から出て、人と話す機会」ができ、ご家族にとっては「日中、プロに見てもらえる時間」ができる——両方を同時に支えるのがデイサービスの役割です。自宅での入浴が難しくなってきた方が、入浴を主な目的に利用するケースも少なくありません。ただし、体調の変動が大きく通所すること自体が負担な方には、自宅に浴槽を持ち込む[訪問入浴介護](/columns/visiting-bath-care-guide)という選択肢もあります。 ここで注意したいのが対象者です。**通所介護を介護保険で利用できるのは、要介護1〜5の認定を受けた方**で、要支援1・2の方は対象になりません。要支援の方の「通いの場」は、市区町村が実施する**介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の通所型サービス**などが受け皿になっており、窓口は地域包括支援センターです([厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192992.html))。 まだ要介護認定を受けていない場合は、申請が最初の一歩になります。申請の流れは[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で確認してみてください。 「平日の日中だけでも誰かに見てもらえたら」——そう感じているご家庭なら、要介護度にかかわらず、一度検討してみる価値のあるサービスです。 --- ## デイサービスにはどんな種類がある?デイケアとの違いは? **規模や目的の違いで複数の種類があります。生活支援と交流が中心のデイサービスに対し、デイケア(通所リハビリテーション)は医師の指示にもとづくリハビリが中心で、費用もやや高めです。** ひとくちに「デイ」と呼ばれるサービスにも、いくつかの種類があります。 | 種類 | 特徴 | | --- | --- | | **通所介護(デイサービス)** | 生活支援・機能訓練・交流が中心。事業所の規模(通常規模・大規模)で単価が変わる | | **地域密着型通所介護** | 利用定員18人以下の小規模なデイサービス。少人数で、なじみの関係をつくりやすい | | **認知症対応型通所介護** | 認知症の方を対象にした専門的なケアを行うデイサービス。**要支援1・2の方も利用できる** | | **通所リハビリテーション(デイケア)** | 介護老人保健施設や病院・診療所などで、医師の指示のもとリハビリ専門職が機能回復を支援 | とくに迷いやすいのが、デイサービスとデイケアの違いです。 ![デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)の違いを目的・提供場所・リハビリ体制・1回あたりの自己負担の目安で対比した比較図](/column-figures/day-service-vs-day-care.svg) - **デイサービス**は、食事・入浴などの生活支援と、人との交流・生活のハリづくりが中心。「閉じこもりがちで心配」「入浴が大変」というご家庭に向いています。 - **デイケア**は、医師の指示にもとづき、理学療法士・作業療法士などの専門職がリハビリテーションを行います。「退院後に歩く力を取り戻したい」など、明確なリハビリ目的がある場合に向いています([厚生労働省 介護サービス情報公表システム(通所リハビリテーション)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group8.html))。 また、もの忘れが進んできた方には、少人数で専門的なケアを受けられる認知症対応型通所介護という選択肢もあります。認知症のサインや家族の向き合い方は、[親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方](/columns/dementia-care-latest)でくわしく解説しています。 どれを選ぶべきか迷ったら、目的から逆算するのがコツです。「何のために通うのか」(見守りか、入浴か、リハビリか、交流か)をご家族の中で言葉にしてみると、候補は自然に絞られていきます。 --- ## 費用はいくらかかる?1回あたりの目安 **1割負担・通常規模・7〜8時間の場合、介護サービス費は1回658〜1,148円(要介護1〜5)。これに食費と日常生活費が全額自己負担で加わります。** デイサービスの費用は、次の3つの合計で考えます。 1. **介護サービス費の自己負担(1〜3割)**:要介護度・利用時間・事業所の規模で決まる 2. **食費**:介護保険の対象外。事業所ごとに設定され、全額自己負担 3. **日常生活費**:おむつ代、教材費など。全額自己負担 通常規模の事業所で7時間以上8時間未満利用した場合の、介護サービス費の自己負担(1割)の目安は次のとおりです([厚生労働省 介護サービス情報公表システム](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group7.html))。 | 要介護度 | 自己負担額(1割)の目安(1回) | | --- | --- | | 要介護1 | 658円 | | 要介護2 | 777円 | | 要介護3 | 900円 | | 要介護4 | 1,023円 | | 要介護5 | 1,148円 | たとえば要介護1の方が週2回(月8回)利用すると、介護サービス費だけの単純計算で月5,264円。これに食費と日常生活費、入浴介助や個別機能訓練などの加算が加わります。利用時間の区分は3時間程度の短時間から8時間を超えるものまであり、お住まいの地域区分や所得(2割・3割負担)によっても金額は前後します。**正確な金額は、契約前に事業所から料金表と見積もりをもらって確認するのが確実です**。 費用面で知っておきたい注意点が2つあります。 - **食費の軽減制度(負担限度額認定・補足給付)は使えない**:この制度で軽減されるのは施設サービスやショートステイの食費・居住費で、デイサービスの食費は対象外です。泊まりのサービスとの費用の違いは[ショートステイとは?費用の目安・予約の流れ・連続利用30日ルールまでやさしく解説](/columns/short-stay-respite-guide)と見比べてみてください。 - **1ヶ月の自己負担が上限を超えたら払い戻しがある**:介護サービス費の自己負担部分は「高額介護サービス費」の対象で、月の合計が所得に応じた上限額を超えた分は申請により払い戻されます(食費・日常生活費は対象外)。 なお、介護保険から給付される月あたりの上限(区分支給限度基準額)の範囲内で、他のサービスと組み合わせながら利用回数を決めていくことになります。この仕組みも含め、ケアマネジャーが月々の計画を一緒に考えてくれます。 「月にいくらまでなら続けられるか」——ご家庭の家計と相談しながら、無理のない回数から始めるのが長続きのコツです。 --- ## デイサービスの1日はどんな流れ? **朝の送迎から始まり、健康チェック→入浴→昼食→機能訓練・レクリエーション→帰りの送迎、という流れが一般的です。** 初めての利用を前に、本人もご家族も「行ったら何をするのか」が見えないと不安になるものです。事業所により異なりますが、7〜8時間型の一般的な1日はおおむね次のように進みます。 ![デイサービスの一般的な1日の流れ。朝の送迎、到着後の健康チェック、午前の入浴、昼食と口腔ケア、午後の機能訓練とレクリエーション、おやつ、夕方の帰りの送迎までを順に示したフロー図](/column-figures/day-service-daily-flow.svg) 1. **朝の送迎**:送迎車が自宅まで迎えに来ます。乗り降りの介助もスタッフが行います 2. **健康チェック**:到着後に体温・血圧・体調を確認。この日の入浴可否などを判断します 3. **入浴**:午前中に交代で入浴することが多く、必要に応じて介助を受けられます 4. **昼食・口腔ケア**:みんなで昼食をとり、食後は歯みがきなどの口腔ケア 5. **機能訓練・レクリエーション**:体操や歩行訓練、脳トレ、趣味活動、季節の行事など 6. **おやつ・帰りの支度**:おやつと水分補給のあと、夕方に送迎車で帰宅します 到着時の健康チェックの結果や、その日の食事量・様子は連絡帳などでご家族に共有されるのが一般的です。**離れて暮らしていても「今日の親の様子」を知る手がかりが毎回残る**——これは、ご家族にとって想像以上に大きな安心材料になります。 「丸一日は長すぎるかも」という方には、半日型(3〜4時間程度)の事業所や、入浴を中心にした短時間の利用という選択肢もあります。本人の体力や気持ちに合わせて、短い時間から慣らしていくこともできます。 --- ## 後悔しない選び方は?見学でみる5つのチェックポイント **パンフレットだけで決めず、必ず見学・体験利用をしましょう。雰囲気・機能訓練・入浴・食事・送迎の5点を、本人の目線で確認するのがポイントです。** デイサービスは事業所ごとの個性がとても大きいサービスです。運動特化型もあれば、趣味活動が充実したところ、少人数で家庭的なところもあります。候補が挙がったら、次の5点を見学でチェックしてみてください。 - [ ] **雰囲気と利用者層**:本人と年代や雰囲気の近い利用者がいるか。スタッフの声かけは丁寧か - [ ] **機能訓練・プログラムの内容**:本人が「やってみたい」と思えそうな活動があるか。運動中心か、趣味中心か - [ ] **入浴設備と介助体制**:浴室の造り(個浴・機械浴など)と、介助の体制が本人の状態に合っているか - [ ] **食事**:献立の内容、きざみ食・とろみ対応など、本人の噛む力・飲み込む力への対応 - [ ] **送迎の範囲と時間帯**:自宅が送迎範囲に入っているか、乗車時間が長すぎないか 見学の日程調整や候補選びは、担当のケアマネジャーが手伝ってくれます。「本人は人見知りで大人数が苦手」「入浴を最優先にしたい」など、希望を具体的に伝えるほど、合う事業所に出会いやすくなります。ケアマネジャーとの付き合い方は[ケアマネジャーの選び方と変更方法──「合わないかも」と思ったら見る5つのサイン](/columns/care-manager-selection-and-change)も参考にしてください。 多くの事業所では、契約前の見学や体験利用(事業所により無料・有料があります)を受け付けています。**本人が「ここなら悪くないかな」と思えるかどうか**が何よりの判断基準なので、できれば本人と一緒に見学することをおすすめします。 --- ## 親が「行きたくない」と言ったら? **無理に説得せず、まず「行きたくない理由」を聞くことから始めましょう。半日や体験利用など小さく始める、信頼する人から勧めてもらうなど、時間をかけて慣らしていく方法があります。** 記事の前半でお伝えした「多くのご家庭がつまずく壁」が、ここです。デイサービスの利用を提案したら、親に「わたしはまだそんな歳じゃない」「知らない人の中に行きたくない」と断られてしまった——という経験は、本当に多くのご家族が通る道です。 まず知っておいていただきたいのは、**拒否には本人なりの理由がある**ということです。 | よくある理由 | 向き合い方のヒント | | --- | --- | | 「年寄り扱いされたくない」 | 「介護」を前面に出さず、「リハビリに行く」「体操教室」など本人が受け入れやすい言葉で誘ってみる | | 「知らない場所・人が不安」 | 見学や1回だけの体験から。顔なじみのスタッフができると変わることも多い | | 「家族に迷惑をかけたくない/必要ない」 | 「お母さんが行ってくれると、わたしが安心して仕事に行ける」など、家族側の理由として伝える | | 「疲れる、めんどうくさい」 | 半日型や週1回など、負担の小さい形から。体調や気分の波も踏まえてケアマネジャーに相談 | 説得を重ねるほど、かえって意固地になってしまうこともあります。本人が信頼しているかかりつけ医やケアマネジャーから勧めてもらうと、すんなり受け入れられるケースも少なくありません。 そして、何度誘っても難しい時期は、いったん立ち止まって構いません。ご家族が疲れ果ててしまっては元も子もないからです。介護する側の心の守り方は、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)にまとめています。 「今日は行きたくない」と言われる日があっても、それはご家族の対応が悪いわけではありません。焦らず、小さく、本人のペースで——を合言葉にしてみてください。 --- ## まとめ:デイサービスは「本人の日中」と「家族の安心」を同時に支えるサービス この記事で持ち帰っていただけることを、3つに整理します。 - **要介護1〜5ならデイサービス、要支援なら総合事業など**——親の認定区分から、どの「通いの場」が候補になるか判断できるようになりました - **「サービス費1〜3割+食費+日常生活費」という費用の骨組み**がわかり、見積もりのどこを確認すればよいか見当がつくようになりました - **見学でみる5つのチェックポイントと、行きたがらないときの向き合い方**——次に打つ手を自分で選べるようになりました デイサービスは、在宅介護を支える代表的な介護保険サービスのひとつです。本人の生活にハリが生まれ、ご家族には休める時間と「今日の様子」を知る安心が生まれます。どちらか一方のためではなく、**両方のためのサービス**だということを、ぜひ覚えておいてください。 ### 今日、ひとつだけできること お住まいの市区町村名と「デイサービス 一覧」で検索して、**自宅(または親の家)から送迎で通えそうな事業所を3つだけメモしてみてください**。まだ誰かに相談する前の段階でも、「近くに選択肢がこれだけある」とわかるだけで、気持ちは少し軽くなるものです。 デイサービス選びや親への切り出し方は、正解がひとつではないからこそ、同じ立場の経験談が助けになります。介護そっとねっとのアプリでは、介護に向き合うご家族どうしが匿名でやりとりできます。「うちの親はこうやってデイに慣れた」といった、生活に近い工夫が集まる場所です。よければのぞいてみてください。 --- ## よくある質問 ### Q. 要支援1・2でもデイサービスに通えますか? 介護保険の「通所介護」を利用できるのは要介護1〜5の方で、要支援1・2の方は対象外です。要支援の方は、市区町村が実施する総合事業の通所型サービスや、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防通所リハビリテーションなどが受け皿になります。まずは地域包括支援センターに相談してみてください。 ### Q. デイサービスの費用は1回いくらくらいかかりますか? 介護サービス費の自己負担(1割の場合)は、通常規模・7〜8時間利用で1回658〜1,148円(要介護1〜5)が目安です。これに食費と日常生活費(おむつ代など)が全額自己負担で加わり、加算や地域区分、所得(2〜3割負担)によっても前後します。契約前に事業所から料金表と見積もりをもらって確認しましょう。 ### Q. デイサービスの食費に負担限度額認定(補足給付)は使えますか? 使えません。負担限度額認定で軽減されるのは、施設サービスやショートステイの食費・居住費で、デイサービスの食費は対象外です。一方、介護サービス費の自己負担部分は高額介護サービス費の対象で、1ヶ月の合計が上限額を超えた分は申請により払い戻されます。 ### Q. 週に何回まで通えますか? 制度上「週◯回まで」という一律の上限はありません。要介護度ごとに決まっている区分支給限度基準額の範囲内で、他のサービスとのバランスをみながら、ケアマネジャーと相談してケアプランに位置づけて決めていきます。 ### Q. デイサービスとデイケアは、どちらを選べばいいですか? 見守り・入浴・交流など生活面の支えが目的ならデイサービス、医師の指示にもとづくリハビリが目的ならデイケア(通所リハビリテーション)が向いています。両方をケアプランに組み込んで併用することもできるので、目的をケアマネジャーに伝えて相談してみてください。本人が外出を嫌がる場合は、自宅で受けられる[訪問介護(ホームヘルプ)](/columns/home-help-service-guide)から始め、慣れてきたらデイサービスを試すという組み合わせ方もあります。 ### Q. 体験利用はできますか? 多くの事業所で、契約前の見学や体験利用を受け付けています(無料か有料かは事業所によって異なります)。本人が雰囲気になじめるかどうかが長続きの鍵になるため、できれば本人と一緒に見学し、食事や入浴の時間帯の様子も見せてもらうのがおすすめです。 なお、デイサービス(通い)に加えて訪問や急な泊まりのニーズも定期的にある場合は、複数の事業所と別々に契約するのではなく、1つの事業所が通い・訪問・泊まりを一体で提供する[小規模多機能型居宅介護](/columns/small-multifunctional-care-guide)という選択肢もあります。窓口を1つにまとめたいと感じたときの参考にしてください。 --- ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に関するアドバイスは専門家にご相談ください。 ## 参考にした公式情報 - [厚生労働省 介護サービス情報公表システム(通所介護)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group7.html) - [厚生労働省 介護サービス情報公表システム(通所リハビリテーション)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group8.html) - [厚生労働省 介護サービス情報公表システム(認知症対応型通所介護)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group10.html) - [厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192992.html) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) ※介護報酬や利用者負担の目安は改定される場合があります。実際の利用にあたっては、担当のケアマネジャー、お住まいの地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### ケアマネジャーの選び方・探し方と変更方法──面談で聞くこと、「合わない」と感じたときの5つのサイン - **slug**: care-manager-selection-and-change - **公開日**: 2026.8.4 - **更新日**: 2026.10.6 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/care-manager-selection-and-change **要約**: 結論、ケアマネジャーは地域包括支援センターなどで居宅介護支援事業所の候補を聞き、面談で担当人数や連絡方法を確かめて選びます。合わないと感じたら費用をかけずに変更でき、サービスを止めずに引き継げます。面談で聞くことと変更の手順を整理しました。 **本文**: # ケアマネジャーの選び方・探し方と変更方法──面談で聞くこと、「合わない」と感じたときの5つのサイン > **この記事の要点(3行)** > > - ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護1以上の人のケアプランを作る専門職。家族が居宅介護支援事業所を選んで契約すると、その事業所の担当者が決まる。利用者の自己負担はない > - 「話を聞いてくれない」「連絡がつかない」など、変更を考えてよい5つのサインを整理。**費用はかからず、いつでも変更できる** > - 選ぶときは、面談で「担当している人数」「連絡の方法と時間帯」「医療職との連携」を聞く。事業所は契約前に、ケアプランに入れるサービス事業所を複数紹介するよう求められることを説明する決まりがある 「担当のケアマネジャーさんに、家の事情をあまり聞いてもらえている気がしない」 「電話してもなかなか折り返しがなくて、施設探しが進まない」 「そもそも、ケアマネジャーって何をしてくれる人なのか、よくわからないまま契約してしまった」 ——ケアマネジャーとの関係で、こうした戸惑いを感じることがあります。ケアマネジャーは介護保険サービスの入り口に立つ専門職ですが、どう決まるのか、何を見て選べばよいのか、合わないときにどうすればよいのかは、契約のときに詳しく説明されないこともあります。 この記事では、ケアマネジャーの役割、決まり方と探し方、面談で確認すること、変更を考えてよいサイン、変更の手順を、介護保険の運営基準(厚生労働省令)にもとづいて整理します。 > この記事でわかること > - ケアマネジャーが実際に何をしてくれる専門職なのか > - ケアマネジャーはどうやって決まり、どこで探すのか > - 依頼先を選ぶときに、面談で聞いておきたいこと > - 「変更してもいい」と判断できる5つのサイン > - 実際に変更する4つのステップと、かかる費用 > - 遠方に住むご家族が気をつけたいこと --- ## ケアマネジャーとは?何をしてくれる専門職なの? **ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護1以上の認定を受けた方のケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、サービス事業者との調整や見直しを行う専門職です。依頼にかかる費用は原則として無料です。** 要介護認定を受けたあと、実際に介護保険サービスを使うためには「どのサービスを」「どれくらいの頻度で」「どの事業所から」利用するかを決めた計画書(ケアプラン)が必要です。このケアプランを、ご本人やご家族の希望・心身の状態をふまえて作成するのがケアマネジャーの役割です。 ケアマネジャーが所属するのは「居宅介護支援事業所」という事業所で、主な仕事は次のように整理できます。 | 業務 | 内容 | | --- | --- | | アセスメント | ご本人の心身の状態、生活環境、希望を聞き取る | | ケアプラン作成 | 利用するサービスの種類・頻度・事業所を計画書にまとめる | | サービス事業者との調整 | デイサービスや訪問介護の事業所と日程・内容を調整する | | モニタリング | 月1回程度の訪問で、サービスが合っているか確認する | | 給付管理 | 利用したサービスの費用を市区町村に請求する事務処理 | | 各種相談 | 介護保険以外の制度(医療・福祉・成年後見など)についての相談窓口 | ケアプラン作成にかかる費用は、**利用者の自己負担がありません**。居宅介護支援費として介護保険から全額が支払われるためです。「相性が合わないから他を探したい」と思ったときも、費用を理由にためらう必要はありません。ケアプランの有料化は国の審議会で繰り返し議論されてきましたが、その経緯は[2027年度の介護保険改正で何が変わる?──2割負担の対象拡大は「先送り」、ケアプラン有料化の議論を家族向けに整理](/columns/kaigo-hoken-2027-reform-family-guide)で整理しています。 なお、要支援1・2の方の場合は、居宅介護支援事業所ではなく**地域包括支援センター**が担当窓口になります(一部業務を居宅介護支援事業所に委託している場合もあります)。要介護認定の基本的な流れは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しています。 --- ## ケアマネジャーはどうやって決まる?どこで探す? **本人や家族が居宅介護支援事業所を選んで契約すると、その事業所に所属するケアマネジャーが担当になります。事業所の候補は、地域包括支援センターや市区町村の窓口で一覧をもらって探すのが基本です。** ケアマネジャーは、市区町村が割り当てる人ではありません。介護保険では、ケアプランを作る事業所(居宅介護支援事業所)を利用者側が選んで契約します。事業所の中で誰が担当になるかは、事業所が人員や担当の状況を見て決めるのが一般的です。「看護師出身の人がいい」「男性・女性の希望がある」など、担当者についての希望があれば、契約前の面談で伝えて相談できます。 要介護認定の結果が届いたら、ケアプラン作成を依頼する居宅介護支援事業所を決める必要があります。探し方の主な入り口は次の3つです。 ### 探し方① 地域包括支援センターに相談する お住まいの地域を担当する地域包括支援センターには、地域内の居宅介護支援事業所の一覧(ハートページなどの冊子やリスト)が用意されています。**中立的な立場**から複数の候補を紹介してもらえるため、初めて探す方が相談しやすい入り口です。 ### 探し方② 入院先の病院・ケースワーカーから紹介を受ける 入院をきっかけに介護が必要になった場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)が退院支援の一環として、地域の居宅介護支援事業所を紹介してくれることがあります。退院までのスケジュールが決まっている場合は、この経路がスムーズです。 ### 探し方③ 市区町村の窓口で一覧をもらう 市区町村の介護保険担当窓口でも、管内の居宅介護支援事業所の一覧を配布しています。自宅から近い事業所や、特定の疾患(認知症など)に強い事業所を絞り込みたいときに確認するとよいでしょう。 いずれの入り口を使う場合も、**1つの窓口や1人の紹介者からの案内だけで決めず、できれば2〜3か所の情報を比べる**と、違いが見えやすくなります。 ![ケアマネジャーを探す3つの入り口(地域包括支援センター・入院先の医療ソーシャルワーカー・市区町村窓口)から、複数の候補事業所を比較して1つを選ぶまでの流れを示した図](/column-figures/care-manager-search-routes.svg) --- ## ケアマネジャーの選び方、依頼する事業所で何を確認すればいいの? **「話をよく聞いてくれるか」「連絡が取りやすいか」「地域のサービスに詳しいか」の3点は、実際に会って初めてわかることが多いため、契約前の面談で確かめます。** 複数の候補が挙がったら、実際に会って話す機会(初回相談・アセスメント面談)を通じて、次の5点を確認してください。 - [ ] **話を聞いてくれるか**:こちらの説明を遮らず、専門用語をかみ砕いて説明してくれるか - [ ] **本人の希望を尊重してくれるか**:ケアマネジャーの意見を押しつけず、ご本人が「どう暮らしたいか」を起点に提案してくれるか - [ ] **地域のサービス事業者に詳しいか**:地域密着型サービスや、希望する曜日・時間帯に対応できる事業所を具体的に提案できるか - [ ] **連絡が取りやすいか**:電話や訪問の頻度、緊急時の連絡方法について明確な説明があるか - [ ] **医療職との連携がとれているか**:持病がある場合、主治医や訪問看護との調整実績があるか 面談では、次のように具体的に聞くと、答えを比べやすくなります。 | 聞くこと | 聞き方の例 | 答えから分かること | | --- | --- | --- | | 担当している人数 | 「担当している利用者さんは今、何人くらいですか」 | 1人あたりにかけられる時間の目安 | | 連絡の方法と時間帯 | 「平日の夕方や土日に連絡したいときは、どうすればいいですか」 | 急ぎのときにつながるか | | もともとの職種 | 「ケアマネジャーになる前は、どんなお仕事をされていましたか」 | 看護・介護・相談支援など、得意な分野の手がかり | | 医療との連携 | 「入院したときや退院のときは、病院とどうやり取りしますか」 | 主治医や病院との調整に慣れているか | | 事業所の体制 | 「担当の方が休みのときは、誰が対応しますか」 | 一人に頼らず事業所全体で対応する体制か | 担当人数には国の基準があります。居宅介護支援事業所は、利用者**44人**ごとに1人のケアマネジャーを置くことが定められています(国の情報連携システムを使い、事務職員を置いている事業所では49人ごと)。あくまで事業所全体の人員の基準ですが、聞いた人数がこれより大きく多いときは、連絡の取りやすさを確かめる手がかりになります。また、事業所の管理者は原則として、経験を積んだ**主任介護支援専門員**でなければならないとされています([e-Gov法令検索 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第2条・第3条](https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038))。 契約のときには**重要事項説明書**という書類の説明を受けます。国の基準(同基準第4条)では、事業所は契約の前に次のことを説明するよう定められています。 - ケアプランは、本人の希望にもとづいて作るものであること - 利用者は、ケアプランに入れるデイサービスや訪問介護などの事業所を、**複数紹介するよう求めることができる**こと(説明は義務) - その事業所が直近6か月に作ったケアプランで、訪問介護・通所介護・福祉用具貸与などがどのくらいの割合で入っているか、同じ事業者のサービスがどのくらいの割合を占めるか(説明は努力義務) 提案されたサービス事業所が1か所だけで迷うときは、「ほかの事業所も教えてください」と頼んでかまいません。 「初回の面談で、なんとなく話しやすいと感じたかどうか」——実務的なチェック項目に加えて、この直感も大切にしてください。ケアマネジャーとは今後、月に1回以上、長期にわたって関わることになる相手だからです。 --- ## ケアマネジャーが合わないと感じたら?変更を考えていいサイン **「話を最後まで聞いてくれない」「連絡が数日つかない」「希望と違うサービスばかり勧められる」など、5つのサインのうち複数が当てはまるなら、ケアマネジャーの変更を検討する時期かもしれません。** 「担当のケアマネジャーが合わない」と感じても、それが変更を考えていいレベルの問題なのか、単なる一時的なすれ違いなのか、判断に迷う方は多いはずです。ここでは、ケアマネジャー変更を検討していい目安を具体的に整理します。 ![ケアマネジャーの変更を考えていい5つのサイン(話を最後まで聞かない・連絡がつきにくい・希望と違う提案ばかり・医療職との連携が薄い・説明が不十分)を示すチェックリスト図解](/column-figures/care-manager-selection-and-change-signs.svg) 一度契約すると「もう変えられないもの」と思われがちですが、ケアマネジャーの事業所は利用者の側から変更できます。変更を考える目安となる5つのサインを整理しました。 | サイン | 具体例 | | --- | --- | | ① 話を最後まで聞いてくれない | こちらが話している途中で遮られる、要望を伝えても記録に残らない | | ② 連絡がつきにくい | 電話や訪問の約束が守られない、折り返しに数日かかる | | ③ 希望と違う提案ばかりされる | 本人・家族の意向より、事業所側の都合が優先されている印象がある | | ④ 医療職との連携が薄い | 主治医の指示や入院時の情報が、ケアプランに反映されていない | | ⑤ 説明が不十分 | 費用や制度変更について聞いても曖昧な返答しかない | これらのサインが1つあったからといって、すぐに変更すべきというわけではありません。ただし、**複数のサインが重なり、話し合っても改善しない場合**は、変更を検討してよい段階です。 > **遠慮して言い出せないときは** > 「担当を変えたら角が立つのでは」とためらう気持ちは自然です。事業所の変更は、介護保険の利用者に認められている手続きです。直接言いにくい場合は、先に地域包括支援センターに相談し、進め方を一緒に考えてもらうこともできます。 一方で、サービスの回数を減らしたいと言ったら断られた、**区分支給限度基準額を超える提案をされた**といった場合は、変更以前に、ケアマネジャーが制度の基準に沿って正しい説明をしている可能性もあります。区分支給限度基準額の考え方は[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しているので、あわせて確認すると判断しやすくなります。施設入所を検討していて費用面の説明が曖昧だと感じる場合は、[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で制度の基礎を押さえておくと、ケアマネジャーへの質問も具体的にしやすくなります。 --- ## 実際にケアマネジャーを変更するには、どうすればいいの? **まず今の事業所に契約解除の意思を伝え、地域包括支援センターなどで新しい事業所を探します。費用はかからず、引き継ぎの日程を合わせればサービスを途切れさせずに移れます。** ケアマネジャーの変更を決めたら、次の4ステップで進めます。 ### ステップ1:現在の居宅介護支援事業所に契約解除を伝える 契約書・重要事項説明書に解除の手続きが記載されています。多くの事業所では、電話や書面での申し出で足ります。理由を詳しく説明する義務はありませんが、「対応が難しいと感じている」程度は伝えておくと、記録の引き継ぎがスムーズになることがあります。 ### ステップ2:地域包括支援センターに新しい候補を紹介してもらう 最初に探したときと同じように、地域包括支援センターに相談し、新しい居宅介護支援事業所を紹介してもらいます。「前の事業所とは違うタイプを希望している」といった要望も伝えて構いません。 ### ステップ3:新しい事業所と契約し、ケアプランを引き継ぐ 新しいケアマネジャーが決まったら、現在のケアプランや心身の状態に関する情報を引き継ぎます。市区町村への「居宅介護支援事業所(変更)届」の提出が必要になる場合がありますが、これは通常、新しい事業所側が手続きしてくれます。 ### ステップ4:サービス事業者にも変更を伝える デイサービスや訪問介護など、すでに利用しているサービス事業者にも担当ケアマネジャーが変わったことを伝えます。新しい事業所との契約日と、今の事業所との契約の終了日をそろえておくと、サービスの空白ができにくくなります。日程は両方の事業所と相談して決めます。 ![ケアマネジャー変更の4ステップ(契約解除の申し出、地域包括支援センターへの相談、新事業所との契約とケアプラン引き継ぎ、サービス事業者への連絡)を示したフロー図](/column-figures/care-manager-change-flow.svg) 変更にかかる費用は、依頼と同様に**発生しません**。ケアプラン作成費が全額介護保険からまかなわれる仕組みは、変更後の事業所でも変わらないためです。 --- ## 遠方に住むご家族が気をつけたいこと **同居していない場合は、電話やメールでの報告頻度と、緊急時の連絡順序をあらかじめ取り決めておくと、離れていても状況を把握しやすくなります。** 離れて暮らすご家族にとって、ケアマネジャーは現地の状況を知る最も身近な情報源になります。契約時に次の点を確認しておくと、遠方からでも状況をつかみやすくなります。 - **月1回のモニタリング報告を、電話・メールのどちらで受け取れるか** - **体調急変時に、誰に・どの順番で連絡が入るか**(本人→ケアマネジャー→遠方の家族、など) - **オンライン面談(ビデオ通話)に対応しているか** すべての事業所がオンライン対応をしているわけではありませんが、対応可能な場合は、帰省のタイミングに合わせず定期的に状況を確認できるようになります。遠距離での介護に不安がある場合は、[仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つために](/columns/work-care-balance)もあわせてご覧ください。 --- ## まとめ:ケアマネジャーは「変えていい」関係 - ケアマネジャーは、家族が選んだ居宅介護支援事業所の担当者が務める。依頼にも変更にも、利用者の費用はかからない - 選ぶときは、面談で担当人数・連絡方法・医療との連携を聞いて、2〜3か所を比べる - 5つのサインが重なり、話し合っても変わらないときは、契約の終了日と開始日をそろえて事業所を変更する ケアマネジャーは、介護保険サービスを利用するうえで最も長く付き合うことになる専門職です。だからこそ「今の担当者が合っているかどうか」を、ときどき振り返ってみる価値があります。 介護の悩みは、制度の話だけでは片づかないことも多くあります。日々の不安に押しつぶされそうなときは、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)もあわせてご覧ください。 ### 今日、ひとつだけできること 次にケアマネジャーと話す機会があったら、**今月のモニタリングで「困っていること」を1つだけ具体的に伝えてみてください**。「なんとなく合わない気がする」より、「連絡がつきにくくて不安だった」のように具体的に伝えるほうが、関係が改善するきっかけになりやすいものです。 それでも状況が変わらないと感じたときは、ひとりで抱え込まず、同じ立場のご家族の経験を聞いてみるのもひとつの方法です。介護そっとねっとのアプリでは、介護に向き合うご家族どうしが匿名でやりとりできます。「ケアマネジャーを変えて楽になった」といった、生活に近い体験が集まる場所です。よければのぞいてみてください。 --- ## よくある質問 ### Q. ケアマネジャーを変更すると、今のサービスは使えなくなりますか? いいえ、使えなくなることはありません。ケアプランの引き継ぎと事業者への連絡が済めば、デイサービスや訪問介護などの利用は継続されます。変更の手続き自体でサービスが中断することは基本的にありません。 ### Q. ケアマネジャーへの依頼や変更に費用はかかりますか? かかりません。ケアプラン作成にかかる居宅介護支援費は全額が介護保険から給付されており、利用者の自己負担はありません。これは変更後の新しい事業所でも同じです。 ### Q. 要支援1・2の場合もケアマネジャーに依頼できますか? はい。ただし窓口は居宅介護支援事業所ではなく、原則として地域包括支援センターになります。一部の業務を居宅介護支援事業所に委託しているセンターもあります。 ### Q. 1か所しか紹介されなかったのですが、それでいいですか? ケアマネジャーの事業所(居宅介護支援事業所)を選ぶ段階なら、地域包括支援センターや市区町村の窓口で一覧をもらい、2〜3か所を比べることができます。契約後、ケアプランに入れるデイサービスなどの事業所については、利用者は複数の事業所を紹介するよう求めることができ、ケアマネジャーの事業所は契約の前にこのことを説明しなければならないと国の基準で定められています。 ### Q. 変更を伝えると、今の担当者との関係が気まずくならないか心配です。 担当の変更は、介護保険の利用者に認められている手続きです。理由を詳しく説明する決まりはないため、「対応が難しいと感じている」程度の伝え方でかまいません。言い出しにくい場合は、地域包括支援センターに相談してから進めることもできます。 ### Q. 遠方に住んでいても、ケアマネジャーとやり取りできますか? 電話・メールでの定期報告や、事業所によってはオンライン面談に対応しています。契約前に、モニタリング報告の方法や緊急時の連絡順序を確認しておくと、離れていても状況を把握しやすくなります。 --- ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に関するアドバイスは専門家にご相談ください。 ## 参考にした公式情報 - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [e-Gov 法令検索 - 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(第2条 従業者の員数、第3条 管理者、第4条 内容及び手続の説明及び同意)](https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038)(確認日:2026年10月6日) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) ※事業所ごとの運営方針や担当件数、報酬改定の詳細は変更される場合があります。実際の依頼・変更にあたっては、お住まいの地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当窓口に必ずご確認ください。 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護保険の住宅改修は20万円まで、自己負担は2万〜6万円──手すり・段差解消の対象工事と着工前の申請 - **slug**: jutaku-kaishu-20man-guide - **公開日**: 2026.7.28 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/jutaku-kaishu-20man-guide **要約**: 結論、介護保険の住宅改修は要介護度に関係なく生涯20万円まで使え、自己負担は1〜3割(20万円の工事で2万〜6万円)です。対象は手すり・段差解消など6種類。着工前に申請しないと支給されない点と、枠をもう一度使える2つの条件を解説します。 **本文**: # 介護保険の住宅改修は20万円まで、自己負担は2万〜6万円──手すり・段差解消の対象工事と着工前の申請 > **この記事の要点(3行)** > > - 介護保険の住宅改修は、要介護度に関係なく生涯20万円が上限。1〜3割負担なので、20万円の工事なら自己負担は2万〜6万円で収まる > - 対象は「手すりの取付け」「段差の解消」など6種類に限定され、**工事の着工前に市区町村へ事前申請しないと1円も給付されない** > - 要介護度が3段階以上上がったとき、または転居したときは、もう一度20万円の枠を使える 「玄関の上がり框(あがりかまち)でつまずいて、父が転びそうになった」 「トイレに手すりをつけたいけれど、リフォームって何十万円もかかるのでは」 「業者さんに『介護保険が使えますよ』と言われたけど、本当なのか分からない」 ——在宅での介護がはじまったご家族から、住まいの段差や手すりについてこうしたご相談をよくいただきます。実は、介護保険には**住まいの小さな工事に使える「住宅改修費」という給付**があります。要介護度に関係なく20万円までが対象で、1割負担の方なら自己負担は2万円。手すり1本なら数千円の負担で取り付けられることも珍しくありません。 この記事では、対象になる工事とならない工事、費用の目安、申請の流れ、そして「知らずに損をした」という失敗例まで、厚生労働省や市区町村の公式情報をもとにやさしく整理します。 > この記事でわかること > - 介護保険の住宅改修で対象になる6種類の工事 > - 20万円という上限のしくみと、自己負担がいくらになるか > - ケアマネジャーへの相談から工事完了までの流れ > - 20万円の枠がもう一度使えるようになる2つの条件 > - よくある失敗と、その回避のしかた ただし、この制度には**ひとつだけ絶対に外せない手順**があります。ここを踏み外すと、どんなに適切な工事でも給付がゼロになってしまいます。記事の後半「申請の流れ」でくわしくお伝えします。 --- ## 介護保険の住宅改修とは?いくらまで使えるの? **要介護1〜5、要支援1・2の認定を受けていれば、住まいの改修工事に生涯20万円まで介護保険が使えます。自己負担は所得に応じて1〜3割なので、20万円の工事なら2万〜6万円の負担で済みます。** 介護保険というと「ヘルパーさんに来てもらう」「デイサービスに通う」といった人的なサービスを思い浮かべる方が多いのですが、**住まいそのものを安全にするための工事にも給付があります**。これが「居宅介護住宅改修費」(要支援の方は「介護予防住宅改修費」)です。 しくみはシンプルです。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 支給限度基準額 | 20万円(要介護度による差はなし) | | 自己負担 | 所得に応じて1割・2割・3割 | | 実際に給付される額 | 1割負担なら最大18万円/2割なら16万円/3割なら14万円 | | 使える回数 | 原則として生涯1回(20万円に達するまで分割利用可) | | 対象になる住まい | 被保険者証に記載された住所の住宅 | ここで押さえておきたいのが、**20万円を一度に使い切る必要はない**という点です。たとえば最初にトイレの手すりを5万円分つけて、半年後に玄関のスロープを8万円分、その次に浴室の段差解消を7万円分——という具合に、20万円に達するまで何回かに分けて使えます。市区町村への申請はそのつど必要ですが、「一度使ったら終わり」ではありません。 もうひとつ大切なのは、**同じ家に要介護認定を受けた方が2人いれば、それぞれに20万円の枠がある**ということです。ご両親を同時に介護されているご家庭では、合計40万円まで使えることになります。 > **こんなご家庭が当てはまります** > 「要支援1だから、たいしたサービスは使えないと思っていた」という方も対象です。住宅改修は要支援の方も同額の20万円が使えます。むしろ**転倒を防いで要介護状態になるのを遅らせる**という意味では、軽度のうちに整えるほうが効果的です。 --- ## どんな工事が対象になるの?対象外のものは? **対象は「手すりの取付け」「段差の解消」など厚生労働省が定めた6種類だけです。動力を使う昇降機や、洗浄機能を後付けする便座交換などは対象外になります。** 厚生労働省が定める住宅改修の対象は、次の6種類です。江東区や八王子市など各自治体の案内でも同じ内容が示されています。 ### 対象になる6種類の工事 **① 手すりの取付け** 廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動の補助のために取り付ける手すりです。横手すり・縦手すり・L字型など、壁にビスで固定するタイプが対象になります。 **② 段差の解消** 玄関の上がり框、廊下と居室のあいだの敷居、浴室の出入口といった段差を、すりつけ板や小さなスロープ、式台などで解消する工事です。浴室の床のかさ上げも含まれます。 **③ 滑りの防止・移動の円滑化のための床材の変更** 浴室の床を滑りにくいタイルに張り替える、居室の畳をフローリングやビニル系床材に変更する、といった工事です。 **④ 引き戸等への扉の取替え** 開き戸を引き戸や折れ戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える工事です。車いすでの出入りがしやすくなります。扉そのものの交換だけでなく、ドアノブの変更や戸車の設置も含まれます。 **⑤ 洋式便器等への便器の取替え** 和式便器を洋式便器に取り替える工事です。便器の位置や向きを変える工事も対象になります。 **⑥ ①〜⑤に付帯して必要となる工事** たとえば手すりを取り付けるために壁を補強する、段差解消のために床の下地を調整する、といった付随工事です。 下の図に、6種類の対象工事と、よく間違われる対象外の工事をまとめました。 ![介護保険の住宅改修で対象になる6種類の工事(手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、付帯工事)と、対象外になる工事(動力式の昇降機・段差解消機、既存の洋式便器への洗浄機能追加、老朽化に伴う修繕、新築・増築)を対比した図](/column-figures/jutaku-kaishu-20man-target-works.svg) ### 「これは対象外です」と言われがちな工事 ご家族から「よかれと思って進めたら対象外だった」というお話をうかがうのは、次のようなケースです。 - **動力で動く昇降機・段差解消機・階段昇降機の設置**:電動で床の段差を解消する機器は、住宅改修ではなく別の扱いになります(移動用リフトは福祉用具貸与の対象です) - **すでに洋式の便器に、洗浄機能や暖房機能を後付けする工事**:和式から洋式への取り替えは対象ですが、洋式から高機能な洋式への交換は対象になりません。ただし和式から洋式に替える際に、洗浄・暖房機能付きの便器を選ぶことは可能です - **老朽化にともなう修繕**:雨漏りの修理や外壁の塗り替えなど、介護のためではない工事は対象外です - **新築・増築にともなう改修**:新しく建てる、部屋を増やす、といった工事は対象になりません - **工事をともなわない置き型の手すりやスロープ**:床に置くだけのものは「福祉用具貸与」の対象で、住宅改修ではありません 最後の項目は、ご家族が特に混乱されやすいところです。壁にビスで固定する手すりは **住宅改修(20万円の枠)** 、床に置くだけの手すりは **福祉用具レンタル(月額の枠)** と、財布が別に分かれていると考えてください。どちらを選ぶかは、住まいの構造やご本人の状態によって変わります。福祉用具のレンタルと購入の使い分けについては、[介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase)でくわしく説明しています。 ご自宅を思い浮かべて「玄関」「廊下」「トイレ」「浴室」の4か所のうち、いま一番ヒヤリとする場所はどこでしょうか。多くのご家庭で最初の一手になるのは、この4か所のいずれかです。 --- ## 費用はいくらかかる?自己負担の目安 **手すり1本なら1割負担で数千円、玄関スロープや浴室の段差解消でも1万円台に収まることが多く、20万円の枠をフルに使っても自己負担は2万〜6万円です。** 住宅改修の工事費は地域や住まいの構造によって幅がありますが、目安としては次のような水準です。 | 工事内容 | 工事費の目安 | 自己負担(1割の場合) | | --- | --- | --- | | トイレの手すり1本 | 2万〜4万円程度 | 2,000〜4,000円程度 | | 浴室の手すり(複数本) | 4万〜8万円程度 | 4,000〜8,000円程度 | | 玄関の段差解消(式台・すりつけ板) | 3万〜10万円程度 | 3,000〜1万円程度 | | 浴室の床材変更(滑り止め) | 8万〜15万円程度 | 8,000〜1万5,000円程度 | | 引き戸への扉の取替え | 8万〜20万円程度 | 8,000〜2万円程度 | | 和式から洋式への便器交換 | 15万〜30万円程度 | 1万5,000円〜(20万円超は超過分が全額自己負担) | ※工事費は住宅の構造・地域・業者によって変動します。必ず複数の見積もりで確認してください。 ここで注意していただきたいのが、**20万円を超えた分は全額自己負担になる**という点です。たとえば30万円の工事をした場合、20万円までは1割負担(2万円)で済みますが、残りの10万円は満額の自己負担となり、合計12万円をお支払いいただくことになります。 そのため、**「今すぐ必要なところ」と「将来必要になりそうなところ」を分けて考える**のが賢い使い方です。20万円の枠は分割して使えるので、まずは転倒リスクの高い場所だけを整えて、状態が変わったときのために枠を残しておくという判断もできます。 なお、市区町村によっては介護保険とは別に、**独自の住宅改修助成制度**を持っているところがあります。介護保険の20万円に上乗せして使えるケースもあるので、お住まいの自治体の高齢福祉担当窓口や地域包括支援センターに一度確認してみてください。 --- ## 申請から工事完了まで、どんな流れになる? **必ず「工事の前」に市区町村へ事前申請し、確認を受けてから着工します。着工後に申請しても給付は受けられません。ここが住宅改修で最も多い失敗です。** 記事の前半で「絶対に外せない手順がある」とお伝えしましたが、それが**この事前申請**です。江東区の案内では「事前申請確認書発行前に工事がなされた場合、その工事は支給対象外となります」、八王子市でも「着工後の申請は制度の対象となりません」と、はっきり書かれています。 「業者さんが良い人だったので、その場でお願いしてしまった」——これで20万円の給付が丸ごと受けられなくなった、というご相談は決して珍しくありません。**どんなに急いでいても、着工前に申請する**。これだけは守ってください。 流れは次のようになります。 ![介護保険住宅改修の申請から支給までの5ステップ。ケアマネジャーへの相談、施工業者の選定と見積もり、市区町村への事前申請と確認書の受け取り、工事の実施と支払い、完了後の事後申請と支給までの流れを、事前申請が着工前に必要であることを強調して示した図](/column-figures/jutaku-kaishu-20man-flow.svg) ### ステップ1:ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談する まずは担当のケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に「手すりをつけたい」「玄関の段差が心配だ」と伝えてください。 住宅改修の申請には「**住宅改修が必要な理由書**」という書類が必須で、これはケアマネジャー、地域包括支援センター職員、作業療法士、保健師、福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を持つ方でなければ作成できません。ご家族が自分で書くことはできないので、必ずここが出発点になります。 まだケアマネジャーが決まっていない、そもそも要介護認定を受けていないという場合は、まず認定の申請からになります。手順は[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用まで](/columns/nursing-insurance-basics)をご覧ください。 ### ステップ2:施工業者を選び、見積もりを取る 住宅改修は指定事業者制ではないため、**どの工務店・リフォーム業者に頼んでも構いません**。ただし介護保険の書類作成に慣れているかどうかで手間が大きく変わります。ケアマネジャーに何社か紹介してもらい、**必ず2社以上から見積もりを取る**のがおすすめです。 見積書は工事の内訳(材料費・施工費)が分かれているものをもらってください。「一式 15万円」としか書かれていない見積書は、市区町村の審査で追加資料を求められることがあります。 ### ステップ3:市区町村に事前申請する 必要書類をそろえて、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に提出します。一般的な提出書類は次のとおりです(自治体により多少異なります)。 - 支給申請書 - 住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャー等が作成) - 工事費見積書(内訳がわかるもの) - 改修前の状況がわかる写真(日付入り) - 図面(改修箇所がわかるもの) - 住宅所有者の承諾書(賃貸住宅や、ご本人以外の名義の場合) 賃貸住宅にお住まいの場合は、**大家さんや管理会社の承諾書が必須**です。ここで時間がかかることが多いので、早めに相談しておくと安心です。 ### ステップ4:確認書を受け取ってから着工する 市区町村から「事前申請確認書」などの書類が届いたら、そこではじめて工事に着手できます。審査には**おおむね1〜2週間**かかるのが一般的です(自治体により異なります)。 ### ステップ5:工事完了後に事後申請する 工事が終わったら、完成後の写真・領収書・工事内訳書などを添えて事後申請します。支給の方法は2種類あります。 - **償還払い**:いったん工事費の全額を業者に支払い、後日、保険給付分(工事費の7〜9割)が口座に振り込まれる方式 - **受領委任払い**:はじめから自己負担分(1〜3割)だけを業者に支払い、残りは市区町村が業者に直接支払う方式 一時的にでも全額を用意するのが難しい場合は、**受領委任払いに対応している業者かどうか**を契約前に確認してください。すべての業者が対応しているわけではありません。 工事の相談から給付まで、全体では**1か月〜1か月半**を見ておくと余裕があります。「退院までに手すりをつけたい」という場合は、退院日が決まったらすぐ動き出すのが安心です。 --- ## 20万円をもう一度使えることがあるって本当? **本当です。要介護度が3段階以上上がったとき、または引っ越したときは、あらためて20万円の枠が使えます。** 「生涯1回きり」と言われると、使うタイミングに悩んでしまいますが、実は例外が2つあります。厚生労働省の通知(老企第42号)にも明記されている取り扱いです。 ### リセット条件① 要介護状態区分が3段階以上上がったとき 介護の必要度の段階は、要支援1・要支援2・要介護1〜5の順に上がっていきます。厚生労働省の定めた区分では、これを「第1段階〜第6段階」として整理し、**最初に住宅改修をしたときの段階から3段階以上重くなった場合**に、もう一度20万円までの枠が使えます。 たとえば要介護1のときに20万円を使い切っていたとしても、その後に要介護4になれば、あらためて20万円分の改修ができます。状態が変われば必要な工事も変わるためです。ただし、この取り扱いは**1回限り**とされています。 ### リセット条件② 転居したとき 住宅改修は「その住まい」に対する給付なので、**引っ越して住所が変わった場合は、新しい住まいで改めて20万円の枠が使えます**。同居のためにお子さんの家に移った、施設から自宅に戻った、といったケースが該当します。 このリセット条件を知らずに「もう使ってしまったから」とあきらめてしまうご家族が少なくありません。**状態が変わったとき・引っ越したときは、必ずケアマネジャーに枠が復活していないか確認**してください。なお、要介護状態区分が3段階以上重くなったかどうかは、更新申請の結果を待たなくても[区分変更申請](/columns/kubun-henkou-shinsei-family-guide)によって有効期間の途中で見直すことができます。住宅改修の枠を早めに復活させたい場合は、区分変更申請とあわせてケアマネジャーに相談すると話が早く進みます。 --- ## よくある失敗と、その回避のしかた **最も多いのは「事前申請前に着工してしまった」ケース。次に多いのが「業者の言うままに不要な工事まで契約してしまった」ケースです。** 実際にご家族から聞くつまずきを、回避策とあわせて整理します。 | よくある失敗 | 何が起きるか | 回避のしかた | | --- | --- | --- | | 事前申請の前に工事してしまった | 給付が一切受けられない | 契約前に必ずケアマネジャーに相談する | | 対象外の工事を含めて契約した | 対象外部分は全額自己負担 | 見積書を事前にケアマネジャーに見てもらう | | 20万円を1回で使い切ってしまった | 状態が変わっても追加できない | 「今すぐ必要な場所」に絞る | | 賃貸で大家さんの承諾を取っていなかった | 申請が受理されない/原状回復を求められる | 相談の初期段階で管理会社に連絡する | | 訪問業者の「今日だけ」に応じてしまった | 割高な工事、不要な工事 | その場で契約しない。必ず持ち帰る | | ご本人の意向を確認しないまま進めた | 使われない設備になる | 実際に動作を再現して位置を決める | ### 特に気をつけたい「訪問業者」への対応 「介護保険で無料になります」「今日契約すれば特別価格」といった営業を受けたというお話をうかがうことがあります。まず前提として、**介護保険の住宅改修が「無料」になることはありません**。必ず1〜3割の自己負担が発生します。 そして、住宅改修は**急いで決めなければならない工事ではありません**。訪問された業者から即決を求められた場合は、「ケアマネジャーに相談してから」とお伝えして、その場では契約しないでください。誠実な業者であれば、必ず待ってくれます。 ### 手すりの位置は「実際に動いてもらって」決める 意外と多いのが、「つけたけれど使っていない」という失敗です。手すりの高さや位置は、ご本人の身長・利き手・つかまり方によって最適な場所が変わります。 見積もりの前に、**実際にご本人にその場所を歩いてもらい、どこに手をつくかを見る**のがいちばん確実です。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、作業療法士が立ち会って位置を決めてくれることもあります。「なんとなくこのへん」で決めないことが、使われる手すりへの近道です。 在宅介護をこれから始めるにあたって整えておきたいことは、[在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト](/columns/home-care-preparation)でも整理しています。 --- ## まとめ:住まいを整えることは、介護する側の負担も減らす この記事で持ち帰っていただけることを、3つに整理します。 - **自分の家のどこに手すりや段差解消が必要かを、6種類の対象工事に照らして判断できる**ようになりました - **20万円の枠をどう配分するか(今すぐ使うか、将来のために残すか)を自分で決められる**ようになりました - **事前申請を飛ばすと給付がゼロになるという最大の落とし穴を避けられる**ようになりました 住宅改修は、ご本人の転倒を防ぐだけの制度ではありません。**手すりが1本あることで、いままで介助が必要だった移動をご本人が自分でできるようになる**。それは介護されるご家族の負担が減るということでもあります。「立たせる」「支える」の回数が1日に何度も減れば、腰も気持ちもずいぶん違ってきます。 介護の負担が重くなってきたと感じている方は、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)もあわせてご覧ください。 ### 今日、ひとつだけできること 今週末にでも、ご実家やご自宅の**玄関からトイレまでを、ご本人と一緒にゆっくり歩いてみてください**。どこで壁に手をつくか、どこで足を止めるか。それを1か所メモしておくだけで、ケアマネジャーへの相談がぐっと具体的になります。工事の話はそのあとで大丈夫です。 「うちの場合はどうなんだろう」と迷ったときは、ひとりで抱え込まずに、同じ立場のご家族に聞いてみるのもひとつの方法です。介護そっとねっとのアプリでは、介護に向き合うご家族どうしが匿名でやりとりできます。「玄関に手すりをつけたら楽になった」といった、生活に近い工夫が集まる場所です。よければのぞいてみてください。 --- ## よくある質問 ### Q. 介護保険の住宅改修は、要支援でも使えますか? はい、使えます。要支援1・2の方は「介護予防住宅改修費」という名称になりますが、支給限度基準額は要介護の方と同じ20万円です。要介護度による金額の差はありません。むしろ軽度のうちに転倒予防の改修をしておくほうが、状態の悪化を防ぐ意味では効果的です。 ### Q. 賃貸住宅でも住宅改修は使えますか? 使えます。ただし住宅の所有者(大家さん・管理会社)の承諾書が必要です。申請時の提出書類に含まれるため、工事の相談を始めた段階で早めに連絡しておくとスムーズです。原状回復の取り扱いについても、あわせて確認しておくと安心です。 ### Q. 工事を先に済ませてから申請してもいいですか? いいえ、できません。介護保険の住宅改修は**着工前の事前申請が必須**で、市区町村から確認書が発行される前に工事を行うと、その工事は支給対象外になります。急ぐ事情があっても、必ず事前申請を済ませてから着工してください。 ### Q. 20万円を使い切ったら、もう二度と使えないのですか? そうとは限りません。要介護状態区分が最初の改修時から3段階以上重くなった場合(1回限り)、または転居して住所が変わった場合は、あらためて20万円までの枠が使えます。状態が変わったときは、ケアマネジャーに枠が復活していないか確認してください。 ### Q. 置き型の手すりやスロープも住宅改修の対象になりますか? いいえ、工事をともなわない置き型のものは住宅改修ではなく「福祉用具貸与(レンタル)」の対象です。壁にビスで固定する手すりは住宅改修(20万円の枠)、床に置くだけの手すりは福祉用具レンタル(月額の枠)と、制度の枠が分かれています。どちらが適しているかはケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。 ### Q. 費用はいったん全額払わないといけませんか? 支給の方法は2種類あります。「償還払い」はいったん全額を業者に支払い、後日、保険給付分が振り込まれる方式です。「受領委任払い」は自己負担分(1〜3割)だけを業者に支払えばよい方式で、こちらなら一時的な立て替えが不要になります。ただし受領委任払いに対応していない業者もあるため、契約前に確認してください。 --- ## 参考にした公式情報 - [厚生労働省 - 居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について(老企第42号)](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4385&dataType=1&pageNo=1) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [江東区 - 介護保険住宅改修費の支給](https://www.city.koto.lg.jp/212106/fukushi/kaigohoken/kyufu/6537.html) - [八王子市 - 介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給制度](https://www.city.hachioji.tokyo.jp/life/003/001/007/002/p003820.html) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) ※対象工事の細部や提出書類、上乗せ助成の有無は市区町村によって異なります。実際の申請前に、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口またはケアマネジャーに必ずご確認ください。 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説 - **slug**: fukushiyougu-rental-vs-purchase - **公開日**: 2026.7.21 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase **要約**: 介護保険の福祉用具は、車いすや介護用ベッドなどはレンタル、腰掛便座や入浴補助用具などは購入が基本です。費用の目安、レンタルと購入を選べる選択制の4品目、2026年10月からの価格改定まで公式情報をもとにやさしく解説します。 **本文**: # 介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - 介護保険の福祉用具は「車いす・介護用ベッドなどはレンタル」「腰掛便座・入浴補助用具などは購入」が基本の考え方。レンタルは月々1〜3割負担、購入は年間10万円まで7〜9割が保険給付される > - 2024年度の制度改定で、固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖の4品目だけは「レンタルか購入か」を選べる選択制になった > - 2026年10月からは新商品65品目の貸与価格に「全国平均価格」と「上限価格」が公表され、事業者の言い値による割高なレンタルを避けやすくなる 「介護用ベッドって、買うものだと思っていました」 「車いすをレンタルするって、なんだか他人が使ったものみたいで気が引ける」 「福祉用具のカタログをもらったけど、どれが保険適用なのか分からない」 ——介護がはじまったばかりのご家族から、福祉用具についてこうした戸惑いの声をよく聞きます。実は、多くの福祉用具は「買う」のではなく「介護保険でレンタルする」ものです。購入が前提だと数万円〜数十万円かかる介護用ベッドや車いすも、レンタルなら月々数百円〜数千円の自己負担で使い始められます。 この記事では、レンタルと購入の使い分け、費用の目安、申し込みから利用開始までの流れ、そして2026年に予定されている制度の変化まで、公式情報をもとにやさしく整理します。 > この記事でわかること > - どの福祉用具がレンタルで、どれが購入なのか > - レンタル・購入それぞれの費用の目安と自己負担 > - 福祉用具専門相談員への相談から利用開始までの流れ > - 2026年10月に予定されている価格改定のポイント > - 選び方でよくある失敗と回避策 ただし、福祉用具にはひとつ注意点があります。「レンタルなら何でも自由に選べる」わけではなく、要介護度によって借りられる品目に制限があるケースもあります。詳しくは後半の「要支援・要介護度による制限」で説明します。 --- ## 福祉用具はレンタルと購入、どちらが基本? **多くの福祉用具は介護保険でレンタルでき、購入が必要なのは直接肌に触れる衛生用品だけです。まずレンタルで試すのが基本の考え方です。** 介護保険の福祉用具制度は、「レンタル(福祉用具貸与)」と「購入(特定福祉用具販売)」の2つの仕組みに分かれています。厚生労働省の整理では、レンタル対象は次の11種目です。 - 車いす(付属品を含む) - 特殊寝台(介護用ベッド、付属品を含む) - 床ずれ防止用具(体圧分散マットレスなど) - 体位変換器 - 手すり(工事を伴わないもの) - スロープ(工事を伴わないもの) - 歩行器 - 歩行補助つえ - 認知症老人徘徊感知機器 - 移動用リフト(つり具の部分を除く) - 自動排泄処理装置 これらは複数の人が繰り返し使うことを前提に、消毒・整備した状態で貸し出されるため、購入するより費用を抑えつつ、体格や状態の変化に応じて交換しやすいというメリットがあります。「他人が使ったものを使うのは気が引ける」と感じる方もいますが、レンタル事業者は用具ごとに洗浄・消毒・部品交換の基準を設けて管理しており、安全性が損なわれることはありません。 一方、直接肌に触れ、衛生上レンタルになじまない用品は「購入」となります。対象は次のとおりです。 - 腰掛便座(ポータブルトイレなど) - 自動排泄処理装置の交換可能部 - 排泄予測支援機器 - 入浴補助用具(シャワーチェア、浴槽用手すりなど) - 簡易浴槽 - 移動用リフトのつり具の部分 - 固定用スロープ・歩行器・歩行補助つえ(後述する「選択制」の対象品目のみ) 下の図に、レンタルと購入の判断の目安と、それぞれの自己負担のしくみをまとめました。 ![福祉用具のレンタルと購入の判断フロー。車いすや介護用ベッドなど肌に直接触れないものはレンタル、腰掛便座や入浴補助用具など肌に触れる衛生用品は購入となる仕組みと、それぞれの自己負担割合を示した図](/column-figures/fukushiyougu-rental-vs-purchase-flow.svg) --- ## レンタルと購入、費用の目安はいくら? **レンタルは福祉用具の種類や機能によって月額が異なり、自己負担は所得に応じて1〜3割。購入は年間10万円を上限に7〜9割が保険給付されます。** ### レンタルの費用感 レンタル価格は用具の種類・機能・地域によって幅がありますが、目安として次のような水準です(1割負担の場合の自己負担額)。 | 用具 | 月額の目安(1割負担) | | --- | --- | | 歩行補助つえ | 数百円程度 | | 歩行器 | 数百円〜1,500円程度 | | 手すり(工事不要) | 数百円〜1,000円程度 | | 車いす(標準型) | 500円〜1,500円程度 | | 特殊寝台(介護用ベッド)+付属品一式 | 1,000円〜3,000円程度 | | 床ずれ防止用具(体圧分散マットレス) | 500円〜1,500円程度 | 同じ「介護用ベッド」でも、背上げ機能・高さ調整・マットレスの仕様によって価格帯は変わります。2026年10月からは、新しく登場した商品について「全国平均貸与価格」と「上限価格」が公表される仕組みが始まるため、福祉用具専門相談員から金額の妥当性について説明を受けやすくなります(詳しくは後述)。 ### 購入の費用感 購入対象の福祉用具は、**要介護状態区分にかかわらず、1年間(4月から翌年3月まで)で10万円が支給限度基準額**です。消費税を含めた10万円までの費用について、自己負担割合(1割・2割・3割)に応じて7〜9割が保険給付されます。1割負担の方なら、実質9万円分まで保険でまかなえる計算です。 支給方法には、いったん全額を立て替えて後から払い戻される「償還払い」と、自己負担分だけを窓口で支払う「受領委任払い」の2通りがあります。市区町村によって対応が異なるため、購入前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認しておくと安心です。 --- ## 選択制って何?レンタルと購入を選べる品目がある **2024年度の制度改定で、固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点杖(松葉づえを除く)・多点杖の4品目だけは、レンタルと購入のどちらかを利用者が選べるようになりました。** もともとこの4品目はレンタルのみの対象でしたが、比較的購入価格が低く、長期間使う見込みがある方にとってはレンタルより購入の方が総額で安くなるケースがあることから、利用者負担の軽減と制度の持続可能性を両立する目的で選択制が導入されました。 選択制のポイントは次のとおりです。 - 対象は上記4品目のみ。車いすや介護用ベッドなど、他の品目は引き続きレンタルのみ(または購入のみ) - 「これから半年〜1年以上使う見込みがある」「体格や状態が大きく変化しにくい」場合は購入を検討する価値がある - 迷ったときは、まずレンタルで試してから購入に切り替えることもできる。福祉用具専門相談員に相談しながら決めるのが安心 「とりあえずレンタルで試して、合うようなら購入に切り替える」という順番で考えると失敗しにくいでしょう。 --- ## 福祉用具を使い始めるまでの流れは? **要介護(要支援)認定を受けたあと、ケアマネジャーに相談してケアプランに組み込み、福祉用具専門相談員と選定・試用を経てレンタルまたは購入に進みます。おおよそ1〜2週間が目安です。** 福祉用具を使い始めるまでの一般的な流れは次のとおりです。 1. **要介護(要支援)認定を受ける**:福祉用具貸与・購入は原則として要支援1〜要介護5の認定が必要です。認定を受けていない場合は、まず市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談します 2. **ケアマネジャーに相談する**:担当のケアマネジャーに、生活で困っていること(立ち上がりがつらい、歩行が不安定など)を伝えます。福祉用具の利用はケアプランに組み込む必要があります 3. **福祉用具専門相談員と選定・試用する**:レンタル事業者に所属する福祉用具専門相談員が、自宅の環境や身体状況に合わせて用具を提案します。実際に試用してから決められることが多く、この試用期間が「レンタルなら試せる」最大のメリットです 4. **福祉用具サービス計画の説明を受け、契約する**:選定した用具の機能・価格・利用目的を記載した計画書の説明を受けたうえで契約します。2026年10月からは、新商品について全国平均貸与価格の説明も受けられるようになります 5. **納品・調整・利用開始**:自宅に用具が届き、使い方の説明や高さなどの微調整を受けて利用開始です 初めての相談から利用開始まで、早ければ1週間、標準的には2週間程度を見込んでおくとよいでしょう。介護用ベッドなど在庫状況によっては、もう少し時間がかかることもあります。 --- ## 要支援・要介護度による制限はある? **要支援1・2、要介護1の方は、車いすや介護用ベッドなど一部の福祉用具が原則レンタル対象外です。ただし、医師の意見や状態によっては例外的に利用できる「例外給付」の仕組みがあります。** 福祉用具貸与は、要介護度が低い方ほど「本来必要とする状態ではない」とみなされ、対象品目が制限される設計になっています。具体的には、要支援1・2、要介護1の方が原則レンタルできないのは、車いす・特殊寝台(介護用ベッド)・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト・自動排泄処理装置です。手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえは、要介護度にかかわらずレンタルできます。 「今は要介護1だけど、状態が急に悪化して介護用ベッドが必要になった」というケースもあります。その場合は、主治医の医学的所見をもとに市区町村が個別に判断する「例外給付」という仕組みがあり、認められれば対象外の品目でもレンタルできます。まずは担当のケアマネジャーに相談してみてください。 --- ## 2026年10月からの価格改定で何が変わる? **新しく登場した福祉用具65品目について、厚生労働省が「全国平均貸与価格」と「上限価格」を公表し、2026年10月分のレンタルから適用されます。** 福祉用具のレンタル価格は、これまで事業者ごとの裁量に委ねられている部分が大きく、「同じ用具なのに事業者によって価格差が大きい」という課題が指摘されてきました。この課題に対応するため、厚生労働省は種目ごとに「全国平均貸与価格」と「上限価格」を定め、福祉用具専門相談員が利用者に説明することを義務づけています。上限価格を超える価格設定は介護保険給付の対象外となるため、事業者側にも過度な高額設定を避ける仕組みが働きます。 2026年4月には、特殊寝台(介護用ベッド)や移動用リフトなど、直近の実績データにもとづいて価格がはじめて設定される新商品65品目について、2026年10月分から適用される平均価格・上限価格が公表されました。これから福祉用具を選ぶ方にとっては、契約前に「この金額は全国平均に対して高いのか、標準的なのか」を確認しやすくなるという実務的なメリットがあります。契約時に福祉用具専門相談員から価格説明を受けたら、「全国平均と比べてどうですか」と一言尋ねてみるとよいでしょう。 --- ## よくある失敗と回避策 福祉用具選びでつまずきやすいポイントを、回避策とセットで整理しました。 | よくある失敗 | 回避策 | | --- | --- | | 購入してから「合わなかった」と気づいた | 対象品目はまずレンタルで試す。特に車いす・介護用ベッドは試用が前提 | | ケアプランに組み込まず自費で購入してしまった | 福祉用具は必ずケアマネジャーに相談してからケアプランに組み込む | | 要支援・要介護1で介護用ベッドを断られた | 状態が悪化した場合は「例外給付」を主治医・ケアマネジャーに相談 | | 年10万円の購入上限を超えて自費になった | 年度(4月〜翌年3月)をまたいで計画的に購入する。複数品目を同時に買う前に相談 | | レンタル料金が事業者によって違い戸惑った | 契約前に全国平均貸与価格を確認し、福祉用具専門相談員に説明を求める | 車いすは座面の幅・高さが身体に合っているかが最重要で、合わない車いすは褥瘡(じょくそう)や操作性の問題につながります。介護用ベッドは、「介護者が腰に負担なく介助できる高さ」と「本人が足を床につけて立ち上がれる高さ」が異なるため、両方に調整できるタイプを選ぶのがポイントです。持ち上げる介助で腰を痛めがちな方は、[自宅での身体介護、どうすればいい?──家族のための介助とコミュニケーションのコツ](/columns/caregiving-practice-basics)で、福祉用具を活用した負担の少ない介助のコツも紹介しています。 在宅介護の準備をこれから整えるという方は、[在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト](/columns/home-care-preparation)もあわせてご覧ください。住宅改修や福祉用具を含めた全体の準備の流れがわかります。福祉用具の相談窓口としては、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)で紹介している地域包括支援センターも活用できます。 --- ## まとめ > **この記事で持ち帰れること** > - 目の前の福祉用具が「レンタル対象」か「購入対象」かの見分け方と、それぞれの費用の目安 > - 要介護度による制限と、状態が変化したときに使える「例外給付」という選択肢 > - 2026年10月の価格改定で、契約前に確認すべきポイントが増えるという見通し 福祉用具は、「頑張って自分たちだけで介護する」ための道具ではなく、**介護する人・される人の両方の体と暮らしを守るための仕組み**です。まずは今使っている、あるいはこれから必要になりそうな福祉用具を1つ思い浮かべて、それがレンタル対象なのか購入対象なのか、この記事で確認してみてください。迷ったときは、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに「福祉用具について相談したい」と伝えるところから始めれば大丈夫です。 なお、床に置くだけの手すりやスロープは福祉用具のレンタル対象ですが、**壁にビスで固定する手すりや、玄関の段差をなくす工事は「住宅改修」という別の枠**(生涯20万円まで)になります。同じ「手すり」でも使う制度が分かれるので、あわせて[介護保険の住宅改修は20万円まで──手すり・段差解消の対象工事と申請の流れ](/columns/jutaku-kaishu-20man-guide)もご覧ください。 介護そっとねっとには、「介護用ベッドのレンタルを始めてから、家族の腰痛がうそのように楽になった」という声も寄せられています。一人で抱え込まず、同じ立場の家族とも情報を交換しながら、無理のない介護の形を探してみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の対象品目・価格・支給の可否については、担当のケアマネジャー・福祉用具専門相談員・お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 福祉用具・住宅改修](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html) - [厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1493(令和8年10月貸与分から適用される福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限の公表について)](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58897.html) - [公益財団法人テクノエイド協会 令和8年度 福祉用具貸与価格適正化推進事業](https://www.techno-aids.or.jp/tekisei/) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### ショートステイとは?費用の目安と2泊3日・1週間の計算例、予約の流れ・連続利用30日ルールまでやさしく解説 - **slug**: short-stay-respite-guide - **公開日**: 2026.7.15 - **更新日**: 2026.10.2 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/short-stay-respite-guide **要約**: ショートステイ(短期入所生活介護)は、要支援1〜要介護5の方が数日から施設に宿泊できる介護保険サービスです。1割負担・併設型多床室なら1日3,200円前後、2泊3日で約9,600円が目安(2026年8月の食費改定後)。予約の流れや連続利用30日ルールも公式情報で解説します。 **本文**: # ショートステイとは?費用の目安・予約の流れ・連続利用30日ルールまでやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - ショートステイ(短期入所生活介護)は、要支援1〜要介護5の方が数日から施設に宿泊し、食事・入浴などの介護を受けられる介護保険サービス。介護する家族の休息(レスパイト)のための利用も、制度上きちんと想定されている > - 費用は「介護サービス費(1〜3割負担)+食費+滞在費+日常生活費」の合計。要介護3・1割負担・併設型多床室なら1日3,200円前後、2泊3日で約9,600円、1週間で約2万2,400円が概算の目安(2026年8月の食費改定後) > - 連続して利用できるのは30日まで(31日目以降は全額自己負担)。予約はケアマネジャーへの相談が出発点で、人気の施設は1〜2ヶ月前でも埋まることがあるため早めの相談が安心 「介護を始めてから、丸一日休めた日がない」 「冠婚葬祭や出張のあいだ、親を一人にできない」 「たまにはゆっくり眠りたい。でも、預けるなんて申し訳ない気がして……」 ——在宅介護を続けるご家族から、こうした声をよく聞きます。そんなときに頼れるのが、**ショートステイ**(短期入所生活介護)です。数日から施設に宿泊でき、そのあいだの食事・入浴・排せつなどの介護をプロに任せられる、介護保険の正式なサービスです。 「介護される本人のためのサービス」と思われがちですが、厚生労働省の解説でも、短期入所生活介護は利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、「**家族の介護の負担軽減などを目的として実施**」されるものと明記されています([厚生労働省 介護サービス情報公表システム](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html))。つまり、**介護する家族が休むために使うことは、後ろめたいことでも何でもありません**。 この記事では、費用の目安、予約から利用開始までの流れ、連続利用30日ルールまで、公式情報をもとにやさしく整理します。 > この記事でわかること > - ショートステイの種類と利用できる人 > - 費用の内訳と、2泊3日・1週間利用した場合の概算例 > - 予約から利用開始までの流れと期間の目安 > - 連続利用30日ルールと利用日数の考え方 > - 家族の休息(レスパイト)としての活かし方と、よくある失敗の回避策 --- ## ショートステイとはどんなサービス?誰が利用できる? **ショートステイは、要介護認定を受けた方が数日〜最長30日程度施設に宿泊し、食事・入浴・機能訓練などの介護を受けられるサービスです。要支援1・2の方も「介護予防」型として利用できます。** 「ショートステイ」と呼ばれるサービスには、大きく分けて次の3つがあります。 | 種類 | 主な提供場所 | 特徴 | | --- | --- | --- | | **短期入所生活介護** | 特別養護老人ホームの併設施設・単独型の事業所など | 食事・入浴・排せつなどの生活支援と機能訓練が中心。一般に「ショートステイ」といえばこちら | | **短期入所療養介護** | 介護老人保健施設・介護医療院など | 看護職員等による医療的な管理やリハビリテーションも受けられる | | **保険外のショートステイ** | 有料老人ホームなど | 介護保険を使わない自費サービス。日数の制約が緩やかな一方、費用は全額自己負担 | 介護保険で利用できるのは、**要支援1〜要介護5の認定を受けている方**です(要支援の方は「介護予防短期入所生活介護」等になります)。まだ認定を受けていない場合は申請が先になりますので、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で申請の流れを確認してみてください。 利用する場面としては、次のようなケースが公式に想定されています。 - 本人の心身の状況や病状がよくないとき - 家族(介護者)の疾病、冠婚葬祭、出張のとき - **家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減が必要なとき** 3つ目に注目してください。「特別な用事がなくても、介護者が休むために使ってよい」ことが、国の説明にはっきり書かれています。 --- ## ショートステイの費用はいくらかかる? **費用は「介護サービス費の自己負担(1〜3割)+食費+滞在費+日常生活費」の合計です。要介護3・1割負担・併設型多床室なら1日3,200円前後、2泊3日で約9,600円、1週間で約2万2,400円が概算の目安です。** ### 介護サービス費(1〜3割負担) 介護サービス費の自己負担額は、要介護度と施設のタイプで決まります。併設型・多床室の場合の目安(1割負担・1日あたり)は次のとおりです([厚生労働省 介護サービス情報公表システム](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html))。 | 要介護度 | 自己負担額(1割)の目安 | | --- | --- | | 要支援1 | 451円 | | 要支援2 | 561円 | | 要介護1 | 603円 | | 要介護2 | 672円 | | 要介護3 | 745円 | | 要介護4 | 815円 | | 要介護5 | 884円 | 単独型・個室・ユニット型は別の設定があり、送迎や職員体制などの加算、お住まいの地域区分によっても前後します。所得によっては2割・3割負担になる点にも注意してください。 ### 食費・滞在費(全額自己負担) 食費と滞在費(部屋代)は介護保険の給付対象外で、**施設が設定する額を全額自己負担**します。目安となる国の「基準費用額」は、食費が1日1,545円(**2026年8月1日に1,445円から100円引き上げ**)、滞在費が多床室(特養等)で1日915円、従来型個室(特養等)で1,231円、ユニット型個室で2,066円です([厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1506](https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf))。 このほか、理美容代などの日常生活費も実費でかかります。 ![ショートステイ1日あたりの費用の内訳を示す図。介護サービス費の自己負担(1〜3割)、食費、滞在費、日常生活費の4つを積み上げ、要介護3・併設型多床室・1割負担で1週間利用した場合の概算約2万2,400円を示している。](/column-figures/short-stay-cost-structure.svg) ### 概算例:要介護3・併設型多床室・1週間 1割負担の方が7日間利用した場合の概算は次のようになります。 | 項目 | 計算 | 金額 | | --- | --- | --- | | 介護サービス費(1割) | 745円 × 7日 | 5,215円 | | 食費(基準費用額の場合) | 1,545円 × 7日 | 10,815円 | | 滞在費(多床室の場合) | 915円 × 7日 | 6,405円 | | **合計** | | **約22,400円+日常生活費** | ### 概算例:要介護3・併設型多床室・2泊3日 「月1回・2泊3日」のような定期利用を考えている方は、こちらの計算例が近いはずです。ショートステイの日数は、原則として**利用を始めた日と帰る日の両方を数えます**([厚生労働省 介護報酬の算定に関する留意事項(老企第40号)](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4383&dataType=1&pageNo=1))。2泊3日なら、介護サービス費は3日分になります。 | 項目 | 計算 | 金額 | | --- | --- | --- | | 介護サービス費(1割) | 745円 × 3日 | 2,235円 | | 食費(基準費用額で3日分とした場合) | 1,545円 × 3日 | 4,635円 | | 滞在費(多床室・3日分とした場合) | 915円 × 3日 | 2,745円 | | **合計** | | **約9,600円+日常生活費** | 食費は、施設によっては朝・昼・夕の1食ごとに料金を決めていて、到着と帰宅の時間で食事の回数が変わります。滞在費の日数の数え方とあわせて、見積もりの段階で「何食分・何日分になるか」を確認すると、請求額との差が出にくくなります。 あくまで一例です。実際の金額は施設の設定・加算・部屋タイプで変わるため、**申し込み前に必ず見積もりを出してもらいましょう**。 ### 負担を軽くする制度もある 住民税非課税世帯などの方は、「**負担限度額認定**(補足給付)」により食費・滞在費が軽減されます。たとえばショートステイの食費の負担限度額は、第2段階の方で1日600円です。なお、2026年8月1日から、所得がやや高めの第3段階①・②の負担限度額が一部引き上げられました(ショートステイの食費は第3段階①が1,000円→1,030円、第3段階②が1,300円→1,360円など)。制度のしくみと申請方法は[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で詳しく紹介しています。 また、1ヶ月の介護サービス費の自己負担が上限を超えたときに払い戻される「高額介護サービス費」もありますが、**対象になるのはサービス費の自己負担部分だけで、食費・滞在費は対象外**です。ショートステイのサービス費は月々の区分支給限度基準額(介護保険で使える上限枠)の中でカウントされるため、デイサービスなど他のサービスとの組み合わせはケアマネジャーと相談しながら決めましょう。デイサービス側の費用の目安や選び方は[デイサービスとは?費用の目安・1日の流れ・選び方、親が行きたがらないときの対応まで解説](/columns/day-service-guide)で解説しています。 --- ## 予約から利用開始までの流れは? **出発点は担当のケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)への相談です。初めての利用は、相談から利用開始まで2週間〜1ヶ月程度みておくと安心です。** ![ショートステイ利用開始までの4ステップ。ケアマネジャーへの相談、施設選び・見学、申し込み・事前面談・契約、利用開始の順に進むことを示す流れ図。](/column-figures/short-stay-usage-flow.svg) ### ステップ1:ケアマネジャーに相談する ショートステイはケアプラン(介護サービス計画)に位置づけて利用します。まずは担当のケアマネジャーに、**「自分が休みたい」という理由も含めて率直に**希望を伝えましょう。目的を正直に話すほど、日数や頻度の設計が現実的になります。 ### ステップ2:施設を選ぶ・見学する ケアマネジャーから空き状況に応じて施設の候補を出してもらい、できれば見学します。本人との相性や、送迎の範囲、医療的な対応の可否(たんの吸引など)を確認しておきます。 ### ステップ3:申し込み・事前面談・契約 施設に申し込むと、本人の健康状態・服薬情報・生活のリズムなどを確認する事前面談があります。かかりつけ医の情報やお薬手帳を用意しておくとスムーズです。 ### ステップ4:利用開始 着替え・薬・保険証類など、施設から案内された持ち物を準備して利用開始です。多くの施設で自宅までの送迎に対応しています。 なお、**人気の施設は1〜2ヶ月前でも予約が埋まっていることがあります**。「使いたいときに使えない」を避けるコツは後述しますが、介護者の急病などやむを得ない事情のときは、緊急受け入れの体制を設けている施設もあります。困ったときはまずケアマネジャーか地域包括支援センターに電話してください。 --- ## 何日まで泊まれる?「連続利用30日」ルールとは? **介護保険で利用できるのは連続30日までで、31日目以降の分は保険給付されず全額自己負担になります。また、利用日数は要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないことが目安とされています。** 押さえておきたいルールは2つです。 1. **連続30日まで**:厚生労働省が定める介護報酬の算定基準により、連続して30日を超えてショートステイを利用した場合、30日を超えた分の介護サービス費は保険給付の対象外(全額自己負担)になります 2. **認定有効期間のおおむね半数以内が目安**:ケアプランを作るうえで、ショートステイの利用日数は要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないことが目安とされています。ただしこれは機械的に適用されるものではなく、家族の事情など特に必要と認められる場合は、ケアマネジャーや市区町村と相談のうえ柔軟に判断されます 特養の入所待ちなどで長期間の利用(いわゆる「ロングショート」)を検討するご家庭もありますが、全額自費の日を挟む運用になるなど費用面・制度面の注意点が多いため、**自己判断せず必ずケアマネジャーに相談してください**。 --- ## 介護する家族の休息(レスパイト)にどう活かす? **「介護者が休むための利用」は制度上も想定された正当な使い方です。疲れ切ってから慌てて探すのではなく、「月1回・2泊3日」のように定期利用をあらかじめ組み込むのがおすすめです。** 介護を長く続けるうえでいちばん大切なのは、介護する人自身が倒れないことです。ショートステイをレスパイト(休息)として活かすコツを3つ紹介します。 - **定期利用を「先に」予定に入れる**:疲れてから探すと予約が取れません。月1〜2回の定期枠を確保したうえで、冠婚葬祭や出張などのスポット利用を組み合わせるのが現実的です - **罪悪感を手放す**:「預けるなんて申し訳ない」と感じる方は多いのですが、休息は介護を続けるための準備です。眠れない日が続く、イライラが止まらないなど介護疲れのサインを感じている方は、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)もあわせて読んでみてください - **仕事と介護を両立している方は、出張や繁忙期から逆算して予約する**:仕事の予定が決まった時点で利用日を押さえておくと、直前に預け先を探す事態を避けやすくなります。2025年に拡充された両立支援の制度は[介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度](/columns/work-care-balance-2025-law)で解説しています 本人が「行きたくない」と嫌がるケースも珍しくありません。その場合は、1泊だけの「お試し利用」から始める、なじみのあるデイサービスと同じ系列の施設を選ぶ、ケアマネジャーや医師から勧めてもらう——など、小さく始めて慣れていく方法をケアマネジャーと一緒に考えてみてください。 --- ## よくある失敗と回避策 先輩介護者がつまずきやすいポイントを、回避策とセットで押さえておきましょう。 | よくある失敗 | 回避策 | | --- | --- | | 使いたい日に予約が取れない | 複数の施設に登録しておく。定期利用の枠を先に確保し、キャンセル待ちも活用する | | 30日を超えて全額自費になった | 利用日数の設計は必ずケアマネジャーと。長期利用は事前に費用シミュレーションを | | 本人が拒否して当日キャンセル | 1泊のお試しから始める。本人の不安な気持ちを聞く時間をとり、無理強いしない | | 想定より費用が高かった | 食費・滞在費・日常生活費はサービス費と別枠。申し込み前に見積もりをもらう | | 薬の飲み忘れ・持ち物トラブル | お薬手帳と服薬情報を必ず共有。持ち物には名前を書き、リストで管理する | 在宅介護の体制づくり全体をこれから整えるという方は、[在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト](/columns/home-care-preparation)も参考になるはずです。 --- ## まとめ > **この記事の要点(再掲)** > - ショートステイ(短期入所生活介護)は、要支援1〜要介護5の方が数日から施設に宿泊できる介護保険サービス。家族の負担軽減(レスパイト)目的の利用も公式に想定されている > - 費用は「サービス費(1〜3割)+食費+滞在費+日常生活費」。要介護3・1割負担・併設型多床室なら1日3,200円前後、2泊3日で約9,600円、1週間で約2万2,400円が概算の目安 > - 住民税非課税世帯などは負担限度額認定で食費・滞在費が軽減される。2026年8月1日から第3段階①・②の負担限度額が一部引き上げられた > - 連続利用は30日まで。認定有効期間のおおむね半数以内が日数の目安 > - 予約はケアマネジャーへの相談から。人気施設は1〜2ヶ月前でも埋まるため、定期利用の枠を先に確保するのがコツ 「休みたい」と口に出すことは、介護を投げ出すことではありません。介護そっとねっとには、初めてのショートステイに送り出して「**罪悪感で泣きそうになったけれど、久しぶりに朝までぐっすり眠れた**」という体験を、そっと分かち合っているご家族がたくさんいます。制度の確認はケアマネジャーや市区町村の窓口で行いつつ、気持ちの面では、一人で抱え込まずに同じ立場の仲間とつながってみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の金額や空き状況、手続きについては、担当のケアマネジャー・利用予定の施設・お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 介護サービス情報公表システム - どんなサービスがあるの?(短期入所生活介護)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html) - [厚生労働省 - 介護保険最新情報 Vol.1506(令和8年5月29日)](https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0602085932175/ksvol.1506.pdf) - [厚生労働省 - 短期入所サービス等の介護報酬算定に関する留意事項(老企第40号)](https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4383&dataType=1&pageNo=1) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順 - **slug**: facility-meal-housing-cost-2026-august - **公開日**: 2026.7.7 - **更新日**: 2026.9.7 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august **要約**: 介護施設から届いた費用の案内を確かめたいご家族へ。2026年8月以降の食費・居住費について、負担段階や利用形態による違い、認定証と請求書の確認手順を整理します。自分のケースで窓口へ聞く項目を持ち帰れます。 **本文**: # 介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった? **2026年9月7日確認。** 2026年8月の見直しでは、施設入所の食費の負担限度額は第3段階①が680円、第3段階②が1,420円になりました。ただし、ショートステイの食費は別額です。居住費も施設・居室の種類で異なるため、まず認定証の段階と契約内容を確認してください。 「8月から請求が増えた」「認定証を更新したが、何が変わったのか分からない」。そんなときは、請求書を食費・居住費・介護サービス費・その他の実費に分けると、確認する場所が見つかります。この記事では、自治体が公開した2026年8月以降の表をもとに、家族が確認する順番を整理します。 ## 最初に、何を手元に用意する? 負担限度額認定証、施設の料金表・契約書、変更前後の請求書を用意します。どれかが見つからなくても、施設の相談員や市区町村に相談できます。 | 確認する資料 | 見る項目 | 分からない場合の確認先 | | --- | --- | --- | | 負担限度額認定証 | 有効期間、利用者負担段階 | 市区町村の介護保険担当窓口 | | 契約書・料金表 | 施設種別、居室種類、食費・居住費の日額 | 施設の相談員・事務担当 | | 変更前後の請求書 | 利用日数、変更された費目 | 施設の請求担当 | 認定証の段階だけで請求総額は決まりません。利用日数や部屋の種類、別途かかる実費も確認してください。家族間で相談するときも、通帳や認定証の画像をSNSに投稿する必要はありません。 ## 「基準費用額」と「負担限度額」はどう違う? 基準費用額は国が定める平均的な費用を踏まえた額で、負担限度額は要件を満たして認定された人が負担する上限額です。実際の食費・居住費は施設との契約で決まります。 **認定を受けていない人の請求額が、必ず基準費用額と同じになるわけではありません。** また、負担限度額は「軽減される金額」そのものではなく、軽減後に利用者が負担する上限です。施設への補足給付は、基準費用額と実際に要した費用のいずれか低い額と、負担限度額との差額をもとに扱われます。[高松市の制度説明](https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kurashi/nenkin/kaigohoken/service_price/futan_gendo.html)で、契約額と基準費用額の違いを確認できます。 ## 2026年8月以降の所得段階はどう確認する? 認定には所得と資産などの要件があります。下表は所得段階の概要であり、年金額だけで自己判断せず、市区町村に確認してください。 | 段階 | 所得等の目安 | | --- | --- | | 第1段階 | 生活保護受給者、世帯非課税の老齢福祉年金受給者など | | 第2段階 | 世帯非課税で、本人の合計所得金額と課税・非課税年金収入額の合計が年82.65万円以下 | | 第3段階① | 同じ合計が年82.65万円超〜120万円以下 | | 第3段階② | 同じ合計が年120万円超 | 世帯を分けている配偶者の課税状況や、預貯金などの資産も確認対象になります。所得計算には制度上の扱いがあるため、手取り年金だけを表に当てはめないでください。2026年8月以降の基準は[大田区の負担限度額認定制度の案内](https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/fukushi/kaigo/keigen/kyojyuhi.html)を参照しています。以前の「80万円以下」という基準を、そのまま現在の判定に使わないようにしましょう。 ## 食費はいくら? 施設入所とショートステイを分ける 2026年8月以降の負担限度額は、施設入所と短期入所で異なります。入所向けの額を、ショートステイの請求に当てはめないでください。 | 段階 | 施設入所の食費・1日 | ショートステイの食費・1日 | | --- | --- | --- | | 第1段階 | 300円 | 300円 | | 第2段階 | 390円 | 600円 | | 第3段階① | 680円 | 1,030円 | | 第3段階② | 1,420円 | 1,360円 | 施設入所の第3段階①は従来の650円から30円、第3段階②は1,360円から60円の引き上げです。短期入所の食費はこの表の別額を確認します。[調布市の2026年8月からの負担限度額表](https://www.city.chofu.lg.jp/060040/p034044.html)では、括弧内に短期入所の額が示されています。 ## 居住費は全員が1日100円増える? 一律ではありません。第3段階②でも、施設種別と部屋の種類により異なります。多床室という名称だけでは判断できません。 たとえば、第3段階②の多床室は、特養等や室料を徴収する老健・介護医療院では530円ですが、**室料を徴収しない老健・介護医療院等では430円**です。従来型個室やユニット型個室なども、それぞれの区分を確認します。 「第3段階②なら誰でも食費と居住費を合わせて月4,800円増える」とは限りません。食費が1日60円、居住費が1日100円増える条件で30日利用する場合に限り、160円×30日=4,800円という計算になります。実際の増額は、対象の日額と利用日数で確認してください。 ## 負担限度額認定証の申請・更新はどうする? 市区町村の介護保険担当窓口に申請し、審査を受けます。認定証は自動発行・自動更新とは限らないため、現在の有効期間と更新の受付方法を確認してください。 1. 窓口や自治体の案内で申請書と必要書類を確認する。 2. 本人・配偶者の資産を確認できる資料などを準備する。 3. 申請し、対象になる場合は認定証の交付を受ける。 4. 利用している施設・ショートステイ先へ認定証を提示する。 申請の適用時期、郵送・電子申請の可否、必要な通帳の範囲などは、市区町村に確認してください。認定証を持っていても、施設へ未提示であれば請求への反映状況を確認する必要があります。利用していた本人が亡くなったときの認定証の返却や保険料の精算は、[親が亡くなったあとの介護保険の手続き](/columns/kaigo-hoken-shibou-tetsuzuki-family-guide)にまとめています。 ## 介護サービス費の負担や、他の制度とは何が違う? 食費・居住費は、介護サービスの1〜3割負担とは別に整理する費目です。請求が増えた理由を確認するときは、どの費目に変更があったのかを分けて相談してください。 デイサービスの食費は、この負担限度額制度の対象ではありません。施設入所と通所を同じ表で比較しないようにします。高額介護サービス費など他制度についても、同じ請求書の全額が対象になるとは限らないため、窓口で対象費目を確認してください。 - [ショートステイの費用・予約の流れ](/columns/short-stay-respite-guide) - [デイサービスの費用と選び方](/columns/day-service-guide) - [高額介護サービス費の対象・申請](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide) - [医療費と介護費を1年分合算する高額医療・高額介護合算療養費](/columns/kougaku-iryo-kaigo-gassan-ryoyohi-guide) ## 負担が心配なとき、どう相談を始める? 「変更前は食費が○円、変更後は○円です。認定証は第○段階で、この請求で合っているか確認したい」と、分かる範囲を伝えれば十分です。所得や資産の判断は市区町村、請求内容は施設の担当者に確認しましょう。 認定の可否や請求額の確認と、「家族の費用をどう分担するか」「先が見えず不安」という気持ちの整理は、別々に考えて構いません。介護そっとねっとでは介護家族同士で気持ちや経験を共有できますが、制度の認定や専門的な個別判断を行う窓口ではありません。共有する場合は、氏名・施設名・資産額の細部を伏せ、自分が話したい範囲から始めてください。 --- ### 介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度 - **slug**: work-care-balance-2025-law - **公開日**: 2026.6.30 - **更新日**: 2026.10.13 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/work-care-balance-2025-law **要約**: 結論、2025年4月の育児・介護休業法改正で、会社は介護に直面した社員に制度を個別に知らせて意向を確認することが義務になり、介護休暇も入社直後から取りやすくなりました。介護休業・残業免除・短時間勤務など使える制度と、最初の相談のしかたを厚生労働省の情報で整理します。 **本文**: # 介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度 > **この記事の要点(3行)** > > - 2025年4月施行の育児・介護休業法改正で、会社には「介護に直面した社員への個別の周知・意向確認」「40歳前後での情報提供」「雇用環境の整備」が義務づけられた > - 介護休暇は「勤続6ヶ月未満」の人も取れるようになり、介護のためのテレワークは会社の努力義務になった > - 休む制度(介護休業・介護休暇)のほかに、残業の免除・時間外労働の制限・深夜業の制限・短時間勤務など、働き方を変える制度もある。まず会社の相談窓口に「介護に直面した」と伝えると、会社から個別に案内される 「親の介護が始まったけれど、仕事は辞められない」 「会社に介護のことを言い出しづらくて、一人で抱えている」 「気づいたら、もう辞めるしかないと思い詰めていた」 ——働きながら介護を担うご家族にとって、「仕事を続けられるかどうか」は、暮らしを左右する大きな不安です。総務省の「令和4年就業構造基本調査」では、2022年10月までの1年間に「介護・看護のため」に前の仕事を辞めた人は**約11万人**でした([総務省統計局 令和4年就業構造基本調査 結果の概要](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf))。 そんな「介護離職」を防ぐために、**2025年4月、育児・介護休業法が改正**されました。この記事では、改正で何が変わり、**働きながら介護する家族が使える制度がどう広がったのか**を、厚生労働省の公式情報をもとに整理します。 > この記事でわかること > - なぜ「仕事と介護の両立支援」が強化されたのか > - 2025年4月の法改正で会社に義務づけられたこと > - 家族(働く人)の側から見て、何が使いやすくなったのか > - 休まずに働き方を変える制度(残業免除・短時間勤務など) > - 制度を活用するために、まず何をすればいいか --- ## なぜ「両立支援」が強化されたのか? **介護をしながら働く人が増えている一方で、制度を知らないまま仕事を辞める人が年に約11万人いるためです。** 働きながら家族の介護を担う人は「**ビジネスケアラー**」と呼ばれます。[総務省「就業構造基本調査(2022年)」](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html)では、介護をしている人は629万人で、そのうち仕事をしている人は約365万人でした。厚生労働省の特設サイトは、同じ調査をもとに、**雇用されている人のうち55〜59歳の12.3%(10人に1人以上)が介護をしている**と紹介しています([厚生労働省 介護休業制度特設サイト](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/))。 「制度があることを知らなかった」「会社に言い出せなかった」という理由で仕事を辞めると、本人の収入や将来の年金が減るだけでなく、介護が終わったあとの再就職の負担も本人が背負うことになります。 > **ポイント**:介護は、いつ終わるか見通しが立ちにくいもの。「辞める」かどうかを決める前に、**今の仕事を続けながら介護する方法**を確かめておくと、選べる道が増えます。 こうした背景から、2025年4月の改正では、「**制度を知らないまま辞めてしまう**」事態を防ぐためのしくみが、会社側の義務として強化されました。 --- ## 2025年4月の改正で、会社に義務づけられたことは? **介護に直面した社員への個別の案内と意向確認、40歳前後での情報提供、相談窓口の設置などの雇用環境整備の3つです。** 2025年4月1日から施行された改正では、介護に関して主に次の内容が会社(事業主)に義務づけられました([厚生労働省 法改正のポイント](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/))。 ### 1. 介護に直面した社員への「個別の周知・意向確認」 社員が「家族の介護に直面した」と会社に申し出たとき、会社は、**介護休業や両立支援制度の内容、申出先、介護休業給付金のことを、その社員に個別に知らせ、利用の意向を確認しなければならない**ことになりました。方法は、面談(オンラインを含む)、書面の交付、FAX、電子メールです。 「制度はあるのに案内されない」という状況をなくすための改正です。介護に直面したら、**会社に申し出ることで、会社から制度の説明を受けられる**しくみになりました。 ### 2. 40歳前後での「情報提供」 多くの人が親の介護に直面し始める年代を見すえ、**社員が40歳になる年度(40歳になる誕生日の前日が属する年度)か、40歳の誕生日から1年間のどちらかの時期に、会社が介護休業などの制度情報を提供すること**も義務づけられました。まだ介護が始まっていなくても、早めに「使える制度」を知っておけるようにする狙いです。 ### 3. 「雇用環境の整備」 会社は、介護と仕事の両立を支えるために、**研修の実施・相談窓口の設置・利用事例の提供・利用促進の方針の周知**のうち、いずれかの措置を講じなければならなくなりました。つまり、どの会社にも**何らかの相談の入り口がある**はずだ、ということです。 --- ## 家族(働く人)の側から見ると、何が使いやすくなった? **介護休暇が入社直後から取れるようになり、介護のためのテレワークを会社が用意する努力義務ができました。** 会社の義務が増えたことで、働く家族の側から見ると、使える制度と相談の入り口が広がりました。改正で特に身近になった点を見ていきます。 ### 介護休暇が「勤続6ヶ月未満でも取れる」ように これまでは、労使協定があれば「**勤続6ヶ月未満の社員**」を介護休暇の対象から外すことができました。2025年4月の改正でこのしくみが廃止され、**働きはじめて間もない人でも介護休暇を取れる**ようになりました([厚生労働省 法改正のポイント](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/))。転職直後に親の介護が始まった場合にも使えます。 なお、介護休暇そのものの基本は次のとおりです([厚生労働省 介護休暇](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shorttime-leave/))。 | 項目 | 内容 | | --- | --- | | 取得できる日数 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日 | | 取得単位 | 1日単位または時間単位 | | 対象家族 | 配偶者(事実婚含む)・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母 | | 使える場面 | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの相談など短時間の用務にも | 時間単位で取れるので、「平日の午前だけ通院に付き添う」といった使い方ができます。 ### 介護のための「テレワーク」が努力義務に 要介護状態の家族を介護する社員が、**テレワーク(在宅勤務など)を選べるようにすること**が、会社の努力義務になりました。義務ではなく「努力義務」ですが、「在宅でなら両立できる」という家族にとっては、相談する根拠が一つ増えたことになります。 ![2025年施行の育児・介護休業法改正の流れを示す図。上段に会社側の3つの義務(個別の周知・意向確認、40歳前後での情報提供、雇用環境の整備)、下段に家族が使いやすくなった2つの権利(介護休暇の要件緩和、介護テレワークの努力義務化)を並べ、相談窓口への申し出が最初の一歩であることを示している。](/column-figures/work-care-2025-law-changes-process.svg) --- ## 介護休業と介護休暇のほかに、使える制度はある? **あります。休まずに働き方を変える制度として、残業の免除、時間外労働の制限、深夜業の制限、短時間勤務などの措置が法律で定められています。** 仕事と介護の両立に使える主な法定制度は、次のとおりです([厚生労働省 介護休業制度特設サイト](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/))。 | 制度 | 内容 | 使い方の目安 | | --- | --- | --- | | 介護休業 | 要介護状態の家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して休める | 入院・退院の前後や、介護サービスの手配など、まとまった時間が必要なとき | | 介護休暇 | 年5日(2人以上で年10日)、1日または時間単位で休める | 通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談 | | 所定外労働の制限 | 会社が決めた所定労働時間を超える労働(残業)が免除される。1回につき1か月以上1年以内で、回数の制限はない | 夕方の決まった時間に帰宅したいとき | | 時間外労働の制限 | 法定労働時間を超える労働が月24時間・年150時間までに制限される | 残業をゼロにはできないが減らしたいとき | | 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時の勤務が免除される | 夜勤のある仕事で、夜間に家を空けられないとき | | 短時間勤務等の措置 | 会社が短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成などのいずれかを用意する。利用開始から3年以上の期間で2回以上使える | 毎日の送り出しや迎えに合わせて働く時間を変えたいとき | 所定外労働の制限は、制限を始めたい日の1か月前までに、書面などで会社に請求します([厚生労働省 所定外労働の制限](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/unscheduled/))。短時間勤務等の措置は、どの制度を用意するかを会社が選ぶので、勤め先に何があるかを就業規則や人事に確かめます([厚生労働省 短時間勤務等の措置](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shortworking/))。 ### 介護休業給付金はいくら? 介護休業は原則として無給ですが、雇用保険から**介護休業給付金**が支給されます。支給額は、原則として「休業開始時の賃金日額×支給日数×67%」です。介護休業を始める前の2年間に、賃金の支払の基礎となった日が11日以上ある月が12か月以上あることなどが条件で、申請はハローワークで行います([ハローワーク 介護休業給付の内容及び支給申請手続について](https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kaigokyuugyou.pdf))。勤め先を通じて手続きすることが多いので、休業を申し出るときに給付金の手続きも人事に尋ねておきます。 それぞれの制度を日々の時間割にどう組み込むかは、[仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つために](/columns/work-care-balance)で具体的に紹介しています。あわせて読むと、「制度をどう日々の生活に落とし込むか」までイメージしやすくなります。 --- ## 制度を活用するために、まず何をすればいい? **会社の相談窓口か人事に「家族の介護に直面した」と伝え、同時に地域包括支援センターにも介護の相談をします。** 制度は、申し出たり請求したりして初めて使えるものです。まず取り組みたいのは、次のステップです。 ### 1. 会社の相談窓口・人事に「介護に直面した」と伝える 2025年の改正で、申し出れば会社は制度を個別に案内する義務があります。何から相談すればいいか分からなければ、「介護で両立の相談をしたい」と一言伝えるだけでも構いません。そのとき、次の3点を尋ねておくと、案内を受けたあとの判断がしやすくなります。 - 介護休業・介護休暇の申し出の方法と、介護休業給付金の手続き - 残業の免除や短時間勤務など、休まずに働き方を変える制度の有無 - テレワークや時差出勤を選べるかどうか ### 2. 介護の「窓口」を地域包括支援センターに 介護そのものの体制づくり(介護保険の申請、サービス選び)は、地域包括支援センターが入口です。仕事の調整と並行して、**介護保険の申請やケアマネジャー探しを早めに進めておく**と、休業や働き方の変更をいつまで続けるかの見通しが立てやすくなります。はじめての介護保険の流れは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で詳しく解説しています。 ### 3. 「自分一人で抱え込まない」体制をつくる 仕事と介護の両立は、制度だけでは支えきれない部分もあります。家族での分担や、休む時間の確保も必要です。気持ちが追い詰められていると感じたら、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)もあわせてご覧ください。 --- ## 一人で「辞めるしかない」と決めてしまう前に 介護離職は、「制度を知らなかった」「相談できなかった」ことが引き金になりがちです。2025年の改正で、会社には**介護に直面した社員に制度を届ける責任**が、より明確になりました。 それでも、「うちの会社はちゃんと対応してくれるだろうか」「相談しても気まずくならないか」——そんな不安は、なかなか一人では晴らせないものです。 介護そっとねっとには、**働きながら親の介護に向き合っているご家族**も参加しています。「会社にどう切り出した?」「在宅勤務に変えてもらえた」——そんな経験や悩みを、匿名で分かち合える場所です。制度の手続きは会社や専門窓口に相談しつつ、気持ちの面では、一人で抱え込まずに仲間とつながってみてください。 --- ## まとめ > **この記事の要点(再掲)** > - 「介護・看護」を理由に前の仕事を辞めた人は、2022年10月までの1年間で約11万人。介護をしながら働く人は約365万人 > - 2025年4月の育児・介護休業法改正で、会社には「介護に直面した社員への個別の周知・意向確認」「40歳前後での情報提供」「雇用環境の整備」が義務づけられた > - 介護休暇は勤続6ヶ月未満でも取れるようになり、介護のためのテレワークも努力義務に > - 休む制度(介護休業=通算93日・3回分割・給付金67%、介護休暇=年5日/2人以上で年10日)に加えて、残業の免除・時間外労働の制限・深夜業の制限・短時間勤務などで働き方を変えられる > - まずは会社の相談窓口に「介護に直面した」と伝え、地域包括支援センターにもつながること 仕事と介護の両立は、**制度という土台**と、**周りに頼ること**の両方があってこそ続けられます。 「辞めるしかない」と決める前に、会社の相談窓口と地域包括支援センターに一度相談して、使える制度と介護サービスの見通しを並べてみてください。 特に、きょうだいがいない、または離れて暮らしている場合は、頼れる相手が家族の外に限られる分、これらの制度をより積極的に使う理由になります。[一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)では、地域包括支援センターやケアマネジャーなど、離れていても使える窓口の具体的な使い方を整理しています。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度の具体的な利用条件や手続きは、勤務先の就業規則や会社の窓口、ハローワーク、地域包括支援センターなどでご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護休業制度特設サイト](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/) - [厚生労働省 - 法改正のポイント(育児・介護休業法)](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/law-amendment/) - [厚生労働省 - 介護休暇](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shorttime-leave/) - [厚生労働省 - 所定外労働の制限](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/unscheduled/) - [厚生労働省 - 短時間勤務等の措置](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/shortworking/) - [ハローワーク - 介護休業給付の内容及び支給申請手続について](https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kaigokyuugyou.pdf) - [総務省 - 就業構造基本調査(2022年)](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html) - [総務省統計局 - 令和4年就業構造基本調査 結果の概要](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kgaiyou.pdf) (確認日:2026年10月13日) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 成年後見制度とは?親のお金と契約を守る家族向け入門──2026年6月成立の改正法で何が変わるか - **slug**: adult-guardianship-family-guide - **公開日**: 2026.6.23 - **更新日**: 2026.9.25 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/adult-guardianship-family-guide **要約**: 成年後見制度は、認知症などで判断力が下がった親の預貯金管理や施設契約を法的に支える仕組みです。法定後見と任意後見の違い、申立ての注意点、2026年6月に成立した改正法(後見・保佐を補助に一本化、施行は2028年12月までの見込み)を公式情報で解説します。 **本文**: # 成年後見制度とは?親のお金と契約を守る家族向け入門──2026年6月成立の改正法で何が変わるか > **この記事の要点(3行)** > > - 成年後見制度は、認知症などで判断力が低下した人の財産管理や契約を法的に支える仕組み。2025年末の利用者は259,901人 > - 申立て動機でいちばん多いのは「預貯金等の管理・解約」(93.4%)。介護費用の支払いや口座凍結への対応で家族が直面しやすい > - 2026年6月17日に改正法が成立(6月24日公布)。後見・保佐を廃止して「補助」に一本化し、必要がなくなれば終了できる仕組みへ。施行は公布から2年6ヶ月以内(遅くとも2028年12月)で、それまでは現行制度が適用される > 「認知症が進んだ親の銀行口座が、家族でも下ろせなくなってしまった」 > 「施設の入所契約に、親本人のサインができない」 > 「実家を売って介護費用に充てたいのに、手続きが進まない」 ——介護が長くなるにつれ、こうした「お金と契約」の壁にぶつかるご家族は少なくありません。そんなときに知っておきたいのが、**成年後見制度**です。 名前は聞いたことがあっても、「手続きが難しそう」「一度始めると一生やめられないと聞いた」といったイメージから、踏み出せずにいる方もいます。 この記事では、成年後見制度の基本のしくみと、家族が直面しやすい場面、そして**2026年6月に成立した改正法で何が変わり、いつから始まるのか**までを、公式情報をもとにまとめました。 > この記事でわかること > - 成年後見制度とは何か、なぜ家族にとって必要になるのか > - 「法定後見」と「任意後見」の違い、3つの類型(後見・保佐・補助) > - 制度を使う前に知っておきたい注意点と費用 > - 2026年6月成立の改正法で何が変わり、いつから適用されるのか > - 迷ったときの相談先 --- ## 成年後見制度とは? 判断力が下がった人のお金と契約を支えるしくみ **判断力が十分でない人に代わって、家庭裁判所が選んだ支援者が預貯金の管理や契約を担う制度です。親の口座の手続きや施設との契約で、家族が最初に名前を聞くことの多い制度です。** 成年後見制度は、**認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が十分でない方を、法的に支えるための制度**です。2000年(平成12年)、介護保険制度と同じ年にスタートしました。 判断力が下がると、たとえば次のような場面で困りごとが生まれます。 - 預貯金の出し入れや、定期預金の解約ができない - 介護施設や介護サービスの契約を、本人だけでは結べない - 不要な高額商品を契約させられるなど、消費者被害に遭いやすい - 遺産分割協議に、本人が有効に参加できない こうしたとき、家庭裁判所が選んだ**成年後見人など**(後見人・保佐人・補助人)が、本人に代わって財産を管理したり、契約を支援したりします。 ### 利用者は約26万人。前年から約2.3%増えている 最高裁判所事務総局家庭局の[「成年後見関係事件の概況(令和7年1月~12月)」](https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html)によると、**2025年(令和7年)12月末時点の利用者数は合計259,901人**で、前年の253,941人から約2.3%増えました。 > **ポイント**:成年後見制度は「特別な人のための制度」ではありません。親の介護が長くなり、財産管理や契約の場面が増えると、どの家庭でも検討の対象になりえます。 --- ## 「法定後見」と「任意後見」はどう違う? **判断力が下がってから家庭裁判所に申し立てるのが法定後見、元気なうちに支援者と契約しておくのが任意後見です。すでに困っているなら法定後見、備えておきたいなら任意後見が入り口になります。** 成年後見制度には、大きく分けて**法定後見**と**任意後見**の2種類があります([法務省](https://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html))。 | | 法定後見 | 任意後見 | | --- | --- | --- | | いつ使うか | すでに判断力が下がってから | 判断力があるうちに、将来に備えて | | 誰が支援者を決めるか | 家庭裁判所が選ぶ | 本人があらかじめ選ぶ | | 権限の決め方 | 法律と裁判所が定める | 本人と支援者の契約で定める | ### 法定後見の3つの類型(後見・保佐・補助) 法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて、**「後見」「保佐」「補助」の3つ**に分かれます([裁判所](https://www.courts.go.jp/saiban/koukenp00/koukenp1/index.html))。 | 類型 | 対象となる状態の目安 | 支援者 | | --- | --- | --- | | **後見** | 判断能力が欠けているのが通常の状態 | 成年後見人 | | **保佐** | 判断能力が著しく不十分 | 保佐人 | | **補助** | 判断能力が不十分 | 補助人 | 判断力の低下が大きいほど「後見」に、軽いほど「補助」に近づくイメージです。実際の利用は「後見」が大半を占めており、令和7年末時点の利用者数から計算すると、**後見が約69.6%、保佐が約22.4%、補助が約7.0%、任意後見が約1.1%**(順に180,828人・58,162人・18,078人・2,833人)という内訳です([最高裁判所事務総局家庭局](https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html))。 ### 任意後見は「元気なうちの備え」 任意後見は、**判断力があるうちに、「将来、自分の判断力が下がったら、この人に支援してほしい」とあらかじめ公正証書で契約しておく**しくみです。誰に・どこまで任せるかを本人が決められるのが特徴で、人生会議(ACP)と同じく「元気なうちの備え」のひとつといえます。 「もしものとき」を家族と話し合う考え方は、[親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方](/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide)でも詳しく扱っています。あわせて読むと、医療・ケアの希望(人生会議)と、財産・契約の備え(任意後見)の両面から、親の「これから」を考えやすくなります。 --- ## 家族が制度を考えるのは、どんなとき? **親の預貯金を介護費用に使いたいのに本人が手続きできないときと、施設や介護サービスの契約に本人の意思表示が必要なときが代表的です。** 最高裁判所の統計(令和7年)では、申立ての主な動機として、次のようなものが多く挙げられています(複数回答)。 - **預貯金等の管理・解約**:93.4% - **身上保護**(施設入所・介護サービスの契約など):74.2% - **介護保険契約**:45.7% - **不動産の処分**:36.3% (出典:[最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」](https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html)) ここからわかるのは、**家族がいちばん困るのは「お金」と「契約」の場面**だということです。 - 親の口座から介護費用を払いたいのに、本人が手続きできず、家族も代わりにできない - 認知症が進み、金融機関が口座を「凍結」してしまった - 施設入所の契約に、本人の有効な意思表示が必要になった ——こうした「壁」に直面したとき、成年後見制度が選択肢になります。介護サービスの契約手続きそのものは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)でも触れていますが、判断力が下がってからの契約には、後見制度が必要になる場面があります。施設入所後にかかる食費・居住費の負担軽減については、[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で解説しています。 --- ## 使う前に知っておきたい注意点は? **申立ては家庭裁判所で、後見人を選ぶのも家庭裁判所です。専門職が選ばれると本人の財産から報酬が支払われ、現行制度では途中でやめにくい点も押さえておきましょう。** ### 1. 申立ては家庭裁判所へ 法定後見を使うには、**本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立て**を行います。申立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族などです。診断書や戸籍などの書類をそろえる必要があり、手続きには一定の手間と時間がかかります。詳しい手続きは[裁判所の案内ページ](https://www.courts.go.jp/saiban/koukenp00/koukenp1/index.html)で確認できます。 ### 2. 後見人は「家族」とは限らない 申立て時に家族を後見人候補として希望することはできますが、**最終的に誰を選ぶかは家庭裁判所が判断**します。財産が多い場合などには、弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることもあります。 ### 3. 専門職が選ばれると費用がかかる 専門職が後見人になった場合、本人の財産から**報酬**が支払われます。金額は家庭裁判所が決めますが、継続的な負担になる点は、あらかじめ家族で理解しておきましょう。 ### 4. これまでは「一度始めるとやめにくい」とされてきた 現行制度では、いったん後見が始まると、本人の判断力が回復しない限り**事実上、生涯にわたって続く**運用になっており、「使いにくい」「柔軟性がない」という声が長く指摘されてきました。この点は、次に紹介する2026年の改正法で見直されます。ただし改正法の施行前に申し立てる場合は、この現行のしくみが適用されます。 --- ## 2026年の改正法で何が変わる? いつから? **2026年6月17日に民法等の改正法が成立し、6月24日に公布されました。後見と保佐を廃止して「補助」に一本化し、必要がなくなれば終われる制度に変わります。成年後見の部分の施行は公布から2年6ヶ月以内(遅くとも2028年12月)です。** 成年後見制度は、利用のしにくさや硬直性が課題とされ、見直しの議論が続いてきました。政府は2026年4月3日に民法等の改正法案を国会に提出し、法案は6月17日に成立、6月24日に**令和8年法律第45号**として公布されました([法務省「民法等の一部を改正する法律案」](https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00389.html))。2000年の制度開始以来の大きな見直しです。 ### いつから変わる? 施行日は項目ごとに異なる | 改正の内容 | 施行の時期(法務省の公表による) | | --- | --- | | 成年後見制度の見直し(後見・保佐の廃止、補助への一本化など) | 公布の日から2年6ヶ月を超えない範囲で政令で定める日(遅くとも2028年12月) | | 遺言の押印を不要にする見直しなど | 公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日(遅くとも2027年6月) | | 保管証書遺言の創設など | 公布の日から3年を超えない範囲で政令で定める日(遅くとも2029年6月) | 「成年後見制度改正 2027」と検索される方もいますが、**2027年までに施行されるのは遺言の押印に関する見直しなどで、成年後見の部分ではありません**。具体的な施行日は政令で決まるため、法務省の発表を確認してください。 > **大切な前提**:2026年9月時点で、成年後見の部分はまだ施行されていません。**いま申し立てる場合は、後見・保佐・補助の3類型がある現行のしくみが適用されます。**「改正を待ってから」と先送りして、口座の手続きや施設の契約が止まったままになる場合は、施行を待たずに地域包括支援センターや家庭裁判所に相談してください。 改正法の主な変更点は、次のとおりです。 ### 1. 3類型を「補助」に一本化 現行の「後見」「保佐」「補助」の3類型のうち、**「後見」と「保佐」を廃止し、「補助」に一本化**します。本人の状態で型を固定するのではなく、必要な支援を個別に組み立てる**オーダーメード型**に近づけることが狙いです。あわせて、本人が同意の意思を示すことが難しく、家庭裁判所が必要と認める場合に、重要な財産行為について支援者に取消権を与える「特定補助」という枠組みも設けられました([福祉新聞](https://fukushishimbun.com/seiji/45417))。 ### 2. 「必要がなくなれば終われる」制度へ これまで事実上「一度始めたらやめにくい」とされてきた点を改め、**制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合に、利用を終了できる**しくみになります。たとえば「実家の売却の手続きのために使い、必要がなくなれば終える」といった使い方も検討できるようになります。 ### 3. 支援の範囲を本人に必要な分に絞る 支援者に与える権限を、**遺産分割や不動産の処分など、本人に必要な範囲に絞って設計する**方向です。「すべてを代わりにやる」のではなく、本人の自己決定をできるだけ尊重するという考え方が背景にあります。国会審議では、障害のある人の権利を不当に制約しないことや、高齢者・障害者が不当な契約を結ばされた場合の法制上の措置を検討することを求める附帯決議も付けられています([福祉新聞](https://fukushishimbun.com/seiji/45417))。 ![成年後見制度の現行制度と2026年6月成立の改正法を左右で比較した図。左は後見・保佐・補助の3類型、事実上の終身利用、類型ごとに定まる権限。右は補助への一本化、必要がなくなれば終了できる仕組み、必要範囲への支援の限定を示し、成年後見部分の施行は公布から2年6ヶ月以内(遅くとも2028年12月)と補足している。](/column-figures/adult-guardianship-2026-reform-before-after.svg) > **家族にとっての意味**:施行後は、「一生続くのが不安で踏み出せなかった」という理由で申立てを見送っていた家族も、「この手続きが終わるまで」と期間や目的を絞って使う選択肢を検討できます。すでに後見が始まっている方の扱いを含め、運用の詳細は施行までに示されるため、[法務省](https://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html)の発表で確認してください。 --- ## 迷ったときは、どこに相談すればいい? **最初の相談先は地域包括支援センターです。申立ての手続きは家庭裁判所、書類作成の支援は弁護士・司法書士・社会福祉士に相談できます。** | 相談先 | 相談できる内容 | | --- | --- | | **地域包括支援センター** | 介護全般の総合相談。後見制度の入口の相談も可能 | | **市区町村の窓口・中核機関** | 成年後見制度利用支援の案内、申立て支援 | | **家庭裁判所** | 申立ての手続き・必要書類の案内 | | **弁護士・司法書士・社会福祉士** | 具体的な手続きや書類作成のサポート | まずは身近な**地域包括支援センター**に相談するのがおすすめです。介護保険の相談と同じく、高齢者の暮らしを総合的に支える窓口として、後見制度についての入口の案内もしてくれます。在宅介護の準備全般については、[在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト](/columns/home-care-preparation)もあわせてご覧ください。 --- ## 一人で抱え込まないために 親のお金や契約をどう守るかという問題は、**正解が一つではなく、家族の事情によって合う形が変わる**テーマです。「自分が決めなければ」と気負うほど、肩に力が入ってしまいます。 制度の手続きに入る前に、家族のあいだで「親の財産をどう守るか」「誰が中心になって動くか」を話し合っておくと、申立ての準備や後見人候補の相談が進めやすくなります。話し合いが負担に感じられるときは、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)も参考にしてみてください。 介護そっとねっとには、同じように親の「お金」や「これから」に向き合っているご家族がたくさんいます。**「後見制度って実際どうなの?」「うちはこう考えている」**——そんな悩みや経験を、匿名でそっと分かち合える場所です。制度の最終的な判断は専門家に相談しつつ、気持ちの面では、一人で抱え込まずに仲間とつながってみてください。 --- ## まとめ > **この記事の要点(再掲)** > - 成年後見制度は、判断力が下がった人の財産管理・契約を支える制度。2025年末の利用者は259,901人 > - 「法定後見」(後見・保佐・補助の3類型)と「任意後見」があり、家族が困るのは「お金」と「契約」の場面 > - 申立て動機は「預貯金等の管理・解約」が93.4%で最多。介護費用の支払いや口座凍結で直面しやすい > - 2026年6月17日に改正法が成立(6月24日公布)。後見・保佐を廃止して「補助」に一本化し、必要がなくなれば終われる制度に。成年後見部分の施行は遅くとも2028年12月で、それまでは現行制度が適用される > - 迷ったらまず地域包括支援センターへ。最新情報は法務省などの公式発表で確認を 成年後見制度は、「最後の手段」に限った制度ではありません。**親の暮らしと財産を家族が守るための選択肢のひとつ**で、改正法の施行後は目的や期間を絞った使い方も選べるようになります。 まずは「うちの場合はどうだろう」と考えてみるところから。その一歩が、いざというときのご家族の支えになります。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度の具体的な利用や手続きの判断については、必ず地域包括支援センター・市区町村の窓口・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。改正法の施行日は政令で定められるため、最新情報は法務省の公式発表をご確認ください。 ## 参考情報(一次情報) - [法務省 - 成年後見制度・成年後見登記制度](https://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html) - [法務省 - 民法等の一部を改正する法律案(令和8年法律第45号・施行期日)](https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00389.html) - [裁判所 - 成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ](https://www.courts.go.jp/saiban/koukenp00/koukenp1/index.html) - [最高裁判所事務総局家庭局 - 成年後見関係事件の概況](https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html) - [厚生労働省 - 成年後見はやわかり](https://guardianship.mhlw.go.jp/) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 【2026年版】高齢者の熱中症予防、在宅介護でどう防ぐ?──室温28℃・水分補給・警戒アラート - **slug**: elderly-heatstroke-prevention-home-care - **公開日**: 2026.6.16 - **更新日**: 2026.8.20 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/elderly-heatstroke-prevention-home-care **要約**: 結論、2026年の夏は統計開始以来もっとも暑く、室温・水分・情報の3点管理が例年以上に重要です。「エアコンをつけてくれない」「水を飲んでくれない」という悩みに、室温28℃以下の目安と熱中症特別警戒アラートの見方を解説します。 **本文**: # 【2026年版】高齢の親を夏の熱中症から守る──在宅介護でできる室内対策と新しい警戒アラートの使い方 > **この記事の要点(3行)** > > - 2026年の夏は、西日本の7月中旬〜下旬の平均気温が1946年の統計開始以来もっとも高く、40℃以上の酷暑日の観測地点数も前年を上回るなど、記録的な暑さが続いている > - 熱中症による死亡者の約8割は65歳以上の高齢者。しかも多くが「屋内・在宅」で起きている > - 高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくいため、室温28℃以下・湿度70%以下を温湿度計で「数字」で管理するのが基本。2024年施行の改正気候変動適応法の「熱中症特別警戒アラート」も家族の判断材料になる 毎年、夏が近づくと介護をするご家族から聞こえてくるのが、**「エアコンをつけてくれない」「水分をあまり摂ってくれない」** という悩みです。 > 「暑くないよ、と言って冷房を切ってしまう」 > 「のどが渇かないから、と水を飲んでくれない」 > 「日中ひとりにする時間が心配でたまらない」 ——こうした不安は、決して大げさなものではありません。高齢の親にとって、夏の室内は「命にかかわる場所」になりうるからです。 **そして2026年の夏は、その危険がいっそう現実味を帯びています。** 気象庁の発表によると、2026年7月中旬〜下旬の西日本の平均気温は、統計を開始した1946年以降でもっとも高い記録となりました。全国で40℃以上の「酷暑日」を観測した地点数も延べ34地点にのぼり、2025年の30地点を上回っています。東海地方では国内初となる5日連続の酷暑日、九州でも観測史上初の酷暑日が記録されました。8月についても、気温がかなり高い日が多くなる見通しが示されています([気象庁 - 2026年7月中旬〜下旬の顕著な高温と今後の見通しについて](https://www.jma.go.jp/jma/press/2608/03b/japan_hot20260803.html))。 この記事では、在宅で高齢の家族を介護するご家族に向けて、**熱中症の正しい知識・今日からできる室内の対策・2024年から始まった新しい警戒情報の使い方**を、公式情報をもとにやさしくまとめました。 > この記事でわかること > - なぜ高齢者は熱中症になりやすく、重症化しやすいのか > - 在宅でできる室温・水分・服薬の具体的な対策 > - 「熱中症警戒アラート」「特別警戒アラート」「クーリングシェルター」の正しい使い方 > - 離れて暮らす親を見守るための工夫 --- ## なぜ高齢の親ほど熱中症が危ないのか 「うちの親は元気だから大丈夫」と思っていても、年齢を重ねた体は、若いころとは違う反応をします。 [環境省「熱中症環境保健マニュアル」](https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php)や厚生労働省の啓発資料によると、高齢者が熱中症になりやすいのには、はっきりとした理由があります。 - **暑さを感じにくい**:皮膚の感覚が鈍くなり、「暑い」という自覚が遅れる - **のどの渇きを感じにくい**:脱水が進んでいても、脳が渇きを感知しにくくなる - **体温調節が遅い**:汗をかきにくく、体に熱がこもりやすい - **体内の水分量が少ない**:もともと若い人より水分の蓄えが少なく、脱水になりやすい その結果、熱中症は **「気づいたときには重症」** になりがちです。環境省・厚生労働省の資料では、**熱中症による死亡者のおよそ8割が65歳以上の高齢者**であり、しかも**その多くが屋内で発生している**ことが繰り返し示されています。 > **ポイント**:熱中症は「炎天下の外」だけのものではありません。エアコンを使っていない室内、入浴中、就寝中にも起こります。「家にいるから安心」は、高齢者には通用しません。 ### 2026年夏の救急搬送データが示すこと **この「屋内で多く発生している」「高齢者が中心」という傾向は、2026年の夏も変わらず、むしろ数字として色濃く表れています。** 消防庁の集計をもとにしたウェザーニュースの報道によると、2026年7月20日〜26日の1週間だけで、熱中症による救急搬送者数は全国で**18,591人**にのぼり、前週の10,857人からおよそ7,700人増加しました。搬送者のうち**65歳以上の高齢者が1万人以上と、全体の半数以上**を占めています。発生場所別に見ると、もっとも多いのは **「住居」** で、「道路」「仕事場」がこれに続きます([ウェザーニュース - 熱中症による救急搬送者 先週から約7,600人増加 高齢者が半数以上](https://weathernews.jp/news/202607/300361/))。 つまり、「炎天下で倒れる」というイメージとは裏腹に、**もっとも多くの高齢者が熱中症になっているのは、ほかでもない自宅の中**なのです。この記事で紹介する室温・水分・アラートの3点管理は、まさにこの「住居」でのリスクに直接効く対策です。 加齢にともなう体の変化への向き合い方は、[親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方](/columns/dementia-care-latest)でも触れていますが、夏の熱中症対策は「本人の感覚に任せず、家族が数字で見守る」ことが何より大切です。 --- ## 在宅でできる室内の熱中症対策 ここからは、自宅で今日から実践できる対策を、4つの柱に分けて紹介します。 ![在宅でできる熱中症対策の4つの柱を中心の「数字で見守る」というハブから放射状に示した図解。室温・湿度管理、こまめな水分補給、エアコンを我慢させない工夫、服薬と入浴への注意という4つの対策をまとめている。](/column-figures/heatstroke-four-pillars-hub.svg) ### 1. 室温と湿度を「数字」で管理する 高齢者は暑さを感じにくいため、**本人の「暑くない」という言葉ではなく、温湿度計の数字で判断する**のが基本です。 厚生労働省・環境省は、室内での熱中症予防の目安として **室温28℃以下・湿度70%以下** を示しています。 - 居室に**温湿度計**を置き、いつでも数字が見える場所に貼っておく - エアコンは「設定温度」ではなく「実際の室温」で調整する(部屋の場所により差が出ます) - 扇風機やサーキュレーターで空気を循環させ、部屋の温度ムラをなくす - 直射日光が入る窓は、すだれ・遮光カーテンで日差しをやわらげる > **コラム:暑さ指数(WBGT)とは** > ニュースで耳にする「暑さ指数(WBGT)」は、①湿度、②日射・輻射熱、③気温の3つを取り入れた指標です([環境省](https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php))。同じ気温でも湿度が高いと熱中症のリスクは上がります。「気温だけでなく湿度も見る」ことが、室内対策のコツです。 ### 2. 「のどが渇く前に」こまめな水分補給 高齢者はのどの渇きを感じにくいため、**渇いてから飲むのでは遅い**のが鉄則です。 厚生労働省の高齢者向けリーフレットでは、**のどが渇いていなくても、こまめに水分を摂る**ことが推奨されています。 - 起床時・食事時・入浴前後・就寝前など、**時間を決めて**コップ1杯の水分を促す - 手の届く場所に常に飲み物を置いておく - 大量に汗をかいたときは、水分とあわせて塩分(経口補水液や少量の塩分補給)も意識する - 食事も水分源になるため、食事量が落ちていないかも見守る ただし、**心臓や腎臓の持病があり水分制限を受けている方**は、自己判断で水分量を増やすのは禁物です。かかりつけ医やケアマネジャーに、夏場の適切な水分量を確認しておきましょう。 ### 3. エアコンを「我慢させない」工夫 「電気代がもったいない」「冷房は体に悪い」と、エアコンを我慢してしまう高齢者は少なくありません。けれど、命を守るためにはエアコンの使用が欠かせません。 - 「体に悪いのは冷やしすぎ。28℃くらいなら大丈夫だよ」と、**正しい知識を一緒に共有する** - リモコンの操作が難しい場合は、**よく使う温度に印をつける**、設定をシンプルにしておく - 就寝中も、タイマーで切らずに**朝までつけたままにする**ことを基本に - フィルター掃除を夏前に済ませ、効きをよくしておく ### 4. 服薬と入浴にも注意する 意外と見落とされがちなのが、薬と入浴です。 - 利尿薬・降圧薬など、**脱水を起こしやすい薬**を服用している場合があります。心配なときは主治医・薬剤師に相談を - 入浴は体に熱がこもりやすく、脱水も進みます。**入浴前後の水分補給**と、長湯を避けることを心がけましょう 冬になると、今度は寒い脱衣所と温かい湯の温度差が入浴中の事故につながります。冬の入浴の備えは[ヒートショック対策、家族は何をすればいい?──冬の入浴事故を防ぐ準備と声かけ、もしもの対応](/columns/heat-shock-bath-safety-family-guide)で整理しています。 身体介助そのもののコツは[自宅での身体介護、どうすればいい?──家族のための介助とコミュニケーションのコツ](/columns/caregiving-practice-basics)にまとめています。あわせてご覧ください。 --- ## 知っておきたい「熱中症警戒アラート」と新しい制度 近年、熱中症対策は**国の制度として大きく前進**しました。家族が仕組みを知っておくと、「今日は特に気をつける日だ」と判断しやすくなります。 ### 改正気候変動適応法で何が変わったか 2023年(令和5年)に改正された [気候変動適応法](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000050) が、**2024年(令和6年)4月に全面施行**されました。これにより、これまで運用ベースだった熱中症警戒情報が**法律に位置づけられ**、新たに以下の仕組みが整いました([環境省](https://www.wbgt.env.go.jp/doc_ccaa.php))。 - 熱中症警戒情報(熱中症警戒アラート)の法定化 - **熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)の創設** - 市町村長による **指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)** の指定制度 ### 2つのアラートの違い | | 熱中症警戒アラート | 熱中症特別警戒アラート | | --- | --- | --- | | 発表の基準 | 府県予報区内のいずれかの地点で、暑さ指数(WBGT)が**33以上**と予測される場合 | 都道府県内の**すべて**の地点で、暑さ指数が**35以上**と予測される場合など | | 発表のタイミング | 前日午後5時・当日午前5時 | 前日午後2時 | | 意味あい | 危険な暑さへの警戒 | **過去に例のない危険な暑さ**。重大な健康被害のおそれ | (出典:[環境省 熱中症予防情報サイト](https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php)) アラートは、テレビ・天気アプリ・環境省のLINEアカウントなどで確認できます。**「明日はアラートが出ている」とわかれば、外出の予定を見直したり、こまめな見守りに切り替えたり**と、前もって備えられます。 ### クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)とは **指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)**は、危険な暑さから避難できる場所として、公民館や図書館などの冷房のある施設を**市町村長が指定**したものです。**熱中症特別警戒アラートが発表されている期間中は、一般に開放**されます([環境省](https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_shelter.php))。 - 自宅のエアコンが故障したとき - 停電で冷房が使えなくなったとき - 日中、涼しい場所で過ごしたいとき ——こうした場面で、近くのクーリングシェルターを知っておくと安心です。お住まいの市区町村のホームページや、地域包括支援センターで、最寄りの施設を確認しておきましょう。 > **ポイント**:制度の手続きや地域のサービスについて迷ったら、まずは地域包括支援センターへ。介護保険の相談と同じく、無料で対応してくれます([親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics))。 --- ## 離れて暮らす親を見守るために 「実家の親が心配だけれど、毎日は通えない」——そんなご家族も多いはずです。遠距離でもできる見守りの工夫があります。 - **電話やビデオ通話のタイミングを暑い時間帯に合わせる**:昼下がりに「エアコンつけてる?」とひと声かけるだけでも違います - **アラートが出た日は連絡を増やす**:天気アプリで実家の地域のアラートをチェックし、出ている日は朝と夕に連絡を - **近くの親族・ご近所・ケアマネジャーと連携する**:訪問の際に室温を見てもらう、声をかけてもらうようお願いしておく - **見守り機器やエアコンの遠隔操作**を検討する:室温を通知してくれる機器や、スマホから操作できるエアコンも増えています 仕事をしながら親を見守る難しさについては、[仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つために](/columns/work-care-balance)でも詳しく扱っています。「ひとりで抱えない」ことは、夏の見守りでも同じです。 --- ## 一人で抱え込まないために 夏の介護は、本人だけでなく、見守る家族にとっても心身の負担が大きいものです。「今日も無事に過ごせるだろうか」という緊張が、毎日続きます。 「エアコンをつけてくれない」「水を飲んでくれない」と、思うようにいかずにイライラしてしまう日もあるでしょう。それは、あなたが真剣に親を心配している証拠です。自分を責める必要はありません。 つらさを感じたときのセルフケアについては、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health)にまとめています。 介護そっとねっとには、同じように親の夏を心配しているご家族がたくさんいます。**「うちもエアコン問題で悩んでる」「こう声をかけたらつけてくれた」**——そんな小さな工夫や気持ちを、匿名でそっと分かち合える場所です。一人で抱え込まず、同じ気持ちの仲間とつながってみてください。 --- ## まとめ > **この記事の要点(再掲)** > - 2026年の夏は統計開始以来もっとも暑い記録が出るなど、例年以上に警戒が必要 > - 熱中症の死亡者の約8割は65歳以上。多くが屋内・在宅で起きている > - 高齢者は暑さ・のどの渇きを感じにくい。室温28℃以下・湿度70%以下を「数字」で管理する > - のどが渇く前にこまめな水分補給。エアコンを我慢させない工夫を > - 2024年施行の改正気候変動適応法で「特別警戒アラート」「クーリングシェルター」が新設 > - 離れて暮らす親は、アラートの出た日に連絡を増やすなど、こまめな見守りを > - 思うようにいかなくても、自分を責めないで。一人で抱え込まないで 高齢の親にとって、夏を元気に乗り切ることは、それだけで大きなことです。完璧な対策でなくて構いません。**温湿度計をひとつ置く、アラートの日に一本電話をかける**——その小さな一歩が、大切な人の命を守ります。 今年の夏も、どうか無理なく、穏やかに過ごせますように。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。持病のある方の水分量・服薬については、必ずかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [環境省 熱中症予防情報サイト](https://www.wbgt.env.go.jp/) - [環境省 熱中症警戒アラート](https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php) - [環境省 改正気候変動適応法](https://www.wbgt.env.go.jp/doc_ccaa.php) - [環境省 指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)](https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_shelter.php) - [厚生労働省 熱中症関連情報](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html) - [e-Gov 法令検索(気候変動適応法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000050) - [気象庁 - 2026年7月中旬〜下旬の顕著な高温と今後の見通しについて](https://www.jma.go.jp/jma/press/2608/03b/japan_hot20260803.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方 - **slug**: acp-jinsei-kaigi-family-guide - **公開日**: 2026.5.26 - **更新日**: 2026.9.1 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide **要約**: 人生会議(ACP)を家族の側から無理なく始めるための具体的な手順をまとめました。厚労省ガイドラインの考え方と、今日からできる「最初の一言」例、認知症が進んでからの向き合い方、よくあるつまずきまで。 **本文**: # 親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方 > **この記事の要点(3行)** > > - 人生会議(ACP)は「もしも」のときの医療・ケアの希望を本人・家族・医療チームで繰り返し話し合うプロセス > - 厚生労働省ガイドラインは2018年改訂で在宅・介護現場を明確に対象化、毎年11月30日は「人生会議の日」 > - 元気なうちから少しずつ・繰り返し・書き留める──完璧を目指さず「いま聞ける一言」から始めるのがコツ > 「もしものとき、お父さんはどうしてほしい?」 > > ——そう聞きたい気持ちはあるのに、いざ口に出すのはこわい。 > 縁起でもない、と怒られるかもしれない。元気な親に、終わりの話をするなんて。 そう感じているご家族はとても多いです。けれど、何も話せないまま入院や急変の場面を迎えてしまうと、家族は **「これでよかったのだろうか」** という後悔を長く抱えることになります。 この記事では、**人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)** を、家族の側から無理なく始めるための具体的な手順をまとめました。専門書のような難しさはありません。**「いまのうちに、ちょっとだけ聞いておく」** ところからで大丈夫です。 > この記事でわかること > - 人生会議(ACP)とは何か、なぜ家族にとって大切なのか > - 厚労省ガイドラインが示す「いつ・誰と・どう話すか」の枠組み > - 家族が今日から始められる「最初の一言」の例 > - 話したことの残し方と、専門職への伝え方 > - 同じ気持ちを抱える人とつながる場所 --- ## 人生会議(ACP)とは何か 人生会議は、厚生労働省が ACP(Advance Care Planning) の愛称として2018年に公募・決定した呼び方です。意味はとてもシンプルで、 > **もしものときに、自分が望む医療やケアについて、信頼する人たちと前もって話し合い、繰り返し共有しておくこと。** 厚労省の[「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf)は2018年3月に改訂され、**病院での延命治療だけでなく、在宅医療・介護の現場も対象に含める** ことが明確化されました。医療・ケアチームのなかに **介護従事者** も位置づけられたのが、家族介護者にとって大きな意味を持つ変更点です。 毎年 **11月30日は「人生会議の日」**(いい看取り・看取られの語呂合わせ)として、各自治体や医療機関で考えるきっかけが設けられています。 ### 「終活」とどう違うのか 似た言葉に「終活」がありますが、人生会議は **モノやお金の整理ではなく、本人の気持ちと医療の選択を扱うもの** です。 | | 人生会議(ACP) | 終活 | | --- | --- | --- | | 主な対象 | 医療・ケアの意思決定 | 財産・モノ・葬儀の準備 | | 進め方 | 本人と家族・医療チームの対話の繰り返し | 主に本人が手元で整理 | | ゴール | 状況が変わるたびに更新する | 一通り済ませて保管する | ACPは **「一度決めたら終わり」ではない** のが核心です。厚労省ガイドラインも「**心身の状態に応じて意思は変化しうる**」ことを最重要前提として明記しています。 --- ## なぜ家族こそ早めに始めたほうがいいのか 統計が示すのは、**「話せないまま最期を迎える家族が圧倒的に多い」** という現実です。 - 60歳以上を対象にした厚労省の調査([人生の最終段階における医療に関する意識調査](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf))では、「最期をどこで迎えたいか」を家族とよく話し合っていると答えた人は **約3〜4割** にとどまります - 一方で、**約7割** の人が「家族には自分の希望を知っていてほしい」と答えています つまり、**「話してほしい人」と「聞いてほしい人」のあいだに大きなギャップ** があるということです。 家族側にとっても、事前の話し合いがあるかどうかで負担が大きく変わります。話し合えていないまま救急搬送や急変の場面を迎えると、 - 治療方針(人工呼吸器・胃ろう・心肺蘇生など)を **数分単位で代理決定** しなければならない - どの選択が「親の意思」なのか確証が持てず、決めた後にも自分を責め続ける - 兄弟姉妹のあいだで意見が割れ、関係が長くこじれる ——こうした状況は、[親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方](/columns/dementia-care-latest)で扱った「同じ立場の家族の悩み」と地続きです。**判断の負担を、家族が一人で背負わずに済むようにする** ことこそ、人生会議のいちばんの効用と言えます。 --- ## はじめての一歩:今日できる「最初の一言」 人生会議は、改まって会議室で「さあ始めましょう」とやるものではありません。**日常の会話のなかに、小さな一言を差し込む** ところから始めるのが現実的です。 ### きっかけにできる「やわらかい一言」例 - 親戚や有名人の訃報が話題になったとき → 「お父さんは、自分のときはどんなふうにしてほしい?」 - 退院・通院の帰り道 → 「もしまた入院することになったら、どこで過ごしたい?」 - テレビで延命治療のニュースが流れたとき → 「こういうの、自分のときどう思う?」 - 元気なとき、何気ない夕食どきに → 「もしものとき、誰に決めてほしい?私でいい?」 ポイントは、**「いま決めよう」と迫らないこと**。一回で全部を聞き出す必要はなく、**「今日はこれだけ聞けた」** で十分です。 ### 聞いておきたい5つのテーマ 繰り返しの会話のなかで、少しずつ次の5つを埋めていきます。 1. **大事にしている価値観**(自分らしさとは / 人に迷惑をかけたくないか、寄りかかってよいと思うか) 2. **どこで過ごしたいか**(自宅 / 病院 / 施設) 3. **してほしいこと・してほしくないこと**(食べられなくなったら / 意識が戻らなくなったら / 痛みが強いとき) 4. **誰に決めてほしいか**(医療上の代理決定者) 5. **会いたい人・伝えたいこと**(最期の場面で側にいてほしい人) ![人生会議(ACP)で少しずつ埋めたい5つのテーマを順に並べた図解。価値観、過ごしたい場所、してほしいこと・してほしくないこと、代理決定者、会いたい人・伝えたいことの5ステップと、日常会話からの一言、記録、専門職への共有という流れを示している。](/column-figures/acp-five-themes-process.svg) ### 「親が話したがらない」とき 「縁起でもない」と一蹴されることもあります。そのときは無理に押さず、**「気が向いたら聞かせて。私も聞いておきたいから」** と扉だけ開けておきましょう。話したくなる瞬間は、ある日ふいに訪れます。 --- ## 話したことを、どう残すか 人生会議は **話し合いそのものが目的** であり、書類を作ること自体が目的ではありません。ただし、**書き留めておくこと** には大きな意味があります。 ### 紙に残す方法 - 自治体や医師会が配布している **「私の意思表示シート」「もしもノート」** を使う(横浜市、神戸市、福岡市など多数の自治体が公開) - 厚労省作成の冊子 [「これからの治療・ケアに関する話し合い ─ アドバンス・ケア・プランニング ─」](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html) も活用可能 - 日付を入れて保管(**意思は変わるので、上書きを前提に**) ### 介護そっとねっとを使ったゆるい記録 毎回ノートを開くのが負担なら、**介護そっとねっとに「ひとりごと」感情タグで投稿しておく** のもひとつの方法です。 - 「今日、母が『家で最期を迎えたい』と言ってくれた」 - 「父はやっぱり延命治療は望まないみたい」 匿名で残せるので、家族間で見せる前提の重さがありません。後から振り返ったとき、**「あのとき、こう話していた」** という事実が、家族の判断を支えてくれます。 [同じ気持ちを抱える方とつながりたい](/columns/app-renewal-2026-may)というご家族にとって、感情タグ機能はそのまま「人生会議の覚え書き」としても使えます。 ### 専門職に伝えておく 書き留めた内容は、**ケアマネジャー・主治医・訪問看護師にも共有** しておきましょう。在宅医療では、本人の意向が文書で残っていることで、救急搬送時の判断や訪問医の対応がスムーズになります。「最期は家で」という希望が出てきたときに家族が準備すること、呼吸が止まったときに最初に電話する先の決め方は、[在宅看取りで家族が準備することと亡くなったときの連絡先](/columns/zaitaku-mitori-family-guide)にまとめています。 [在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト](/columns/home-care-preparation) でも触れたとおり、専門職は「家族の代弁者」ではなく **「家族と本人を一緒に支えるチームの一員」** です。話し合った内容を共有することは、決して立ち入った話を持ち込むことではありません。 --- ## 認知症が進んでからでも、遅くはない 「もう認知症が始まってしまった。話し合うのは無理かもしれない」——そう感じるご家族もいらっしゃいます。 けれど、人生会議は **「明確な意思表示ができるかどうか」ではなく、「その人らしさを家族と専門職で再構成していく営み」** です。 - 過去の口癖(「迷惑かけたくない」「家で死にたい」など) - 好きだったもの、嫌いだったもの - 元気だったころの選択や生き方 これらを家族・介護者・医療者が持ち寄ることで、**「この人ならこう望むはず」** という推定意思を組み立てることができます。これは厚労省ガイドラインでも「家族等が本人の意思を推定する」プロセスとして位置づけられています。 認知症ケアの基本については[親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方](/columns/dementia-care-latest)で詳しく扱っていますが、人生会議の文脈でも **「その人らしさ」を中心に置く** という基本姿勢は変わりません。 --- ## 一人で抱えないために 人生会議は、本人と家族の対話であると同時に、**家族自身の心を整える時間** でもあります。 - 「自分が決めなければ」と思い詰めていませんか - 兄弟姉妹のなかで、誰か一人に重みが偏っていませんか - 専門職に「ここまで聞いていいのかな」と遠慮していませんか [介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health) でもお伝えしたとおり、**抱え込みは、いずれ介護そのものを難しくします**。話したい気持ち・つらい気持ちを、安全な場所で表に出す——それも人生会議の一部です。 介護そっとねっとには、同じように親の「もしも」と向き合っているご家族がたくさんいます。匿名のひとりごととして書くだけでも、自分の気持ちの整理になります。 --- ## 人生会議でつまずきやすいのはどんなとき? **「話を進めようと焦る」「深刻な場面まで先延ばしにする」「家族の中で温度差がある」の3つが、よくあるつまずきです。** どれも本人や家族の気持ちが弱いから起きるのではなく、進め方の順番が原因であることがほとんどです。 ### 1. 本人の気持ちの準備より先に話を進めてしまう 家族が「早く聞いておかないと」と焦るあまり、本人の心の準備が整う前に踏み込んだ質問を重ねてしまうことがあります。本人にとって重すぎるタイミングで将来の話を迫られると、かえって将来への希望や意欲を見失わせてしまう心配があります。**「今日はこれだけ聞けた」で区切る姿勢**(前述)は、この失敗を避けるための工夫でもあります。 ### 2. 「重い場面」になってから初めて切り出す 体調が急変した後や、深刻な診断を受けた直後に初めて人生会議を切り出そうとすると、本人・家族ともに気持ちの余裕がなく、話の切り出し方が分からないまま気まずさだけが残ることがあります。だからこそ、この記事で紹介したような **なんでもない日常の一言から少しずつ** が現実的な進め方になります。 ### 3. 家族の中で意見の温度差があるまま進めてしまう きょうだいの誰か一人だけが熱心に人生会議を進めようとすると、他の家族との間に「勝手に話を進められた」という不信感が生まれることがあります。話し合った内容は、**特定の家族だけで抱えず、早い段階できょうだい全員に共有する**ことを意識すると、後々の対立を防ぎやすくなります。 ### 4. 本人の意思が確認できないまま、家族だけで判断してしまう すでに意思疎通が難しい状態で人生会議の必要性に気づくケースも少なくありません。この場合は、前述の「認知症が進んでからでも、遅くはない」で触れた**推定意思の組み立て**が現実的な進め方になります。家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや主治医と一緒に「この人ならどう考えるか」を整理していく姿勢が助けになります。 いずれのつまずきも、「一度に完璧に済ませよう」とする発想から生まれがちです。今日この記事を読み終えたら、まずは家族の誰か1人に「実は人生会議について読んだよ」と一言共有してみてください。それだけで、家族の中の温度差を埋める最初の一歩になります。 --- ## まとめ:完璧を目指さなくていい > **この記事の要点(再掲)** > - 人生会議(ACP)は、「もしも」のときの医療・ケアの希望を、本人・家族・医療チームで **繰り返し** 話し合う営み > - 厚労省ガイドラインは2018年改訂で在宅・介護現場と介護従事者を明確に対象化 > - 「最初の一言」は日常会話のなかから。一回で全部聞こうとしない > - 価値観 / 場所 / してほしくないこと / 代理決定者 / 会いたい人 の5テーマを少しずつ > - 書き留めて、ケアマネ・主治医にも共有する > - 認知症が進んでも、その人らしさからの推定は可能 > - 抱え込まず、同じ立場の家族とつながる > - よくあるつまずきは「焦り」「先延ばし」「家族間の温度差」。早めの共有でどれも避けられる 人生会議に「正解」はありません。**親の言葉を聞けた、その時間そのものが、家族にとっての宝物** になります。 今夜の夕食どきにでも、たった一言、聞いてみませんか。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な医療判断は主治医・かかりつけ医にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf) - [厚生労働省 - 「人生会議」してみませんか](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html) - [厚生労働省 - 人生の最終段階における医療に関する意識調査](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf) - [日本医師会 - 終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える](https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/006359.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護そっとねっとアプリ大幅リニューアル:新しくなった機能とデザインのご紹介 - **slug**: app-renewal-2026-may - **公開日**: 2026.5.20 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/app-renewal-2026-may **要約**: 介護そっとねっとアプリが大幅リニューアル。カード化されたフィード、感情タグでつながる共感、Web シェアリンクなど、新しくなった機能とデザインをご紹介します。 **本文**: # 介護そっとねっとアプリ大幅リニューアル:新しくなった機能とデザインのご紹介 > **この記事の要点(3行)** > > - フィード・プロフィール・通知を **カード化** したやさしいデザインに刷新 > - 感情タグで **同じ気持ちのつぶやき** にたどりつける類似投稿機能 > - 投稿リンクで Web ブラウザでも見られる **シェア機能** を新搭載 いつも介護そっとねっとをご利用いただきありがとうございます。このたびアプリを **大幅リニューアル** いたしました。介護に向き合うみなさまが、より使いやすく、より共感に出会いやすい形を目指して、デザインと機能を一新しています。 > この記事を読むとわかること > - 新しくなったデザインのポイント > - 追加された主な機能 > - 既存ユーザーの皆さまへのお願い --- ## 1. やさしいカードデザインに刷新 これまでフラットな一覧表示だった画面を、すべて **カード型のデザイン** に刷新しました。 ### 変わったところ - **フィード(つぶやき一覧)**: 各投稿が角丸カードに、余白広く、軽いシャドウで読みやすく - **プロフィール**: ヘッダーがカード化、avatar とプロフィール情報が一体化 - **通知**: 通知タイプ別の色付きアイコンで、ひと目で何の通知かわかるように - **コミュニティ管理**: 一覧がカード化、参加コミュニティが見つけやすく - **検索結果**: ユーザー / コミュニティの結果カードを統一感ある見た目に ブランドカラーの **やさしい琥珀色(amber)** はそのままに、UI のすみずみまでカードとシャドウで「やわらかい印象」に揃えました。 ![介護そっとねっとアプリのリニューアル前後を比較する図解。左にBefore(フラットな一覧・見分けにくい通知・アプリ内のみの共有など)、右にAfter(角丸カードデザイン・色付き通知アイコン・感情タグでの類似投稿・Webシェアリンクなど)を並べ、矢印で変化を示している。](/column-figures/app-renewal-2026-may-before-after.svg) --- ## 2. 感情タグで「同じ気持ち」に出会える 投稿に付けられる **感情タグ**(うれしい / つらい / ありがとう / ひとりごと / ほっこり / 気づき / 共有 / 疲れた / 相談)が、共感への入口になりました。 ### 新機能:類似投稿 投稿詳細ページで「**同じ気持ちのつぶやき**」セクションを追加。同じ感情タグの最近の投稿が表示され、 - 「ほっこり」のつぶやきから、別の人の「ほっこり」へ - 「つらい」気持ちが、別の誰かの「つらい」と重なる そんなふうに、感情をキーに **共感のつながり** を広げられます。 ### Web 投稿一覧での感情フィルタ **https://kaigo-sottonet.com/posts** にアクセスすると、Web ブラウザでも公開投稿を閲覧できます。感情タグでフィルタすれば、「いまの自分の気持ちに近いつぶやき」をすぐに見つけられます。 --- ## 3. Web シェアリンク機能 投稿の共有メニューに **「リンクをコピー」** を追加しました。コピーした URL を SNS(X / LINE 等)に貼り付けると、 - 投稿の本文 + 投稿者名がプレビュー表示 - リンクをタップすると Web ブラウザで投稿ページが開く - スマホからは **アプリで自動的に開く**(インストール済みの場合) 「この気持ち、誰かに届けたい」「アプリを知らない友人にも見てもらいたい」というときにご活用ください。 --- ## 4. プルtoリフレッシュ・スクロール体験の改善 地味ですが嬉しい改善も多数。 - **プルtoリフレッシュ**: 引っ張った位置にちゃんとインジケータが表示されるように - **ヘッダー自動格納**: 下スクロールで上部ヘッダーが隠れ、フィードを広く見られる - **コミュニティ画面**: 自動的に refresh が走らなくなり、無駄な読み込みを抑制 --- ## 5. その他の改善 - DM 一覧の初回ロード安定化 - スポットライトガイドの位置調整 - 返信メッセージの改行対応 - プッシュ通知文面の自然化(「{表示名}:{内容}」形式) - プロフィール編集後の表示名反映を即時化 --- ## 既存ユーザーの皆さまへ ### アップデート方法 - **iOS**: App Store でアプリを開き、「介護そっとねっと」を検索して **アップデート** ボタンをタップ - **Android**: Google Play で同様にアップデート リニューアル版は **v1.2.x 以降** となります。 ### データ移行は不要 ログイン情報・投稿・コミュニティ参加状況などはすべて引き継がれます。アップデート後にそのままご利用いただけます。 ### 不具合や要望はお問い合わせから 新デザイン・新機能について、ご意見・ご要望は [お問い合わせフォーム](/contact) からお寄せください。皆さまの声を反映しながら、これからも改善を続けてまいります。 --- ## これからの介護そっとねっと 介護は、誰かと話したくても話せない場面が多いものです。私たちは、 - **匿名でそっと話せる場所** - **同じ気持ちと出会える仕組み** - **専門家の知見にも触れられる情報源** の 3 つを軸に、これからも進化していきます。今後もどうぞよろしくお願いいたします。 > **この記事の要点** > - フィード・プロフィール・通知をカード化してやさしいデザインに > - 感情タグから類似投稿に出会える機能を追加 > - Web シェアリンク(リンクコピー)で外部に届けやすく > - プル to リフレッシュ・スクロール体験を改善 > - 既存ユーザーはアップデートのみで利用可、データ移行不要 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つために - **slug**: work-care-balance - **公開日**: 2026.5.18 - **更新日**: 2026.9.8 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/work-care-balance **要約**: 結論、仕事と介護を両立する約365万人のビジネスケアラーにとって鍵になるのは、介護休業・介護休暇などの法定制度の活用と、自分の時間を先に確保する時間管理です。実践的なコツと相談窓口をやさしく解説します。 **本文**: # 仕事と介護の両立:時間管理と心の余白を保つために > **この記事の要点(3行)** > > - 仕事と介護の両立に悩む「ビジネスケアラー」は約365万人([総務省 就業構造基本調査 2022](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html)) > - 介護休業(最大93日×3回)・介護休暇(年5日)など法定制度を「使えること」ではなく「実際に使う」ことが両立の分かれ目 > - 時間管理は「自分の時間を先に予約する」、心の余白は「相談先と楽しみを確保する」ことで守れる 「親の介護が始まったけれど、仕事も辞められない」「兄弟と分担しているが、自分の生活が回らない」——働きながら家族の介護を担う**ビジネスケアラー**が日本で急増しています。 [総務省「就業構造基本調査(2022年)」](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html)によると、介護をしながら働く人は約365万人。経済産業省の試算では、ビジネスケアラーの仕事と介護の両立困難による経済損失は2030年に約9兆円規模に達するとも言われています。 > この記事を読むとわかること > - 仕事と介護の両立に活用できる法定制度と、使いこなすための実務上のコツ > - 時間管理と心の余白を保つ実践的な方法 > - 兄弟・親族での分担の進め方 > - 相談できる窓口と、退職を考える前に確認したいこと ただし、法定制度は「存在は知っているが、実際には使えていない」という声も少なくありません。**なぜ制度を知っていても使いづらいのか**、その理由と対処法については後半でくわしく触れます。 --- ## 仕事と介護の両立に使える法定制度とは? **[育児・介護休業法](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html)には、仕事を続けながら家族の介護を担うための複数の制度が定められています。まとまった期間に使う「介護休業」と、単発の用事に使う「介護休暇」の2本柱で理解すると使い分けやすくなります。** ### 介護休業(最大93日) - **対象**: 要介護状態の家族1人につき通算**93日まで**、3回まで分割取得可能 - **取得単位**: 日単位 - **賃金**: 原則無給だが、雇用保険から **介護休業給付金(賃金の67%)** が支給される - **手続き**: 取得開始日の2週間前までに会社へ書面で申請 「介護に専念する1〜3ヶ月」が必要なときに使う制度です。93日を1回で使い切る必要はなく、たとえば「入院時の付き添いで2週間」「退院後の在宅体制づくりで1ヶ月」のように、状況に応じて3回まで分けて取得できます。 ### 介護休暇(年5日) - **対象**: 要介護状態の家族1人につき**年5日**(2人以上なら年10日) - **取得単位**: 1日 or 半日 or **時間単位**(2021年から拡充) - **賃金**: 会社規定によるが、原則無給扱いも可 - **用途**: 通院付き添い、ケアマネとの打ち合わせ、書類対応 「ちょっと半日だけ抜けたい」というケアに使う制度です。 ### その他の制度 | 制度 | 内容 | | --- | --- | | **短時間勤務** | 1日6時間など、勤務時間短縮 | | **時差出勤** | 始業・終業時間をずらす | | **時間外労働の制限** | 月24時間・年150時間以内に制限を請求できる | | **深夜業の制限** | 22時〜5時の勤務を免除請求できる | | **テレワーク** | 多くの企業で柔軟運用が進行 | これらは**法律で定められた権利**です。会社に申請するときは、就業規則と合わせて確認しましょう。就業規則には、法律で定められた最低基準を上回る独自の制度(介護休業中の一部有給化、短時間勤務の対象期間の延長など)を設けている会社もあるため、「うちの会社は法律通りなのか、それ以上なのか」を人事担当者に確認しておくと、使える選択肢を見落とさずに済みます。 ### 制度を知っていても使いづらいのはなぜ? 「制度があるのは知っているが、実際に申請するのは気まずい」という声は根強くあります。背景には、介護をしていることを職場に伝えると評価やキャリアに影響するのではという不安、前例が少なく手続きの実態がわからない不安があります。 この状況を変えるため、2025年4月の育児・介護休業法改正で、**労働者が介護に直面したことを申し出た場合、会社が利用可能な制度を個別に周知し、利用の意向を確認することが義務化**されました。つまり、以前は「制度を知っている労働者が自分から申請する」のが前提でしたが、改正後は**会社側から案内する義務**が加わっています。「言い出しにくい」と感じる場合は、まず人事担当者や上司に「家族の介護が始まった」ことだけでも伝えてみてください。会社側から制度の案内を受けやすくなります。 --- ## 自分の時間はどう確保する? **両立がうまくいかない原因の多くは、「介護の時間」と「仕事の時間」だけでスケジュールが埋まり、自分の時間が消えることにあります。** ### 1週間のタイムブロック | 時間帯 | 平日 | 週末 | | --- | --- | --- | | 朝6〜8時 | 自分の身支度・朝食 | ゆっくり起床 | | 日中9〜18時 | 仕事 | 介護タスク(通院・買い物) | | 夕方18〜20時 | 介護対応 | 自分の趣味・運動 | | 夜20〜22時 | 食事・家事 | 家族との時間 | | 夜22時以降 | **自分の時間(読書・入浴・SNS)** | 同左 | ポイントは、**「自分の時間」をカレンダーに予約として入れる**こと。空き時間に押し込むのではなく、最初から確保します。介護の予定は病院の付き添いやケアマネとの面談など、動かせない予定から先に埋まっていくため、自分の時間を後回しにすると真っ先に消えてしまいます。「今週は水曜と土曜の夜22時以降は自分の時間」のように、先にブロックしてしまうのがコツです。 ### 介護サービスを最大限活用する - **訪問介護**: 朝・夕の食事や入浴を任せる - **デイサービス**: 平日昼間を任せ、仕事に集中 - **ショートステイ**: 月1〜2回利用して、自分の休息を確保 - **配食サービス**: 食事準備の負担を減らす 「全部自分でやらない」が両立の基本です。どのサービスをどう組み合わせるかは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics)で解説しているケアプランの考え方が土台になります。仕事との両立を前提にケアプランを組みたい場合は、その旨をケアマネジャーに具体的に伝えると、通所系・訪問系のバランスを提案してもらいやすくなります。 ![仕事と介護を両立するビジネスケアラー(約365万人)を支える3つの柱、法定制度の活用・時間管理の工夫・心の余白を保つ方法を、中央のハブから3カラムに分岐させて示した図解。](/column-figures/work-care-balance-three-pillars.svg) --- ## 心の余白はどう守る? **時間管理だけでなく、心の余白がなければ両立は続きません。** 相談できる窓口を複数持つことと、自分のための楽しみを削らないことの2つが柱になります。 ### 相談できる窓口を3つ確保する 1. **専門相談**: [地域包括支援センター](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) — 介護の困りごと全般 2. **職場相談**: 人事・上司 — 制度活用や勤務調整 3. **私的相談**: 介護経験者の友人・SNS — 気持ちの共有 介護そっとねっとアプリでは、匿名で介護の悩みを共有できる場を提供しています。「実名では話せないけど聞いてほしい」気持ちに、そっと寄り添います。一人で抱え込みやすい方の傾向やセルフチェックについては、[介護のつらさと向き合う](/columns/caregiver-mental-health)でもくわしく紹介しています。 3つの窓口は、それぞれ役割が異なります。地域包括支援センターは制度やサービスの具体的な調整に強く、職場相談は勤務条件そのものを変える力を持ち、私的な相談先は「ただ聞いてもらう」ことで気持ちを軽くする役割を担います。**「制度の相談」と「気持ちの相談」を同じ窓口でまとめて済ませようとしない**のがコツです。地域包括支援センターに愚痴を聞いてもらおうとしても本来の役割とずれてしまいますし、逆に友人に制度の相談をしても解決には至りません。窓口ごとの役割を意識して使い分けると、それぞれの相談がスムーズに進みます。 ### 「楽しみ」を残す 両立を続けるには、**自分のためだけの楽しみ**が必要です。 - 週1回のカフェ時間 - 月1回の映画館 - お風呂で読書する30分 - 散歩や軽い運動 「介護があるから諦めなきゃ」ではなく、「介護があるからこそ自分の楽しみは死守」。これが長く続けるコツです。楽しみを削り続けた先に待っているのは、燃え尽きて共倒れになるという最悪のパターンです。小さな楽しみを死守することは、わがままではなく、両立を長続きさせるための実務的な選択だと捉えてみてください。 --- ## 兄弟・親族でどう分担する? **一人で抱えると、必ず限界が来ます。早めに親族会議を開いて、分担を明確にすることが両立の土台になります。** ### 分担の例 | 担当 | 役割 | | --- | --- | | **主介護者** | 日常のケアと連絡窓口 | | **副介護者** | 月数回の応援、緊急時対応 | | **資金担当** | 介護費用の管理 | | **遠隔担当** | 電話・LINEでの精神的サポート、書類対応 | 「近くに住んでいる人=全てを担う」ではなく、**役割を分けて全員参加**にします。特に「近くに住んでいる」という理由だけで一人に負担が集中するケースは非常に多く、後になって不公平感からきょうだい間の関係がこじれる原因にもなります。分担の決め方やお金の話し合い方の具体的な進め方は、[親の介護、兄弟の分担はどう決める?──揉めないための話し合い4ステップとお金の分け方](/columns/kyodai-kaigo-buntan-family-guide)でくわしく解説しています。 分担を決める際は、「誰が何をやるか」だけでなく「いつ見直すか」もあらかじめ決めておくと長続きします。介護の状況は本人の体調や要介護度の変化によって数ヶ月単位で変わっていくため、最初に決めた分担がずっと同じ形で続くとは限りません。「3ヶ月に一度、オンラインでも良いので分担の状況を確認し合う」というルールを最初に作っておくと、状況が変わったときに「言い出しにくくて我慢していた」という事態を防げます。 --- ## 退職を考える前に確認したいことは? **介護離職を決める前に、制度とサービスを一通り試したかどうかを振り返ることが重要です。** 介護離職は人生に大きな影響を与えます。 - **収入が途絶える** → 自分の老後資金が減る - **社会とのつながりが減る** → 介護うつのリスクが上がる - **再就職が難しくなる** → 50代以降は特に 退職する前に、次を確認しましょう。 - 会社の人事に制度活用を相談したか(介護休業・介護休暇・短時間勤務など、使っていない制度が残っていないか) - ケアマネと**介護サービスの最大活用**を協議したか(訪問介護・デイサービス・ショートステイの利用回数は上限まで使い切っているか) - [地域包括支援センター](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/)で公的支援を確認したか これらを試した上で、それでも限界なら退職を検討する——という順序が大切です。なお、2025年4月の育児・介護休業法改正で、会社が介護に直面した社員に制度を個別に案内する義務や、介護休暇を取りやすくする要件緩和が加わりました。改正で広がった「働きながら介護する家族の権利」については、[介護しながら働く人は2025年の法改正で何が変わった?──会社の義務と、介護休業・残業免除など使える制度](/columns/work-care-balance-2025-law)でくわしく解説しています。 --- ## 両立でつまずきやすい失敗パターンと避け方 - **制度を使わずに一人で抱え込み、限界まで我慢してから相談する**:「みんな我慢しているはず」という思い込みで法定制度の利用を先送りにすると、体調を崩してから慌てて対応することになりがちです。介護が始まった時点で、一度制度の一覧を確認しておくと安心です。特に介護休業は「まとまった期間が必要になってから初めて存在を知る」というケースが多く、いざというときに慌てて手続き方法を調べることになりがちです - **自分の時間を「余ったら取る」ものだと考えてしまう**:介護と仕事の予定を優先して埋めると、自分の時間は最後まで残りません。先に予約するという発想の転換が必要です - **一人で全部担おうとして、兄弟・親族に頼るタイミングを逃す**:「迷惑をかけたくない」という気持ちが先に立ち、分担の相談自体を先延ばしにしてしまうことがあります。早い段階で「一緒に考えてほしい」と声をかけるだけでも状況は変わります - **会社に相談する前に「どうせ理解されない」と決めつけてしまう**:2025年の法改正で会社側の周知義務が強化されたこともあり、実際に相談してみると想定より柔軟に対応してもらえるケースもあります いずれも、「一人で頑張りすぎる前に、使えるものを先に確認する」という一手間で防げるものばかりです。共通しているのは、我慢や遠慮が「まだ大丈夫」という判断を後押ししてしまう点です。制度・時間・分担のどれか一つでも「そういえば確認していなかった」と思い当たるものがあれば、そこから見直してみることをおすすめします。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **介護休業(最大93日×3回)と介護休暇(年5日)は役割が異なる制度**。まとまった期間が必要なら休業、単発の用事なら休暇と使い分けられる - **自分の時間は「余ったら取る」のではなく「先にスケジュールへ予約する」** ことで守れる。介護サービスも「全部自分でやらない」前提で組み合わせる - **退職は最後の選択肢**。制度・介護サービス・親族分担を一通り試したかを振り返ってから判断する 今日からできる小さな一歩として、今週のスケジュール帳を開いて、「自分だけの時間」をどこか1コマだけ先に予約してみてください。それだけで、両立の負担感が少し変わってくるはずです。仕事と介護の両立は、決して一人の頑張りで成立するものではありません。制度と人とサービスをうまく組み合わせて、長く続けられる形を少しずつつくっていきましょう。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 育児・介護休業法](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html) - [総務省 - 就業構造基本調査](https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html) - [厚生労働省 - 仕事と介護の両立](https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/balance) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 自宅での身体介護、どうすればいい?──家族のための介助とコミュニケーションのコツ - **slug**: caregiving-practice-basics - **公開日**: 2026.5.16 - **更新日**: 2026.6.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/caregiving-practice-basics **要約**: 「腰を痛めそう」「どう声をかければいいかわからない」——自宅で家族の介護をするときの身体介助の基本、本人と心が通うコミュニケーション、ケアマネジャーなど専門職への頼り方まで、やさしくまとめました。 **本文**: # 自宅での身体介護、どうすればいい?──家族のための介助とコミュニケーションのコツ > **この記事の要点(3行)** > > - 介助は「観察 → 声かけ → 体の使い方」の順番で。力で持ち上げない > - 声かけと「言葉にならないサイン」の観察が、本人の安心と事故予防につながる > - ケアマネジャーなどの専門職は「頼っていい相手」。家族側の悩みも立派な相談ごと 「自宅で親の介護をすることになったけれど、体の支え方も、声のかけ方もわからない」——在宅介護を始めたご家族の多くが、同じ不安を抱えています。でも大丈夫。介護のプロが現場で使っている技術には、**家庭でもそのまま役立つ考え方** がたくさんあります。この記事では、家族の目線に立って、身体介助の基本・本人とのコミュニケーション・専門職への頼り方をやさしく整理しました。 > この記事を読むとわかること > - 腰を痛めず、本人も怖くない介助の基本 > - 本人の気持ちに寄り添う声かけと、サインの読み取り方 > - ケアマネジャー・訪問看護師など専門職との上手な付き合い方 --- ## 1. 介助は「観察」から始める 身体介護というと「抱え方」「支え方」の技術がイメージされがちですが、実はいちばん大切なのは **介助の前の「観察」** です。プロの介護職も、体に触れる前に必ず本人の様子を確かめています。 ### 介助前に見ておきたいポイント | 観察項目 | チェック内容 | | --- | --- | | 表情・顔色 | 痛そうにしていないか、いつもより元気がないか | | 体調 | 食事の量、睡眠、トイレの回数に変化はないか | | 動き | 昨日できていた動作が、今日もできているか | | 環境 | 床が濡れていないか、車椅子のブレーキ、ベッドの高さ | 「いつもと違う」に気づけるのは、毎日そばにいる家族だからこそです。気づいた変化は、スマホのメモなどに日付つきで残しておきましょう。あとで紹介するケアマネジャーや医師に相談するとき、大きな手がかりになります。 ### 声かけは「前・最中・後」の3段階 介助の声かけは、次の3段階を意識するだけで、本人の安心感が大きく変わります。 - **介助の前**: 「これから車椅子に移るよ」と、何をするかを伝える - **介助の最中**: 「いま起き上がるよ、せーの」と、動きを合わせる - **介助の後**: 「ちゃんと座れたね。痛いところはない?」と確認する 家族同士だと、つい声かけを省略しがちです。でも、無言のまま体に触れられると、本人は驚いて体をこわばらせてしまい、かえって転倒のリスクが高まります。**「いきなり触れない」** が介助の基本です。 --- ## 2. 腰を痛めない介助の基本 在宅介護で家族がいちばん痛めやすいのが腰です。介護を長く続けるためにも、**自分の体を守る介助** を覚えておきましょう。 ### 体の使い方(ボディメカニクス)の3原則 1. **足を肩幅より広く開き、本人に近づく** — 離れた位置から腕の力だけで支えない 2. **膝を曲げて重心を落とす** — 腰を曲げてかがまない 3. **持ち上げず、回す・滑らせる** — 力ではなく、てこの原理を使う > 厚生労働省「[職場における腰痛予防対策指針](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31197.html)」でも、人の力だけで抱え上げる介助はできる限り避け、リフトやスライディングシートなどの**福祉用具を活用すること**が推奨されています。プロでさえ道具に頼るのですから、家庭の介護ならなおさらです。 ### 福祉用具は介護保険でレンタルできる 「道具に頼るのは申し訳ない」と感じる方もいらっしゃいます。でも、福祉用具は本人の安全と、あなたの体を守るための仕組みです。介護ベッド・手すり・スライディングボードなどの多くは **介護保険の福祉用具貸与** の対象で、月々数百円〜数千円程度の自己負担でレンタルできます。 申請の流れや費用のしくみは、[親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説](/columns/nursing-insurance-basics) で詳しく紹介しています。どの用具がレンタルでどれが購入になるのか、選び方まで知りたい方は [介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase) もあわせてご覧ください。 なかでも入浴の介助は、床の滑りやすさに加えて、脱衣所と浴室の急な温度差による体調の変化にも気を配る必要があります。冬場の入浴前の準備や声かけのしかたは、[ヒートショック対策、家族は何をすればいい?──冬の入浴事故を防ぐ準備と声かけ](/columns/heat-shock-bath-safety-family-guide)にまとめています。 ![自宅での身体介助を「観察→声かけ→体の使い方」の3ステップで示した線形プロセス図解。各ステップの具体的なポイントと、腰を守り本人も怖くない介助につながる結果を矢印でつないで示す。](/column-figures/home-care-assistance-flow.svg) --- ## 3. 本人と心が通うコミュニケーション ### 傾聴の3つの姿勢 介護される側になった親は、「迷惑をかけている」という遠慮から、本音を言えなくなることがあります。だからこそ、話を聴く姿勢が大切です。 1. **遮らない** — 話し終わるまで待つ。時間がかかっても急かさない 2. **否定しない** — 「でも」「そうじゃなくて」をできるだけ使わない 3. **沈黙を恐れない** — 黙っている時間も、一緒にいる時間 ### 言葉にならないサインを読む 認知症のある方や、言葉での意思表示が難しくなった方は、**表情・視線・呼吸・体の動き** に気持ちが現れます。 | サイン | 推測できる気持ち | | --- | --- | | 視線をそらす | 不快・拒否・恥ずかしさ | | 呼吸が浅く速い | 不安・痛み | | 拳を握る | 緊張・痛み | | 表情が和らぐ | 安心・受け入れ | 「言葉で言わないから大丈夫」ではなく、**サインから気持ちを汲み取る** 姿勢が、本人の安心につながります。認知症のある方との接し方は、[親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方](/columns/dementia-care-latest) でも詳しく扱っています。 --- ## 4. 専門職は「頼っていい相手」 在宅介護は、家族だけで抱えるものではありません。介護はもともと **専門職とのチーム戦** です。 ### 家族を支えてくれる主な専門職 | 職種 | 家族から見た役割 | | --- | --- | | **ケアマネジャー** | 介護全体の相談窓口。ケアプラン作成とサービス調整 | | **訪問看護師** | 体調や薬の心配ごとの相談相手。医師との橋渡し | | **リハビリ職**(PT・OT・ST) | 「自分でできること」を増やす訓練、介助方法のアドバイス | | **地域包括支援センター** | 介護が始まる前から使える、地域の総合相談窓口 | 訪問看護師に家でどこまで頼めるのか、医療保険と介護保険のどちらで使うのかは、[訪問看護とは?医療保険と介護保険の違い・費用の目安・頼めること](/columns/visiting-nursing-care-guide)で整理しています。 ### ケアマネジャーへの伝え方のコツ - **変化はメモして具体的に** — 「最近元気がない」より「3日前から食事が半分残る」のほうが、適切な対応につながります - **家族側の悩みも遠慮なく** — 「介助の方法がわからない」「自分が疲れてしまった」も立派な相談ごとです - **介助のやり方は実際に見てもらう** — 訪問時に「移乗を見てもらえますか」と頼めば、その場でコツを教えてもらえます ### サービス担当者会議には遠慮せず参加を ケアマネジャーが開く「サービス担当者会議」は、専門職だけの場ではなく、**本人と家族の希望を伝える場** です。「お任せします」だけで終わらせず、困っていることや、本人が大切にしている暮らし方を、そのまま言葉にして大丈夫です。 --- ## 5. 完璧な介護を目指さなくていい ここまで介助のコツをお伝えしてきましたが、最後にいちばん大切なことを。**完璧な介護を目指さなくていい** のです。 プロの介護職でも、介助がうまくいかない日はあります。家族のあなたが、すべてを一人で、最初から上手にできるはずがありません。うまくいかない日があっても、それはあなたのせいではありません。 負担の大きい介助は、プロに任せてかまいません。たとえば入浴なら、施設に通って入浴の介助を受けられる[デイサービスの費用と1日の流れ](/columns/day-service-guide)を確かめたり、自宅の浴槽での入浴が難しくなってきたら、専用の浴槽を持ち込んでくれる[訪問入浴介護の対象者と料金](/columns/visiting-bath-care-guide)を調べたりして、ケアマネジャーに相談してみてください。 「つらいな」と感じたときのセルフケアについては、[介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア](/columns/caregiver-mental-health) にまとめています。あわせて読んでみてください。 --- ## まとめ > **この記事の要点** > - 介助は「観察 → 声かけ → 体の使い方」の順番で。いきなり触れない > - 腰を守るために、持ち上げない介助と福祉用具レンタルを活用する > - 傾聴と非言語サインの観察が、本人の安心につながる > - ケアマネジャーには家族側の悩みも遠慮なく相談していい > - 完璧を目指さない。うまくいかない日があっても、あなたのせいではない 介護そっとねっとアプリでは、同じように家族の介護に向き合う仲間と、匿名で悩みや工夫を分かち合えます。「わかるよ」と言い合える場所が、きっとあなたの支えになります。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 職場における腰痛予防対策指針](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31197.html) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [厚生労働省 - 介護事業所・生活関連情報検索(介護サービス情報公表システム)](https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア - **slug**: caregiver-mental-health - **公開日**: 2026.3.21 - **更新日**: 2026.9.4 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/caregiver-mental-health **要約**: 介護がつらいと感じても、何から話せばよいか分からないご家族へ。負担を振り返る観点と相談先をまとめます。全部を一度に解決しようとせず、いま気になっていることから読めます。 **本文**: # 介護がつらい・もう限界と感じたら──介護疲れセルフチェックとストレスのサイン、心を守るセルフケア > **この記事の要点(3行)** > > - 介護者の約69.4%がストレスを抱え、抑うつ有病率は一般の2〜3倍という現状がわかる > - 10項目の介護疲れセルフチェックで今の状態を確認し、身体・精神・警戒の3層のサインと今日からできる5つのセルフケアを提示 > - [よりそいホットライン](https://www.since2011.net/yorisoi/)や[いのちの電話](https://www.inochinodenwa.org/)など24時間相談可能な窓口を紹介 介護は長期にわたる営みです。大切なご家族のために懸命に取り組む一方で、**介護者自身の心と体の健康**が損なわれてしまうケースは少なくありません。「最近、なんだか疲れが取れない」「これって介護疲れなのかな」——そう感じたら、まずはご自身の状態をセルフチェックで確認してみましょう。 > この記事では > - 今すぐできる10項目の介護疲れセルフチェック > - 統計データで見る介護者ストレスの現状 > - 早期に気づきたい介護疲れのサイン(身体 / 精神 / 警戒) > - 今日からできる5つのセルフケア > - 具体的な相談窓口(電話番号・対応時間つき) まで、**科学的根拠に基づく対処法と実用的な情報**を幅広くお伝えいたします。 --- ## 介護疲れのセルフチェックは何項目チェックすればいい? **次の10項目のうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。当てはまる項目が多いほど、心と体が「休んで」とサインを出している可能性があります。** - [ ] 休んでも疲労感が取れない日が続いている - [ ] 寝つきが悪い、または夜中に何度も目が覚める - [ ] 頭痛・肩こり・胃の不調など、原因のわからない体調不良がある - [ ] 食欲がない、または食べ過ぎてしまう - [ ] 些細なことでイライラしたり、涙が出たりする - [ ] 以前は楽しめていた趣味や外出に、気持ちが向かなくなった - [ ] 「自分ばかりが頑張っている」と感じることが増えた - [ ] 誰にも本音を話せていないと感じる - [ ] 介護のことを考えると、漠然とした不安で胸が苦しくなる - [ ] 「もう限界かもしれない」と思うことがある **目安(あくまで簡易的な確認であり、医学的診断ではありません)** | 当てはまった数 | 目安 | | --- | --- | | 0〜2個 | 現時点では大きな負荷は少なめ。今のセルフケア習慣を続けましょう | | 3〜5個 | 疲れが蓄積し始めているサイン。下記のセルフケアやレスパイトケアを取り入れる時期です | | 6個以上 | 心身への負荷がかなり大きい状態。次章の「警戒が必要なサイン」もあわせて確認し、早めに相談窓口へ連絡することをおすすめします | ![介護疲れセルフチェックの結果イメージ図。10項目のうち当てはまった数に応じて、0〜2個は現状維持、3〜5個はセルフケア強化の時期、6個以上は早めの相談を促す3段階の目安を示す。](/column-figures/caregiver-mental-health-selfcheck.svg) チェックの結果はあくまで簡易的な目安です。次の章では、身体・精神・警戒という3つの視点から、介護疲れのサインをさらに詳しく見ていきます。 --- ## 介護者のメンタルヘルスの現状 ### 統計データが示すストレスの深刻さ [厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/)の「[国民生活基礎調査](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html)」(2022年)と関連研究から、介護者のストレスの実態が浮かび上がります。 - 同居の主な介護者で「**悩みやストレスがある**」と回答した割合: **約69.4%** - 同年の一般国民のストレス保有率: 約47.9% - 介護者と一般国民の差: **約20ポイント以上** ### 介護者が抱えるストレスの原因(複数回答) | 原因 | 割合 | | --- | --- | | 家族の病気や介護 | 約76.8% | | 自分の病気や介護 | 約28.6% | | 収入・家計・借金等 | 約18.2% | 介護そのものの負担に加え、**自身の健康不安や経済的な問題が重なる複合的ストレス**にさらされている実態がわかります。 ### 介護うつの深刻さ - 介護者の抑うつ症状の有病率: 一般人口の **2〜3倍** - 在宅介護者の **約30〜40%** に軽度以上の抑うつ症状が認められる(国内研究) --- ## 介護疲れの症状にはどんなサインがある? **身体・精神・警戒の3段階に分けて見ると、今の自分がどこまで来ているかが判断しやすくなります**。以下の症状が続いている場合、介護疲れが溜まっているサインかもしれません。**早めに対処することが大切**です。 ### 身体的なサイン - 慢性的な疲労感があり、休んでも回復しない - 頭痛、肩こり、胃痛など **原因不明の身体症状** が続く - 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、または眠り過ぎる - 食欲がない、または過食気味になっている ### 精神的なサイン - 些細なことでイライラしたり、感情的になりやすい - 以前は楽しめていた趣味や外出への意欲がなくなった - 被介護者に対して感情的に当たってしまうことが増えた - 誰にも相談できない、理解してもらえないと感じている - 将来への漠然とした不安が消えない - 飲酒量が増えた ### 介護うつのチェックポイントは?警戒が必要なサイン **以下の症状が2週間以上続いている場合は、単なる疲れではなく介護うつ(抑うつ状態)の可能性があります**。ためらわず医療機関を受診してください。 - 1日中、ほぼ毎日、気分が沈んでいる - 以前は楽しめていたことに全く興味が持てなくなった - 「自分は価値がない」「すべて自分のせいだ」と感じる - 死について繰り返し考える > **緊急連絡先** > 「死にたい」という気持ちが浮かんだ場合は、すぐに以下へ連絡してください。 > - **よりそいホットライン**: `0120-279-338`(24時間対応・通話料無料) > - **いのちの電話**: `0120-783-556`(毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌日8時) ![介護疲れのサインを身体的・精神的・警戒の3段階に分けたチェック図解。警戒サインが2週間以上続く場合はよりそいホットライン(0120-279-338)やいのちの電話(0120-783-556)への相談を促す決定木形式の図。](/column-figures/caregiver-fatigue-signs-decision-tree.svg) --- ## 介護疲れを防ぐセルフケアの方法は? **「完璧な介護」を手放し、レスパイトケアや周囲との協力を取り入れることが、疲れを長引かせないための鍵です。** ### 1. レスパイトケアを活用する **レスパイトケア** とは、介護者が一時的に介護から離れ、休息を取るためのサービスです。「自分が休むなんて申し訳ない」と感じる方もいるでしょう。しかし、**介護者が心身ともに健康であることは、質の高い介護を続けるための大前提**です。 | サービス | 内容 | | --- | --- | | **[ショートステイ(短期入所生活介護)](/columns/short-stay-respite-guide)** | 数日から最長30日程度、施設に宿泊して介護サービスを受けられる | | **[デイサービス(通所介護)](/columns/day-service-guide)** | 日帰りで施設に通い、食事・入浴・レクリエーションを受けられる | | **[訪問介護](/columns/home-help-service-guide)** | ヘルパーが自宅に来る間、介護者が外出や休息を取れる | ショートステイなどで施設に宿泊する場合、介護サービス費とは別に食費・居住費がかかります。低所得世帯向けの軽減制度については[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で詳しく解説しています。 「レスパイトケアを使いたいけれど、費用が心配で申し込めない」という声もよく聞かれます。実際には、ショートステイもデイサービスも訪問介護も介護保険の対象サービスであり、要介護度に応じた区分支給限度基準額の範囲内であれば自己負担は原則1〜3割で済みます。**「休むためだけに全額自費で高額な費用がかかる」という思い込みが、利用をためらわせている大きな要因**になっているケースは少なくありません。まずはケアマネジャーに「月に数日だけ、休息のためにショートステイを使いたい」と率直に伝えてみることから始めてみましょう。ケアプランに組み込んでもらえれば、通常の介護サービスと同じ枠組みで利用できます。 ### 2. 「完璧な介護」を目指さない > 「80点の介護を長く続ける」ことの方が、「100点の介護を短期間で燃え尽きる」よりも、はるかに価値があります。 「もっとこうすべきだった」と自分を責めるのではなく、「今日も精一杯やった」と自分を認めてあげてください。よく見られる **認知の歪み** に気づくことも大切です。 | 認知の歪み | 具体例 | より適応的な考え方 | |-----------|-------|----------------| | 全か無か思考 | 「完璧に介護できないなら、ダメな介護者だ」 | 「できることをやっている自分で十分」 | | すべき思考 | 「家族なのだから自分がすべてやるべきだ」 | 「プロの力を借りることは、よりよい介護につながる」 | | 過度の一般化 | 「今日うまくいかなかったから、何をやってもダメだ」 | 「今日はたまたま難しい日だった。明日はまた違う」 | ### 3. 身体と心のセルフケア習慣 **身体のセルフケア** - 1日 **6時間以上** の睡眠を確保する - バランスの良い食事を摂る - 1日 **10〜30分程度** のウォーキングを習慣にする(適度な運動は気分の安定に役立つとされています) - 自分の持病の通院や健康診断を先延ばしにしない **心のセルフケア** - 介護以外に、自分が楽しめる時間を週に1回以上持つ - つらいと感じたとき、誰かに話を聞いてもらう - 泣きたいときには泣く、怒りたいときには安全な方法で怒るなど、感情を表現する - 1日の終わりに、自分を労う言葉をかける **マインドフルネス: 3分間呼吸空間法** 忙しい介護の合間でも取り入れられる方法です。 1. 今の自分の状態に気づく(1分) 2. 呼吸に注意を集中する(1分) 3. 身体全体に意識を広げる(1分) 介護の合間や就寝前に実践することで、気持ちを落ち着かせる効果があります。 ### 4. 家族・周囲との協力体制をつくる > 介護を一人で抱え込むことは、**バーンアウトへの最短経路**です。 - 家族全員で介護の役割分担について話し合う - 遠方の家族には、経済的サポートや情報収集を担ってもらう - 「自分だけが頑張らなければ」という思い込みを手放す 一人っ子で分担できる家族がいない場合や、自分自身が遠方に住んでいる場合は、[一人っ子・遠距離介護、親をどう支える?](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)で紹介している、地域包括支援センターやケアマネジャーなど「家族以外に頼れる窓口」の作り方が参考になります。 ### 5. SOSを出すことは弱さではない 助けを求めることは、決して弱さの表れではありません。**状況を冷静に判断し、より良い介護環境を整えるための前向きな行動**です。つらいと感じたとき、限界を感じたとき、どうか一人で抱え込まないでください。 --- ## こんな考え方が、疲れを長引かせてしまう セルフケアの方法を知っていても、次のような考え方が先に立つと、休むこと自体にブレーキがかかってしまいます。ご自身に当てはまるものがないか、振り返ってみてください。 - **「自分が我慢すれば済む」と考えて、誰にも相談しないまま数ヶ月〜数年過ごしてしまう**:一人で抱え続けた期間が長いほど、心身の回復にも時間がかかります。つらさを感じ始めた早い段階で、この記事のセルフチェックやサインを見返す習慣を持っておくと、悪化を防ぎやすくなります - **「サービスを使うのは親不孝」「施設に頼るのは甘え」と思い込んでしまう**:レスパイトケアや訪問介護は、介護を放棄する手段ではなく、介護を長く続けるための環境づくりです。この思い込みが強いと、使えるサービスがあっても申請にたどり着けません - **家族の誰か一人に負担が集中していることに、周囲が気づかない・言い出せない**:介護をしている本人が「大丈夫」と言い続けると、家族も安心してしまいがちです。定期的に「最近どう?」と声をかけ合う、あるいは本人から具体的な負担(睡眠時間、外出できた日数など)を数字で伝える工夫が、気づきのきっかけになります - **「もっと大変な人がいるのだから」と、自分のつらさを比較して過小評価してしまう**:介護の大変さは人と比べるものではありません。自分が感じているつらさは、自分にとって確かに存在するものとして扱ってよいのです これらの考え方に心当たりがある方ほど、次の相談窓口を「今はまだ使わなくていい場所」ではなく、「いつでも使える場所」として覚えておいていただければと思います。 --- ## 介護がつらいとき、どこに相談すればいい? **電話相談窓口・地域包括支援センター・介護者の会・医療機関の4つの選択肢があり、緊急度に応じて使い分けられます。** ### 電話相談窓口 | 窓口名 | 電話番号 | 対応時間 | | --- | --- | --- | | **よりそいホットライン** | `0120-279-338` | 24時間対応(通話料無料・外国語対応あり) | | **いのちの電話** | `0120-783-556` | 毎日16時〜21時(毎月10日は8時〜翌日8時・通話料無料) | | **こころの健康相談統一ダイヤル** | `0570-064-556` | 各都道府県の精神保健福祉センターへ接続 | | **認知症の人と家族の会** | `0120-294-456` | 介護者の会・家族会 | ### 地域包括支援センター 全国に **約5,400箇所** 設置されている、高齢者の暮らしを総合的に支える相談窓口です([地域包括支援センター検索は WAM NET](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) を参照)。保健師、社会福祉士、ケアマネージャーなどの専門職が、介護に関するあらゆる相談に **無料** で応じてくれます。 **利用の流れ**は難しくありません。まずは「お住まいの市区町村名 + 地域包括支援センター」で検索するか、市区町村の介護保険担当窓口に電話して、担当エリアのセンターを教えてもらいます。電話またはセンターの窓口で「介護がつらい」「誰に相談したらいいかわからない」と伝えるだけで大丈夫です。要介護認定を受けているかどうかにかかわらず相談でき、初回相談で契約や費用が発生することもありません。ケアマネジャーがすでについている場合も、地域包括支援センターは家族側の心身の悩みを聞く窓口として並行して使えます。「まだ本当に困っているレベルではないかもしれない」とためらう方も多いですが、深刻化する前の早い段階で顔つなぎをしておくことこそ、この窓口の本来の使い方です。 ### 介護者の会・家族会 同じ立場の介護者が集まり、悩みや情報を共有する場です。「わかってもらえた」「自分だけではなかった」と感じられることは、**孤独感をやわらげる支え**になります。 代表的な全国組織として **認知症の人と家族の会**(`0120-294-456`)があります。オンラインでの参加も増えており、自宅にいながら交流できます。 ### 医療機関への受診 心身の不調が続く場合は、**ためらわずに医療機関を受診**してください。かかりつけ医に相談するほか、心療内科や精神科を直接受診することもできます。「介護のストレスで……」と伝えるだけで、医師は状況を理解してくれます。 介護のつらさは、看取りが近づく局面ほど強くなることがあります。「もしものとき、どうしたいか」を家族で話し合っておくことは、その時が来たときの後悔や迷いを減らし、結果として介護者自身の心の負担を軽くすることにもつながります。詳しくは[親の「もしも」を一緒に考える──家族のための人生会議(ACP)のはじめ方](/columns/acp-jinsei-kaigi-family-guide)で解説しています。 --- ## まとめ この記事で持ち帰れることは、次の3つです。 - **10項目のセルフチェックで、今の自分の状態と取るべき行動の目安(現状維持/セルフケア強化/早めの相談)が判断できるようになった** - **介護疲れのサインは身体・精神・警戒の3層に分かれており、どの段階まで来ているかを見分けられるようになった** - **「完璧な介護」より「80点を長く」。レスパイトケアや24時間無料の相談窓口など、一人で抱え込まないための具体的な選択肢を知った** 「完璧な介護者」でなくていいのです。疲れたら休んでいい。つらかったら誰かに話していい。助けを求めていい——そのことを、どうか忘れないでください。**あなたは一人ではありません。** 介護そっとねっとには、同じようにセルフチェックで「当てはまる項目が多かった」と感じた方が、匿名でそっと気持ちを分かち合っています。まずは今日、チェックした項目のうち1つだけでいいので、下記のセルフケアの中から試してみてください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や状況については、専門の医療機関にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [厚生労働省 国民生活基礎調査](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html) - [よりそいホットライン](https://www.since2011.net/yorisoi/) - [いのちの電話](https://www.inochinodenwa.org/) - [認知症の人と家族の会](https://www.alzheimer.or.jp/) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト - **slug**: home-care-preparation - **公開日**: 2026.3.18 - **更新日**: 2026.6.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/home-care-preparation **要約**: 「自宅で介護をすることになったけれど、何を準備すればいいの?」——そんな不安を少しでも軽くするために。住環境の整え方、介護用品の選び方、家族の役割分担まで、チェックリスト付きでやさしく解説します。 **本文**: # 在宅介護、何から始めればいい?──不安を減らす準備チェックリスト > **この記事の要点(3行)** > > - 在宅介護準備を「医療・介護」「住環境」「家族体制」「経済」の4カテゴリでチェック > - 住宅改修は20万円・福祉用具購入は年10万円まで補助(介護保険)の手順を提示 > - 仕事との両立は介護休業93日・介護休暇5日の制度活用を案内 > 「退院後は自宅で介護したい」 > 「施設にはまだ入れたくない」 ——そう考えるご家族は多いと思います。在宅介護は、ご本人が **住み慣れた環境で生活を続けられる** という大きなメリットがある一方で、準備不足は介護者の負担を一気に重くします。 この記事では、**在宅介護を始める前の準備チェックリスト・住環境の整え方・介護用品の選び方・家族間の役割分担・仕事との両立**までを、そのまま使えるチェックリスト形式でお伝えします。 > **結論**: 事前の準備と情報収集が、在宅介護の成否を大きく左右します。今日から一つずつ進めていきましょう。 --- ## 在宅介護を始める前の準備チェックリスト 4つのカテゴリに分けて、出来ているものから順にチェックしてみてください。 ### 医療・介護の情報収集 - [ ] 主治医から現在の状態と今後の見通しを聞いた - [ ] 介護保険の要介護認定を申請した(または申請の手続きを把握している) - [ ] [地域包括支援センター](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/)またはケアマネージャーに相談した - [ ] 利用できる介護保険サービスの種類を把握している - [ ] 訪問看護や往診が必要かどうかを確認した ### 住環境の確認 - [ ] 自宅の段差・転倒リスクを確認した - [ ] 必要な住宅改修(手すり設置・段差解消など)を検討した - [ ] 介護用ベッドや車いすの置き場所を確保した - [ ] トイレや浴室の使いやすさを確認した - [ ] 緊急時の脱出経路と安全を確認した ### 家族・サポート体制の確認 - [ ] 主に介護を担う人(主介護者)を決めた - [ ] 家族全員で介護の方針について話し合った - [ ] 家族間で役割分担を決めた - [ ] 近隣の方や友人など、いざというときに助けを求められる人がいる - [ ] 仕事をしている場合、介護休業制度について確認した ### 経済的な準備 - [ ] 介護にかかる費用の概算を把握している - [ ] 介護保険の自己負担割合を確認した(1割・2割・3割) - [ ] [高額介護サービス費](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)(1ヶ月の自己負担が上限を超えた分の払い戻し)の制度を知っている - [ ] 介護に使える貯蓄・資産を把握している ![在宅介護を始める前の準備チェックリストを示す2×2グリッド図。医療・介護の情報収集、住環境の確認、家族・サポート体制の確認、経済的な準備の4カテゴリごとにチェック項目が一覧できる。](/column-figures/home-care-checklist-grid.svg) --- ## 住環境の整え方 在宅介護では、**自宅が安全で使いやすいこと**が何よりも重要です。転倒は高齢者の骨折・寝たきりの大きな原因となります。介護が始まる前に、住環境を整えておきましょう。 ### 玄関・廊下・階段 **玄関**では、段差の解消が最優先です。上がり框(かまち)が高い場合は、スロープや踏み台の設置を検討します。手すり、長柄の靴べら、座って履ける椅子があると格段に使いやすくなります。 **廊下**は、物を置かずにスペースを確保しましょう。 - 車いすが通る場合の廊下幅: **75センチ以上** - 曲がり角: **90センチ以上** **階段**は、転倒の危険が特に高い場所です。両側に手すりを設置するのが理想ですが、少なくとも **利き手側(下りるときに頼れる側)** には必ず設置しましょう。 ### 居室 **介護用ベッド(特殊寝台)** の導入を検討しましょう。背もたれの角度や高さを調整できる介護用ベッドは、起き上がりや移動を格段に楽にします。 - 要介護1以上であれば、介護保険でのレンタルが可能 - 転落防止のサイドレールを設置 - 立ち上がり補助の手すりも有効 - 夜間のトイレ移動が大変な場合は、**ポータブルトイレ** でリスクを下げる ### トイレ - 便座の高さが合っているか確認する(高いほうが立ち座りが楽) - 便座の横に手すりを設置する - 床の滑りを防止するマットを敷く - 洋式トイレへの変更が必要な場合は住宅改修を検討する ### 浴室・洗面所 浴室は **転倒のリスクが最も高い場所** のひとつです。 - 浴槽の出入りを補助する手すりを設置する - 浴槽内・浴室床に滑り止めマットを敷く - シャワーチェア(入浴用椅子)を活用する - 介護用入浴補助用具(浴槽手すり、バスボードなど)の活用を検討する > **ポイント**: 住宅改修(手すり設置・段差解消など)は、介護保険を利用すると1住宅あたり `20万円` を上限として工事費の7割から9割が支給されます。ケアマネージャーを通じて手続きを行いましょう。対象になる工事の種類や、着工前の事前申請という重要な手順については[介護保険の住宅改修は20万円まで──手すり・段差解消の対象工事と申請の流れ](/columns/jutaku-kaishu-20man-guide)でくわしく解説しています。 --- ## 介護用品の選び方 ### まずはレンタルを検討する 福祉用具の多くは介護保険でレンタルできます。購入前にレンタルで試用することで、**身体の状態に合っているかを確認でき、状態変化時にも対応しやすい**というメリットがあります。 **介護保険でレンタルできる主な福祉用具** - 車いす・付属品 - 特殊寝台(介護用ベッド)・付属品 - 床ずれ予防用具(マットレスなど) - 体位変換器 - 手すり(工事を伴わないもの) - スロープ - 歩行器・歩行補助つえ - 認知症老人徘徊感知機器 - 移動用リフト ### 購入が必要な用品 衛生上レンタルになじまない用品(シャワーチェア、バスボード、腰掛便座など)は購入となります。介護保険の **特定福祉用具購入費** として、年間 `10万円` を上限として費用の7割から9割が支給されます。 ### 選び方のポイント - **車いす**: 座面の幅と高さが身体に合っているかが最重要。合わない車いすは褥瘡(じょくそう)や操作性の問題につながります。**福祉用具専門相談員** に相談しましょう - **介護用ベッド**: 高さ調整が基本。「介護者が腰に負担なく介護できる高さ」と「本人が足を床につけて立ち上がれる高さ」は異なるため、**両方に調整できるもの** を選びます - **おむつ・パッド**: 日中は薄型、夜間は吸収量の多いタイプ。ケアマネージャーや訪問看護師に相談するのがおすすめ。おむつ代は、医師がおおむね6ヶ月以上の寝たきりで治療上おむつが必要と判断し、証明書がある場合に限り医療費控除の対象になります([介護費用は医療費控除の対象になる?](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)) レンタルと購入の判断基準や、選択制の対象品目、2026年の価格改定まで詳しく知りたい方は、[介護ベッド・車いすはレンタル?購入?福祉用具の選び方と費用をやさしく解説](/columns/fukushiyougu-rental-vs-purchase)で詳しく解説しています。 --- ## 家族間の役割分担 在宅介護がうまくいかなくなる大きな原因のひとつが **「一人に介護の負担が集中してしまうこと」** です。特に同居家族(多くは配偶者や嫁・娘)が一人で全てを担う状況は、介護者の心身を脅かし、介護の質も下げてしまいます。 ### 役割分担の考え方 介護の役割は「身体的な作業」だけではありません。以下の4つの役割を、家族の状況に応じて分担することが大切です。 | 役割 | 担当に向く人 | 具体例 | | --- | --- | --- | | **直接介護** | 同居家族が中心 | 食事介助・入浴介助・排泄介助。訪問介護で分散も可 | | **医療・行政手続き** | 時間の融通がつく家族 | 通院付き添い、薬の管理、介護保険の書類手続き | | **経済的サポート** | 遠方で直接介護が難しい家族 | 介護費用の負担、住宅改修費用 | | **精神的サポート** | 遠方の家族でも可能 | 定期的な連絡、主介護者の話を聞く、一時的な交代 | きょうだいがいない場合や、自分が遠方に住んでいて親を一人で支える場合の備えは、[一人っ子・遠距離介護で頼れる窓口と使えるサービス](/columns/hitorikko-enkyori-kaigo-guide)で整理しています。 ### 家族会議を開こう 介護が始まったら、**できるだけ早い段階で家族全員が集まって話し合い**ましょう。集まれない場合はビデオ通話でも構いません。 **家族会議で決めておくべきこと** 1. 本人の意向(どこで介護を受けたいか、延命治療についてどう考えるかなど) 2. 介護の方針(在宅介護をいつまで続けるか、施設入所の基準など) 3. 役割分担(誰が何を担当するか) 4. 費用の分担(介護費用をどう賄うか) 5. 緊急時の連絡体制 > 「言いにくいテーマ」ほど、**早めに話し合っておく** ことが大切です。 ### 主介護者を支える仕組みをつくる 毎日介護に関わる主介護者が **「助けを求めてよい」** と感じられる状況をつくることが、家族全体にとって重要です。 - 定期的にショートステイ(短期入所)を利用して、主介護者に休みを確保する - デイサービスの利用日は、主介護者が自分の用事を済ませる時間にする - 「なんでも一人でやらなければならない」という思い込みを手放す ショートステイの費用や予約の流れ、連続利用30日ルールについては、[ショートステイとは?費用の目安・予約の流れ・連続利用30日ルールまでやさしく解説](/columns/short-stay-respite-guide)で詳しく紹介しています。 --- ## 仕事との両立のために 仕事をしながら介護をする **ダブルケア** は、精神的・身体的・経済的に大きな負担となります。しかし、介護を理由に仕事を辞めることは、経済的な問題だけでなく社会とのつながりを失うことにもなりかねません。 **活用できる制度(要確認)** | 制度 | 内容 | | --- | --- | | **介護休業制度** | 対象家族1人につき通算 `93日` まで、3回を上限として分割取得可能(育児・介護休業法に基づく) | | **介護休暇** | 年間 `5日`(対象家族が2人以上の場合は `10日`) | | **各種勤務制限** | 所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限 | これらの制度の詳細や会社の実際の運用については、**勤務先の人事部門** に確認してください。 --- ## まとめ > **この記事の要点** > - 在宅介護は「医療・介護」「住環境」「家族体制」「経済」の4カテゴリで準備 > - 住環境は玄関・廊下・階段・居室・トイレ・浴室を点検し、住宅改修は介護保険で20万円まで補助 > - 福祉用具はまずレンタルで試用、衛生用品は年10万円まで購入補助 > - 役割は「直接介護」「手続き」「経済」「精神」の4つに分けて家族全員で分担 > - 仕事との両立は介護休業93日・介護休暇5日などの制度を必ず活用 わからないことや不安があれば、**一人で悩まずにケアマネージャーや地域包括支援センター**に相談しましょう。在宅介護は、チームで取り組むものです。 住環境の準備が整ったら、季節ごとの対策も忘れずに。特に夏場は、[【2026年版】高齢者の熱中症予防、在宅介護でどう防ぐ?──室温28℃・水分補給・警戒アラート](/columns/elderly-heatstroke-prevention-home-care)もあわせてご覧ください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的なサービス利用や費用については、担当ケアマネージャーにご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) - [厚生労働省 - 育児・介護休業法について](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方 - **slug**: dementia-care-latest - **公開日**: 2026.3.14 - **更新日**: 2026.6.11 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/dementia-care-latest **要約**: 「最近、親の物忘れが気になる」——その不安を抱えるご家族へ。認知症の種類と初期症状のサイン、家族ができるケアと接し方のコツ、頼れる支援サービスまで、家族目線でやさしく解説します。 **本文**: # 親が認知症かもしれないと思ったら──家族ができるケアと向き合い方 > **この記事の要点(3行)** > > - 認知症4種類(アルツハイマー型が約60〜70%)の特徴と初期症状チェックリストがわかる > - 家族ができるケアのポイントとコミュニケーションのコツを具体例で提示 > - [認知症の人と家族の会](https://www.alzheimer.or.jp/)など相談窓口と地域支援サービスを紹介 認知症は、現在日本で **約600万人以上** が罹患していると言われており、65歳以上の高齢者の **約6人に1人** が認知症を抱えています(2020年推計)。 > 「最近、親の物忘れが気になる」 > 「同じことを何度も聞いてくる」 > 「外出先で迷子になってしまった」 ——そのような変化に不安を感じているご家族も多いのではないでしょうか。認知症は適切なケアとサポートによって、ご本人もご家族も穏やかに過ごすことができます。 この記事では、**認知症の種類・初期症状・家族ができるケア・コミュニケーションのコツ・相談窓口**まで、家族目線で実践的にまとめました。 --- ## 認知症の種類と特徴 認知症にはさまざまな原因があり、種類によって症状や進行が異なります。主な4種類を比較表にまとめました。 | 種類 | 割合(目安) | 主な特徴 | | --- | --- | --- | | **アルツハイマー型認知症** | 約60〜70% | 近時記憶障害から始まり、ゆっくり進行 | | **血管性認知症** | 約20% | 脳血管障害が原因。階段状に悪化、まだら認知症 | | **レビー小体型認知症** | — | 幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動 | | **前頭側頭型認知症** | — | 社会的ルールを守れず、若年(65歳未満)発症もある | ### アルツハイマー型認知症 認知症全体の **約60〜70%** を占める最も一般的な型です。脳内に異常なタンパク質(アミロイドβやタウ)が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅することで発症します。 **主な特徴** - 近い過去の出来事を忘れる **近時記憶障害** が最初に現れることが多い - ゆっくりと進行する - 同じことを何度も話したり聞いたりする - 時間・場所・人の認識が徐々に難しくなる(**見当識障害**) - 初期には本人が物忘れを自覚していることも多い ### 血管性認知症 認知症全体の **約20%** を占め、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こります。 **主な特徴** - 脳血管障害の後に突然症状が現れたり、階段状に悪化したりする - できることとできないことの差が大きい **まだら認知症** が見られる場合がある - **感情失禁**(些細なことで泣いたり怒ったりする)が起こりやすい - 脳血管障害の再発予防が重要 ### レビー小体型認知症 脳内に **レビー小体** という異常なタンパク質が蓄積することで起こります。 **主な特徴** - 「人や動物がいる」「虫がいる」といった **幻視**(ありありとした幻覚)が比較的早期から現れる - 手足が震える、動作が遅くなるなど **パーキンソン症状** を伴う - 認知機能が日によって大きく波打つ **認知機能の変動** がある - 睡眠中に大きな声を出したり手足を激しく動かしたりする(**レム睡眠行動障害**) ### 前頭側頭型認知症 前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こり、比較的若い年齢(**65歳未満**)で発症することもあります。 **主な特徴** - 社会的なルールやマナーを守れなくなる(万引き、食べ物への強いこだわりなど) - 同じ行動を繰り返す(**常同行動**) - 感情が平板になる、または些細なことで激しく怒る - 物忘れは初期には目立たないことが多い ![認知症4タイプ(アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型)の割合と特徴を比較する図解](/column-figures/dementia-types-comparison.svg) --- ## 初期症状のサイン 認知症は早期に気づき、専門医に相談することが大切です。以下のチェックリストで、**気になる項目があればかかりつけ医や[地域包括支援センター](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/)に相談**しましょう。 ### 記憶に関するサイン - [ ] 最近の出来事(昨日の夕食など)を忘れる - [ ] 同じことを短時間に何度も繰り返して話す、または聞く - [ ] 大切な約束を忘れる - [ ] 置き場所を忘れて探し回る ### 日常生活に関するサイン - [ ] 慣れたはずの料理の手順がわからなくなる - [ ] 電化製品の操作ができなくなる - [ ] お金の計算が難しくなる - [ ] 以前は問題なかった趣味や仕事ができなくなる ### 見当識・行動に関するサイン - [ ] 今日の日付や曜日がわからなくなる - [ ] 慣れた道で迷子になる - [ ] 季節に合わない服を着ようとする - [ ] 性格が変わったように感じる(怒りやすくなった、疑い深くなったなど) > **加齢による物忘れとの違い** > 加齢による物忘れは「何を食べたか忘れる」程度ですが、認知症では **「食事をしたこと自体を忘れる」** という特徴があります。加齢による物忘れでは日常生活に支障が出ないことがほとんどです。 --- ## 家族ができるケアのポイント ### 1. 安心できる環境をつくる 認知症の方は、慣れ親しんだ環境や人の顔を覚えていることが多いです。できるだけ生活パターンを変えず、同じ人が関わるようにすることで、安心感を保つことができます。 - 家具の配置を急に変えない - 毎日の生活リズムを一定に保つ - 慣れ親しんだ写真や思い出の品を身近に置く - 家の中の安全を確保する(段差解消、鍵の確認など) ### 2. 「その人らしさ」を大切にする 認知症になってもその方の人生の歴史や好み、価値観は変わりません。記憶や機能が低下していても、**その人らしさを尊重することが、尊厳あるケアの基本**です。 - 好きな音楽をかける - 趣味や得意なことを続けられるようにサポートする - 話の中に出てくる昔の思い出に耳を傾ける - 「できないこと」ではなく「**できること**」に注目する ### 3. 身体の健康管理 認知症の症状悪化には、身体的な不調が関係していることがあります。 - 規則正しい生活リズムを保つ - 適度な運動(散歩など)を取り入れる - 水分補給に気をつける(認知症の方は **脱水を起こしやすい**) - 定期的な通院と服薬管理を行う --- ## コミュニケーションのコツ 認知症の方との会話は、いくつかのコツを押さえると格段にスムーズになります。 ### 話しかけるときの基本 - **目線を合わせる**: 立ったまま上から話しかけるのではなく、相手と同じ目の高さになるよう、かがんで話しかけましょう - **ゆっくり、はっきりと**: 一度に多くの情報を伝えず、短い文でゆっくり話しましょう - **一つずつ伝える**: 「食事して、お薬飲んで、歯も磨いてね」と同時に複数のことを伝えるのではなく、一つのことが終わってから次を伝えます - **穏やかな口調で**: 声のトーンや表情は、言葉の内容以上に相手に伝わります ### 否定しない > 「そんなことはしていません」 > 「さっきも言いましたよ」 > 「また間違えて」 こうした言葉は、認知症の方を傷つけ、**不安や怒りを生む原因**になります。 - 「そうなんですか」「それは大変でしたね」と共感する - 事実の誤りを直接訂正しない(「財布が盗まれた」という訴えに対して、一緒に探すふりをして見つけるなど) - 怒りや悲しみの感情を受け止める ### 困った行動への対応 認知症の症状として、介護する家族が特に戸惑う **周辺症状(BPSD)** があります。 #### 徘徊 外に出て迷子になってしまう行動です。「行かせてあげる場所がない」「用事があると感じている」などの理由が背景にあることが多いです。 - 玄関に鈴をつける - **GPS** を活用する - 地域の **見守りネットワーク** を利用する #### もの盗られ妄想 「財布を盗まれた」と家族を疑うことがあります。 - 否定せず「一緒に探しましょう」と対応 - 普段から大切なものを一緒にしまう習慣をつけておく #### 夜間の不穏 夜になると落ち着かなくなる **日没症候群** が起こる場合があります。 - 昼間に適度な活動をして生活リズムを整える - 昼寝を短くする --- ## 利用できる支援サービス 認知症のご家族を抱えた場合、**ひとりで抱え込まず、地域の支援を積極的に活用**することが大切です。 ### 医療機関 認知症が疑われる場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて **もの忘れ外来**(神経内科・精神科・老年科など)に紹介してもらえます。早期診断により、薬物療法で症状の進行を遅らせることができる場合もあります。 ### 地域包括支援センター 高齢者の総合相談窓口です。認知症に関する相談を **無料** で受け付けており、介護保険の申請支援や地域のサービス情報の提供も行っています。 ### 認知症初期集中支援チーム 専門職(医師・看護師・介護福祉士など)がチームを組み、認知症が疑われる方や認知症の方のご家族のもとを訪問し、初期の支援を行う専門チームです。**各市区町村に設置**されています。 ### 認知症カフェ(オレンジカフェ) 認知症の方とご家族、地域の方、専門家が集う場です。「同じ立場の人がいる」という安心感は、介護者の孤独感の軽減につながります。 ### 認知症の人と家族の会 全国規模の組織で、電話相談(`0120-294-456`)も行っています。 --- ## まとめ > **この記事の要点** > - 認知症は4種類あり、アルツハイマー型が約60〜70%を占める > - 初期症状は記憶・日常生活・見当識の変化でチェック > - ケアの基本は「安心できる環境」「その人らしさ」「身体の健康管理」 > - 否定せず共感する、目線を合わせる、一つずつ伝える > - 徘徊・妄想・夜間不穏は背景の理由を理解して対応 > - 一人で抱え込まず、地域包括支援センターや認知症カフェを活用 認知症のケアに「完璧な対応」はありません。時に怒鳴ってしまったり、疲れ果ててしまったりすることがあっても、それは皆が通る道です。大切なのは、ご本人の気持ちに寄り添い、「その人らしさ」を大切にしながら、**無理なく続けること**です。 症状が進み、預金の引き出しや契約の判断が難しくなってきた場合は、**成年後見制度**の利用も選択肢になります。制度の仕組みは[成年後見制度とは?親のお金と契約を守る家族向け入門──2026年6月成立の改正法で何が変わるか](/columns/adult-guardianship-family-guide)で解説しています。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や対応については、専門医や認知症専門士にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 認知症施策](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000167700_00001.html) - [認知症の人と家族の会](https://www.alzheimer.or.jp/) - [日本認知症学会](https://www.jsdr.jp/) - [認知症サポーターキャラバン](https://www.caravanmate.com/) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ### 親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説 - **slug**: nursing-insurance-basics - **公開日**: 2026.3.10 - **更新日**: 2026.10.13 - **著者**: 介護そっとねっと編集部(編集部) - **URL**: https://kaigo-sottonet.com/columns/nursing-insurance-basics **要約**: 「親の介護が始まったけれど、何から手をつければいいかわからない」——そんなあなたへ。介護保険の申請の流れ、利用できるサービスの種類、気になる費用まで、初めてでも迷わないようにやさしく解説します。 **本文**: # 親の介護が始まったら──はじめての介護保険、申請から費用までやさしく解説 > **この記事の要点(3行)** > > - [介護保険法](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123)に基づく制度の概要と第1号・第2号被保険者の違いがわかる > - 要介護認定の6ステップと要介護度ごとの区分支給限度基準額を一覧で提示 > - 相談窓口は[地域包括支援センター](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/)(無料・総合窓口)を紹介 この記事は、介護そっとねっとが最初にお届けする「介護保険」の入門解説です。 介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支えるために設けられた日本の社会保険制度です。**2000年(平成12年)4月**に施行され、家族だけに集中していた介護の負担を、社会全体で分かち合うことを目的としています。 > この記事でわかること > - 介護保険制度の全体像と財源の仕組み > - 第1号・第2号被保険者の違い(比較表あり) > - 要介護認定の6ステップと標準期間 > - 要介護度ごとの利用上限額とサービス種別 > - 申請をスムーズに進めるためのコツ 介護に直面したご家族や、これから備えたい方に向け、制度の仕組みから申請・サービス利用までを初めての方にもわかりやすく解説します。 --- ## 介護保険制度の概要 介護保険制度は、**40歳以上のすべての方**が加入する公的な社会保険制度です。加入者(被保険者)が納める保険料と、国・都道府県・市区町村の公費(税金)を財源として運営されています。 | 項目 | 内訳 | | --- | --- | | 保険料 | 全体の **50%** | | 公費(税金) | 全体の **50%** | (2024年度基準) 保険料の徴収方法は被保険者区分によって異なります。 - **第1号被保険者(65歳以上)**: 市区町村ごとに所得に応じた段階別金額が設定され、年金から天引き(特別徴収)されるのが一般的 - **第2号被保険者(40歳から64歳)**: 加入している健康保険(会社の健康保険や国民健康保険)の保険料に上乗せして徴収 65歳以上と40〜64歳では保険料の見直しの時期も違います。2026年度に何が上がり、何が変わっていないかは[介護保険料は2026年度に値上がりした?──65歳以上と40〜64歳で違う決まり方と、天引き額が変わる理由](/columns/kaigo-hokenryo-2026-family-guide)で整理しています。 制度の運営主体(**保険者**)は市区町村および特別区で、お住まいの自治体が窓口となります。 --- ## 被保険者の分類 介護保険の被保険者は、年齢によって2つに分類されます。サービスを利用できる条件が大きく異なります。 | 区分 | 対象年齢 | サービス利用条件 | | --- | --- | --- | | **第1号被保険者** | 65歳以上 | 原因を問わず、要介護(要支援)認定を受ければ利用可能 | | **第2号被保険者** | 40歳から64歳の医療保険加入者 | 加齢に起因する**16種の特定疾病**による要介護状態に限定 | ### 第1号被保険者(65歳以上の方) 65歳以上の方は全員が第1号被保険者となります。加齢による体力の低下、転倒による骨折、認知症の発症など、**介護が必要になった理由を問わず**対象となります。 ### 第2号被保険者(40歳から64歳の方) 40歳から64歳の医療保険加入者は第2号被保険者ですが、サービス利用は「16種の特定疾病」が原因の場合に限られます。 | # | 16種の特定疾病 | | --- | --- | | 1 | 末期がん(回復の見込みがないと医師が判断したもの) | | 2 | 関節リウマチ | | 3 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | | 4 | 後縦靱帯骨化症 | | 5 | 骨折を伴う骨粗鬆症 | | 6 | 初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症など) | | 7 | 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など) | | 8 | パーキンソン病関連疾患 | | 9 | 脊髄小脳変性症 | | 10 | 脊柱管狭窄症 | | 11 | 早老症(ウェルナー症候群など) | | 12 | 多系統萎縮症 | | 13 | 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 | | 14 | 閉塞性動脈硬化症 | | 15 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | | 16 | 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 | > **注意**: 交通事故など特定疾病以外の原因で介護が必要になった場合は、介護保険の対象外となります。 --- ## 要介護認定の流れ 介護保険サービスを利用するためには、まず**要介護認定**を受ける必要があります。申請から結果通知まで、原則 `30日以内` に行われます。 1. **申請** 2. **認定調査**(全74項目) 3. **主治医意見書** 4. **一次判定**(コンピュータ判定) 5. **二次判定**(介護認定審査会) 6. **認定結果の通知** ### ステップ1: 申請 お住まいの市区町村の介護保険担当窓口(または地域包括支援センター)で、要介護認定の申請を行います。 - **65歳以上の方**: 介護保険被保険者証 - **40歳から64歳の方**: 健康保険被保険者証 申請は本人のほか、家族・ケアマネージャー・地域包括支援センターが代行することもできます。 ### ステップ2: 認定調査 認定調査員(市区町村の職員や委託事業者のケアマネージャーなど)がご本人を訪問し、心身の状態について聞き取り調査を行います。 - 全 **74項目** のチェック - 身体機能・生活機能・認知機能・精神行動障害・社会生活への適応を確認 - ご自宅や入院先で、通常 **30分から1時間** 程度 ### ステップ3: 主治医意見書 市区町村から主治医(かかりつけ医)に意見書の作成が依頼されます。疾病や負傷の状態、特別な医療の必要性、心身の状態に関する意見などが記載されます。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診断を受けます。 ### ステップ4: 一次判定(コンピュータ判定) 認定調査の結果と主治医意見書の一部項目をもとに、全国一律の基準で要介護度の目安が算出されます。 ### ステップ5: 二次判定(介護認定審査会) 保健・医療・福祉の専門家で構成される**介護認定審査会**が、一次判定結果を原案として、特記事項や主治医意見書を加味し最終的な要介護度を決定します。 ### ステップ6: 認定結果の通知 申請から原則 `30日以内` に結果が通知されます。 - **非該当(自立)**: 介護保険サービスは利用不可。ただし地域支援事業の介護予防サービスを利用できる場合があります - **要支援1・2**: 介護予防サービス(予防給付)を利用可能 - **要介護1から5**: 介護サービス(介護給付)を利用可能。数字が大きいほど介護の必要度が高い 認定の有効期間は、初回が原則 **6ヶ月**(状況に応じて3ヶ月から12ヶ月)、更新が原則 **12ヶ月**(状況に応じて3ヶ月から48ヶ月)です(2024年度基準)。 > **ポイント**: 有効期間満了前に更新申請を忘れずに。更新時期が近づいたらケアマネージャーから案内があります。 ![要介護認定の申請から結果通知までの流れを示す6ステップの線形プロセス図。申請、認定調査、主治医意見書、一次判定、二次判定、認定結果の通知の順に並び、原則30日以内に結果が通知されることを強調している。](/column-figures/care-certification-process.svg) --- ## 利用できるサービスと費用目安 要介護度に応じて、1ヶ月に利用できるサービスの上限額(**区分支給限度基準額**)が定められています。以下は2024年度基準の金額です。 | 要介護度 | 区分支給限度基準額(月額) | |---------|----------------------| | 要支援1 | 約50,320円 | | 要支援2 | 約105,310円 | | 要介護1 | 約167,650円 | | 要介護2 | 約197,050円 | | 要介護3 | 約270,480円 | | 要介護4 | 約309,380円 | | 要介護5 | 約362,170円 | ### 自己負担割合 介護保険サービスを利用した際の自己負担割合は、原則として費用の **1割** です。ただし所得に応じて負担割合が変わります(2024年度基準)。 | 所得の目安(65歳以上・合計所得) | 自己負担割合 | | --- | --- | | 一般 | **1割** | | 合計所得金額 160万円以上(年金収入のみ単身で年収280万円以上相当) | **2割** | | 合計所得金額 220万円以上(同340万円以上相当) | **3割** | この2割負担の基準(年収280万円以上)の対象を広げる案は、2025年12月に結論が先送りされ、2027年度の第10期介護保険事業計画の開始までにあらためて判断されることになりました。経緯は[2027年度の介護保険改正で何が変わる?──2割負担の対象拡大は「先送り」、ケアプラン有料化の議論を家族向けに整理](/columns/kaigo-hoken-2027-reform-family-guide)で整理しています。 ### 高額介護サービス費 1ヶ月の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が**高額介護サービス費**として後から払い戻されます。 - 一般的な所得の世帯: 月額上限 `44,400円`(2024年度基準) - 住民税非課税世帯: さらに低い上限額が適用され、負担が軽減 上限額の詳しい一覧や申請の流れ、令和8年8月からの基準額改定については[高額介護サービス費とは?──払い戻しの上限額・申請方法と令和8年8月からの基準額改定をやさしく解説](/columns/kougaku-kaigo-service-hi-guide)で詳しく解説しています。 また、訪問看護や訪問リハビリなどの一部のサービスは、確定申告で**医療費控除**の対象になることもあります。対象になるサービスの見分け方は[介護費用は医療費控除の対象になる?──訪問看護・おむつ代・施設費用まで、対象範囲をやさしく解説](/columns/iryohi-kojo-kaigo-omutsu-guide)で整理していますので、費用面の負担を軽くしたい方はあわせてご確認ください。 --- ## 主な介護サービスの種類 介護保険で利用できるサービスは、大きく3種類に分けられます。 ### 居宅サービス(自宅で受けるサービス) 自宅で生活しながら利用できるサービスです。 - **[訪問介護(ホームヘルプ)](/columns/home-help-service-guide)**: ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を行います - **訪問看護**: 看護師が自宅を訪問し、医師の指示のもと、健康状態の観察や医療処置、リハビリテーションなどを行います - **訪問リハビリテーション**: 理学療法士や作業療法士が自宅を訪問し、心身の機能回復のためのリハビリテーションを行います - **通所介護(デイサービス)**: 日帰りで施設に通い、食事・入浴・レクリエーション・機能訓練などのサービスを受けられます。介護者の休息(レスパイト)にもなります - **短期入所生活介護(ショートステイ)**: 短期間(数日から最長30日程度)施設に宿泊し、食事・入浴・機能訓練などのサービスを受けられます ### 施設サービス(施設に入所して受けるサービス) 施設に入所し日常生活全般の介護を受けるサービス。原則として要介護1以上の方が対象です。 - **特別養護老人ホーム(特養)**: 原則として要介護3以上の方が入所できる施設で、終身にわたって介護を受けられます。費用が比較的安いため入所待ちが多い施設です - **介護老人保健施設(老健)**: 病院退院後のリハビリテーションを中心とした施設で、在宅復帰を目指します。入所期間は原則3ヶ月から6ヶ月です - **介護医療院**: 長期にわたり医療と介護の両方が必要な方のための施設で、日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアにも対応しています 施設サービスの介護費用とは別に、**食費・居住費**も自己負担が発生します。住民税非課税世帯などは「負担限度額認定証」により軽減を受けられます。なお、2026年8月1日から、食費・居住費の**負担限度額(軽減後に利用者が支払う自己負担の上限)**の一部が引き上げられました。食費は第3段階①・②、居住費は第3段階②が対象です([厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1506](https://www.mhlw.go.jp/content/001706483.pdf))。詳しくは[介護施設の食費・居住費は2026年8月からどう変わった?|負担限度額・対象者・確認手順](/columns/facility-meal-housing-cost-2026-august)で解説しています。 ### 地域密着型サービス 住み慣れた地域で生活を続けるためのサービス。原則として、その市区町村の住民のみ利用可能です。 - **認知症対応型共同生活介護(グループホーム)**: 認知症の方が少人数(5人から9人)で共同生活を送りながら、日常生活上の介護や機能訓練を受けられます - **小規模多機能型居宅介護**: 「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスを一つの事業所で柔軟に組み合わせて利用できます ### 福祉用具・住宅改修 - **福祉用具レンタル**: 車いす、特殊寝台(介護用ベッド)、歩行器、手すり(工事を伴わないもの)などを1割から3割の自己負担でレンタル可能 - **福祉用具購入**: 入浴補助用具、腰掛便座、簡易浴槽など、レンタルになじまない福祉用具は、年間 `10万円` を上限として費用の7割から9割が支給されます - **住宅改修**: 手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止の床材変更、和式便器から洋式便器への取り替えなど、自宅のバリアフリー化工事に対して、1住宅あたり `20万円` を上限として費用の7割から9割が支給されます(2024年度基準) --- ## 申請のコツと注意点 介護保険をスムーズに利用するために、知っておくと役立つポイントをご紹介します。 ### 認定結果に不服がある場合 認定された要介護度が実際の状態と合っていないと感じた場合は、**区分変更申請**を行うことができます。認定結果の通知後いつでも申請可能で、改めて認定調査と審査判定が行われます。申請すべきタイミングの目安や、認定調査で家族がどう立ち会うとよいかは、[要介護認定の「区分変更申請」とは?](/columns/kubun-henkou-shinsei-family-guide)で詳しく解説しています。 ### 申請中でもサービスを利用できる 要介護認定の申請から結果通知までの間も、**暫定ケアプラン**を作成することで介護サービスを利用できます。 > **注意**: 認定結果が想定よりも低い要介護度となった場合、超過分が全額自己負担になる可能性があります。ケアマネージャーとよく相談したうえで利用しましょう。 ### 認定調査を受ける際のポイント 調査員の前では緊張して普段より受け答えがしっかりしてしまう方も多いため、**普段の状態を正確に伝える工夫**が大切です。 - 事前に困りごとのメモを用意する - 普段の様子をよく知っている家族が同席する - 「できる日」ではなく「普段の日」を基準に伝える ### ケアマネージャーの選び方 要介護1以上の認定を受けた方は、居宅介護支援事業所のケアマネージャー(**介護支援専門員**)にケアプランの作成を依頼します。選ぶ際のチェックポイントは以下の通りです。 - [ ] 話をしっかり聞いてくれる - [ ] 利用者の希望を尊重してくれる - [ ] 地域の介護サービス事業者について詳しい - [ ] 連絡が取りやすい - [ ] 相性が合う ケアマネージャーは途中で変更も可能です。合わないと感じた場合は、遠慮なく地域包括支援センターに相談しましょう。選び方のチェックポイントや、変更を考えていいサインについては[ケアマネジャーの選び方と変更方法──「合わないかも」と思ったら見る5つのサイン](/columns/care-manager-selection-and-change)でくわしく解説しています。 --- ## まとめ > **この記事の要点** > - 介護保険は40歳以上が加入する社会保険で、保険料50%・公費50%で運営 > - 第1号(65歳以上)は原因を問わず、第2号(40-64歳)は16種の特定疾病が対象 > - 要介護認定は6ステップ、原則30日以内に結果通知 > - 区分支給限度基準額は要支援1の約50,320円から要介護5の約362,170円まで > - 相談はまず地域包括支援センターへ(無料・総合窓口) 介護について不安やお悩みがある方は、まず**地域包括支援センター**に相談されることをおすすめします。介護保険の申請支援からサービスの利用調整まで、幅広くサポートしてくれます。 なお、認知症などで本人の判断能力が低下し、契約手続きや口座からの引き出しが難しくなってきた場合は、介護保険とは別に**成年後見制度**の利用を検討するご家族もいます。制度の詳細は[成年後見制度とは?親のお金と契約を守る家族向け入門──2026年6月成立の改正法で何が変わるか](/columns/adult-guardianship-family-guide)で解説しています。 介護保険・認知症ケア・在宅介護の実践・介護者のメンタルヘルスなど、そっとねっとコラムで扱っているテーマの全体像は[コラムを新しく開設いたしました。](/columns/new-column-opening)でもご紹介していますので、あわせてご覧ください。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に関するアドバイスは専門家にご相談ください。 ## 参考情報(一次情報) - [厚生労働省 - 介護・高齢者福祉](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html) - [e-Gov 法令検索(介護保険法)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) - [WAM NET 福祉医療機構](https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/) - [厚生労働省 国民生活基礎調査](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html) 本記事の編集方針・訂正ポリシーは [編集方針ページ](/editorial-policy) をご覧ください。 --- ## 法的情報 - [プライバシーポリシー](https://kaigo-sottonet.com/privacy-policy) - [利用規約](https://kaigo-sottonet.com/terms) - [編集方針](https://kaigo-sottonet.com/editorial-policy) ## クロールポリシー 検索エンジン・LLMクローラー(GPTBot, ClaudeBot, anthropic-ai, Claude-Web, PerplexityBot, Google-Extended, Applebot-Extended, CCBot 他)に対して、/zetadmin/ と /api/ を除く全ページのインデックス・学習を許可します。商用利用・引用時は出典として「介護そっとねっと(https://kaigo-sottonet.com)」の明記を推奨します。 ## 最終更新 2026-10-27 自動生成